ANNOTATED BY
Sato Kaname
どうも、まさかの学生選手権で優勝してしまった佐藤要です。この度はBehind the Sceneに自分の書いた駄文を載せられるということで感無量です。改めて優勝したという事実を実感することができ、喜びをかみしめております。
□Sato Kaname (1981)
■Yamada Kohei (2203)
学生選手権 2010 (5)
1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.exd5 Qxd5
フレンチディフェンス・タラシュヴァリエーション。4…Qxd5で10手目の白の手までほぼ一本道に確定しました。前回の東京オープンで僕が負けた対戦と同様のラインであったこともあり、お互いサクサク進めていきました。
5.Ngf3 cxd4 6.Bc4 Qd6 7.0–0 Nf6 8.Nb3 Nc6 9.Nbxd4 Nxd4 10.Nxd4 Bd7 11.c3 Qc7 12.Qe2 0–0–0
ここまでで両者の時間が増えていました。定跡で言えば、10…a6や11.b3と言った手もよく見られるようですが、12手目まで東京オープンと同様に進みます。
13.a4
前回の対戦では13.Bb5 a6 14.Bxd7+ Rxd7 15.h3 Nd5 16.Bd2 Bd6 17.b4? Nb6 8.Nb3 Nc4=/+ から、c3の弱点を維持しつつキングサイドをバランスよくアタックした山田さんに見事に押し込まれ、負けてしまいました。その時の検討で教えて頂いたのがこの13.a4でした。狙いはNb5からaファイルを開けたり、a5-a6とQサイードにプレッシャーをかけたり、とシンプルです。対して黒はh5やNg5,Bd6などでキングサイドを攻めるという展開になるそうです。13…h5 14.Nb5 Bxb5 15.axb5 Bc5 16.Ra4などとルークを4段目で使う展開が考えられます。
13…Bd6 14.h3 Bh2+ 15.Kh1 Bf4
キングをh1に追いやってから交換することがすぐに何かにつながるわけではありませんが、エンディング時のキングのポジションが有利である事やf2の守りが一つ外れる事などを考えて、この場面では黒にとってチェックを入れておいた方がベターです。
16.Nb5 Bxb5 17.axb5 Bxc1 18.Rfxc1
16.Nb5は当初の予定通りですが、c1のビショップを変えられるとd2のマスが手薄になるので、このようにdファイルを開けるより、16.a5など突くプランもあったかもしれません。また、検討では黒からc1のビショップを取る必要はないという話も出ました。どうせ白から取る事になるので、17…Kb8ぐらいで18.Bxf4 Qxf4ならdファイルを使える黒に不満が無くなるという事です。
18…Qb6??
問題の一手です。a7を守る手ですが、これではQがb6に縛り付けられてしまう(19…Qc5には20.b4)上にこの後ポジションの改善の方法がありません。これでは完全に白良しになってしまいます。18…b6 Ra2 19.Kb8 Rca1 20.Rd6 などと進んで行くのが読みでした。しかし、18…Qf4という手も成立する様です。c1のルークに当たっているため、a7を取ることが出来ません。これでは本譜のようにaファイルにルークを重ねる前に黒がdファイルにルークを重ねる事ができてしまうので、クイーンサイドからの攻めを諦めるしかありません。
19.Ra2
個人的に好きな一手です。ただ、言われたことを丸暗記していると19.Ra4を指してしまいそうですが、ここではRa2の方がベターだと思います。いや、ベターかどうかは難しいところですが、展開として分かりやすく白良しを維持できる手だと思います。19.Ra4では4段目からの横利きと言うメリットがありますが、b4を指しづらくなりますし、そもそも4段目を横に利いている事、横移動出来る事がこの局面で重要でしょうか?19.Ra2ではbポーンをつけば2段目を守ることができ、前述したc1のビショップが消える事によるd2のマスが手薄になった問題、f2の守りが一枚消えた問題を一挙に解消できます。(試合では特に生きませんでしたが…)
19…Rd7 20.Rca1 Kb8
実はこの辺りまで、白良しと思いつつも半信半疑だったのですが、20…Kb8を見て白良しと言う判断に若干自信が出てきました。20…Rhd8 21.Rxa7 Rd1+ 22.Rxd1 Rxd1+ 23.Qxd1 Qxa7が若干面倒くさそうに思えましたが、ワンポーンアップですし、キングのポジション等を考えても勝ち切れるでしょう。