North American Open 2011

WRITTEN BY

Yoshimura Kenji

 

 


早くも昨年のことになりますが、
1226日から29日にかけてラスベガスのBally’s Hotelで行われたNorth American Openに参加してきました。私として初の海外遠征で、小島君と唐堂君とともに日本から参戦しました。また、2009年の全日本選手権にも出場していた飯沼ポールさんもハワイから参加していました。大会を通して私が感じたことを簡単にではありますが、振り返りたいと思います。

 

North American Openに参加して、まず驚いたのはその規模の大きさでした。日本の大会では参加者が全体で100人に届くことは稀だと思いますが、North American Openでは7つあるレーティング別のセクションで、それぞれ参加者が100人をゆうに超えていました。アメリカではチェスをやっている人がこれだけいることにびっくりしました。幅広い年齢層、人種の人が集まっていて、日本の大会では味わえない雰囲気があり、いつか日本の大会でもこれくらい人を集められたらなと思いました。


 

今回のそれぞれのエントリーセクションは、

 

Open:小島君

U2300:飯沼さん、吉村

U2100:唐堂君

 

でした。私は今回の大会ではせっかく海外まで来ているので、FIDE戦をしてFIDEレートをつけたいと思い、少し背伸びをしてU2300のクラスに参加しました。

 

4日で7ラウンドをこなすスケジュールでしたので、1日目は夕方の1試合のみでしたが、2日目から4日目までは、午前に1試合、夕方に1試合でした。タイムコントロールは40120+60分(Delay(時間が減りはじめるまで)5秒)とあまり慣れないものでした。(これが後で悲劇を生むとは思いませんでした。)

 

そのため、時間はたっぷりあったのですが、夕方の試合が18:00と遅くから始まることもあり、終わるのは12時近くになるケースがほとんどでした。会場と泊っているホテルが一緒であることもあり、おきる→プレパレーション→試合→検討→試合→検討→プレパレーション→寝る、と大会中の4日間は寝ている時間以外はほとんどチェスをしていました。こういう贅沢な時間の使い方は日本ではなかなかできないので、とても新鮮でした!

 

自分のゲームの中からひとつだけ紹介したいと思います。

 

Williams John R. (USCF 2135)

Yoshimura Kenji (UR)

 

1.e4 e6 2.a3?! d5 3.e5 c5 4.b4


フレンチのマイナーなサイドラインになりました。



 

4...Nc6 5.Nf3 Qc7 6.bxc5 Bxc5?!

 

間違いで正しくは、6...Nxe5 7.d4? Nxf3+ 8.Qxf3 Bxc5!

 

7.d4 Be7 8.Bd3 f6 9.Bf4 f5?

 

[9...g5 10.Bg3 g4 11.exf6 Qa5+ 12.Nfd2 Nxf6=]

 

10.0–0 Na5 11.Qc1 h6 12.h4 g6 13.Re1 Bd7 14.Bd2 Rc8 15.Bb4? Nb3 16.Qb2 Nxa1 17.Bd6 Qb6 18.Qxa1 Bxd6 19.exd6 Qxd6 20.h5 Ne7 21.hxg6 Rg8 22.Nh4 Kd8 23.Qb2 Rc7 24.Qc1 Nxg6 25.Qxh6 Nxh4 26.Qxh4+ Kc8

 

ここらへんから両者とも時間切迫になりました。日本での試合は1手ごとに持ち時間が増えるタイムコントロールの試合が多いのですが、今回は40手までは時間が一切増えないので、時間配分が大変難しかったです。この時点で双方とも5分もなかったと思います。

 

27.Re5 Kb8 28.Qf4 Rcc8 29.Nd2 Rg4 30.Qe3 Rcg8 31.Bf1 a6 32.Nf3 Ka8 33.Nh2 R4g6 34.g3 Rh8 35.Bg2 Bc8 36.Nf3 Rhg8 37.Qd3 R6g7 38.Nh4

 

ここで対戦相手の持ち時間がなくなり黒が勝つはずでした。ただ、対局時計でなれない時間設定をしていたため、時間切れかどうかよくわからず焦っているうちに、40手の後で追加されるはずの60分が、なぜか持ち時間に追加されてしまいました。

 

ちょうど唐堂君も見ていたところだったので、ここでアービターを呼び、40手に到達していないにもかかわらず、持ち時間が追加されてしまった、本当だったら時間切れのはずだと指摘しました。アービターは棋譜を見せてくれと言い、一手一手並べていき、本当に40手に到達していないかどうかを確認すると言いました。

 

ところが、この際私の取っている棋譜がきたなすぎて、また時間切迫に伴い記入の間違えが多すぎるため、無効であると判断されてしまい、申し立ても無効になり、時間切れは認められないという結論になりました。後でアービターに教えてもらったのですが、棋譜は3手以上間違えていると棋譜として認められないというルールがあるみたいです。

 

38...Rg4

 

棋譜が無効になってしまったため、この局面で仕切り直しになりました。


 

 

39.Nf3 R4g7 40.Qd2 Qxa3 41.Re1 Qa4 42.Ne5 Rc7 43.c3 Qa3 44.Rc1 Ka7 45.Bf1 f4 46.g4 Qf8 47.f3 Qh6 48.Ra1 Rh8 49.Bg2 Qh2+ 50.Kf1 Rch7 51.Ng6 Qh1+! 0–1


 

 

途中でハプニングがありましたが、最後は無事に勝ちきることができて本当に安心しました。今度から棋譜を正確に取るように気をつけたいと思います。

 

トーナメントを通しての結果は、133敗で2.5/7ポイントでした。なかなか勝つチャンスをつかむことができず、厳しい結果に終わりましたが、どの試合も大変勉強になり楽しむことができました。

 

また、今回の海外遠征で思ったのですが、海外大会への参加というような目標があると、チェスに対するモチベーションを非常に高く保つことができます。大会前の3ヶ月間は毎週のように小島君にトレーニングをお願いしておりましたし、働く合間をぬってできる限りチェスに打ち込むようにしておりました。私事になりますが、今年一年はこのまま高いモチベーションで勉強し続けられたらな、と考えております。

 

最後になりますが、2012年のNorth American Openも予定が合わない限りは参加して、昨年のリベンジをしたいと考えております!



 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


Tata Steel 2012 -Not much more than a bluff-

R.10ではAronianGiriに勝ったゲームが、R.11ではCarlsenTopalovを打ち破ったゲームがトップ記事となりました。特にCarlsen-Topalov戦は、Carlsenの勝負をかけた1戦でした。というのは、CarlsenR.9Karjakinに負け、Aronianに差をつけられてしまったところだったため、追いつくには白番でのこのゲームで勝つしかなかったためです。

 

中盤で大きくマテリアルを捨て、複雑な展開にし、主導権を握り続けて相手のミスを誘い、チャンスをものにするスタイルは、まさにTalのスタイルを彷彿させました。勝たなければいけないところで最もチャンスのある指し方をし、最終的に勝ち星を手にするのは世界No.1である証拠だと思います。

 

R.11終了時点でAronianがまだ0.5Pのリードを保っていますが、Carlsenがいつでもリーダーを捕まえられるポジションにまで来ました。残り2RAronianがこのまま突っ走って優勝するか、Carlsenが追いついて2人同時優勝となるか、それとも….


Ikeda Junta -Scoring his first IM norm-

池田惇多くんが、ニュージーランドのオープントーナメントでIMノームを獲得しました。レイティングも20弱獲得し、2400も間近です。年内にあと2IMノームを獲得し、IMとなるのではないでしょうか? 今後の彼の活躍から目が離せません。


Tata Steel 2012 -Carlsen and Aronian lead-

Tata Steel 2012は現在7R終わってCarlsenAronian5Pで共にリード。ほぼ予想された結果です。一方、今年Anandとのマッチを控えているGelfandはここまでですでに3敗。そのうち白で2敗しています。マッチのためにどの程度、研究ラインを隠しているかは分かりませんが、調子はいま一つです。

 

本日、R.8は日本時間21:30開始。Live Gameの観戦は寝不足にならぬよう、ほどほどにしておきます。


Fighting Chess with Magnus Carlsen

評価:
Adrian Mikhalchishin,Oleg Stetsko
Edition Olms
¥ 2,337
(2012-02)

今年もWijk aan Zeeでのトーナメントが始まりました。初日は最近の勢いの通り、CarlsenAronianGiri3名が勝ち星を手にしました。長いトーナメントなのでまだ先は分からないですが、AグループはCarlsenAronianのレースになると見られています。

 

最近、これまでのCarlsenのチェスプレーヤーとしての軌跡をまとめたFighting Chess with Magnus Carlsenという本が発売されました。著者はCarlsen本人ではなく、トレーナーとして有名なウクライナのGM Mikhalchishin+アシスタントとしてStetsko)です。そのため、本書はこれまでのCarlsenについて書かれた数多くの雑誌、web等の記事から抜粋したものをつなぎ合わせたような客観的な内容に仕上がっています。基本的にはゲーム集であり、全63ゲームが収録されています。普段からチェスニュースを追いかけている私にとっては、9割方のゲームは知っていましたし、特に新しい発見はありませんでしたが、1冊にまとまっているのは便利だなと思いました。

 

Wijk aan Zeeのトーナメントが始まったということで、今日はCarlsenの鮮烈なWijk aan Zeeデビューであった2004年のトーナメントから1ゲーム紹介します。当時はまだCグループでしたが、10.5/13Rで優勝。

 

Carlsen,Magnus (2484)

Ernst,Sipke (2474)

Corus-C Wijk aan Zee 2004 (12)

 

1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nc3 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.h4 h6 7.Nf3 Nd7 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 e6 11.Bf4 Ngf6 12.0–0–0 Be7 13.Ne4 Qa5 14.Kb1 0–0 15.Nxf6+ Nxf6 16.Ne5 Rad8 17.Qe2 c5 18.Ng6! fxg6 19.Qxe6+ Kh8 20.hxg6! Ng8




21.Bxh6! gxh6 22.Rxh6+! Nxh6 23.Qxe7 Nf7 24.gxf7 Kg7 25.Rd3 Rd6 26.Rg3+ Rg6 27.Qe5+ Kxf7 28.Qf5+ Rf6 29.Qd7#
[Wijk aan Zee のトーナメントでは、毎日1ゲーム、投票でベストゲームが選ばれますが、このゲームはABグループの他のゲームを押し退け、Prizeを獲得しました。]


Cappelle la Grande 2012 -Invited Players-

いろいろありましたが、招待選手は以下の4名に決定しました。(括弧内の数字はFIDEレイティング)

 

南條 遼介 Nanjo Ryosuke 2280

野口 恒治 Noguchi Koji 2040

中村尚広 Nakamura Naohiro 2000

篠田 太郎 Shinoda Taro 1906

 

4名ともFIDEレイティング保持者であり、普段からアクティブにプレーしていますので、特に異論はないかと思います。今回は彼らの活躍に期待したいと思います!

 

なお、現在はオーガナイザーの返信待ちです。


松戸チェスクラブ選手権2012 -小島 慎也-

大会は小島くんの6連勝で終わりました。

 

私は初日のみの参加で21敗。毎度のことですが、新年早々、若手に苦杯を喫しました。

 

Tang Tang (1885)

Baba Masahiro (2232)

松戸チェスクラブ選手権2012 (2)

 

1.d4 Nf6 2.Bg5 e6 3.e3 c5 4.c3 d5 5.Bd3 Nbd7 6.f4 Bd6 7.Nf3 Qb6 8.Qc2 0–0 9.Bxf6 Nxf6 10.Ne5 Ne4? 11.Bxe4 dxe4 12.Nc4 [完全に見落としていました。] 12...Qc6 13.Nxd6 Qxd6 14.Qxe4 Qa6 [実戦的にはおそらくベストなチャンス。白にキャスリングされては単なる1ポーンダウンです!]



 

15.Nd2 Bd7 16.Nf3?! Bc6 17.Qc2 Bxf3 18.gxf3 cxd4 19.exd4 Rfd8 [白のポーンの形を崩し、これでまずまずのコンペンセーションはあると考えていました。] 20.Qe2 Qa5 21.0–0 Rd5 22.Kh1 Rf5 23.Qe3 Qc7 24.Rg1 Rxf4 25.Rg4 [1回目のドローオファー。局面はイコールですが、ポーンを取り返した黒に不満はないので、もちろん指し続けます。ここからの20手は我慢比べです。]




25…Rxg4 26.fxg4 Qc6+ 27.Kg1 Qd5 28.Rf1 Rf8 29.Qf3 Qb5 30.Rf2 Qd7 31.h4 Rc8 32.h5 h6 33.Qf4 f6 34.Qe4
[2回目のドローオファー。] 34…Rc6 35.Qg6 Qe7 36.Qe4 Rd6 37.Rf5 Qd7 38.Rf2 Rd5 39.Re2 Rd6 40.Rf2 Kh8 41.Re2 Qb5 42.Kg2 Qc4 43.Rf2 Qc7 44.Qg6 Qc6+ 45.Kg3 Rd5 46.Qe4 Qd6+ 47.Qf4




48…e5!
[時間切迫と戦いながら、ようやくこのタイミングで長く待ち望んでいたブレークです。不安定な白キングを標的にします。] 48.dxe5 Rxe5 49.Kh3 Qd1 50.Qf3 Qe1 51.Kg2 Re4 52.Qf5 Re8 53.Qf3 b6 54.Rf1 Qe6 55.a3 Qc4 56.Kh3 Qc5 57.Kg2 Kg8 58.Qf5 Re2+ 59.Rf2 Re5 60.Qf3 Qc8 61.Re2 Rxe2+ [おそらくここまでに何らかの改善策があったと思いますが、ほぼ15秒のIncrementでは何も見つけられませんでした。]




62.Qxe2 Kf7 63.Qe4 Qd7 64.Qg6+ Kf8 65.Qe4 Qd2+ 66.Kg3 Qd6+ 67.Qf4 Qd7 68.Qb4+ Ke8 69.Qe4+ Kd8?? 70.Qd4!
[ここで白がクイーン交換できることに気付きました。交換後のポーンエンディングは白勝ちです。]




 

70...Kc7 71.Qxd7+ Kxd7 72.Kf4 Kd6 73.Kf5 Ke7 74.Kg6 Kf8 75.c4! 1–0

 

見返してみれば、2回のドローオファーを蹴って指し続けた結果がこれだったわけです。しかし実際は、唐くんがなかなか砕けなかったことが大きいと思います。これをラスベガスの成果と見ても良いですかね?!

 

P.S. 唐くんは3位入賞を果たしました!


松戸チェスクラブ選手権2012 -前々夜-

1/8-1/9)の2日間で行われます。エントリーは30名を超え、そのうち約半数が1800+であり、一筋縄ではいかないトーナメントになる予感がします。リストには意外な名前もあります(笑)彼にとってはこれが復帰戦です。私は初日のみの参加ですが、簡単に3連勝というわけにはいかなさそうです。

http://brown.ap.teacup.com/chesschesschess/


香港 -The City of "Old and New"-

皆さま、明けましておめでとうございます。

今年もBehind the Sceneともども、よろしくお願いいたします。

 

年末年始を香港で過ごしてきましたので、そちらの写真をどうぞ。
今回は完全に番外編です!


            山頂から香港市街を一望。
        狭い所に高層ビルがひしめきあっています。


            沈みゆく夕日を背にする香港。


   -「100万ドルの夜景」- ライトアップは綿密に計算されています。


    中国銀行。今や香港のランドマークです。


        いたるところで目にする高級高層マンション。
           ちなみに香港の人口は700万人!


            臨海部は埋め立てして開発中。
       中央のビルは見た目の通り、「凱旋門」だそうです。


        看板が道にせり出すこの光景がまさに香港! 
    ですが、これらの看板も再開発とともに消えゆく運命でしょう。







       青空市場の中を突っ切るトラム。香港らしい一場面。


                次々と入ってきます。


     文武廟。1847年に建てられた香港最古の道教寺院。


           天井から吊るされた渦巻型の線香。
          院内は線香の煙が充満していました。


                    昼は飲茶。
かつて、高校の近くに「香港ガーデン」なる中華料理店があったのを思い出します。


              夕食は海鮮レストラン等で。
   注文が入ると、いけすの魚介類を取りだして調理してくれます。


                   カニ料理


               旅の締めくくりは九龍城


かつて魔の巣窟と呼ばれていた九龍城の集合住宅は1993年に取り壊され、現在は市民公園として開放されています。写真はその集合住宅の模型。


ここでも古いマンションの裏には新しいマンションがそびえたっています。


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