Slav Defenceの世界-part5- by 小島慎也

part5では1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3 Bf5を扱います。前回の分類ではb)ですね。

4…Bf5はビショップをポーンストラクチャーの外で使おうという、ごく自然なアイディアです。このように早い段階でビショップを展開してしまえば、4…e6のように将来的にビショップをどう活用するか、頭を使う必要がなくなるのがメリットです。しかしビショップが白のナイトに狙われやすいというデメリットもあります。

4…Bf5は変化が非常に多く3.Nf3,4.e3の固有ラインの中ではメインとも言え、白はしっかりと対策が必要です。Part6で紹介する4…Bg4と比較して指してみてください。

 

Kojima Shinya

Yamada Kohei

全日本選手権2009 (10)

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3 Bf5 5.Nc3 e6 6.Nh4

 



f5
のビショップが良い働きをしているので、早めにナイトと交換しにいくのが白としてはベストだと思います。この手間を惜しむと黒はNbd7-Bd6-0-0として、不満な位置のピースがありません。すると白は使いにくい黒マスビショップを抱えるのみとなってしまいます。

 

6…Bg6 7.Be2

 

この手は2006年にTopalovKramnikとのマッチで採用し、勝利したため着目されるようになった手です。白はナイトとのビショップの交換を保留し、hファイルを開けさせることなく、まずはキャスリングを目指します。

 

7…Nbd7 8.0-0 Bd6 9.g3 0-0 10.Nxg6

 

黒がキャスリングをしたのを確認し、ビショップを取ります。4…Bf5では一般的な形ですので局面のポイントを整理しておきますと

 

白のメリット: ダブルビショップを持っている。

白のデメリット: 黒マスビショップが使いづらいままである。

黒のメリット: 展開と残ったピースの配置が良い。

黒のデメリット: ビショップを失っており、ダブルポーンがある。

 

となるでしょう。このビショップとナイトの交換が黒にとって大きな損だと思うかどうかが、4…Bf5を指すか指さないの分かれ目になると思います。この交換は構わないが、ダブルポーンは嫌だと思う人は4…Bg4を指すのでしょう。

 

10…hxg6 11.Qb3!?

 


 

私がこの手を初めて見たのは昨年参加したWorld UniversiadeLysyi-Gundavaa戦のことでした。白のアイディアはb7を一時的にアタックすることで黒にRb8,Qc7,Qb6のいずれかを強制し、その隙にルークをd1に回します。a8のルークはc8,クイーンはe7がバランスの良いポジションだと考えられるため、その後白のクイーンを退いても手損にはなりません。

 

11…Qc7 12.Rd1 a6 13.Qc2!

 

b3での仕事は終わったのでクイーンを退きます。

 

13…dxc4 14.Bxc4 c5 15.dxc5 Bxc5!?

 

ここから知らない局面になったので考え始めます。まずは16…Bxe3を避けるため、予めビショップを退いておきます。その位置はf1でしょうか、e2でしょうか。

 


 

16.Be2

 

ここはe2がビショップを退く位置としては正解です。g3をついているため、ついフィアンケットに組み直してしまいそうですが、e2-a6のダイアゴナルを残しつつ、f3g4をカバーするほうが柔軟です。

 

16…Rac8 17.Bd2

 

Slav 3.Nf3,4.e3のラインではこの黒マスビショップは働きが悪いため、白はしばしば早めにe4をつき直します。しかしここではすでにセンターポーンを捌いてしまっているため、e1に退いてディフェンスに使い、もう少しピースの交換が進んだところでc3辺りに出直すのが良い使い方に思えます。

 

18…b5?!

 

これは良くありませんでした。白マスビショップのない状態でa6-b5とポーンを伸ばすと、将来的にa4から崩された際にクイーンサイドに確実に弱点が残ってしまいます。黒はポーンには手をつけずBa7-Rfd8とゆっくり準備すべきでした。そうしておけば、白はダブルビショップを持っていますが、両方働きはおとなしく、確実な優勢を築くためにはまだまだ手間がかかりそうです。

 

19.Ne4!

 

cファイルからの圧力をかわしておくと共に、ピースの交換により黒の弱点(キングサイドのダブルポーン、クイーンサイドの伸ばしすぎたポーン)を浮き彫りにします。

 

19…Qb7!?

 

この手は全くの予想外でした。19…Nxe4 20.Qxe4 Nf6 でどこにクイーンを退こうかと試合中は考えていました。山田君はダブルナイトvsダブルビショップにしてもb7-h1のダイアゴナルに着目したようです。

 

20.Nxc5 Rxc5 21.Qb3 Rf5

 

黒の指し方は非常にアグレッシヴです。Ne5-Nf3+を食らうのは面白くないので慎重に考えた上で次の手を指しました。

 

22.f3

 

私の中では次の黒の手は一択でした。黒はここでチャンスを逃します。

 

22…Rc8?!

 


 

オープンファイルにルークを回す手はたいていの場合良いとされます。しかしここではより厳しい手で白キングへ圧力をかけ続けなければ、白にダブルビショップを活発化させるチャンスを与えてしまいます。

22…Rxf3! 23.Bxf3 Qxf3 とエクスチェンジを捨てて攻めを続けることが黒の最善だったと思います。

 

23.e4!

 

シンプルですが強力です。白はf5のルークを追い払った上でb7-h1のダイアゴナルを完全に閉じ、さらには黒マスビショップを活発にします。

 

23…Rfc5 24.Rac1 g5 25.g4

 

黒からg4とつかれては困るので止めておきます。f4が新たな弱点となりますが、そこまでナイトを回すのは手数がかかる上、g5自体が弱点として残るので問題ないと判断しました。

 

25…Ne5?

 

これは攻撃的に見えますが、駄目な手として読んでいました。

 

26.Rxc5 Rxc5 27.Be3!

 

一度5段目からルークを追い払えば安全にg5を取ることができます。

27.Bxg5? Nxf3+!

 

27…Rc6 28.Bxg5 Qc7 29.Bf4 Nfd7?

 

この手を指させないつもりの29.Bf4だったので意外でした。おそらく1段目からの白キングへのアタックに期待したのでしょうが守りきれると判断し、駒を取りにいきました。

 

30.Rxd7 Qxd7 31.Bxe5 Qd2 32.Qd3 Rc1+ 33.Kg2 Qe1

 


 

さきほどの守りきれる判断は直感ですので、ここから具体的なキング逃亡のプランを練ります。当然黒のキングへのアタックも交えます。

 

34.Bg3 Qh1+ 35.Kh3 Rg1 36.e5!

 

d3-h7のダイアゴナルを開き、f6を抑えることで勝ちを引き寄せます。黒の攻めは後一歩届きません。

 

36…Qg2+ 37.Kh4 Rh1 38.Kg5!

 


 

最も確実な方法だと思います。キングを敵のピースから遠ざけると共に攻めに加担させます。

 

38…Rxh2 39.Qd8+ Kh7 40.Bd3+ g6 41.Bxh2 Qxh2 42.Bxg6+! fxg6 43.Qe7+ 1-0

 

43…Kh8 44.Kxg6 Qc2+ 45.Kf6 Qh7 46.Qxh7+ で終わりです。

 

 

4…Bf5はビショップナイトの交換+ダブルポーンを許しても、残りの働きの良いピースで戦おうというアイディアです。白が黒マスビショップを活発化させる前にいかに手を作るかが黒のポイントとなり、その点を間違えると、この試合のように白が大きく優勢となります。単純にダブルビショップを持っている側が有利だと考えず、しっかり局面を分析して臨機応変に、そしてじっくり指し続ける必要のあるラインです。それができるSlav プレーヤーは3.Nf3, 4.e3を白で指すd4プレーヤーにとって手強い敵となるでしょう。


Slav Defenceの世界-part4- by 小島慎也

今回から数回に渡り、私が最も着目しているSlavのサイドライン、1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3!? を紹介したいと思います。こちらは前回紹介した3.Nc3,4.e3と異なり、固有のラインが多く存在します。私がこの変化について詳しくなったのは、南條君が私に白番を持った際に多用し、苦しめられてきたことが大きな要因だといえます。そして現在、1.e4から1.Nf3に転向した私にとっても白番での重要な武器となっています。

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3

 


 

この手の最も単純なアイディアは前回と同様、c4を早い段階で守ることにより、Classical Slavを指させないことだと思います。それでは3.Nc3,4.e3と何が異なるかといえば、このライン固有の黒からの変化、4…Bf5, 4…Bg4等を白で受けても良いと思うかどうか、がポイントでしょう。また、自分のように1.Nf3からSlavになる場合(1.Nf3 d5 2.d4 Nf6 3.c4 c6)Slavをメインで受けないならば、こちらのラインしか選ぶことはできません。黒の4手目は代表的なものが4つ挙げられると思います。

 

a) 4…e6

b) 4…Bf5

c) 4…Bg4

d) 4…a6

今回は最も多いa) 4…e6を紹介しようと思います。

 

4…e6


 

 

この手はSemi-Slavプレーヤーが指すであろうことは容易に予想がつくでしょう。黒は5.Nc3と白が指し、Semi-Slav Meranに手順前後することを期待しているのです。当然ですがSemi-Slavを調べていなければ、白が5.Nc3と指した際に困ってしまいます。私も以前は4…e6を指していました。しかし近年はSemi-Slavを外す白の5手目の研究が進み、4…e6の人気は下火にあるように思えます。とはいえ統計的には最もよく指され、重要な変化ですのできちんと扱います。

 

5.Nbd2!?

 

これがSemi-Slav外しの1つのアイディアです。白はc4のポーンをナイトで取り返せればe5の支配が強まるので、黒はc4のポーンを取りづらくなります。

 

5…Nbd7 6.Bd3 Bd6 7.0-0 0-0 8.e4

 


 

8…e5

 

白は黒マスビショップを活用しようとセンターを開き、黒も白マスビショップを活用するため同様のアイディアを用います。8…dxe4 9.Nxe4 Nxe4 10.Bxe4 h6 (10…Nf6?! 11.Bc2 e5のマスが弱まってしまうので黒として好ましくありません。10…e5? 11.dxe5 Nxe5 12.Nxe5 Bxe5 13.Bxh7+! )11.Bc2 e5 12.Qd3 f5 13.c5 Bc7 14.dxe5 Nxe5 15.Qb3+ Kh8 16.Re1! Qf6 17.Bf4 Be6 18.Bxe5 Bxb3 19.Bxf6 Bxc2 20.Re7! Bxh2+ 21.Kxh2 Rxf6 22.Rxb7 Be4 23.Ne5 Matlak,Mare (2477) - Bulski,K (2409) TCh-POL Extraliga Ustron POL (5),06.09.2006

こちらは”Play the Slav and Semi-Slav”で紹介されているラインで、白が指しやすいと思います。

 

9.cxd5 cxd5 10.exd5 exd4

 

10…Nxd5?! 11.dxe5 Nxe5 12.Nxe5 Bxe5 13.Bxh7+! Kxh7 14.Qh5+ Kg8 15.Qxe5

 

11.Ne4


 

 

11…Nxe4 12.Bxe4 Nf6 13.Bg5 Be7 14.Bc2!?

 

この手はつい先日見つけました。わずかですが白が指しやすいと思います。

14.Bxf6 Bxf6 15.Qd3 h6 16.Nxd4 Qb6 Wang Yue (2576) - Bu Xiangzhi (2630) Torch Cup Xiapu (15), 22.06.2005

こちらは日吉のトレーニングで実際に桑田君と指してみましたが、白がセンターにパスポーン、黒がダブルビショップを持つため、判断の難しい局面です。

14…Nxd5 15.Bxe7 Qxe7 16.Re1 Qf6 17.Qd3 g6 18.Qxd4 Qxd4 19.Nxd4

Baburin,A (2526) - Jessel,S (2294) ch-IRL Dublin IRL (7), 11.07.2008

 


 

白がやや良さそうですが、それを勝ちに結び付けられるかはまた別問題です。このような局面を好まないならば、他の変化を試してみるべきでしょう。ちなみにこのBaburinの試合はChess Gamesで解説を見ることができます。http://www.chessgames.com/perl/chessgame?gid=1497411

 

もう1つ、4…e6の中でお勧めの変化を紹介します。

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3 e6 5.Nbd2 c5!?

 

 

 

この黒の5手目は私が長らく指したいと思いながら、なかなか機会に恵まれなかった手です。黒は早くにc6-c5とポーンをつき直しているため、一見すると手損のようです。このアイディアを理解していただくためにはQueen’s Gambit Semi-Taraschについて説明する必要があります。

 

1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 c5!?

 


 

これをQueen’s Gambit Tarrasch Variation と呼びます。黒は早い段階で白のセンターを崩しにいき、IQPを抱えながらも、アクティヴなピースでバランスを取ります。

 

4.e3!?

 

自分としては白は4.cxd5 exd5 5.Nf3 Nf6 6.g3 Nc6 7.Bg2 Be7 8.0-0 0-0 9.Bg5 と指してd5のポーンをフィアンケットビショップで長期的に狙うべきだと思います。

 

4…Nf6 5.Nf3 Nc6

 

このように白がフィアンケットを組まないのがSemi-Tarraschです。白がいずれセンターを捌いた際にはd5IQPが残りますが、黒としてはd5への圧力がゆるい分、Tarraschのメインに比べて指しやすいのではないか、というのが私の持論です。この辺りは実際にTarraschを指す塩見さんに伺ってみたいですね。さきほどのSlavのラインでc6-c5とつき直すのは、一手遅れても構わないのでこのSemi-Tarraschのようなストラクチャーにしようとのアイディアなのです。では5…c5に戻ります。

 

 

 

さらにここでは白のナイトがd2にいます。これはSemi-Slav Meranを外そうというアイディアでしたが、d5への圧力がより薄くなっています。このことも黒がc6-c5とつき直すアイディアを正当化していると言えるでしょう。

 

6.dxc5!?

 

白はd4に圧力をかけられているため、e4をつき直すアイディアは使えません。そうなると黒マスビショップはb2に配置するのが自然です。もう少しセンターのテンションを残しておきたい場合は、6.b3 Nc6 7.Bb2 と組むべきでしょう。6…Bxc5 7.a3 0-0 8.Bd3 b6 9.b4 Be7 10.Bb2 Bb7 11.0–0 Nbd7 12.cxd5 Nxd5 13.Qb1 h6 14.Rc1 Bf6 15.Nc4 Qe7= Predojevic,B (2615) - Adly,A (2586) 38th Olympiad Dresden GER (9), 22.11.2008

 

以上で1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3 e6 の紹介を終わりにしたいと思います。私は現在5.Nbd2と並ぶもう1つのMeran外し、5.b3を研究していますが、そちらの説明は割愛させていただきます。興味のある方はKojima-Li Hanbinの解説が過去の記事から見られますので、そちらをご覧ください。


Slav Defenceの世界-part3- by 小島慎也

今回は白としてSlavのメインを外す手順の1つを紹介します。Slavのメインとは1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3の形のことであり、そこからClassical Slav, Semi-Slav, そしてChameleon Slav 3種が代表的な変化であることを前回書きました。これらのメインを外す手順も多数存在し、Exchange Variation (1.d4 d5 2.c4 c6 3.cxd5)は特に有名だと思いますが、ここでは詳しい説明は省きます。最初に紹介するメイン外しは1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3!? で、part3は丸々これに費やそうと思います。

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3!?

 

 


この白の
4手目は、一見するとビショップのダイアゴナルをすぐに閉じてしまうため、損な手に見えます。しかし前回見てきたようにClassical Slavを黒が選択すると、白はc4のポーンを取り返すのに一工夫必要になります。その手間を省くため、つまりClassical Slavを避けるためにこの手順が生み出された、と考えられます。確かにc4をすぐに守ってしまえば黒はClassicalのアイディアが使えないので、Classicalをメインで使うSlavプレーヤーには、この手順への別の対策が必要です。

 

4…e6

 

3.Nc3, 4.e3に最も多く指されているのが4…e6です。白の次の手は自然に考えればそんなに多くありません。

 

5.Nf3

 

これでSemi-SlavMeran型になりました。Meranに関しては前回少ししか説明していないので、いくらか補足をします。

 

5…Nbd7 6.Bd3 dxc4 7.Bxc4

 

これがSemi-Slav Meranと呼ばれる変化です。前回Semi-Slavを紹介する際に例として出した変化はこれを避けるAnti-Meran(6.Qc2 Bd6 7.Be2 or 7.Bd3) でした。いずれにせよSemi-Slavの代表的な変化であり、Semi-Slavプレーヤーにとっては1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3!? Meran型になるだけで特別、対策の必要な手順ではない、と言えると思います。逆に白としては、この手順を使う意図は、「Classical Slavは避けたいがSemi-SlavならMeran型で迎え撃ってやるぞ」ということです。Meranの変化についてはもうすこし詳しく扱いたいですが、別の機会にします。では次は私の棋譜を交えてもう1つの4.e3 対策を紹介します。

 

 

Nakamura Naohiro

Kojima Shinya

慶応チェスクラブ日吉トレーニング

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3 a6!?

 

もう1つの対策とはChameleon Slavにすることです。白がこのムーヴオーダーの時だけChameleon SlavにするSlavプレーヤーは多数存在します。

 

5.Nf3 b5

 


 

6.b3

 

c4のポーンを守ると同時に、黒マスビショップをb2に組むことができるため自然な手だと言えます。6.b36.cxd5も有力なので2つ試合を紹介します。

 

6.c5 Nbd7 7.Bd2 a5 8.a3 Qc7 9. Rc1!? e5 10.dxe5 Nxe5 11.Nxe5 Qxe5 12.Nxb5!! (強力なピースサクリファイスです) 12…cxb5 13.Bxb5+ Ke7 ( 13…Bd7 14.c6 )14.Bc3 Qg5 15.0-0 h5 16.f4! Qf5 17.Bxf6+ Kxf6 (17…Qxf6 18.Qxd5, 17…gxf6 18.e4! )18.Qd4+ Ke7 19.e4 Qf6 20.Qxd5 Rb8 21.Rfd1 Bg4 22.f5! 1-0  Cmilyte,VRasmussen,C, 2009, 47th Xtra Con TCh-DEN,

 

6.cxd5!? cxd5 7.Bd3 Bg4!? (7…e6) 8.Bd2 Nc6 9.Rc1 Rc8 10.a4 b4 11.Ne2 Bxf3 12.gxf3 Qb6= Laxman,RKojima,S, 2009, Thailand Open Chess Championship

 

6…Bg4 7.h3!?

 

白はより安定したポジションを目指すならば、7.Be2 e6 8.0-0 Nbd7 9.h3 Bh5

10.Bb2 Bd611.Ne5 Bxe2 12.Nxe2 Qc7 13.cxd5 cxd5 14.Rc1 Qb8 15.Nxd7 Nxd7 16.e4! dxe4 17.d5! と指すべきだと思います。この一時的なポーン捨ては2003年にSasikiranが考案し、白が高い勝率を誇っています。近年は対抗策として9.h3 Bf5!? 15.Nxd7 Kxd7!? が指されています。

 

7…Bxf3 8.Qxf3!?

 

次の黒の手を知らなければクイーンで取り返すのが自然だと考えるでしょう。

私としては8.gxf3 Nbd7 9.f4 e6= のほうが厄介です。

 

8…e5!?

 


 

9.cxd5?!

 

この手が悪い理由は以下のラインと本譜を見ていただければわかると思います。

白は 9.dxe5 Bb4 10.Bd2 Bxc3 11.Bxc3 Ne4 12.Bb4 bxc4 13.Bxc4 と指すべきです。

 

9…cxd5 10.dxe5 Bb4 11.Bd2 Bxc3 12.Bxc3 Ne4

 

Qa5+はメイトまでいってしまうので、黒マスビショップがd2-a5のダイアゴナルを離れられないことがポイントです。

 

13.e6!? Ra7! 14.Bb4

 

14.Rc1? Nxc3 15.Rxc3 Qa5 16.Kd2 Rc7 17.exf7+ Kf8 は駄目です。14.Qg4!? fxe6 15.Rc1ならば白は指せそうです。

 

14…Nc6!

 

c6のマスが空き、この手が指せることが上記のラインとの一番大きな違いだといえるでしょう。黒マスビショップはもう逃げ場がありません。

 

15.a3?

 

ここは難しい判断ですが、15.Bd3! Nxb4 16.Bxe4 0-0! (16…dxe4 17.Qxe4 a5 18.Rd1∞)17.Bb1 fxe6 とすれば黒がやや指しやすそうですが、まだ白にもチャンスがありました。

 

15…Nxb4 16.axb4 0-0

 

 


焦らずキャスリングをすれば、すでに黒の勝勢です。

 

17.Bd3 fxe6 18.Qh5 Rf5 19.Qg4 Nxf2 20.Bxf5 Nxg4 21.Bxe6+ Kh8 22.hxg4? Qf6 0-1

 

 

今回、1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3 の紹介のつもりでしたが、お見せした試合はChameleon Slavのメインラインの1つでした。1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3の手順には、固有の変化があまりないのが特徴だといえます。白はSemi-Slav MeranChameleon Slavの中から自分の好きな変化を選んで準備しておくだけでよいので、1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 Nf6 4.e3 は手間のかからないSlav対策だと言えるでしょう。逆に黒はClassical Slavをメインで扱うつもりなら対策は必須です。また、Semi-Slav メインで指す人もMeranに自信が持てないならばChameleonを調べてみると指し方の幅が広がるので良いと思います。もちろん逆もまたりです。


Slav Defenceの世界-part2- by 小島慎也

Classical Slav

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 dxc4

 


このタイミングで
c4のポーンを取ります。古くは元世界チャンピオンVasilly Smyslovが愛用した定跡で、現在でも根強い人気があります。

 

5.a4

 

黒がb5を突いてc4を守ることを防ぎ、安全にc4を取り返そうという狙いです。

 

5…Bf5

 

黒はeポーンを動かさなかったことにより、白マスビショップをアクティブに使うことができます。c4を取ったのは白のQb3を防ぎ、安全に白マスビショップを展開するためでした。ここから2つの変化を紹介します。

 

a) 6.e3 e6 7.Bxc4 Bb4

 

白はポーンを無事に取り返しましたが、代わりに黒マスビショップをポーンストラクチャーの内側に閉じ込めてしまいました。そこで将来的にe3-e4を狙いたいですが、それを牽制するのがBb4です。白が5.a4と指したことによりb4のマスが弱まっていることがポイントです。ちなみに白が白マスビショップでポーンを取り返すこの変化をSlav Dutchと呼びます。

 

8.0-0 Nbd7 9.Qe2 Bg6 10.e4!? 0-0

 

10…Bxc3 11.bxc3 Nxe4 12.Ba3 はキングがセンターに縛りつけられるため、ポーンの代償があると言われています。

 

11.Bd3

 

e4のポーンを守るため、ビショップを退きます。次にもう1つのc4を取り返す方法を紹介しましょう。

 
 

b) 6.Ne5!?



今度はナイトでポーンを取り返しにいきます。同じピースを序盤に何度も動かすのは損に見えますが、黒マスビショップを閉じ込めないための工夫です。

 

6…Nbd7

 

6…e6 7.f3 Bb4 8.e4 Bxe4 9.fxe4 Nxe4 10.Bd2 Qxd4とピースを捨てるラインも興味深いと思います。

 

7.Nxc4 Qc7 8.g3 e5 9.dxe5 Nxe5 10.Bf4 Nfd7 11.Bg2 g5!?

 

11…f6に代わり人気の高まってきた手です。c4のナイトが落ちるため12.Bxg5は不可能です。

 

12.Ne3!? gxf4 13.Nxf5 0-0-0

 

この変化は2000年頃に開発された非常に歴史の浅いラインです。Slav Dutchよりも激しい応酬になることが多く、白で勝ちを目指すならば指してみても良いでしょう。

 

Semi-Slav

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 e6



次に紹介するのがこちらの
Semi-Slavです。黒が早い段階で自身の白マスビショップを閉じこめてしまうのが特徴です。その狙いは黒マスビショップをb4に素早く出せるようにすることで、dxc4-b5-Bb4の流れでポーンを掠め取ってしまうことにあり、ここでの白の方針は大きく分けて2つ、c4を守るか守らないかです。ここからの変化も代表的なものを2つ紹介します。

 

a) 5.e3

 

c4を守る最も自然な手だといえます。しかしSlav Dutchと同様に黒マスビショップを後々どう使うか、という課題が白には残ります。

 

5…Nbd7 6.Qc2 Bd6 7.Be2

 

混乱した局面を好むならば7.g4!?も面白いでしょう。

 

7…0-0 8.0-0

 

Semi-Slavの中ではおとなしい変化で、Anti-Meran Variationと呼びます。

 

8…dxc4 9.Bxc4 a6 10.Rd1 b5 11.Be2 Qc7 12.e4 e5

 

白はゆっくりe4をついて黒マスビショップのダイアゴナルを開き、黒も同様にセンターで応酬します。次の変化は非常に複雑です。

  

b) 5.Bg5

 

c4を取らせても黒マスビショップをアクティブに使おうというアイディアです。

 

5….h6

 

黒がおとなしい変化を選ぶならば5…Nbd75…Be7Queen’s Gambit Declined にするでしょう。また、h6をはさまずに5…dxc4とポーンを取るBotvinik Variation90年代に大流行しました。

 

6.Bh4 dxc4 7.e4 g5 8.Bg3 b5

 

白はポーンを捨てましたがセンターを支配している上、ピースの展開も早いです。これがSemi-Slavの中では最も激しい変化の1つとされるAnti-Moscow Variationです。

 

9.Be2 Bb7 10.0-0 Nbd7 11.Ne5

 

Semi-Slavは現在Slavの中でも最も人気があり、特にこのAnti-Moscowなどは新しいアイディアが続々と出ています。どちらの色を持つにせよ、Semi-Slavを指したいならば、しっかりと勉強をして試合に臨む必要があると思います。

 

Chameleon Slav

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6!?



今回
3つ目に紹介するのがこちらです。Chebanenko Slav, もしくは単にa6 Slavとも呼ばれます。a6をつく狙いはb5をつく準備であると共に、白マスビショップのダイアゴナルを開いたままにすることで、白の出方を窺っている、と考えられます。私はこの変化についてあまり詳しくないので、あっさりと紹介しいたいと思います。

 

5.c5

 

他のSlavQueen’s Gambit Declinedでは、白から早期にc5とつくことはあまりありません。それは黒がb6をついて崩しにいき、cxb6-axb6と進む形が黒にとって好形だからです。しかしChameleon Slavのような黒がa6をついた変化では黒はb6をついた後、ポーンで取り返すことができないため、白はc5突きが有効になるのです。加えて白からNa4-Nb6b6のマスに侵入する可能性も作れます。

 

5…Nbd7 6.Bf4 Nh5 7.e3!?

 

このようにナイトでビショップが狙われた際に、ビショップを退かずポーンで守るアイディアは時々見られます。もし黒からビショップを取るようであれば、白は強力なe5のマスとオープンファイルを得ることができます。

 

7…g6

 

通常Slavでは黒マスビショップを置くのに適したd6のマスが今は使えないため、黒はフィアンケットを組みます。

 

8.Bd3 Bg7 9.0-0 0-0

 

Chameleon Slavの最大の特徴は、どこかでa6をつけばその変化になる、という点だと思います。次回から説明する白がSlavのメインを外す手筋( 3.Nf3,4.e33.Nc3,4.e3 ) にも対応しやすく、勉強する側としてはありがたいことです。ただChameleon Slavも現在非常に人気が高く、新しいアイディアが出続けています。最新の棋譜を調べて多くのアイディアを吸収すると良いでしょう。

 

以上簡単ではありますが、代表的なSlavの変化を3つ紹介しました。d4プレーヤーにとってはこれらのメインラインを受けるにしろ避けるにしろ、それぞれの変化の背景にあるアイディアを理解しておくことが大切だと思います。黒として指す場合もどの変化にするかを、好きなGMが使うから、といった理由で安易に選ばず、簡単で良いのでそれぞれの変化の特徴を調べ、自分がどういった指し方をしたいのかを考えて選ぶとよいでしょう。参考までに私は長らくSemi-Slavを指していましたが、現在はClassical Slavを勉強しています。次回は私の棋譜を交えながら、Slavのメイン外しを紹介したいと思います。


Slav Defenceの世界-part1- by 小島慎也

皆さん、d4対策には何を使っているでしょうか。私もd4にはずいぶん悩まされ、多くのGMの試合を調べては色々な定跡を試してきました。そしてこの数年間はSlav Defence(面倒なので以下、Slavと呼びます)の魅力に取り付かれ、これを指し続けています。Slav は近年世界的な流行を見せ、どこに行ってもSlavの試合を見かけます。例えば中国の現在のトップGMたち、Wang Yue,Ni Hua,Bu Xiangzhi,Wang Haoは全員Slavをメインで使っており、チームを組んでSlavの研究をしていることはまず間違いありません。中国では若いプレーヤーもそれを見習ってSlavを研究しているようです。

 

このたびは馬場さんに連載する許可をいただき、何回かに分けてSlavの紹介をしたいと思います。d4対策としてSlavを指している人や指してみたい人、自分がd4を指しSlav対策を考えたい人、さらにはそもそもSlavって何?という人まで、多くの人にとって読んで損のない記事にしたいと考えています。お付き合いよろしくお願いします。

 

 

Slavの基本形

 

まずはSlavを全く知らない人にもわかるよう説明したいと思います。

 

1.d4 d5 2.c4 c6

 


 

これがSlavの基本形です。黒はd5cポーンで支えており、白マスビショップをポーンストラクチャーの外で使う可能性を残していることが、2…e6いわゆるQueen’s Gambit Declinedと異なる点だといえるでしょう。

 

ここから白黒両者の変化を全て挙げているときりがありません。そこでもう2手ほど局面を進め、そこから黒の代表的な変化3つを挙げて、説明を広げていこうと思います。

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3


 

 

それがこちらの局面です。白としてSlavに対するメインの受け、と言えるでしょう。私は白でもSlavの試合を指しますが、実を言えばこの局面にはしません。しかしSlavを理解するためにはここからの黒の変化を説明することが必要不可欠ですので、私と同様この局面にしないd4プレーヤーの方もしばらくお付き合いください。


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