ANNOTATED BY
Yamada Kohei
□Yamada Kohei (2191)
■Sasaki Hiroshi (1969)
Team Ch. 2011(2)
チーム選手権の2R、シニアチャンピオンの佐々木さんとの一戦です。大会前から楽しみにしていた当たりの一つでした。
1.d4
昨年のアジア大会が終わった頃から、チェスの幅を広げようと思い、こちらを指すようにしています。
1…Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.f3 d5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 b6!?
大会前には6…c5を中心に準備していましたが、やや珍しい手が飛んできたので、ここから考えはじめます。
7.Bg5
7.cxd5 exd5 8.e3 0–0 9.Bd3との比較に迷いましたが、黒がセンターに手をつける前にビショップをポーンの壁の外に出しておきます。
7...Bb7 8.e3 h6 9.Bh4 Nbd7 10.Bd3 Qc8?!
ここまで普通の進行だと思いますが、やや意外な一手です。Ba6とc5のサポートですが、クイーンはセンターで使いつつ、早めにルークを連結させる手を考えたいところです。ピンが気になりますが、いずれにせよcxd5に対して…Nxd5とは取りづらいでしょう。10...0–0 11.cxd5 exd5 12.Ne2 c5 13.0–0 Qe7 14.Bf2
11.Ne2 0–0 12.0–0 Ba6 13.cxd5!
狙いのBa6に対してこれが上手い返しです。もっともこの後のタクティクスを少し読み違えていたのですが…。
13…exd5
ゲーム中13…Bxd3?に対しては14.dxe6? Bxe2 15.exd7 Bxd1?? 16.dxc8=Q Raxc8の局面がピースアップだと思っていたため、それ以上読んでいませんでしたが、今見ると14…Qa6!という手があり困っています。しかし冷静に14.Qxd3と取り返しておけば次のe4突きが強烈なため、白優勢です。e4をつかせてしまうことになりますが、13...Nxd5 14.Qd2 Bxd3 15.Qxd3 c5 16.e4 N5f6 17.Rfd1 Qc6は黒にとって面白い選択の一つだったでしょう。
14.Bf5?!
すこし考えてダブルビショップを残す手をひねり出します。白が積極的にアドバンテージを取りに行くならすぐに14.e4!でしょう。
14...Qb7 15.Qd2 Qc6!?
ここは15...Rfe8 16.Rfe1 Bc4かすぐにc5をつくくらいだと思っていたため、この手は少し変に映りました。しかしこのあとQd6からクイーンサイドに狙いをつけるのであれば特に変な手ではありません。白の方はc5とセンターに反撃してくる手が一時的に消えたので、ゆっくりe4を突く準備に入ります。
16.Rf2 Rae8 17.Re1 g6 18.Bc2 Kg7?
17...g6の時から、僕はこの手がブランダーであることを知りつつ、間違いなく来ると思っていました。g6、h6の弱点を補強する非常に自然な手です。代わりの手としては18…Bc4からb5、a5くらいでしょうが、キング周りの弱点を残しつつ戦うのは容易なことではないでしょう。
19.Ng3!
20.e4の準備が完全に整いました。19…g5に20.Nf5があるのがポイントです。
19…Ng8 20.e4 Ndf6 21.e5 Nh7 22.f4 f5 23.Nf1 Re6 24.Ne3 Ne7
この局面になり白が圧倒的優位にあることが明らかになりましたが、次の一手はひどい手でした。
25.Bb3??
これでd5のポーンが受からないと思いほぼノータイムでしたが、こんな手はありません。25.g4!とこちらに手をつけるのが正解で、こうなればほとんど終わりでした。
25...g5!
鋭いカウンターです。完全なうっかりに動揺しましたが、まだ白が優勢だったのが幸いでした
26.Bg3 gxf4 27.Bxf4 Ng5! 28.Bc2 Rg6?
惜しいことにこの手が敗着になってしまいました。ここは目をつぶって28…Ne4 29.Bxe4 fxe4とすすめるべきで、白が良いのは間違いないものの具体的な勝ちの手順を見つけるのは簡単ではなくなっています。どう指しても悪いときは、なるべく局面が簡単にならない手を選ぶのも実戦では大事な勝負術です。
29.Bxg5!
f5の弱点を利用して、白のアドバンテージをもっとわかりやすい形に変換しにいきます。これがあるため、黒はf5の弱点を解消する必要があったのです。
29…Rxg5 30.h4! Rg3 31.Nxf5+ Nxf5 32.Bxf5 Qxc3 33.Qxc3 Rxc3 34.e6
駒交換が進んで、白のアドバンテージがパスポーンに姿を変えました。
34…Rxa3
34…Bb5 35.e7 Rh8! 36.Be6 Be8が最善の手順だと思いますが、37.Bxd5でRe4-g4とRf3からのルーク交換が両睨みになっているので、白の優勢は変わりません。
35.e7 Re8 36.h5 Bb5 37.Bg6 Rc8 38.e8Q Bxe8 39.Re7+ 1–0
最後はきれいにメイト(39…Kg8 40.Bh7+ Kh8 41.Rf8#)でフィニッシュです。
大会はこのあと2日目に龍二さんになんとか勝ち、要君、権田さんに快勝して6戦全勝と2番ボードレーティングトップの意地(?)を見せることが出来ました。10月のジャパンオープン、オランダでのUnive Openに向けて弾みになる大会になりました。