World Youth Chess Championship 2010 Games (R.7-9)



http://wycc2010.chessdom.com/

 

World Youthもいよいよ終盤戦です。疲れがたまってくる頃ですが、響くんはまだ良いペースを保っています。残りの試合でポイントを重ね、レイティング+50で終えてほしいと思います。

 

R.7

Sakai Hibiki (1983,JPN) 0-1 Topak Engin (2214,TUR)

R.8

Petrovski Igor (2154,MKD) 0-1 Sakai Hibiki (JPN, 1983)

R.9

Sakai Hibiki (1983,JPN) 0-1 Berchtenbreiter Maximilian (2238,GER)

 

 

Sakai Hibiki (1983,JPN)

Topak Engin (2214,TUR)

World Youth Chess Championship 2010 (7)

 

1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Bd3 Qc7 6.Nc3 b5 7.a3 Bb7 8.0–0 Nf6 9.Kh1 Bc5 10.Nb3 Ba7 11.f4 h5 12.e5 Ng4 13.Ne4 [黒は全ての駒を展開して態勢を整える前に、2ビショップの力を借りて白キングに向かって直接スレットを作り出します。対して白は、中央のキングを狙いつつ黒の脅威となるピースを交換しにいきます。どちらも主張するところがあり、アンバランスなゲームになるのが2...e6シシリアンの一つの特徴と言えるでしょう。]




13…Bxe4 14.Bxe4 Nc6 15.Qf3 Qb6 16.Bd2 Rc8
[16...Nf2+? 17.Rxf2 Qxf2 18.Bxc6!] 17.Be1 g5! [e5ポーンを弱体化させる] 18.Bxc6?!= [18.g3 Hibiki] 18...Qxc6 19.fxg5 Qxf3 20.gxf3 Ne3 [20...Nxe5? 21.Bc3]




21.Rf2?
[21.Bf2! Rc7 (21...Nxf1 22.Bxa7 Rxc2 23.Rxf1 Rxb2+-) 22.Rfc1 Nc4 23.Bxa7 Rxa7 24.f4± Hibiki)ということですが、私は24…Nxb2だったら白に決定的なアドヴァンテージがあるとは思いません。白がナイトをd6f6に持っていく間に、黒はKe7-Rc8から反撃するでしょう。] 21...Nc4 22.Re2 Nxb2 23.h4 0–0 24.Kh2?! [24.Bb4 Rfd8 25.Na5 Rc7 26.Rb1 Nc4= Hibiki] 24...d5 25.exd6 Rfd8 26.c3?? Na4 [白のポーンは全て弱く、守ることができません。この時点で勝負ありかと思います。]




27.Rc1 Rxd6 28.Nd2 Rxc3 29.Rxc3 Nxc3 30.Ne4 Nxe4 31.fxe4 Rd3 32.Bb4 Bb8+ 33.e5 Rd5 34.Bc3 Kg7 35.Bb2 Kg6 36.Kg3 Rd3+ 37.Kg2 Ba7 38.Kf1 Bd4 0–1

 

Petrovski Igor (2154,MKD)

Sakai Hibiki (1983,JPN)

World Youth Chess Championship 2010 (8)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Bb5+ [ここまでシシリアンのゲームは全てメインラインでしたが、ようやくサイドラインのゲームになりました。] 3…Bd7 4.Bxd7+ Qxd7 5.c4 Nf6 6.Nc3 g6 7.d4 cxd4 8.Nxd4 Bg7 9.f3 0–0 10.Be3 Rc8 11.b3 Nc6 12.Nde2 Qd8 13.0–0 Nd7 14.Qd2 a6 15.a4 Qa5 16.Rfd1 Nc5 17.Rab1 Rab8




18.b4!
[白の狙いの1手でしょう。] 18...Nxb4 19.Nd5 Nxd5 [19...Nc6? には20.Nxe7+! からエクスチェンジダウンです。ここはクイーンをあきらめ、マテリアルバランスを崩して勝負します。] 20.Qxa5 Nxe3 21.Rdc1 Nd3 22.Rc3




22...Nxc4?!±
[すぐに22…Bxc3とルークを取るのは、23.Qxc3で次にどちらかの黒ナイトが落ちるので論外です。22...Rc5! 23.Qxa6 (23.Qb6? Bxc3 24.Nxc3 Nxc4 25.Qa7 Rbc8 26.Ne2 Na5) 23...Bxc3 24.Qa7 Rbc8 25.Nxc3 Nxc4= Hibiki] 23.Rxc4 Rxc4 24.Qd5 Ne5 25.f4?! [25.Rxb7 Re8 Hibiki] 25...e6 26.Qxd6 Nc6 27.e5 Rxa4 28.Qc7 Bf8 29.Kf1?! [私だったらここは29.h3h2にキングの逃げるマスを作ります。キングがセンターによるとターゲットになります。] 29...Bc5 30.Rc1 Ra5! [白クイーンのいけるマスがほとんどなくなったところに注目してください。]




31.Ng3?
[31.Rb1= Hibiki)には31…Rb5とあて、32.Rxb5 axb5ならbポーンが走り出します。評価しにくいポジションです。] 31...Rb5 32.Ne4 Bb6 33.Qd7 Rb4 34.Nf6+ Kg7 35.g3 Be3 36.Re1 Rd8 37.Qc7 Bd2 38.Re2 Rb1+ 39.Kg2 Ba5! [ついにクイーンを捕まえました!]




40.Qd6 Rxd6 41.Ne8+ Kf8 0–1

 

Sakai Hibiki (1983,JPN)

Berchtenbreiter Maximilian (2238,GER)

World Youth Chess Championship 2010 (9)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be3 e5 7.Nb3 Be6 8.f3 h5!? [”Topalov’s Private Jungle”] 9.a4 b6 10.Qd2 Qc7 11.Be2 Nbd7 12.0–0 Be7 [この形になると黒のh7-h5は九割方、無駄となります。h7-h5の代わりに0-0としてなければいけない形です。]




13.Nd5 Bxd5 14.exd5 Qb7 15.c4 a5 16.Nc1 Nc5 17.b4! axb4 18.Qxb4 Nfd7 19.Nb3 Qc7 20.f4!
[17.b4! とともに私自身が勉強になった手です。] 20…Bf6 21.Ra2 g6 22.fxe5 Bxe5 23.Nd4 Bg7




24.Qb1!?
[この手の直接の意味はよく分からないのですが、たぶん面白い手でしょう。24.Nb5 Qb8とするのが最も自然に見えます。] 24…Ne5 25.Qb5+ Qd7 26.Qxb6 0–0 27.Qb4 Rxa4 28.Rxa4 Nxa4 29.Nb5 Ra8 30.Bd4 Nc5 31.Nxd6?? [31.Bxc5 dxc5 32.Qxc5± Hibiki]




31...Nf3+! 32.Kh1
[32.Bxf3 Bxd4+ 33.Kh1 Qxd6-+] 32...Qxd6 0–1 [33.Bxg7 Qxh2#があるため、白はピースダウンを免れません。最後はブランダーで決着がつきましたが、そこまでの指し廻しは成功していたと思います。]


Khanty-Mansiysk Olympiad Review (2)

WRITTEN BY

Yamada Kohei 

 


Day2

 

2Rの相手はドミニカ共和国。アルゼンチンと比べるとレーティングは落ちますが、2400クラスが1人、230022004人と、バランスが良いチームです。もちろん日本より順位は上ですが、もちろん日本チームとしては勝つつもりでした。Chessresults,comで結果を確認すると、ドミニカチームのメンバーが4人しか出てきません。実は公式HPのほうに5人目がいたのですが、われわれは全く気がつかず、1Rのゲームを確認したうえで僕が抜け番になりました。

 

ところが当日の朝になり、朝食を食べて戻ってきた龍二さんと塩見さんが、ドミニカの5人目とエレベーターで遭遇。ボードペアリングをみると確かに当たりが違います。ですが、朝の早い段階だったためにプレパレーションの時間は十分にありました。小島は部屋で、他3人はMishaの部屋でそれぞれプレパレーションし、会場に向かいました。

 

Munoz Lisandro (2391,DOM,IM)

Kojima Shinya (2334,JPN,FM)

Khanty-Mansiysk Olympiad Men (2)

 

日本チームはこの日、通路沿いでの対局でしたが、通路からはっきり見えるのは1番ボードの小島のゲームくらいでした(南條のゲームもなんとなく見えましたが)。この日は途中から日本チームの通訳兼案内を務めてくれたアーニャも観戦しに来ていました。

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.e3 Bg4 5.Qb3 Qb6 6.Nc3 e6 7.Nh4 Bh5 8.h3 Be7 9.g4 Bg6 10.Nxg6 hxg6 11.Bg2 Na6 12.Bd2 Nd7 13.Na4 Qxb3 14.axb3 f5!




この辺りまでは完全に小島のプレパレーションだったようです。
14…f5は僕の第一感でもありました。白からのe4を止めておき、これは黒に不満なしと僕は判断しました。

 

15.Ke2 Kf7 16.f3 Bf6 17.f4 Nc7!?

 

非常に打開の難しい局面ですが、この手を見て小島が勝ちにいってるな、と思いました。僕ならば17…Be7 18.g5 Rh4のような手から考えるでしょう。Nc7d5のマスをサポートし、f6のビショップの利きを活かしてc5を突くという意図があります。

 

18.Nc3 Nb6 19.Kd3!

 

黒がセンターへ反撃してくるのを見越して、キングでサポートに行きます。

 

19…Rhd8 20.Ne2 c5?!




おそらく両者が想定していた局面だと思いますが、この局面で黒から戦端を開くのは少々危険です。体勢が整っている白からの反撃に注意しなくてはなりません。

 

このあたりで女子チームを見に行き、会場を一周して戻ってくると同じく女子チームの様子を見に行くらしいMishaとすれ違いました。その時に一言「みんなうまく戦っている」と言っていたので、龍二さんと塩見さんも悪くない形勢であることが分かりました。もっとも南條がワンポーンダウンで猛攻していたのは見ていたので、そこまで楽観はしていなかったのですがw

 

戻って局面をみると、南條のところはごちゃごちゃしていてよくわかりませんが、一目相手の形勢が良さそうです(実際にあとでゲームをみると実は南條のほうにもかなりチャンスがあったのですが)。

 

21.Ba5

 

そして1番ボードではいい手がとんできました。小島もやや苦しそうです。

 

21...Na6 22.cxd5 exd5 23.Rhc1 Rac8 24.Nc3

 

ここまで進んで白の優位がはっきりしました。すべてのピースが急所に利いており、狙うべき弱点もたくさんあります。下二つのボードは見えませんでしたが、相手の様子を見るとそれほど困ってるようにも見えません。このあたりで日本の形勢が悪いことを悟りました。

 

24…cxd4 25.exd4 Rc6




小島は
d4を孤立させておいてから受けに回ります。僕はというと、女子の試合を見に行った後、上位チームが対局するホールのほうでモンゴル−アメリカ戦を見に行っていたため、問題の瞬間を見逃してしまいました。ちなみにGundavaa – Hikaru戦は遠くから見ていると、どこに何があるかもわからない変なチェスでした。

 

26.b4??

 

衝撃のブランダーです。当然26.Nb5と跳ねておくところでしょう。以下26…Ra8 27.Bd2! Rxc1 28.Rxc1 Ke6 29.Ba5! くらいで白優勢です。

 

26...Rc4!=

 

直前にできたd4の弱点がクローズアップされる局面になり、黒に楽しみが出てきました。僕が戻ってきたときにはこの局面になっており、いつの間にか難しくなっているので驚きました。しかし、まだ白にはいくつかチャンスがありそうなので油断はできません。

 

27.Ne2 Nxb4+ 28.Bxb4 Rxb4 29.Rc7+ Kf8 30.g5




30…Be7
には31.Rxa7で黒の次の手が難しそうです。僕が考えていたのは31…Nc4ですが、32.Kc3! Rxb2 33.Bxd5! と気持ちのよい手が続きそうです。やはり少し悪いかと思っていたのですが…。

 

30…Na8!!

 

これしかないという素晴らしい勝負手です。7段目のルークを一つ追い払うことで、Rxa7の脅威を減らします。

 

31.Rc2 Be7 32.Rxa7 Rb3+ 33.Nc3 Nc7 34.Re2 ½–½

 

局面は完全にイコールになり、ここでドローです。難しいゲームでしたが、大きな0.5Pでした。しかしマッチは黒をもった小島、龍二さんのみドローで、残り二つを負けてしまい、13での負けとなりました。

 

女子のほうは菊池さんがプレパレーション通りに良くなって、最後は2ルークアップだったのですが、惜しいことに時間が切れてしまいました。前田さんも難しい中盤をうまく乗り切ってやや良しでエンディングを迎えたのですが、図で



                Maeda Haruno-Hamza Amira

                               Position After 31...Bb3

 

32.Nxb3

 

と指して局面が複雑になってしまいました。もちろんまだドローはあると思いますが、時間切迫の状況では正確に指すのは大変です。ここはとりあえず32.Kd2 Bc4 33.Kc3のようにクイーンサイドにキングを持っていくべきでした。白のd4ポーンは弱いですが、それを狙う黒のピースはナイトしかありませんからキングで守っていれば十分です。キングが相手よりも戦場に近く、遊んでいたナイトもd3c5と活用できそうですから、白良しのエンディングだったでしょう。中盤は非常にうまく指していただけに残念でしたが、こういう勝負所での指し手は試合数を多く積むことで改善されると思います(実際に僕がそうでした)。今回、前田さんは2番ボードということもあり、思うような結果が出なかったとは思いますが、個人的に2年後のオリンピアードは非常に期待していますので、頑張ってほしいと思います。

 

この日、ベトナムはNguyen Anh DungMamedovを下しアゼルバイジャンに勝ち。前回9位のベトナムですから入賞候補かと思ったのですが、結局大会が終わってみると下に沈んでしまいました。Topalov率いるブルガリアはクロアチアに負け。1R日本と対戦したアルゼンチンはハンガリー相手に12番ボードが引き分けたものの、3番ボードのPeraltaPolgarにつぶされて負け。大会前半のPolgarは全盛期を見ているかのような強さでした。結局アメリカもモンゴル相手に3.5Pとって圧勝。上位チームはどこもこのラウンドからエースを出してきたために、あまり話題になるような結果はありませんでした。


全日本学生選手権2010

全日本学生選手権のお知らせです。

 

日時 20101226日(日)-27日(月)

会場 国立オリンピック記念青少年センターhttp://nyc.niye.go.jp/

センター棟 300号室・301号室・509号室

形式 6Rスイス式

タイムコントロール 60分+初手より130秒加算

参加資格 JCA会員の大学、大学院生

(海外の大学在籍の日本国籍以外の大学生及び大学院生もご参加頂けます)

参加費 1000

競技主任 学生チェス連盟代表 小島慎也

 

参加申込み方法

メールで小島慎也s07385sk(at)sfc.keio.ac.jp>までお申し込み下さい。

(※at@に置き換えて下さい)

申し込み締切りは12/20(月)です。

 

備考

チェスクロック、チェスセットをお持ちの方は持参でお願いします。

2日目を除き、予約byeには1/2ポイントが与えられます。

集合時間に不在の場合、1Rbyeになることがあります。

当日申込みは、原則的に1Rbyeとなります。

タイブレークは1.Buchholz2.Median Buchholz3.Progress4.Rating Sumの順。

JCA公式戦です。JCA未加入の方はあらかじめ入会手続きを完了しておいて下さい。

優勝者は5月に行われる全日本選手権の参加資格を得ます。優勝者が全日本の参加資格をすでに取得している場合は2位が、2位がすでに取得している場合は3位がというように、権利は繰り下がります。

 

トーナメントスケジュール

 

12/26

09:45 集合

10:00 1R開始

14:00 2R開始

17:00 3R開始

12/27

10:00 4R開始

14:00 5R開始

17:00 6R開始

19:30 表彰式

(進行状況により、多少は開始時間の変更があります)


AZB48

吉祥寺オータムチームのリストが出ました。

 

http://www.ne.jp/asahi/chess/kichi/

 

要くん、ステキな名前をありがとう


World Youth Chess Championship 2010 Games (R.4-6)

R.4

Sakai Hibiki (1983,JPN) 1-0 Martinez Romero Martin (2203,COL)

R.5

Bukavshin Ivan (2450,RUS,FM) 1-0 Sakai Hibiki (JPN, 1983)

R.6

Sakai Hibiki (1983,JPN) ½–½ Hasenohr,Benedict (2181,SUI)

 

 

Sakai Hibiki (1983,JPN)

Martinez Romero Martin (2203,COL)

World Youth Chess Championship 2010 (4)

 

1.e4 g6 2.d4 Bg7 3.Nc3 d6 4.f4 c6 5.Nf3 b5 6.Bd3 Bg4 7.Be3 b4?! [オープニングはデータベースで細かくチェックしていませんが、私はここでb5-b4は少し早いのではないかと思います。白のa2-a4に対してb5-b4なら分かりますが。すぐにこのポーンがターゲットになります。] 8.Ne2 Nf6 9.Qd2 a5 10.a3! bxa3 11.Rxa3 [×a5] 11...0–0 12.0–0 Bxf3 13.gxf3! [正しい取り返し方です。13.Rxf3? には13...Ng4で黒マスビショップが消される上に、f3のルークはミスプレースです。]



 

13...Nh5 14.Rfa1 e5 15.f5 Qh4 16.Kg2 [17.Bg5を狙うため、h3のマスをカバーします。] 16...h6 17.Bf2 [17.Bxh6?? Bxh6 18.Qxh6 Nf4+] 17...Qe7 18.Rxa5 Rxa5 19.Rxa5 g5 20.Bc4?! [20.d5! cxd5 21.Rxd5+- (Hibiki)] 20...d5! 21.exd5 e4!? [私はこの手は少しでも局面を紛らせる実戦的な判断だと思います。ここから黒も色々と手を作ってきます。]




22.Qe3 Qb4 23.Qc3
exf3+ 24.Kxf3 Qd6 25.Kg2 Re8 26.dxc6 Nxc6 27.Ra6 g4! [これは面白い1手だと思います。直接何か狙っているわけではありませんが、白からf3h3のマスを奪っておくことは、将来、役に立つでしょう。] 28.Qb3 [28.Rxc6?? Qxc6+はありませんが、28.Bxf7+ Kxf7 29.Rxc6 Qd5+ 30.Kf1はありだったかと思います。30…Rxe2が気持ち悪いですが、31.Kxe2 Nf4+ 32.Kd2で受け切れています。]




28...Rxe2
[Bxf7+d5がスレットになっているので、ほぼ強制手です。] 29.Bxe2 Nf4+ 30.Kf1 Nxe2 31.Ra8+! [31.Kxe2? だと、31...Nxd4+ 32.Bxd4 Qxa6+ 33.Qd3 Qd6 34.Bxg7 Qxh2+ 35.Kd1 Qg1+ 36.Ke2 Kxg7のようなラインが考えられます。] 31...Bf8 [31...Kh7? 32.Qxf7!] 32.Kxe2




32...Qxh2
[32...Nxd4+ 33.Bxd4 Qxd4のほうが良いと思いますが、いずれにせよ、白は問題なく勝てるでしょう。] 33.Qa3! Nb8 [33...Nxd4+? 34.Kd3!] 34.Qg3! Bd6 35.Qxg4+ Kf8 36.f6! [Qc8#を防ぐ術がありません。] 36...h5 37.Qc8# 1–0 [シャープなポジションでも競り負けなかった、これも良いゲームだと思います。]

 

Bukavshin Ivan (2450,RUS,FM)

Sakai Hibiki (1983,JPN)

World Youth Chess Championship 2010 (5)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be3 e5 7.Nb3 Be6 8.Qd2 Be7 9.0–0–0 Ng4 10.g3 Nxe3 11.Qxe3 Nd7 12.Kb1 Qc7 13.f4 Nb6 14.f5 Bc4? [響くんはここがミスだったと考えています。本譜はd5のマスのコントロールを白に与え、ポジション的に黒が厳しくなります。14...Bxb3 15.cxb3 Rc8= Hibiki]




15.Bxc4 Nxc4 16.Nd5 Qd8 17.Qe2 b5 18.h4 Rc8 19.Nd2 Nb6 20.Nxb6 Qxb6 21.Nf1 Rc4 22.c3 Qb7 23.Rd5 0–0 24.Qd3 Rfc8 25.Ne3 R4c6 26.a3!
[d5のマスをがっしりおさえ、黒のバッドビショップに対してグッドナイトを持ち、さらには白にはキングサイドのポーンを突いていくという、強力なプランがある中、この落ち着いた1手です。]




26...Bd8 27.Nc2 Be7 28.g4 Rc5 29.Ne3 a5 30.g5 b4 31.cxb4 axb4 32.a4 b3 33.Rxc5 dxc5 34.Qc4 Ra8 35.Rd1 Qc6 36.Nd5 Bf8?
[36...Kf8 Hibiki]




37.f6! Rxa4 38.Ne7+ Bxe7 39.fxe7 g6 40.Qd5 Ra1+ 41.Kxa1 Qa4+ 42.Kb1 Qa2+ 43.Kc1 Qa1+ 44.Kd2 Qxb2+ 45.Ke3 1–0

 

Sakai Hibiki (1983,JPN)

Hasenohr,Benedict (2181,SUI)

World Youth Chess Championship 2010 (6)

 

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nc3 Bb4 4.e5 c5 5.a3 Bxc3+ 6.bxc3 Ne7 7.Qg4 cxd4 8.Qxg7 Rg8 9.Qxh7 Qc7 10.Qd3 dxc3 11.f4 Nbc6 12.Ne2 Bd7 13.Nxc3 a6 [やや変わった手順のあと、メインラインのポジションに落ち着きました。お互い、10…Qxe5+11.Ne2 dxc3 12.Bf4という展開も考えたと思いますが、白が良いという結論を出したのでしょう。] 14.Bd2 [14.Rb1 Nf5 15.g4 Nfe7 16.Rg1 Rh8 Hibiki] 14...0–0–0 15.Rb1 Na5 16.g3 Nf5?! [16...Nc4が普通に良いと思います。] 17.Bh3 d4 18.Ne4 Nc4 [ここが白のチャンスです。]




19.Bxf5! exf5 20.Qxc4! fxe4
[20...Qxc4?? 21.Nd6+] 21.Qxc7+ Kxc7 22.Ba5+ Kc6 23.Bxd8 [23.Rb6+! Kc5 24.Rd6 e3 25.0–0 e2 26.Rb1+- Hibiki] 23...Rxd8 24.0–0 Bf5 25.Rfe1 [狙いは26.g4 Bxg4 27.Rxe4.白が怖いのはセンターの2ポーンのみです。] 25…Kd5 26.Rxb7 e3




27.Re2?
[この辺りから雲行きが怪しくなります。27.Rc7 Rb8 28.h4 Rg8 29.Kg2 Be4+ 30.Kh2+- Hibiki] 27...Ke4 28.Kg2 [28.Rxf7 Kf3 29.Rxf5 Kxe2 30.Kg2 Kd2 31.e6 e2 32.Re5 e1Q 33.Rxe1 Kxe1 34.f5 Rc8 35.e7 Rxc2+ 36.Kh3 Re2 37.f6 d3 38.f7 d2 39.f8Q d1Q 40.e8Q Rxe8 41.Qxe8++- Hibiki] 28...Bg4 29.Re1 Rh8 30.Rb4 Bh3+ 31.Kg1 Rc8 32.Rc1 Rc3 33.Ra4 Bg4 34.Kf1 e2+ 35.Ke1 Ke3 36.Rxa6 Bf5 37.Rd6 Rxa3




38.Rxd4?
[パニックに陥ったように見えます。が、ちょっとでも間違えると簡単に白が負ける可能性があるため、「最低でもドロー」という方向へ逃げておくのも悪くないチョイスだと思います。38.Rc6 Ra8 39.Rc5 Be4 40.e6 fxe6 41.Re5 Kf3 42.Rxe6 Rh8 43.h4 Rg8 44.Kd2 Hibiki] 38...Kxd4 39.Kxe2 Bg4+ 40.Kf2 Re3 41.c4 Re2+ 42.Kg1 Bh3 43.c5 Rg2+ 44.Kh1 Rd2 45.Kg1 ½–½


Twitter -小島慎也-

小島君のTwitterです。

 

http://twitter.com/Shinya_Kojima

 

新鮮で有意義な情報がいち早く流れると思います。ぜひどうぞ。


Khanty-Mansiysk Olympiad Review (1)

WRITTEN BY

Yamada Kohei

 

 

チェスオリンピアードは、競技チェスを志す者ならば、誰でも一度は夢見る舞台でしょう。チェスを本格的に始めてから9年目、ようやくその舞台に立つことができました。残してきた結果は、自分が期待していたようなものではありませんでした。やはり世界は甘くなく、「強豪」とは呼べない国に苦戦することが多々ありました。ですが、日本の皆さんの温かい(あるいは厳しい?)声援のおかげで、11Rを戦いきることができました。まずはそのことにこの場を借りて感謝したいと思います。

 

ですがもちろん日本代表としての務めは、11Rを戦うことだけではありません。その中で得た知識や経験を日本に還元し、日本の実力を底上げしていくことこそが、われわれの仕事だと思います。今大会は、前回に引き続きMishaをコーチとして迎え入れ、入念な準備をして挑みました。そんななかで世界のスーパープレイヤーたちを目の当たりにし、ただ単にチェスの力や知識だけではない、いろいろなものを吸収することができました。GMの試合ならばデータベースで見ることができますが、その場にいないとわからないことがたくさんあるんだということを、思い知りました。この経験をどこかに残せないかと思っていたところに、今回の企画が持ち上がったわけです。

 

今回のレポートを書くきっかけを作ってくださった神田さん、伝える場を用意してくださった馬場さんに感謝します。

 

さて、今回のレポートではオリンピアードで僕が体験したこと、感じたことなどを、そのまま書いていこうと思います。なので、どうしても視点が偏ったり、間違ったことを書いたりすることがあると思いますが、あまり気にしないでくださいw

 

このレポートでわれわれ代表チームの感じたことや得たことが、少しでも伝われば幸いです。

 

 

Day1

 

日本からモスクワを経由して丸1日。ホテルに到着したのは9/20の午前11時でした。オープニングセレモニーから帰った後はMishaの部屋でボード順を決めます。まず小島、南條が上2つというのはあっさり決まりました。問題は残る3つにだれが入るかです。チームがどういった戦略をとるかによっても変わってくるため、ここはかなり悩みました。僕の中での実力順は、龍二さん>=塩見さん=山田という感じだったので、あえて自分が3番ボードで指すとMishaに宣言。4番ボードは2人に取ってもらって、僕は上相手に一発いれにいく、というのがいいんじゃないかという提案です。あとから考えると、この順番決めが重大な意味を持つことになってしまいましたが、そんなことは知る由もありません。

 

日本の1Rの相手はアルゼンチンでした。2600GMFlores Diegoを筆頭にGM5人そろった隙のないチームです。女子チームは朝早くからMishaとプレパレーションを行っていたので、男子は昼食1時間前くらいから準備開始。予想されるラインを細かく見ることも重要ですが、今回僕は相手の棋風を把握していくことを重視していました。チーム戦である以上、ポイントを取るのは絶対条件。盤外の読みも大事になってくるだろうと思っていました。

 

Yamada Kohei (2071,JPN)

Lafuente Pablo (2565,ARG,GM)

Khanty-Mansiysk Olympiad Men (1)

 

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.Nf3 e6 5.Be2 Nd7 6.0–0 Bg6 7.Nbd2 Nh6 8.c3 Be7 9.Ne1 0–0 10.Ndf3 c5

 

この手を指されて少し動揺しました。プレパレーションの段階ではMishaも僕もf6の反撃に目が行っていたため、あまりこの手を真剣に考えていなかったのです。

 

11.Nd3 cxd4 12.cxd4 Rc8 13.Bd2!?

 

ゆっくりピースを展開して悪いわけがない、と思い指しましたが、これでは黒の思うつぼです。13.Bxh6 gxh6 14.Rc1 Qb6 15.Qd2のほうを選択すべきでした。ダブルビショップはなくなりますが、Nf5が消え、相手のポーンの形も崩れているのでいい勝負でしょう。

 

13...Qb6 14.Rc1!? Rxc1 15.Qxc1 Nf5³




早くも形勢を損ねてしまいました。しかしチェスは難しいもので、
2500の若手GMでも、この差をすぐに勝ちにつなげるのは難しいのです。

 

16.Bc3 Bh5! 17.Rd1!?

 

16…Bh5! と簡単に指されるとGMの強さを実感しますが、17.Rd1が狙っていた手です。実戦的には好手だと思います。コンピュータはすぐに17...Bxf3 18.Bxf3 Nxd4 19.Bxd4 Qxd4 20.Qc7 Rd8!!というようなラインを示してきますが、実戦でこれに踏み込むのは勇気が要ります。確かに21.Qxb7? には21…Bc5!という手があり黒良しですが、1Rで格下相手に17…Bxf3とは指してこないと思っていました。

 

17...Rc8

 

こちらが僕の恐れていた手です。ビショップをピンにしてd4への圧力を強めます。次の手にはかなり時間をかけたのですが、結局間違えました。

 

18.Nde1?!

 

ここでは自然に18.Qd2! と駒の位置を改善しておくべきでした。もし18…Bxf3ならば19.Bxf3 Nxd4 20.Bxd5!! exd5 21.Nf4というカウンターが入ります。しかし間違えたといっても致命傷ではありません。十分にポイントは狙える形勢です。

 

18...f6 19.Qd2 fxe5 20.Nxe5 Bxe2 21.Qxe2 Nxe5 22.Qxe5 Bf6 23.Qe2




ここまで進んで山場は乗り越えたと思いました。白はビショップの働きがいまいちですが、
d4を支えていれば黒から強烈な攻めはなく、e6のポーンをいじめる楽しみもあります。Lafuenteも少し焦り出したようでしきりに顔をしかめていました。ここで周りを見ると龍二さんはセンターに相手のポーンが突き刺さっており、南條は知らない変化に誘導されたらしく潰れ形になっています。ポイントを取るのはここしかない、と思って気を引き締めました。

 

23...Rc6 24.Nf3 Qa6 25.Qe1!

 

この手を着手して時計を押す直前、Lafuenteが大きく舌打ちをしました。驚いて顔を見ると、表情も険しくなっています。黒としては特に問題のない局面ですが、勝ちに行こうとすると大きなリスクを伴う局面でもあります。ところが相手の動揺がこちらにも感染してしまいました。ここまで比較的冷静に指していたにも関わらず「ドローを取れるかも知れない」と思い始めてしまったのです。

 

25...Rc8 26.h3 Re8 27.Ne5?

 


 

魅入られるように指した手ですべてがぶち壊しになりました。もちろん27.a3で何も問題ありません。

 

27...Bxe5 28.Qxe5 Qxa2 29.g4 Nh4 30.Qc7 Qa4! 31.Rd3 Qa1+ 32.Kh2 Qf1 33.Qg3 Rf8 34.f4 Rxf4 35.Be1 Nf3+ 0–1

 

いい勝負だったはずがブランダーで決着してしまいました。結果は残念でしたが、個人的には学ぶところも多く、悪くないゲームだったと思っています。

 

南條は敗勢だったチェスから驚異的な追い上げを見せるものの、負け。小島も僕が終わったときには不利なエンドゲームを戦っており、ポーンダウンが確定したところでリザイン。結局日本チームは男女ともに見どころなく0-4負けを喫しました。

 


試合後、ロシア
1−アイルランド戦を見に行くと、SamGrischukと死闘を繰り広げています。遠目に見た限りではクイーンサイドは完全に閉じた状態になっており、後はキングサイドを止めればドローというところでした。結局Samは終始安定した指しまわしを見せて、73手でドロー。完敗を喫した日本にとっては明るいニュースでした。

 

ホテルに戻り夕食を取った後、女子はそのままMishaとの検討に入ります。僕と小島はその間、部屋でその日指されたゲームをチェック。いいゲームやネタになる(?)ゲームの情報はここで仕入れます。個人的にはSmeetsが一瞬で負けたのも気になりますが、Lin Chieh-Sheng(1736!!) 10 Can Emre(2500)には驚かされました。やはり1Rは特別な何かがあるのかも知れません。


Selected Games(51)

ANNOTATED BY

Kojima Shinya

 

 

オリンピアードのゲームから一つ、解説を書かせていただきます。9Rが終わった時点で、私は143ドローと大きく負け越しており、日本チーム大将としての責任を果たせていませんでした。10Rも負けるようでは日本に帰国できないと覚悟していた折、発表された10Rの相手は、なんとドレスデンオリンピアードの10Rと同じボツワナでした。前回のボツワナ戦では私のみが負けて非常に悔しい思いをしたため、私はこの再戦を立ち直るチャンスと捉え、試合に臨みました。

 

Khetho Phemelo (2266,BOT,FM)

Kojima Shinya (2334,JPN,FM)

Khanty-Mansiysk Olympiad Men (10)

 

1.e4 c6

 

全日本からのプリパレーションであるカロカンを、ここでも採用します。ちなみに私がドレスデンで敗れた相手は、3Bで弘平君と対戦です。

 

2.d4 d5 3.exd5 cxd5 4.c4

 

4R,8Rに続き、ハンティマンシスクで3回目となるPanov Botvinnikです。もちろん、こちらも以前の試合に改良を加えて準備済みです。

 

4…Nf6 5.Nc3 Nc6

 

8Rでは 5…g6 6.Qb3 Bg7 7.cxd5 0–0 8.Be2 Na6 9.Bf3 Qb6 10.Qxb6 axb6 11.Nge2 Nb4 12.0–0 Rd8 13.d6 exd6?! [13...Rxd6! 14.Bf4 Rd7 15.Rfd1 Nfd5 ] Denny K.-Kojima S.,Khanty-Mansiysk Olympiad Men (8)と進めて、白にチャンスを与えてしまいました。5…g6は慶應で尚広君と共に研究していた変化でしたが、明らかに準備が足りていませんでした。そこで10Rでは、4Rと同じ変化で対応します。

 

6.Bg5!?

 

非常にシャープな変化になります。より一本筋で有名なのは、6.Nf3からクイーンを交換してエンドゲームに入るラインでしょう。しかし、これに対して私は珍しい手を用意していました。

6.Nf3 Bg4 7.cxd5 Nxd5 8.Qb3 Bxf3 9.gxf3 e6 10.Qxb7 Nxd4 11.Bb5+ Nxb5 12.Qc6+ Ke7 13.Qxb5 Nxc3!? [13…Qd7 14.Nxd5 Qxd5 15.Qxd5 exd5]14.bxc3 Rb8 15.Qc5+ Ke8 16.Qxa7 Bd6 17.Qa4+?! [17.Rg1,17.Qd4,17.0–0] 17...Qd7 18.Qxd7+ Kxd7 Chumfwa S. – Kojima S., Khanty-Mansiysk Olympiad Men (4)

 

6…dxc4 7.Bxc4 h6!

 

近年人気が上がってきており、勝率も良い手です。よりソリッドな局面を求めるならば、7…e6も悪くなく、典型的なIQPポジションになります。こちらの変化は桑田君が好みます。

 

8.Bf4 e6 9.Nf3 Bd6 10.Ne5!? N

 


 

この手を私はデータベースで見つけることができませんでした。おそらく新手でしょう。ここから自分の頭で考え始めます。

 

10...0–0

 

意外かもしれませんが、私はこの手に10分以上費やしました。10…Bxe5から孤立したeポーンを狙おうとも考えましたが、絶対に負けてはいけないゲームであるため、慎重に指すことに決めました。

 

11.0–0 Ne7

 

二つのナイトでd5のマスをコントロールします。IQPポジションでは自然なアイディアでしょう。

 

12.Qf3 Ned5 13.Bg3 a6

 

ここは素早くビショップをb7に上げたいところですが、うまくいきません。まずはNb5を防いで様子を窺います。13...b6?! 14.Nb5!

 

14.Rfd1

 

この手の評価は難しいところです。dファイルにルークを回せば15.Nxd5がスレットになりますが、なぜ14.Rad1ではなく、14.Rfd1なのでしょうか。私はIQPポジションでは、ほとんどの場合にRad1,Rfe1というセットアップを好みます。それはセミオープンファイルに回したe1のルークを、e5のサポートとして使い、チャンスがあればNe5-Nxf7といったスレットを作りたいからです。しかし、cファイルもオープンファイルなので、Rfd1,Rac1も決しておかしな配置ではありません。皆さんの好みはどうでしょうか?

 

14...Nxc3 15.bxc3 Qc7 16.Bb3 b6!=

 


 

この試合で最も慎重に考えて指した手です。黒は白マスビショップの展開のみが問題となっており、それさえ解決できれば満足なポジションです。

 

17.Ng4!?

 

全く予想しなかった手です。17.Qxa8 Bb7 18.Qxf8+ Kxf8 19.c4 Ne4 と進めば、黒はダブルビショップを得られるため、2ルーククイーンの交換は損ではありません。

 

17...Nxg4 18.Bxd6 Qxd6 19.Qxa8?

 


 

これは驚きのブランダでした。白は19.Qxg4 Bb7=と進めるほかありません。これでも黒には何ら問題ない展開です。

 

19...Qxh2+ 20.Kf1 Qf4!

 

当然の一手です。黒は21...Qxf2#21…Ne3+のダブルスレットによって、エクスチェンジを取り返そうとします。

 

21.Ke2?

 

エクチェンジを返しては勝負にならない、との判断からこう指したのだと思いますが、まだ21.f3のほうが粘ることができるでしょう。

 

21…Qxf2+ 22.Kd3 Ne5+?!

 

勝ちをほぼ確信していましたが、ここで詰めを誤ってしまいました。試合後に同じ代表メンバーの龍二さん、元コーチのルイセンコさんとの検討で出た変化は、22...e5! 23.Qf3 e4+! 24.Kxe4 Re8+ 25.Kd3 Bf5+ 26.Kc4 Ne5+ –+



                                 ANALYSIS  DIAGRAM
 

と指して黒勝ちでした。

 

23.dxe5 Rd8+ 24.Ke4 Qxg2+

 

私は恥ずかしいことに24...Qe2+ 25.Kf4 g5+ でメイトだと勘違いしていました。もちろん白のキングはg3にエスケープできます。

 

25.Ke3 Qxa8



 

かなり時間をかけたうえで、3ポーン多い2ルーククイーンのこの局面は、十分に黒が勝ち切れると判断しました。それでも白にはまだ、ちょっとしたトリックが残っています。

 

26.Rxd8+ Kh7 27.Bc2+ g6 28.Rf1 Qb7 29.Bxg6+

 

この手も予想済みです。白がのんびり来るようならば、黒はQb7-Qc7からe5c3を狙って楽に勝てるでしょう。

 

29…fxg6!

 

29...Kxg6? 30.Rg8+ Kh7 31.Rfg1 h5 32.R1g7+ Kh6 33.Rg1=

 

30.Rff8 Qg7!



 

この局面で間違えないか冷や冷やしたと、試合後にMishaにコメントをもらいましたが、さすがにそれはありえません。黒はビショップを返してe5を取れば、後は丁寧に指して問題なく勝てます。30…Qc7?? 31.Rh8+ Kg7 32.Rdg8+ Kf7 33.Rh7+ +-

 

31.Rxc8 Qxe5+ 32.Kf3 h5 33.Rf7+ Kh6 34.c4 Qe1 35.Kg2 h4 36.Rcf8 Qg3+ 37.Kh1 e5 38.Rf2 e4 39.Rg2 Qe5 40.Rg8 Qf6 41.Re8 Qf3 42.Rh8+ Kg7 43.Rxh4 e3 44.Rhg4 e2 45.Kh2 Qxg2+ 0–1

 


 

この試合を見て派手で面白かったとのコメントをいただきましたが、私が詰めを誤ったためにそう見えたゲームであり、本来はもっとスマートに勝たなければいけませんでした。野球で下手な外野が、本来なら楽に取れるボールをダイビングキャッチしたために、ファインプレーに見えたようなものです。それでも私にとっては大きな勉強になりましたし、嬉しい勝利でした。全体を見れば戦績が振るわないオリンピアードでしたが、最後のボツワナ、ケニヤの2戦は、楽しんで観戦していただけたのではないかと思います。


World Youth Chess Championship 2010 R.4

R.4

Sakai Hibiki (1983,JPN) 1-0 Martinez Romero Martin (2203,COL)

 

響くん、また勝ちましたね!快進撃は続きます。今のところのパフォーマンスは2425!)です。

 

24日(日)は2試合の予定です。まず、午前のラウンドはBukavshin Ivan (2430,RUS,FM)と。今日は2Rとも厳しい相手でしょうが、0.5P/2R以上とって乗り切ってほしいと思います。


                                          試合会場は海のすぐそばです


World Youth Chess Championship 2010 Games (R.1-3)



R.2
Sakai Hibiki (1983,JPN) 0-1 Gabuzyan Hovhannes (2261,ARM)
R.3
Draskovic Luka (2172,MNE) 0-1 Sakai Hibiki (1983,JPN)

World Youthは現在R.3まで終了。響くんは上位相手に一歩も引くことなく、現在2P/3Rと勝ち越しています。ギリシャからゲームを送っていただいたので、簡単に紹介したいと思います。

 

Weichhold Pawel (2291,POL)

Sakai Hibiki (1983,JPN)

World Youth Chess Championship 2010 (1)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Be7 8.Qf3 Qc7 9.0–0–0 Nbd7 10.g4 b5 11.Bxf6 Nxf6 12.g5 Nd7 13.f5 Bxg5+ [このラインは、私がチェスを覚えたてのころから知っているラインです。いろいろ理由があって、私自身はこのラインを選択しませんが。] 14.Kb1 Ne5 15.Qh5 Qd8 16.Nxe6 Bxe6 17.fxe6 0–0 18.exf7+ Kh8 19.Bh3 Rxf7 20.Bf5




20...h6?!
[これは白マスを弱くします。20...g6 21.Bxg6 Nxg6 22.Rhg1 Rf4 23.Qxg5 Qxg5 24.Rxg5 b4 25.Nd5 Rxe4 (Hibiki)] 21.h4 Bf6 22.Nd5 Rf8 23.Nf4 Qe8 24.Rxd6 Qxh5 25.Nxh5 Nc4 26.Rc6 Be5 [b2のポーンは間接的に守られています。26...Bxb2? 27.Rxc4; 26...Nxb2? 27.Nxf6] 27.b3 Nd6 [27...Ne3 28.Bg6 Rf2= (Hibiki)] 28.Rc5 Rae8 29.Bg6 Re6 30.Rd1? [30.a3 Rxg6 31.Rxe5 Rg4 32.Re1 Rxh4 (Hibiki)] 30...Bh2! [このゲームで最も印象的な1手です。h2はセンターから遠く、白キングにも向かっていないので奇妙なポジションに見えます。しかし、白ナイトの動きを制限しつつ、g1をコントロールして31.Rg1でg6のビショップを守らせないロジカルな1手です。]




31.Rh1 Rxg6 32.Rxh2 Nxe4 33.Re5 Nf2
[勝ちが速いのは、33...Rg1+ 34.Kb2 Nf2 35.Rd5 g6 36.Rd6 gxh5 37.Rxh6+ Kg7 38.Rxh5 (Hibiki)です。ここで38…b4! と突いてしまえば、白はどうしようもないでしょう。] 34.Re1 Rf5 35.Rf1 Rxh5 36.Rfxf2 Rg4 37.Rf8+ Kh7 38.Ra8 Rhxh4 39.Rxh4 Rxh4 40.Rxa6 g5 [このポーンレースは黒勝ちです。]

 


 

41.Ra7+ Kg6 42.Ra6+ Kf5 43.Ra5 g4 44.Rxb5+ Kf4 45.Kb2 g3 46.Rb4+ Kg5 47.Rb5+ Kg4 48.Rd5 g2 49.Rd8 Rh5 50.Rd4+ Kf3 51.Rd3+ Ke2 0–1 [このあと考えられるのは52.Rg3 Rg5 53.Rxg2 Rxg2ですが、黒にはhポーンが残っているので勝負になりません。上手のプレーヤーを完全にアウトプレーしたと言ってよい、素晴らしいゲームです。]



 

Sakai Hibiki (1983,JPN)

Gabuzyan Hovhannes (2261,ARM)

World Youth Chess Championship 2010 (2)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be3 [響くんはナイドルフに対して、よりモダンな本譜を選択] 6…e5 7.Nb3 Be6 8.f3 Nbd7 9.Qd2 b5 10.a4 b4 11.Nd5 Bxd5 12.exd5 Nb6 13.Bxb6 Qxb6 14.a5 Qb7 15.Ra4 [15.Bc4 Be7 16.Ra4 Rb8 17.Nc1 Bd8 18.Nd3 Bxa5 19.Rxa5 Qc7 20.Rxa6 Qxc4 21.Rxd6 0–0 22.0–0 Nxd5 23.Re1 f6 24.Re4 Qb5 (Hibiki)]



 

15...Nxd5 16.Bc4 Nf6 17.Rxb4 Qc6 18.Bd3 Be7 19.Rb6 Qd7 20.Rxa6 [20.f4 exf4 21.0–0 0–0 22.Qxf4± (Hibiki)] 20...Rxa6 21.Bxa6 0–0 22.Bd3 d5 [黒はクイーンサイドのポーンを取らせた代わりにセンターからの反撃を得ましたが、私は不十分だと思います。] 23.0–0 e4 24.fxe4 dxe4 25.Be2 Qc7 26.Kh1 Bd6 27.g3 Be5 28.c3 Qb8 29.Nd4 Qa8 [白はaポーンを守りたいところですが、30.a6?? には30…e3+があります。一見、ポーンが落ちたように見えますが、響くんは力強い解決策を見つけました。] 30.Qg5!




30...Bxd4 31.cxd4 h6 32.Qf5 Rc8 33.Bd1??=
[ここまで非常に力強く指し、あと一歩で勝ちに近づくところでのミスです。33.b4 Rc2 34.Qb5 Ne8 35.Re1 Nd6± (Hibiki)] 33...Rd8 34.Bb3 Qb7 35.Bc4 Qxb2 36.Qg6 Qxd4 37.Qxf7+ Kh8 38.a6 e3 39.a7? [このポーンは次の黒の手で落とされてしまいます。そうなると、黒のe3ポーンが強力で、白は厳しくなります。ラストチャンスは39.Be2 Qd2 40.Qc7 Re8 41.Qc4 (Hibiki)]




39...Ra8 40.Qb7 Qxa7 41.Qxa7 Rxa7 42.Re1 Ra3 43.Kg2 Ng4 44.h3 Ne5 45.Bd5 Kh7 46.Be4+ g6 47.g4 Kg7 48.Kf1 Kf6 49.Ke2 Kg5
[残りはディフェンス側のプレーヤーにとって、ただただ苦しい時間です。]

 



50.Rc1 Kf4 51.Bb1 Rb3 52.Bc2 Rb2 53.g5 h5 54.Rf1+ Kxg5 55.Rg1+ Kf4 56.Rf1+ Kg3 57.Rc1 Nc4 58.Kd3 Na3 59.Ba4 e2 60.Ke3 Nc4+ 61.Kd3 Kf2 62.Kxc4 e1Q 63.Rxe1 Kxe1 64.Be8 Rb6 65.Kd5 Kf2 66.Ke5 Kg3 67.Bd7 g5 68.Kf5 Kh4 69.Ke5 Rb3 0–1
[40手目前後のターンオーバーが勝負を決めてしまいました。しかし、これは非常に惜しかったと言ってあげたいゲームです。]

 

Draskovic Luka (2172,MNE)

Sakai Hibiki (1983,JPN)

World Youth Chess Championship 2010 (3)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Be7 8.Qf3 Qc7 9.0–0–0 Nbd7 10.g4 b5 11.Bxf6 Nxf6 12.g5 Nd7 13.f5 Nc5 [響くんのほうからR.1と違うラインを選択しました。Fischerがこよなく愛したラインの一つです。] 14.f6 gxf6 15.gxf6 Bf8 16.Rg1 h5




17.Bh3?
[17.Rg7 b4 18.Nd5 exd5 19.exd5 Bg4 20.Re1+ Kd8 21.Qf4 Kc8 22.Kb1 Qd7 23.h3 Kc7 24.hxg4 Bxg7 25.fxg7 Rhe8 (Hibiki)] 17...b4 18.Nd5 [相手はこの手に45分費やしたとのこと。結論から言えば、このサクリファイスでは決定的な攻めは得られないのでダメですが、これ以外に勝負する手もありません。] 18...exd5 19.exd5 Bxh3 20.Rge1+ Kd8 21.Nc6+ Kc8 22.Qxh3+ Qd7! [22...Kb7には23.Nxb4で黒キングの前が空くので、白にチャンスができます。しかし、もしクイーンを交換できれば、bポーンが取られても問題ありません。ここから黒の3手は、白の攻めをかわしつつbポーンを守る巧みなマヌーバリングです。]



 

23.Qh4 [響くんの読みには23.Re8+?? Kb7 24.Na5+ Kc7 25.Qxd7+ Nxd7 26.Rxa8 Bh6+ 27.Kb1 Rxa8 (Hibiki)がありました。] 23...Qg4 24.Qf2 a5 25.Kb1 Kc7 26.Rd4 Qd7 27.Rd2 Re8! [クイーンとルークのフォーク・ポジションを利用して、より多くの駒を交換しにいきます。] 28.Rde2 Rxe2 29.Qxe2 Kb6 30.Nd4 h4! [ここで白の時間が落ちました。しかし、時間落ちでなくとも次に31...Rg8からルークをプレーに参加させて黒勝ちです。] 0–1



 

ここまで非常に良いゲームで結果を残しています。残りも期待しています!


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