今回のIVLは、4月初旬にPaulが来日するということで、そのタイミングに合わせて開催されました。昨年5月以来の開催と、少し間が空いたため、首を長くして開催を待っていた多くのトッププレーヤーが表参道に集いました。
Paulとの再会は実に8年ぶりで、前回、2009年にPaulが日本にいた時には当たらなかったので、今回のゲームが初めての対戦となりました。私自身、このゲームを非常に楽しみにしていました。
□Baba,Masahiro (2389)
■Iinuma,Paul (2190)
IV League 2017(3)
1.e4 d6
[Pirc? 私はSicilianを予測していたので初手から驚きです。]
2.d4 Nf6 3.Nc3 e5
[Philidor! データベースを調べた限り、PaulがPhilidorを指したことは無かったはずなので、さらなる驚きです。]
4.Nf3
[4.dxe5 dxe5 5.Qxd8+ Kxd8はさほど問題なく黒はイコアライズできます。]
4...Nbd7 5.Bc4 Be7
6.0–0
[ここは6.Bxf7+の誘惑に駆られますが、6...Kxf7 7.Ng5+ Kg8 8.Ne6 Qe8 9.Nxc7 Qg6は黒の望む展開です。]
6...0–0 7.h3 c6 8.a4 b6 9.Qe2 Bb7 10.Rd1
[Philidorを調べていると、本譜のQe2-Rd1のセットアップは、自然な9.Re1セットアップより攻撃的ということが分かりました。d4をルークで支え、Nh4→Nf5を目指します。]
10...Qc7 11.Nh4 Rfe8 12.Nf5 Bf8?
[この自然な1手が白の隠されたタクティクスを成立させるとは、にわかには信じがたいです。]
13.Bxf7+!!
[スペクタクルムーブ!私はこのアイディアを知っていましたが、実戦で遂行するとなると、少しの読みと駒を捨てる勇気が必要です。]
13...Kxf7 14.Qc4+ Re6
[14...Kg6? 15.Nh4+ Kh5 16.Qe2+! Kxh4 17.Kh2! は次の手でメイトです。
ANALYSIS DIAGRAM
これは盤上できちんと読み切りました。
また、14...d5 15.exd5 b5 16.Nxb5! (16.axb5? Nb6!) も白勝ちです。]
15.d5 Ree8?!
[おそらく黒は15...Nc5 16.dxe6+ Nxe6 17.Be3±とエクスチェンジダウンで戦うしかなかったと思います。]
16.Nb5!
[Paulはこの手を見落としていました。cファイルのピンを最大限に利用します。]
16...Ba6 17.dxc6+ d5 18.Rxd5!
[dファイルを食い破ります。18.exd5 Bxb5 19.axb5 Bd6 20.Nxd6+ Qxd6 21.cxd7 Qxd7なら、黒はかろうじて耐えています。]
18...Re6
[18...Nxd5 19.Qxd5++-; 18...Bxb5 19.Rxd7+ Kg6 20.Qf7#]
19.Rxd7+! Nxd7
20.Qxe6+!
[白の一連の手はさほど見つけるのが難しいわけではありませんが、正確で勢いがあると思います。]
20...Kxe6 21.Nxc7+ Kf7 22.cxd7
[ナイトフォークを残し、最終的には白の2ピースアップとなります。]
22...Rd8 23.Nxa6 Rxd7 24.Be3 1–0