Selected Games(58)

ANNOTATED BY

Yamada Kohei

 

Yamada Kohei (2191)

Sasaki Hiroshi (1969)

Team Ch. 2011(2)

 

チーム選手権の2R、シニアチャンピオンの佐々木さんとの一戦です。大会前から楽しみにしていた当たりの一つでした。

 

1.d4

 

昨年のアジア大会が終わった頃から、チェスの幅を広げようと思い、こちらを指すようにしています。

 

1…Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.f3 d5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 b6!?

 

大会前には6…c5を中心に準備していましたが、やや珍しい手が飛んできたので、ここから考えはじめます。

 

7.Bg5

 

7.cxd5 exd5 8.e3 0–0 9.Bd3との比較に迷いましたが、黒がセンターに手をつける前にビショップをポーンの壁の外に出しておきます。

 

7...Bb7 8.e3 h6 9.Bh4 Nbd7 10.Bd3 Qc8?!




ここまで普通の進行だと思いますが、やや意外な一手です。
Ba6c5のサポートですが、クイーンはセンターで使いつつ、早めにルークを連結させる手を考えたいところです。ピンが気になりますが、いずれにせよcxd5に対して…Nxd5とは取りづらいでしょう。10...0–0 11.cxd5 exd5 12.Ne2 c5 13.0–0 Qe7 14.Bf2

 

11.Ne2 0–0 12.0–0 Ba6 13.cxd5!

 

狙いのBa6に対してこれが上手い返しです。もっともこの後のタクティクスを少し読み違えていたのですが…。

 

13…exd5




ゲーム中
13…Bxd3?に対しては14.dxe6? Bxe2 15.exd7 Bxd1?? 16.dxc8=Q Raxc8の局面がピースアップだと思っていたため、それ以上読んでいませんでしたが、今見ると14…Qa6!という手があり困っています。しかし冷静に14.Qxd3と取り返しておけば次のe4突きが強烈なため、白優勢です。e4をつかせてしまうことになりますが、13...Nxd5 14.Qd2 Bxd3 15.Qxd3 c5 16.e4 N5f6 17.Rfd1 Qc6は黒にとって面白い選択の一つだったでしょう。

 

14.Bf5?!

 

すこし考えてダブルビショップを残す手をひねり出します。白が積極的にアドバンテージを取りに行くならすぐに14.e4!でしょう。

 

14...Qb7 15.Qd2 Qc6!?

 

ここは15...Rfe8 16.Rfe1 Bc4かすぐにc5をつくくらいだと思っていたため、この手は少し変に映りました。しかしこのあとQd6からクイーンサイドに狙いをつけるのであれば特に変な手ではありません。白の方はc5とセンターに反撃してくる手が一時的に消えたので、ゆっくりe4を突く準備に入ります。

 

16.Rf2 Rae8 17.Re1 g6 18.Bc2 Kg7?




17...g6
の時から、僕はこの手がブランダーであることを知りつつ、間違いなく来ると思っていました。g6h6の弱点を補強する非常に自然な手です。代わりの手としては18…Bc4からb5a5くらいでしょうが、キング周りの弱点を残しつつ戦うのは容易なことではないでしょう。

 

19.Ng3!

 

20.e4の準備が完全に整いました。19…g520.Nf5があるのがポイントです。

 

19…Ng8 20.e4 Ndf6 21.e5 Nh7 22.f4 f5 23.Nf1 Re6 24.Ne3 Ne7

 

この局面になり白が圧倒的優位にあることが明らかになりましたが、次の一手はひどい手でした。

 

25.Bb3??




これで
d5のポーンが受からないと思いほぼノータイムでしたが、こんな手はありません。25.g4!とこちらに手をつけるのが正解で、こうなればほとんど終わりでした。

 

25...g5!

 

鋭いカウンターです。完全なうっかりに動揺しましたが、まだ白が優勢だったのが幸いでした

 

26.Bg3 gxf4 27.Bxf4 Ng5! 28.Bc2 Rg6?




惜しいことにこの手が敗着になってしまいました。ここは目をつぶって
28…Ne4 29.Bxe4 fxe4とすすめるべきで、白が良いのは間違いないものの具体的な勝ちの手順を見つけるのは簡単ではなくなっています。どう指しても悪いときは、なるべく局面が簡単にならない手を選ぶのも実戦では大事な勝負術です。

 

29.Bxg5!

 

f5の弱点を利用して、白のアドバンテージをもっとわかりやすい形に変換しにいきます。これがあるため、黒はf5の弱点を解消する必要があったのです。

 

29…Rxg5 30.h4! Rg3 31.Nxf5+ Nxf5 32.Bxf5 Qxc3 33.Qxc3 Rxc3 34.e6




駒交換が進んで、白のアドバンテージがパスポーンに姿を変えました。

 

34…Rxa3

 

34…Bb5 35.e7 Rh8! 36.Be6 Be8が最善の手順だと思いますが、37.Bxd5Re4-g4Rf3からのルーク交換が両睨みになっているので、白の優勢は変わりません。

 

35.e7 Re8 36.h5 Bb5 37.Bg6 Rc8 38.e8Q Bxe8 39.Re7+ 1–0

 

最後はきれいにメイト(39…Kg8 40.Bh7+ Kh8 41.Rf8#)でフィニッシュです。

大会はこのあと2日目に龍二さんになんとか勝ち、要君、権田さんに快勝して6戦全勝と2番ボードレーティングトップの意地(?)を見せることが出来ました。10月のジャパンオープン、オランダでのUnive Openに向けて弾みになる大会になりました。


Unive Open 2011



オランダのHoogeveen(ホーヘフェーン)という町で毎年行われているトーナメントに山田弘平くんが単身で乗り込みます。日程は10/14-22で、9Rのスイス式。ちなみにリスト1は今のところTiviakovです。リスト上位には多くのタイトルホルダーが名をそろえています。弘平くんにはぜひこのあたりを沈め、多くのレイティングを日本に持ち帰ってほしいと思います。

 

このオープン・トーナメントと並行して、メイン・イベントであるCrown Groupのトーナメントが行われます。4人のトップGMによるダブルラウンドロビンで、今年の参加者はKramnikPolgarVachier LagraveGiriです。

 

結果等、情報は以下の大会の公式ページから。

 

http://www.univechess.nl/


Selected Games(57)

ANNOTATED BY

Kuwata Susumu


Kuwata Susumu (2127)

Nanjo Ryosuke (2347)

Team Ch. 2011(3)

 

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Qb6!?




World Chess Cup 2011
Polgarが指していたラインです。小島対策として少し試合を調べていました。

 

5.Nb3 e6 6.Be3 Qc7 7.Nc3 Nf6 8.Bd3 Bb4?!

 

狙いはd5ですが、キングサイドの守りが薄くなり、ショートキャスリングしにくくなります。8...Be7が硬い手です。

 

9.f4 e5!?

 

9...d5 10.e5 を嫌った手です。白にe5と指させないことでd3のビショップを働かせません。

 

10.0–0 Bxc3 11.bxc3 d6 12.c4?!

 

12.f5 d5の局面は面白くないと思い、d5を防ぎつつf5を狙うことにしました。しかし、次のNg4を考えるのを忘れていました。

 

12...Ng4 13.Qf3 Nxe3 14.Qxe3 Qb6!?




Q
交換してしまえば、ポーンストラクチャーとビショップの働きの差で黒がよくなります。しかし、白にはQ交換を避ける手があります。

 

15.c5!

 

ワンポーンを捨ててQ交換を避け、f5をつきにいきます。f5-f6を狙うことで黒にキャスリングさせません。

 

15...dxc5 16.f5 Nd4!?

 

ワンポーンアップを守るにはこの手しかありませんが、次の手があるので指されないと思っていました。読んでいた筋は16...c4 とワンポーンを返してでもQ交換する手です。以下、17.Qxb6 axb6 18.Bxc4 Ra4! 19.Nd2 0–0 20.Bb3 Rd4 は黒のルークがアクティブになり、白の指し手が難しい局面です。

 

17.Qg3!




e5
g7のダブルアタックです。受けるには17...Qf6しかありませんが、f6から動けなくなるのでよくありません。

 

17...Nxb3

 

この手を指された瞬間にc4+からピースダウンの筋を読み抜けしていることに気づきました。しかも、この時点で防ぐ手がありません。ひどい読み抜けですが、運良く白には手が残っています。

 

18.axb3?

 

試合後に南條君に指摘されましたが、18.Qxe5+ Kf8 19.f6! で白勝ちでした。

 

18...Qf6

 

18...c4+ 19.Kh1 cxd3 20.Qxg7 Rf8 21.Qxe5+ Kd8 22.Rfd1 Bd7 23.Rxd3 は白にチャンスがあります。

 

19.Bb5+ Bd7 20.Bxd7+ Kxd7 21.Rfd1+ Kc6 22.Rd5 Rhe8??




e5
を守る自然な手に見えますが、これが決定的な敗着となります。22...Rhd8 とぶつけるべきでした。

 

23.Rad1!?

 

Qd3-Rd6+がスレットです。勝つには十分な手ですが、23.Qc3!が正確な手です。以下、23...b6 24.Rad1 Rad8 25.Qd3 Kc7 26.Rd7+ Kc8 27.Qa6+で簡単な白勝ちでした。

 

23...Rad8 24.Qd3

 

Rxd8がスレットです。しかし、Rd6+からQが落ちるのでRが逃げるわけにはいきません。

 

24...Rxd5?

 

24...Kc7 25.Rd7+ Kc8 26.Qd5 Qb6 27.Qxf7

こちらの方が粘れますが、白勝勢に変わりはありません。

 

25.Qxd5+ Kb6




26...Kc7??
27.Qd7+でルークただ落ちです。

 

26.Qd7!

 

Qxe8Rd6+のダブルスレットです。

 

26...Qe7 27.Rd6+ Ka5 28.Qa4# 1–0

 

ボード3Ekaterinaさんが石原君を瞬殺していたため、私が勝ったことでチームの引き分け以上が確定しました。その後ボード2で中村君が佐藤君と引き分け、ボード4で古谷君が大沢さんに負けとなり、チームは2.5-1.5で勝利、貴重な勝ち点1を獲得しました。

 

2日目は、慶應日吉本部が松戸B、松戸A、東大OB3連勝、優勝争いをしていた慶應藤沢支部が東大AAと引き分けたため、単独全勝優勝という完璧な成績で大会を終えることができました。去年、一昨年とかなわなかったチーム戦優勝ですが、在学中にその夢がかなって本当に良かったと思います。

 

長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。


チーム選手権2011 -慶応大学チェスクラブ日吉本部-

18チームによって争われた今年のチーム選手権は、慶応大学チェスクラブ日吉本部(桑田、中村(尚)、Ekterina、古谷)が6戦全勝で優勝したとのことです。日吉本部は同じく慶応大学チェスクラブからの藤沢本部(小島、山田、汐口、篠田)を抑えての優勝でした。おめでとう!

                

上記2チームと並んで優勝候補とされていたアダルトチームこと東大OBチームの結果は聞いていないのですが、メンバーの一人は「輝かしい戦績」だったと。きっとチェスの試合の結果ではないのでしょう。

 

昨年優勝の松戸Aチームはチャンピオンの座を明け渡し、再び若手のチームが上位を独占しました。なかなか若手を押しのけて上位に食い込むのは難しいと思いますが、私の昨年のチームメイト方は、王者奪還に向けて日々トレーニングを積んで欲しいと思います。

 

今回、私は完全に蚊帳の外でした。来年、参加するとしたら、またフレッシュなチームで出てみるのも良いなと思います。


朝霞サマー2011

1年ぶりに朝霞のトーナメントに参加しました。「1年ぶり」とは言っても、私は仲間内ではいちばん朝霞の大会への参加率が高いと思います。通算18回。もう10年以上出続けています。

 

今回は展示会をするような間仕切りのないオープンスペースが大会会場となり、新鮮な感じがしました。試合のほうは31ドロー。見せるようなゲームはありませんが、どのゲームでも新しいラインを試せたので、定跡的な観点からは非常に有意義な4ゲームでした。

 

いつも感じることですが、もう少し若い層が参加してくれるともっと盛り上がると思います。吉祥寺ばかりでなく、たまには朝霞に足を運んでみてはいかがでしょうか?池袋から15分ですので決して遠くありませんし!


池田くんを囲んで

今日は来日中のFM池田惇多くんをメインゲストに迎え、吉祥寺居酒屋で歓談。惇多くんは6月から8月までトーナメントを渡り歩き、そのあと日本に足を延ばしていました。そして同時多発テロから10年、東日本大震災から半年となる明日911日を避け、明後日12日にオーストラリアへ帰国とのこと。

 

本当はもう少し長く滞在してもらって何か日本のチェスイベントに参加してもらっても良かったなと思っています。しかし、こうやって少しでも日本に滞在することで確実に仲間の輪が広がっているのは、お互いにとって良いことです。

 

惇多くんの次の公式戦予定は、12月にオーストラリアで開催されるAustralian Young MastersAustralian Championship、そしてニュージーランドでのトーナメントとのことです。目標はIM、その先にGMと語る惇多くんの今後の活躍に期待しています。

 

また日本に遊びに来てください!

 

Ikeda Junta (2349,FM)

Vovk Andrey (2551,GM)

Dutch Open 2011(2)

 

1.Nf3 Nf6 2.g3 g6 3.b3 Bg7 4.Bb2 00 5.Bg2 c5 6.c4 Nc6 7.00 d6 8.Nc3 Rb8 9.d4 Bd7 10.dxc5 dxc5 11.Na4 b6 12.Ne5 Qc8 13.Nxd7 Nxd7 14.Bxg7 Kxg7 15.Nc3 Nf6 16.e3 h5 17.Qf3 Ne5 18.Qe2 Rd8 19.Rad1 a6 20.Rxd8 Qxd8 21.f4 Ned7 22.e4 e5 23.Bh3 Qe8 24.Nd5 Rd8 25.Bxd7 Rxd7 26.fxe5 Ng8 27.Qb2 Kh7 28.g4 hxg4 29.Qc3 Qe6 30.Qg3 Kg7 31.Rf6 Qe8 32.Rxb6 Qd8 33.Rxa6 Qg5 34.Qf4 Qh4 35.Qf2 g3 36.hxg3 Qxe4 37.Ra8 Rxd5 38.cxd5 Qxd5 39.Rc8 Qxe5 40.Rxc5 Qa1+ 41.Kg2 Nf6 42.Rc4 g5 43.Qe2 Qb1 44.Rc5 Kh6 45.Rc6 Kg7 46.Rxf6 10

 

Ikeda Junta (2349,FM)

Cori Jorge (2514,GM)

World Junior 2011(11)

 

1.e4 e6 2.Qe2 c5 3.Nf3 Nc6 4.g3 d6 5.Bg2 g6 6.d3 Bg7 7.00 Nge7 8.c3 00 9.Na3 Rb8 10.d4 cxd4 11.cxd4 b5 12.Nc2 b4 13.Rd1 Qa5 14.Ne3 Ba6 15.Qd2 Rfd8 16.d5 exd5 17.exd5 Ne5 18.Nxe5 dxe5 19.b3 Nc6 20.Bb2 Nd4 21.Re1 Rbc8 22.Kh1 h5 23.f4 exf4 24.gxf4 Ne6 25.f5 Bc3 26.Qf2 Nc5 27.fxg6 fxg6 28.Bxc3 bxc3 29.Qg3 Qc7 30.Qxg6+ Qg7 31.Qxh5 Nd3 32.Rf1 c2 33.Nf5 Nf4 34.Rxf4 Qxa1+ 35.Bf1 Kf8 36.Nd4+ Ke7 37.Qf7+ 10


Federations Ranking 2011/9

先日、最新のFIDEレイティングリストが発表されました。私の予想に反し、マレーシア・オープンは計算されなかったため、ランキング1位は小島くんで不動。ただ、ぎりぎり2300を割ったため、国内のアクティブ・プレーヤーで2300+のプレーヤーはいなくなりました。ランキング10位までは以下の通りです。



Japan League2011 -Complicated Battle-

Nakamura Ryuji (2190)

Sano Tomu (2129)

Japan League 2011(4)

 

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 c5 4.d5 exd5 5.cxd5 d6 6.e4 g6 7.h3 Bg7 8.Nf3 00 9.Bd3 a6 10.a4 Nbd7 11.00 Nh5

 

黒は12.Bf4を止めながら、キング周りのピースを組み替えます。

 

12.Re1 Re8 13.Bg5 Bf6 14.Be3 Ne5 15.Be2 Nxf3+ 16.Bxf3 Ng7




黒マスビショップは
f6、ナイトはf6にいるのが普通ですが、面白いことに2つのピースのマスが入れ替わりました。しかし、ピースはこちらのマスのほうが良く働きます。f6のビショップはe4-e5のブレークスルーをしっかりおさえ、次にe5にいきます。そのあと、f7-f5の突きで黒からセンターを崩しにいきます。この時、f7-f5の突きをサポートするのにg7はナイトにとってとても良いマスだと言えます。

 

17.Qd2 Be5 18.a5 Rb8 19.Na4 Bd7 20.Nb6 Bb5 21.Rac1 f5 22.b4 fxe4 23.Bxe4 cxb4 24.Qxb4 Qh4 25.Qb1 Re7 26.Nc4 Rbe8 27.Nxe5 Rxe5 28.Bf3 Nf5



 

ここまで黒は流れるようなプレーで満足なポジションを得ました。佐野くんのベノニの指し廻しに感銘を受けたのは私だけではなかったと思います。

 

29.Bb6 Qe7 30.Rxe5 Qxe5 31.Qb4 g5?!

 

Nf5-h4をサポートした手ですが、32.Bh5! があるので良くありません。

 

32.Qc3?! Nh4! 33.Bg4 Qxd5 34.Qg3 Bc6




g2
に圧力をかけ、g2を落としにいきます。白が35.f3g2ポーンを守ると、35...Re2 36.Bf2 Ng6くらいで1ポーンアップを保ったまま黒の駒がとてもアクティブになります。白はg2を捨てて勝負です。

 

35.Rd1!? Qxg2+ 36.Qxg2 Bxg2 37.Rxd6 Re1+ 38.Kh2 h5




このあたりからゲームを見ており、黒にメイトの筋はないか考えていました。
38...h5は思いがけない手で、取るとどうなるのかはっきりしませんでしたが、あとで考えてみると、39.Bxh5 Rh1+ 40.Kg3 Rxh3+ 41.Kg4で何もありません。さらに、ここで白から39.Rd8+ Kh7 40.Rd7+ Kg6 41.Rd6+でドローにするラインがあったとのことです。単純に考えれば白はポーンダウンですから、ドローで満足して良いところですが、龍二さんは勝ちを狙って前進します。

 

39.Be6+ Kf8 40.Bc5 Ke8 41.Bd7+ Kf7 42.Bb4 Rh1+ 43.Kg3 Rg1

 

佐野くんによると、43...Bf3! 44.Be6+ Kg7 45.Bc3+ Kf8で、次にRg1+からキングを攻めて勝っていただろうということです。例えば、46.Rb6?! Rg1+ 47.Kh2 Rg2+ 48.Kh1 Rxf2+ 49.Kg1 Rg2+ 50.Kf1 Be2+ 51.Ke1 Nf3#!



                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

という美しいメイトの筋も潜んでいました!

 

44.Be6+ Kg7 45.f3!?



 

ポーンを捨て、ダブルビショップを持っている龍二さんが勝負に出ました。持ち時間が少ないながら、驚くべきファイティングスピリットです。

 

45...Bxf3+ 46.Kf2 Rg2+ 47.Ke3 Bc6 48.Bc3+ Kf8 49.Bf6!




ルークと
2ビショップで完全に黒キングの動きを封じました。白キングはフリーなので、今度注意しなければいけないのは黒のほうです!

 

49...Rg3+ 50.Kd4 Rg1 51.Rd8+ Be8 52.Kc5 Rc1+ 53.Kd6 Rc6+ 54.Kd5 Nf3 55.Rb8 Rc1 56.Ke4 Re1+




57.Kf5??

 

ここにきて痛恨のブランダーです。57.Kxf3 Rxe6 58.Bxg5ならドローだったでしょう。

 

57...Nh4+!+ 58.Kxg5 Rxe6

 

59.Kxh4には59...Rxf6があるので、白はピースを取り返せません。あとは丁寧に指して黒勝ちです。

 

59.Rxb7 Nf3+ 60.Kf5 Rc6 61.Be7+ Kg7 62.Kf4 Rc4+ 63.Ke3 Ne5 64.Bd6+ Nf7 65.Be5+ Kg6 66.Rb6+ Rc6 67.Rxc6+ Bxc6 68.Bg3 Kf5 69.Be1 Ng5 70.h4 Nf3 71.Bg3 Kg4




72.Kf2 Nxh4 0
1

 

両者のファイティング・スピリットが見られた熱いゲームでした!


Universiade Shenzhen 2011


 

WRITTEN BY

Sato Kaname

 

 

お久しぶりです、佐藤要です。この度はユニバーシアード応援ありがとうございました。一瞬、日本を震撼させられたものの、結果から見れば3.5/9と不甲斐ない結果に終わり申し訳ありませんでした。

 

ポイントを取れた試合も内容は余り良くなかったものの多くのマスターと試合を出来たのは貴重な体験となりました。IM,GM共に日本というチェス後進国のレート2000に対して油断している様子は伝わってきたのですが、それでもGMの方がより隙を作らない、隙を逃さない、と言った印象は受けました。やはり、ノームを取るというのはレート以上に差が大きいのでしょうか。

 

レポートと言ってもユニバーシアード全体について書くと愚痴か、小学生の夏休みの日記か、その類になってしまうので、今回はGMの強さを感じた手について書かせて頂きます。

 

まず、以下の局面です。


        Braun A. (2554,GM) Sato K. (2020)

            26th Universiade Men Shenzhen 2011 (1)

                              position after 38...Kf8

 

ナイトとビショップのアクティビティの差やスペースの差から白が良いのはわかります。ただ、白もhファイルやa5のポーンと言った弱点があり、そう簡単ではありません。と、試合中は思っていました

どうピースを組みかえますか?どう打開しますか?

実際は

 

39.e4!? fxe4

 

39...Qxe4+ 40.Qxe4 fxe4 41.Kf2 Kf7 42.Ke3 Ke7 43.Kxe4 Kf7 44.f5 Kg7 の形は引き分けになるものの、チャンスは白にあり、かなり黒が苦しく見えます。時間切迫な中では実戦的に指しにくく、実力不足でもありますが選べませんでした。詳しく書けませんがこの引き分けらしい局面も一考の価値があると思います。

 

40.Qh3

 

hファイルとc8と二か所から侵入が可能で、一気に白にチャンスが生まれます。

 

40…e3 41.Qh8+ Kf7 42.Kf3 Bd8??




42...e2 43.Qh7+ Kf8 44.Qxe7+ Kxe7 45.Kxe2
も上記と同じようにドローです

 

43.Nxe3 Bxa5 44.Qh7+ Kf8 45.Qxg6 Bc7 46.Nf5 Qf7 47.Qh6+ Ke8 48.Ke4 Kd7 49.g6 Qe8+ 50.Kf3 Qe1 51.Ne3 1–0




自分が間違えただけなので客観的に見ると強くも何ともないのかもしれませんが、個人的には引き分けのラインを見つけた後でも強烈な一手です。

 

 

もう一試合GMとの試合はありましたが、こちらは相手の隙を逃さない正確さに舌を巻きました。


 

 Brandenburg D. (2538,GM) Sato K. (2020)

             26th Universiade Men Shenzhen 2011 (5)

                               position after 21.a4

 

紆余曲折を経てイコーライズに成功したな、と思った次の僕の手が悪手でした。

 

21…Qb6??

 

黒ナイトのためにa5のマスを空けたつもりでしたが、そのマスが


22.a5!

 

これで一気に白良しです。a5を取らないと黒のピースは全て機能停止します。ピースの動けるマスがなくなります。23.Ng5からキングサイドが持ちこたえられません。取っても本譜のようにピンにされ負けです。

 

22…Nxa5 23.Bxa6 Qxa6 24.Qa4 Bd8 25.Nh5 Rg8 26.Bg5 Bb6


 

 

26...Qd3 27.Bxd8 Rxd8 28.Re3 Qf5 29.Qxa5 Qxh5 30.Qxb4 ならマテリアルに差はありませんが、ピースの機能の差は歴然です。

 

27.Rec1 Rb8 28.Qxb4 Bd8 29.Qc3 f6

 

29...Qc4 30.Bxd8 Nb3 31.Bc7 Nxc1 32.Qxc4 dxc4 33.Bxb8 Nb3 34.Rxa7 Nxb8 35.Ng5

これもピースの機能の差から完全に白良しです。

 

30.exf6 gxf6 31.Bf4 Rb3 1–0

 

一瞬の隙を正確についてきますね

 

どちらの試合も僕のミスが絡んでいるものの、そのミスを誘ったり、ミスを的確に指摘できるのがさすがGMです。正直、IMGMなんて言っていられるレベルでは無いので錯覚かもしれませんが、IMGMの差を感じられたのは良い経験でした。その差は感覚的なものなので非常に表現しづらいのですがIMとの試合ではIMの強さを引き出す前にこちらが大きな悪手を指したためそう感じるのかもしれませんが、IMには悪手で負けたがGMには負けるべくして負けた、というのが大会後の実感です。

 

今後は日本で未だ取ったことのないFMからのポイント奪取を当面の目標に掲げて頑張っていきたいと思います。お付き合いありがとうございました。


calendar
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930 
<< September 2011 >>
selected entries
categories
archives
recent comment
recommend
recommend
recommend
recommend
recommend
recommend
recommend
recommend
recommend
recommend
recommend
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM