10歳までに決まる!頭のいい子の育て方 Vol.14

吉祥寺CCに置いてあったのでぱらっとめくってみると、麻布学園チェス部の密着レポートが掲載されていました!

 

部室での活動の写真や、部員・顧問の先生へのインタビューなどなかなか内容の濃い記事でした。記事を読んで、「まだちゃんと続いていたんだ(笑)」という安堵にも似た気持ちになりました。もっと中高生のみんなはJCAの大会に出てきてほしいですし、どんどん海外を目指してほしいものです。


私の原点でもありますので、ぜひ皆さんも、ご一読を。


Cappelle la Grande 2011 -Pre Entry Completed-



Cappelle
スタートまで1ヶ月を切りました。そして、1/27付の更新で非招待選手全員のエントリーを確認できました。

 

http://cappelle-chess.fr/fr2/default.php?page=3899

 

このエントリーは事前エントリーであり、このまま会場に行けばペアリングが組まれているというわけではありません。招待、非招待にかかわらず、現地に着いたら必ず本エントリーを完了させる必要がありますので、そこは要注意です。本エントリーの締切りは2/26 12:00R.12/26 16:00〜)です。本エントリーとは何をするかと言うと、招待選手は到着したことをオーガナイザーに伝えるだけ、非招待選手は参加費を納めます。参加費は大人で50ユーロ、20歳未満(2011/1/1時点)25ユーロということです。その他もろもろ競技会ルールはHPで公表されているので、プレーヤーの皆さんはそちらを確認してください。

 

http://www.cappelle-chess.fr/en2/userpages/RI-eng-Cappelle-2011.pdf

 

あとは皆さん、トレーニングを積むのと旅の準備をするだけですね!


A Sensational début

1998年の百傑戦は羽生さんのJCAデビュートーナメントでした。私はこの時まだJCAに入会してはいませんでしたが、部の先輩から「百傑戦に羽生さんが出ている」という話は聞いていました。この百傑戦を羽生さんは6.5P/7Rで優勝。ピノーさんや暁さんなど、多数の日本チェス界のトッププレーヤー参加の中での優勝であり、日本チェス界における一大センセーションとなったのでした。このあと麻布のチェス部内に羽生さんのゲームが出回り、私も必死に11手追いかけまわした記憶があります。ちょうどチェス関係の記事を整理していたら出てきたので、この機会に皆さんとシェアしたいと思います。

 

Kitaura Nikki (1815)

Habu Yoshiharu (UR)

百傑戦1998 (1)

 

1.e4 e6 2.d4 d5 3.e5 c5 4.c3 Nc6 5.Nf3 Qb6 6.Bd3 Bd7 7.0–0 cxd4 8.cxd4 Nxd4 9.Nxd4 Qxd4 10.Nc3 a6 11.Kh1? [d4を捨てるラインはよくありますが、e5のポーンまで取られては勝負になりません。指すとすれば11.Qe2でしょうか。] 11...Qxe5 12.Re1 Qd6 13.Qf3 Nf6 14.Bf4 Qb6 15.Nxd5 Nxd5 16.Qxd5 Be7 17.Qh5 Bf6 18.a4 Rc8 19.Be3 Qb3 20.Rad1 Qxa4 21.f4 h6 22.f5 0–0 23.Bxh6 Qh4 24.Qxh4 Bxh4 25.Re4 Bf6 26.fxe6 Bxe6 27.Bc1 Rfd8 0–1

 

Habu Yoshiharu (UR)

Zemanian L. (1951)

百傑戦1998 (2)

 

1.e4 Nc6 2.d4 e5 3.d5 Nce7 4.c4 Ng6 5.Nf3 Bc5 6.Nc3 a5 7.a3 Nf6 8.Bd3 d6 9.0–0 0–0 10.Rb1 Bd7 11.b4 axb4 12.axb4 Bb6 13.c5? [これは早すぎました!] 13...dxc5 14.bxc5 Bxc5 15.Rxb7 Bb6! [×Rb7] 16.Be3 Bc8 17.Rxb6 cxb6 18.Na4 b5 19.Bb6 Qd7 20.Nc3 Ba6 [白にコンペンセーションはありません。しっかり指せば黒が勝つ局面です。] 21.Bc5 Rfc8 22.Bb4 Nf4?? [1手で形成を損ねるブランダー。22…Ne8からd6にナイトをマヌーバリングするのが自然なプランに見えます。] 23.Nxe5! Qb7 24.Nc6 Nxd3 25.Qxd3 Re8 26.Qd4 [Domination!] 26…Nd7 27.Ne7+ Rxe7 [27...Kh8 28.Nf5 f6 29.Nd6+-] 28.Bxe7 Rc8 29.Rb1 Qc7 30.Bb4 h6 31.h3 Nb6 32.Ba5 Qc5 33.Bxb6 Qxc3 34.Qxc3 Rxc3 35.d6 Rd3 36.Bc5 g6 37.f3 Kg7 38.e5 Rd5 39.Bb4 g5 40.Rc1 Kg6 41.Rc7 Kf5 42.d7 [42...Kxe5 43.Rc5] 1–0

 

Tabata Minoru (1978)

Habu Yoshiharu (UR)

百傑戦1998 (3)

 

1.c4 Nf6 2.Nc3 g6 3.g3 Bg7 4.Bg2 0–0 5.Nf3 d6 6.0–0 Nc6 7.d3 a6 8.Rb1 Nh5 [このゲームに強く影響され、私の初期のKing’s Indianのゲームでは、無理やりNh5からfポーンを突きにいっていました。] 9.Bd2 f5 10.Nd5?! [白の手の一貫性を考えると、ここはb2-b4a2-a4からb4-b5とクイーンサイドで手を作るのだと思います。] 10…Kh8 11.Qc1 Be6!? [“チェスの常識を覆す手として当時、私たち中で注目された1手です。この手の狙いはすぐ後に明らかになります。] 12.Nf4?! Nxf4 13.Bxf4 Bg8! 14.Bh6 e5 15.Bxg7+ Kxg7 16.Qc3 Qf6 17.b4?! [17.b3で黒のビショップの動きを抑えたほうが良さそうです。] 17…e4! 18.Qxf6+ Rxf6 19.Nd2 [19.dxe4 Bxc4 20.exf5 Rxf5はやや黒が良いと思います。] 19…Nd4 20.Rfe1 d5 21.dxe4 dxe4 22.e3 Nc6 23.f4 Rd8 24.Rb2 Rfd6 25.Re2 a5 26.bxa5 Nxa5 27.c5 Rd5 28.Nb3 Nxb3 29.axb3 Rxc5 30.b4 Rc1+ 31.Kf2 Bc4 32.Rec2 Rdd1 33.b5 b6 34.g4 Bd3 35.Rxc1 Rxc1 36.gxf5 gxf5 37.Bh3 Kf6 38.Rb4 Rc2+ 39.Kg3 Re2 40.Rd4 Rxe3+ 41.Kh4 Rf3 42.Rd7 Rxf4+ 43.Kg3 Rf3+ 44.Kh4 Bxb5 0–1

 

Habu Yoshiharu (UR)

Pineau Jacques (2254)

百傑戦1998 (4)

 

1.e4 Nf6 2.e5 Nd5 3.d4 d6 4.c4 Nb6 5.f4 dxe5 6.fxe5 Nc6 7.Be3 Bf5 8.Nc3 e6 9.Nf3 Be7 10.Be2 0–0 11.0–0 f6 12.exf6 Bxf6 13.b3 Qe7 14.Qd2 Rad8 15.Rad1 h6 16.h3 Bh7 17.Kh1 Kh8 18.Qc1 a6 19.d5 exd5 20.cxd5? [この手のあと、白は厳しくなります。20.Nxd5 Nxd5 21.cxd5=] 20...Nb4 21.d6 Rxd6 22.Rxd6 Qxd6 23.Ne4 Bxe4 24.Bc5 Qd8 25.Bxb4 Re8 26.Bd2 Bh7 27.Bd1 Qd3 28.Rf2 Nd5 29.Ng1 c6 30.Bh5 Rd8 31.Re2 Nc3 32.Bxc3 Qxc3 33.Qf4 Qd4 34.Qc7 Qc5 [ほとんど勝ちまで近づいた黒ですが、時間切迫からか、あと一歩のところでアドヴァンテージを放棄してしまいました。34...Qa1! なら白を悩ませていたでしょう。] 35.Bf7 Rf8 36.Qxb7 Bd3 37.Rd2 Qb5 ½–½

 

Watanabe Akira (2328)

Habu Yoshiharu (UR)

百傑戦1998 (5)

 

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 0–0 6.Be2 e5 7.0–0 Nc6 8.d5 Ne7 9.b4 Nh5 10.Re1 f5 11.Ng5 Nf4 [11...Nf6がメインとして今も広く指されています。] 12.Bf3?! [f3g5のナイトの引き場所として空けておかなければいけなかったと思います。正着はおそらく12.Bf1] 12...h6 13.Ne6 Nxe6 14.dxe6 [e6に飛び込むナイトは黒のc8のビショップと交換できるという考えのもと、成立します。(交換後、e6に残った白のポーンは黒に取られます。)ナイトとの交換では割に合いません。] 14...c6 15.c5 d5 16.exd5 cxd5 17.Bxd5 e4 18.Bxb7?! [18.Qb3] 18...Bxb7 19.Qb3 Bd5 20.Nxd5 Qxd5 21.Rb1 Qxb3 22.Rxb3 Nd5-+ 23.b5 Rfe8 24.Rd1 Nc3 25.Rd2 Rxe6 26.Bb2 e3 27.fxe3 Rxe3 28.Rd7 Bf6 29.Rxa7 Rd8 30.Bxc3 Bxc3 31.g3 Rd2 32.Rb1 Bd4 33.Kf1 Rxh2 34.Rb4 Rf3+ 35.Ke1 Bc3+ 0–1

 

Habu Yoshiharu (UR)

Miura Yoshito (1629)

百傑戦1998 (6)

 

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 f5 4.Nc3 fxe4 5.Nxe4 d5 6.Nxe5 dxe4 7.Nxc6 Qg5 8.Qe2 Nf6 9.f4! Qxf4 10.d4 Qh4+ 11.g3 Qh3 12.Bg5 [メインは12.Ne5+ c6 13.Be6] 12...Bf5? [ここは12...a6!と突くチャンス] 13.0–0–0 Bg4 14.Ne5+ c6 15.Qc4 Qh5 16.h4 Bd6 17.Bxc6+ bxc6 18.Qxc6+ Ke7 19.Qb7+ Ke6 20.Bxf6 Kxf6 21.Rdf1+ 1–0

 

Nakamura Ryuji (2046)

Habu Yoshiharu (UR)

百傑戦1998 (7)

 

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 [デビュートーナメントながら、羽生さんは多くのオープニングを自在に扱います。] 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nxc3 6.bxc3 Bg7 7.Nf3 0–0 8.Be2 b6 9.0–0 Bb7 10.Qc2 c5 11.Be3 Nd7 12.Rac1 Qc7 13.d5 Rfe8 14.Bc4 Qc8 15.Qe2 Nf6 16.Bg5 h6 17.Bh4 Qg4 18.Rfe1 Rad8 19.h3 Qc8 20.Red1 g5 21.Bg3 g4?! [すでに黒は効果的な手を作るのが難しい状況です。本譜でも状況は変わりません。] 22.hxg4 Qxg4 23.Re1 Nh5 24.Bh2 Nf4 25.Bxf4 Qxf4 26.Ba6 Bxa6 27.Qxa6 Qc7 28.a4 e6 29.c4 exd5 30.exd5 Bb2 31.Rcd1 Bc3 32.Rxe8+ Rxe8 33.Qb5 Qe7 34.Qb3 [34.Rd3!± Re3+-] 34...Qe2 35.Rf1 Bb4 36.Nh4?? [(*´Д)=3] 36...Qxf1+! 0–1


Khanty-Mansiysk Olympiad Review (14)

WRITTEN BY

Yamada Kohei

 

 

最後に

 

オープンセクションはウクライナが悲願の優勝を果たしました。前回大会で最終ラウンドを負け、表彰式に現れなかったIvanchuk6連勝でチームが勢いに乗り、10Rでフランスを3.5-0.5と圧倒しそのままゴールイン。終始大会をリードした印象でした。地元ロシア12位と面目を保ち、3位にはイスラエルが入りました。ひそかに僕が応援していたハンガリーは競争相手イスラエルに負けたのが大きく4位。5位、6位は中国、アルメニアと前回大会の入賞チームが入りました。大会前半好調だったベトナムはグルジアに0.5-3.5と圧倒され、以降やる気がなくなったのか(?)引き分けが続き最終ラウンドでイランに負かされ52位に沈みました。

 

また何と言っても話題になったのは47位(121位から!)に入ったザンビアでしょう。まさか我々もザンビアがここまで上がるとは夢にも思いませんでした。最終ラウンド、勝ちが見えたところでプレイングエリアを歩きまわっていたときに、ザンビア−トルクメニスタン戦を見に行ったのですが、ちょうどKelvinがリザインしたところだったので、後でそのマッチに勝ったと知ってびっくりしました。

 

札幌チェスクラブ出身(!?)のGM Anish GiriBoad 4でパフォーマンス3位。彼がBoad 4というチーム構成もなかなかすごいですが、KarjakinEfimenkoに続く成績でのボードプライズでまた株を上げたといっていいでしょう。ボードプライズでやや驚きだったのは地元ロシア2の若手GM Ian NepomniachtchiBoad 13位入賞したことでしょうか。1990年生まれのプレイヤーですが最近頭角を現してきて12月のRussian Superfinalで優勝を果たしました。個人的には今注目のプレイヤーです。またBoad 26.5/8でパフォーマンス2895Sutovsky1位。Gelfandがおとなしかった分、活躍が目立ちました。ドレスデンでは若手に代表の座を譲りましたが、今大会で改めて存在感を見せつけた格好です。

 

ウーマンセクションはHou YifanJu Wenjunの調子がよく中国優勝もあるかと思っていたのですが、ふたを開けてみればロシア1の圧勝でした。地元ということもあり負けられないプレッシャーの中、パーフェクトスコアでの優勝です。閉会式でも一番盛り上がったのは女子の表彰の瞬間でした。しかし世界女子選手権で大活躍したRuan Rufeiはこのときメンバーに入ってなかったわけですから、中国の層の厚さも侮れません。次のイスタンブールは優勝候補筆頭でしょう。強豪グルジアは、タイブレークでキューバ、アメリカ、アゼルバイジャンなどを上回って3位入賞でした。

 

ボードプライズはKosintseva姉妹が独占。Boad 12で勝率70%超えという驚異の勝率でした。個人的には日本チームの部屋の向かいだったラトビアのBoad 3WGM Berzina Ilze9.0/11で入賞していたのに驚きました。メンバーをみるとBoad 3はかなり激戦区だったようですね。

 

日本は男子が96位、女子が104位。女子のほうは初出場のメンバーが二人おり、経験不足から苦戦した感はありますが、次回大会ではぜひその二人がチームの中心となって戦ってほしいと思います。男子のほうは言い訳できる戦績ではなく、前回大会の成績を大きく下回ったことも含め、反省しなければならないことはたくさんあると思います。実際に戦ってみて、ヨーロッパ、アメリカのレベルはまだ遠く、急成長するアジア、アフリカのレベルも決して無視してはいけないところまで来ているということを感じました。

 

今回、オリンピアードに出場したことで、技術的に吸収したものはたくさんあります。オープニングレパートリーの構築、準備から中終盤のプランの組み立て方、読みの技術など数え上げればきりがありません。しかし何よりも収穫だったのはチェスに対する意識が大きく変わったことでしょう。個人レベルでいえば、やはり22002300クラスの相手は倒しに行き、2400+からはしっかりドローを取る。そういうことを普段のトレーニングの時から意識する必要があるということを痛感しました。また今大会は日本のチェスがヨーロッパやアジアのレベルに少しでも近づくために、何をしなければならないか、ということを考えるきっかけにもなりました。この問いに対する答えはまだ見いだせずにいますが、これは僕だけの問題ではありませんから日本のチェスプレイヤーのみなさんとともに考えていこうと思っています。ドレスデンでの躍進と、今大会での不振を糧に、イスタンブールの日本チームにはライバル国に引けを取らない戦いをしてほしいと思います。2年あれば日本のチェスのレベルはもっと上がると信じています。

 

最後になりましたが、この場を借りて感謝の気持ちを述べさせていただきたいと思います。

 

まずは大会中、技術精神両面からチームを支えてくれたコーチのMisha、一生懸命応援をくれて心の支えとなってくれた通訳のアーニャ、そして日本で(あるいは海外で)我々を応援してくださったチェスファンのみなさん、本当にありがとうございました。

 

また今回、オリンピアードのレポートを書くきっかけを与えてくださった神田さん、アップロードの場を提供してくれた馬場さん、ありがとうございました。このレポートが日本チェス界の発展に少しでも役立ってくれれば、これ以上の喜びはありません。

 

そして2週間をともに戦ったチームメイトのみなさん、ありがとうございました。また海外で一緒に戦える機会が来るのを楽しみにしています(ほんとは一人一人にコメントもらおうかと思ったのですが、流石に無茶ぶりがすぎるので、やめましたw)。

 

最後に長々と駄文に付き合ってくださったこのレポートの読者の皆様、お付き合いいただき本当にありがとうございました。毎回悩みながらのレポートで、勢いだけで乗り切った感はありますが楽しんでいただけたなら幸いです。

 

20111月 山田弘平



Khanty-Mansiysk Olympiad Review (13)

WRITTEN BY

Yamada Kohei

 

Day 11

 

今大会、日本チームは全体的に良い成績を残せず、後半の3連敗を喫したところでは日本で応援してくださっている皆様に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。せめて最後は2連勝して帰りたいというところで、Mishaのミスがあり塩見さんが出場できず、代わりに僕がケニア戦の3番ボードを務めることになりました。そんな背景もあり、このゲームは今大会で一番本気でプレパレーションしました。試合前日の深夜まで相手の使うラインから指す予定のライン、指し手の傾向までしっかり頭に入れて挑みました。

 

Yamada Kohei (2071,JPN)

Mukabi John (2074,KEN)

Khanty-Mansiysk Olympiad Men (11)

 

1.e4 e5

 

予想通りの2手目です。彼のメインラインはe6SicilianPetroffでした。Sicilianの場合はこちらが望めばSveshnikovにトランスポーズすることが分かっていたので、Sveshnikov対策をしていました。ただ今オリンピアードでのチョイスから考えて、1…e5の可能性が高いだろうと考えていたので、こちらをメインに対策を立てていました。

 

2.Nf3 Nf6 3.d4 Nxe4 4.Bd3

 

プレパレーションの段階では4.dxe5も考えていましたが、Mishaとも少し話してこちらにしました。確実に勝てそうなラインが見つからなかったことと、何よりこのオリンピアードではシャープなラインよりもポジショナルな感覚が要求される局面を優先的に選んできたということがあります。棋譜を見て実力は間違いなくこちらが上だと思っていたので、力の差が出やすい局面にもっていきます。

 

4…d5 5.dxe5 Be7 6.0–0 0–0 7.c4!




Misha
推奨の手です。すぐにセンターに反撃することで、黒の展開の遅れをつきます。

 

7…Be6?

 

7…c6 8.Qc2が前日に準備していた手順でした。流石にd5をビショップで支える手は考えに入っておらず、ここから自力で考え出します。

 

8.cxd5! Bxd5 9.Qe2!?

 

この場合ぶつかったポーンはすぐに取ります。ビショップで取ろうがクイーンで取ろうが、Nc3と指されると引く必要があるので、その分他のピースの展開が遅れます。

9手目は悩んだところで、9.Qc2 f5 10.Rd1 Nc6 11.Bc4 Nb4 12.Qb3 c6の局面で指す手が分からず切り捨てましたが、普通に13.Nc3くらいで十分でした。

 

9...Nc5 10.Bc2 Qc8?

 

7手目に続く衝撃の一手です。Rd1をあらかじめ避けたのでしょうが、そんなことをしている暇はありません。10…Nc6ととにかくピースを展開しにいくところでしょう。

 

11.Nc3 Be6!?

 

僕の読みは11…Bxf3 12.Qxf3 Nc6でした(正確には12…c6でしょう。12…Nc6には13.Nd5!があります)。スペースが足りないところでビショップを引くのは駒組みに苦労しそうです。

 

12.b4!




白としては
e4のマスが自由に使えるようになれば攻めの好形を築くことができます。そのため、ナイトを中央から追い出します。さらにb2にビショップのためのマスを作り、ダブルビショップを働かせることができます。

 

12…Nca6?!

 

12…Ncd7 13.Bg5! Re8 14.Bxe7 Rxe7 15.Ng5 g6 16.Rad1+/-が僕の読みでしたが、コーヒーを取りに行って戻ってくると指されていたのはこの手でした。

 

13.a3!

 

この手によってa6のナイトが戻ってくるには、c6Nc7と二手使わなければならなくなりました。スペースアドバンテージおよび駒の展開の差から白の優勢がはっきりしました。

 

13…c6 14.Nd4 g6




この局面がオリンピアードの自分のゲームで、一番印象に残っている局面です。この局面で長考に入ります。最初は
15.f4で普通に優勢だろうと思ったのですが、15.f4 Bg4 16.Qf2 c5は少々面倒なことに気がつきました。Bg4は面倒なので15.h3?!を次に考えましたが、15…Rd8と指されてc5という反撃も残ります。ダメなのは15.Ne4?15…c5! 16.bxc5 Nc6はやや良しながら、黒もピースが展開できるので少々楽にさせてしまうでしょう。

 

最初は良い手が見えず焦りました。20分ほど局面を眺めて、仕方ないので15.f4を指そうかなと考え始めたころ、ふとある手が見えました。

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吉祥寺五拾傑戦2011

吉祥寺での個人トーナメントの案内です。3日間に渡る大会で、JCAの百傑戦に匹敵するような盛り上がりを見せてもらいたいものです。このトーナメントで最も特筆すべきは、ポイントの数え方です。サッカーと同じ勝ち点方式で、勝ちを3点、ドローを1点、負けを0点とします。例えば、12敗3ドローはどちらも3ポイントで同じです。ドローを軽視しすぎではないかという意見もありますが、ここはまず1回この方式でやってみて、結果を見て次にどうするか判断すればよいと思います。
 

日時 2011211日(金・祝)、12日()、13日(

会場 吉祥寺チェスクラブ(吉祥寺駅徒歩1分)

形式 8ラウンド加速スイス式

タイムコントロール 60分+初手より130秒加算

参加資格 JCA会員

参加費 当日払い 5000円(高校生未満2500円)

表彰 オープン2位まで、Aクラス、Bクラス各2位まで入賞

参加申込み方法

2/6までにHP内の申込みフォームからお申し込み下さい。

HPhttp://www.ne.jp/asahi/chess/kichi/

HPをご覧になれない方はクラブでの直接申込みも可。

2/7以降の申込みは、1R不戦となることがあります。

競技主任 競技主任:吉祥寺チェスクラブ 上原慎平<chesskichi@joy.email.ne.jp>

備考

オープンは全員が対象。

クラス入賞:レイティング1799以下の参加者を2分割しABクラスとする。

● AB両クラスの重複入賞あり。

● UR(レイティングの付いていない方)はBクラスから入賞の対象。

勝ちを3ポイント、引き分けを1ポイント、負けを0ポイントとします。

自己申告の不戦は1ポイント。

組み合わせ上の不戦は1ポイント。

事前申し込みがあっても、集合時間に不在の場合は1Rが不戦となることがある。

対局終了後の報告は両対戦者の責任において行うこと。

タイブレーク:32秒のブリッツ2回戦で決めます。(それでも同点だった場合は同率優勝)

組み合わせにはパソコン用ソフトを使用。

当日はJCA会員証を持参のこと。

運営参加費には会場使用料とクラブ運営費を含む。

会場地図はHPhttp://www.ne.jp/asahi/chess/kichi/map.html>を参照。

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学生選手権2010 Review (4)

Round6

 

少し時間が空きましたが、学生選手権の最後のReviewです。



       Mimura K. (1815) – Kuwata S. (2060)

                 Position after 25…Qd7-c6

 

白にはシンプルな好手があります。

 

26.Bxf6! gxf6 27.Qe3

 

これでa7h6のダブルアタックです。特にh6が落ちれば、白には強力なパスポーンができます。しかし

 

½–½

 

ドロー?!

ここは冷静に考えて、白は勝ちを狙って指し続けるべきです。このあとどこかでパペチュアルが入り、それでドローなら仕方ないですが、ドローで優勝が確定するような状況でなければ、ここでドローオファーしてはいけないと思います。

 

実際、このポジションをどう勝つか考えてみました。仲間内で検討した際には、27...Qg2 28.f3 f5 29.Qxh6 Qf1+ 30.Kb2 Qf2+ 31.Ka3 Qc5+ 32.b4 Qxc4 33.Qf8+ Kd7 [33...Kc7 34.Qc5+ +-] 34.Qxf7+というラインを見つけました。白はhポーンで勝ちにいくというプランです。これもいいですが、もう少し考えてみると、白には28.Qc5+ Kd7 29.Qxa7としてクイーンサイドのポーンを落としにいって、cポーンを進めるというプランもあります。

 

結果はドローで終わりましたが、続けていたらどうなったかをしっかり検討すると良いと思います。

 

 

      Yamada K. (2203) – Shinoda T. (1760)

                    Position after 10...0-0

 

11.Nc3?!

 

白から形を崩しにいきます。この手を見て抵抗を覚える人も多いと思います。白はQd1-e2dファイルからクイーンが動かしたのですから、11.Rd1としてd5に圧力をかけるのが最も自然でしょう。

 

11...Nxc3 12.bxc3 Bxe3

 

ここは意見が分かれました。本譜のように12…Bxe3 13.Qxe3とビショップ交換を入れてから13…Na5とするのが検討で出た手ですが、私はc5のマスをはじめ、黒は若干、黒マスに弱点を抱えているのが気になりました。代わりに、12...Ba3!?とビショップを残すのはないかなと考えました。すぐの狙いは13…Bb2です。13.Rad1 Na5c5-c4のスレットを残してb3のビショップをいじめにいくのもありでしょう。クイーンサイドを抑えられた白は、キングサイドでアタックを見つけます。例えば14.Qd3 c6 15.Ng5 g6など。



                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

まだ難しい勝負ですが、やはりb3の将来性に不安を感じますので、黒十分でしょう。


PGN
ファイルで棋譜を残すと、他人のゲームを見ることができ、色々と勉強になることが見つかりますね。


Closed Trainingその後

3グループでのClosed Training Vol.3は、BCグループが完了、Aグループも残すところ3ゲームということです。当初の予定では、長くかかっても11月を最終期限にしていたため、ずいぶん長くかかってしまいました。Aグループの残る3ゲームも1月中に行われなければ、打ち切ろうと考えています。

 

人数が多くなると目立ってしまうのかもしれませんが、参加者にはやる気の差異が大きく見られたように思えます。やる気のある人はたとえ仕事や私生活が忙しくとも、きちんと期限内に終わらせていました。

 

そんな中、しびれを切らして吉村君が主体となり、新たなClosed Trainingの開催が決定しました。2000手前のプレーヤー6人によるラウンドロビントーナメントです。

 

http://ice-sicilian.jugem.jp/

 

大会概要

【形式】

参加者6人によるラウンドロビン

【参加者】

1. 中村 尚広(1989

2. 東芝 輝臣(1967

3. 井上 祥(1961

4. 吉村 謙治(1935

5. 上原 慎平(1902

6. 古谷 昌洋(1880

【タイムコントロール】

45/15

【対局場所】

Yahoo Chess USA

【ペアリング】

Week 1 1/17-1/23 東芝-上原  井上-吉村  中村-古谷

Week 2 1/24-1/30 中村-東芝  上原-井上  古谷-吉村

Week 3 1/31-2/06 井上-中村  吉村-上原  東芝-古谷

Week 4 2/07-2/13 中村-吉村  東芝-井上  古谷-上原

Week 5 2/14-2/20 上原-中村  吉村-東芝  井上-古谷

 

なお、Closed Training Vol.4を開催するかどうか、また、やるとしたらどういう形式にするかはClosed Training Vol.3の各TDに任せ、私は相談役くらいのポジションに就こうと思います。


Analysing Room



Cappelle
の検討室。(2005年)

皆さん、和やかに談話しながら検討中。

 

年下のboygirlに勝ってチェスレッスンしてあげるときは、何か飲み物でも御馳走してあげる心遣いがあっても良いかもしれませんね。


Khanty-Mansiysk Olympiad Review (12)

WRITTEN BY

Yamada Kohei

 

Day 10

 

男子チームは3連敗を喫し、この時点でスタート順位を大きく上回ることはできなくなりました。スタート順位はチームメンバーのレーティング平均で決まるため、2000そこそこしかない僕の成績がチーム浮上のカギになるはずでした。3番ボードを自ら引き受けておいて、結局勝負どころでポイントを落としたという事実に、責任を感じていました。最終日は局数的に僕が欠場し、塩見さんが出場することがほぼ確定だったため、10Rのボツワナ戦が僕の最後のゲーム(になる予定)でした。

 

前回大会でも男子は10Rでボツワナとあたっており、IMノームがかかった小島がNjobvuに負かされたものの他を全部勝って31勝ちでした。プレパレーション段階ではNjobvu-Yamada戦を負けなければ勝つだろうと思っていました。

 

実際試合は小島が終始リードし、完勝。龍二さんも時間切迫で若干ふらつきながらも勝ち。しかし最後の0.5Pを奪うのはなかなか大変でした。僕は序盤でうっかりポーンを取られたものの、相手の指し手がぬるくすぐに完全ドローの局面に。周りの形勢をみてドローオファーしましたが、相手は全く受けてくれません。最初はチームのためかと思っていたのですが、対局後にNjobvuが言うには勝てばFMだったとのこと。最後まで勝ちを狙いに来たため、最後は僕にチャンスが生まれましたが(Misha曰く「山田さんが勝ちに気付くよう、念をおくるべきだった!」)、隣の南條のゲームを見て何も考えずドローにしました。その南條のゲームは100手を超える激戦でした。

 

Nanjo Ryosuke (2257,JPN)

Oatlhotse Providence (2213,BOT)

Khanty-Mansiysk Olympiad Men (10)

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3 Bf5 5.cxd5 cxd5 6.Qb3

 

南條が得意とする形です。彼の4.e3には僕もだいぶ負かされました。

 

6…Qc8 7.Bd2 e6 8.Bb5+ Nc6 9.0–0 Bd6 10.Bb4!

 

このラインの急所となる一手です。黒のマイナーピースの中で一番働きそうなd6のビショップを消します。

 

10…Qc7 11.Nbd2!?N




11.Qa3 Bxb4 12.Qxb4 Qe7 13.Qxe7 Kxe7 14.Bxc6 bxc6 15.Ne5!? Benjamin-Christiansen, USA-ch fin Chandler(1) 1997
という変化があり、これは白を持っていて悪い気はしませんが、黒としてもNd7c5という反撃がありイコールでしょう。僕はこの局面で白を持つことはほとんどありませんが、11.Rc1!? 0-0 12.Bxd6 Qxd6 13.Bxc6 bxc6 14.Qa3! は黒から見ていやな順だと思います。いずれにせよこの局面で白がe4をつくことはあり得ないので、ナイトはc3a3を目指すのが普通でしょう。

 

11...0–0 12.Bxc6 Bxb4!?

 

素直に12…bxc6と応じるべきでしょう。12…bxc6 13.Bxd6 Qxd6 14.Rac1 Nd7でやや指しづらそうな気もしますがイコールです。Nb3Nc5c5のマスを抑えられる可能性を与えるのは、黒からみてやりたくありません。

 

13.Qxb4 Qxc6?!

 

Slavプレイヤーの感覚からするとここは13…bxc6と取ってc5突きを狙う一手です。特にこういった変化ではb7のポーンはターゲットにしかなりません。

 

14.Rfc1 Qa6 15.Rc3

 

15.Ne5 Rac8 16.f3!でもOKです。

 

15...b6 16.Rac1 Rac8 17.a3 Rxc3 18.Qxc3

 

ここでcファイルを制圧し、黒からのクイーンサイドへの反撃はなくなりました。黒はキングサイドで勝負を仕掛けます。

 

18.Qe2 19.h3 h6 20.Ne5 a5 21.f3!




南條らしい冷静な一手で、
f6ナイトのためのマスを奪っていきます。最初に隣を見たときこの局面になっており、e2のクイーンをみて一瞬ぼこぼこになっているのかと思い焦りましたが、よく見ると黒の攻撃は手になっていません。

 

21…h5!?

 

しかし相手もひねり出してきます。狙いはh4Nh5Ng3です。これを食らっては優位が消えてしまうので…

 

22.h4!

 

当然受けます。このあたり隣で見ていた僕は(そしておそらく小島も)南條のゲームを勝ち勘定にいれました。

 

22…g5?

 

追い詰められての勝負手ですが、流石にやりすぎです。22…g6 23.Nf1 Qb5 24.Ng3で白優勢ですが、実戦ではまだまだです。

 

23.hxg5+- h4 24.Nf1

 

ここは派手に24.Ndc4!! Nh5 (24…dxc4?! 25.Re1 Qc2 gxf6+-) 25.Re1 Ng3 (25…Qc2 26.Qxc2 Bxc2 27.Nxb6+-) 26.e4! dxe4 27.fxe4 Bg6 28.Nxb6+-という勝ちがありました。

 

24...Nh7 25.Qd2 Qxd2 26.Nxd2 Nxg5 27.Nd7!




本譜でも
b6ポーンを落とし簡単に勝ちのように思えますが、ここから相手がいい粘りを見せ、少しずつ局面が複雑になっていきます。

 

27…Rd8 28.Nxb6 Kg7 29.Kf2!?

 

29.Nb3 Rb8 30.Rc6!ならばわかりやすかったでしょう。

 

29...Rb8 30.Na4 e5!

 

ここで鋭い反撃がきました。黒はマイナーピースを働かせないことには粘りようがありません。30…h3!? 31.g4 Bd3 32.b3+-は黒ピースがばらばらで白が悩むところはありません。

 

31.dxe5 Bd7 32.b3 Bxa4 33.bxa4 Rb2 34.Ke1?!

 

本譜は黒のルークが強力になり難しくなりました。この局面も難しいですが、34.Ke2ならばまだ優勢を保てていたでしょう。

 

34...Ne6!




ここで
d4がスレットになり、急に忙しくなりました。

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