今回は従来のチェスオリンピアード代表選考方法の問題点について見ていきたいと思います。
まず、オリンピアード代表は、長い間JCAの「チェスオリンピックゾーン選手権等 海外派遣選手(団)に関する規程(1979.10制定 1994.9修正)」に則り、以下のような優先順位で選考されていました。
1.全日本チャンピオン
2.全日本選手権2−4位
3.ジャパンオープンチャンピオン及び2位
4.全日本選手権勝率55%以上
5.被推薦者
ここで、この選考方法では何が問題か、以前からの私の考えとあわせて次にまとめてみました。
選考大会が2つだけの一発(二発)勝負
選考大会は全日本選手権とジャパンオープンの2つであり、代表に選考されるにはこの2つの大会で成績を残すしかありませんでした。しかし、全日本選手権はともかく、ジャパンオープンは年によって持ち時間とラウンド数が変わり、近年は6Rという年も出てきました。6Rという短いラウンド数の大会での一発勝負で代表が決まってしまうことには疑問を隠せません。
さらに、全日本選手権の比重が重すぎて、繰り下がりで4のように全日本選手権で勝率55%以上、言ってみればかろうじて勝ち越しのプレーヤーまで権利を繰り下げるのは、言葉は悪いですが、人数合わせの感がありました。
選考大会が東京開催のみ
選考大会はすべて東京での大会です。私はずっと東京にいたのであまり感じていませんでしたが、東京以外に住んでいるプレーヤーにとって、これらの大会にコンスタントに出ることは容易ではありません。(私もいま、海外にいてようやくそう感じるようになりました。)日本チェス界のマネージメントは、ずっと東京一極集中であり、広く各地から代表となるべくプレーヤーを選出できていたかは分かりません。
選考基準にレイティングが一切加味されていない
選考方法にはレイティングが一切入っていません。レイティングはプレーヤーの強さを反映する指標で、客観的な唯一の指標と言っても良いものです。
確かに、FIDEレイティングは、今となってはほとんど下限がありませんが、2200以上でないとつかない時代がありました。一般的にFIDEレイティングはマスターレベルのプレーヤーにのみ授与される、特別な数字だったのです。しかし、日本ではこのラインを超えるプレーヤーはごくわずかで、FIDEレイティングを選考基準に入れると代表の数を揃えられない事態にない可能性があったので、FIDEレイティングは選考基準から排除されてきたと考えられます。
それならば、国内レイティングはどうだったでしょうか?国内レイティングは多くのプレーヤーが持っていたはずであり、国内レイティングを選考基準に入れても問題なかったはずです。
規定が時代に合わせて見直されてこなかった
1979年(40年前!)に制定された規程を、時代に合わせて見直し・修正を図ってこなかったのが一番の問題で、だからこそ今回、声を上げて見直しを図ろうとしています。(オリンピアードの規定は1994年に一度修正したかは分かりません)
実際にすでに問題となりそうな点として、次のことが挙げられます。
2008年のDresden Olympiadより、Openの代表枠は6から5に減らされましたが、規定は改定されず、1〜3で重複する者がいなければ6人選出されてしまうことになります。
以上が私の考える問題点です。
次回は具体的な見直し案について考えていきたいと思います。