Closed Training -Round6-

そして6Rの結果です。小島君が最終局を待たずに優勝を決めました。

 

Round 6

井上 1-0 佐藤

岩崎 1-0 坂井

桑田 0-1 小島

山田 0-1 馬場


Round 7 馬場−井上 佐藤−岩崎 坂井−桑田 小島−山田



 

Inoue Sho

Sato Kaname

Closed Training (6)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 0-0 8.Bc4 Nc6 9.Qd2 Bd7 10.0-0-0 Rc8 11.Bb3 Nxd4 12.Bxd4 b5 13.h4 a5 14.a3 b4 15.axb4 axb4 16.Nd5 Nxd5 17.Bxg7 Kxg7 18.exd5 Qa5 19.Qd4+ Kg8 20.h5 Ba4 21.hxg6 fxg6 22.Rxh7 Rf6 23.Rdh1 Rcf8 24.Rxe7 1-0

 

Iwasaki Yudai

Sakai Enju

Closed Training (6)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Be2 e5 7.Nb3 Be7 8.O-O O-O 9.Kh1 Nc6 10.Bf3 Be6 11.Nd5 b5 12.Nxe7+ Qxe7 13.Bg5 Rfd8 14.Qd2 Rac8 15.c3 h6 16.Be3 d5 17.Bc5 Qd7 18.Bb6 dxe4 19.Bxd8 Qxd2 20.Nxd2 exf3 21.Bxf6 fxg2+ 22.Kxg2 gxf6 23.Ne4 f5 24.Nd6 Rd8 25.Rfd1 Kh7 26.f3 Rg8+ 27.Kf2 f4 28.Ne4 Rg6 29.Rd6 Kg7 30.Rxc6 1-0

 

Kuwata Susumu

Kojima Shinya

Closed Training (6)

 

1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Qb6 6.Be2 a6 7.O-O Nc6 8.Nb3 d6 9.Be3 Qc7 10.a4 b6 11.f4 Be7 12.Bf3 O-O 13.Qd2 Bb7 14.Rfd1 Rfe8 15.Qf2 Nd7 16.Nd4 Na5 17.f5 e5 18.Nde2 Nc4 19.b3 Nxe3 20.Qxe3 d5 21.Qc1 d4 22.Nd5 Bxd5 23.exd5 Rac8 24.c4 dxc3 25.Qc2 Nf6 26.Ng3 Bc5+ 27.Kh1 Bd4 28.Re1 Qd7 29.Qd3 Nxd5 30.Bxd5 Qxd5 31.f6 g6 32.Re4 Qc6 33.Rf1 c2 34.Nf5 c1=Q 0-1

 

Yamada Kohei

Baba Masahiro

Closed Training (6)

 

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 a6 4.Ba4 Nf6 5.0-0 Be7 6.Re1 b5 7.Bb3 d6 8.c3 0-0 9.h3 Na5 10.Bc2 c5 11.d4 Qc7 12.Nbd2 Nc6 13.d5 Nd8 14.Nf1 Ne8 15.Ng3 g6 16.Bh6 Ng7 17.Nh2 f6 18.Ng4 Nf7 19.Bd2 Bd7 20.Rf1 Kh8 21.Nh6 Rae8 22.Qe2 Qc8 [Making some threats.] 23.Rae1 Ng5 24.h4?! [Not an effective plan. I expected 24.Kh2.] Nf7 25.h5 Nxh6 26.Bxh6 Bg4 27.f3 Bxh5 28.Bxg7+? [28.Kf2! and bringing rook to h-file is best.] Kxg7 29.Nxh5+ gxh5 [Black is not only pawn up but also has attacking chance along g-file.] 30.f4 Qg4 31.Qd3 Kh8 32.Bd1 Qh4 33.Qe2 Rg8 34.Qxh5?? [He overlooked my obvious threat.] Rxg2+! 0-1


Closed Training -Round5-

長らく更新が途絶えていたClosed Trainingですが、本日5Rの最後のゲームが行われたので、結果をアップします。

 

Round 5

坂井 ½-½ 井上

小島 1-0 岩崎

佐藤 1-0 馬場

桑田 0-1 山田

 

Round 6 井上−佐藤 岩崎−坂井 桑田−小島 山田−馬場

Round 7 馬場−井上 佐藤−岩崎 坂井−桑田 小島−山田



 

Sakai Enju

Inoue Sho

Closed Training (5)

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 a6 5.c5 Bf5 6.Nh4 Bg6 7.Bf4 Nbd7 8.Nxg6 hxg6 9.e4 Nxe4 10.Nxe4 dxe4 11.Bc4 e6 12.0-0 Nf6 13.Qb3 Qd7 14.Rad1 Be7 15.Rfe1 Kf8 16.f3 exf3 17.Qxf3 Rd8 18.b4 Kg8 19.h3 Nd5 20.Bd2 Bf6 21.Re4 Ne7 22.Be3 Nd5 23.Bd2 Ne7 24.Be3 Nd5 25.Bd2 ½-½

 

Kojima Shinya

Iwasaki Yudai

Closed Training (5)

 

1.e4 c5 2.c3 Nf6 3.e5 Nd5 4.d4 cxd4 5.Nf3 Nc6 6.cxd4 d6 7.Bc4 e6 8.O-O Be7 9.Qe2 O-O 10.Nc3 Nxc3 11.bxc3 dxe5 12.dxe5 Qa5 13.Bd2 Rd8 14.Rfe1 Bd7 15.Bb3 Be8 16.Qe4 g6 17.h4 Qa6 18.Bc2 Na5 19.Bg5 Bxg5 20.Nxg5 Qc4 21.Qf3 Qxh4 22.Ne4 Bc6 23.Nf6+ Kh8 24.Be4 Rac8 25.Rab1 b6 26.Rb4 Qh6 27.Qg3 Bxe4 28.Nxe4 Nc4 29.Ng5 Kg8 30.Qf4 Nxe5 31.Qxe5 Rd5 32.Nxf7 Qf8 33.Nh6+ 1-0

 

Sato Kaname

Baba Masahiro

Closed Training (5)

 

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.h4 h5 5.c4 e6 6.Nc3 Be7 7.Nf3 Nh6 8.c5 b6 9.b4 a5 10.Qa4 Kf8 11.Be2 Nd7 12.bxa5 [12.b5 cxb5 13. Bxb5 Nb8 14.c6] 12...Rxa5 [12...bxc5] 13.Qxc6 bxc5 14.Nb5 cxd4 15.Nbxd4 Be4 16.Bb5 Nc5 17.Bg5 Rxb5 18.Bxe7+ Qxe7 19.Qc8+ Qe8 20.Qxe8+ Kxe8 21.Nxb5 Nd3+ 22.Kd2 Kd7 23.a4 Bxf3 24.Kxd3 Bxg2 25.Rhc1 Rb8 26.Rc7+ Kd8 27.Rac1 Ng4 28.f4 Be4+ 29.Ke2 Bg6 30.Nd6 Rb2+ 31.Ke1 Rb8 32.a5 Ne3 33.a6 Ng2+ 34.Kf2 1-0

 

Kuwata Susumu

Yamada Kohei

Closed Training (5)

 

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 Bd7 5.Nf3 Bc6 6.Bd3 Nd7 7.O-O Ngf6 8.Nxf6+ gxf6 9.Qe2 Be7 10.Bh6 Nf8 11.Be4 Qd6 12.Rfe1 O-O-O 13.c4 Bxe4 14.Qxe4 f5 15.Qe2 Bf6 16.Ne5 Bxe5 17.dxe5 Qd3 18.Qh5 Ng6 19.Bg5 Rdf8 20.Bf6 Rhg8 21.Re3 Qxc4 22.Rc3 Qd5 23.Rd1 Qe4 24.Qf3 Nf4 25.Qxe4 fxe4 26.Re3 Nxg2 27.Rg3 Nf4 28.Kf1 Nd5 29.Rd4 e3 30.fxe3 Rxg3 31.hxg3 Nxe3+ 32.Kf2 Nf5 33.Rd3 Rg8 34.Rf3 c6 35.Rf4 h5 36.Ra4 a6 37.Ra3 Kc7 38.Rd3 c5 39.Rc3 Kb6 40.Rb3+ Kc6 41.a4 b6 42.Ra3 Rg4 43.a5 b5 44.Rc3 Ra4 45.b3 Rxa5 46.Kf3 Ra3 47.g4 hxg4+ 48.Kxg4 c4 49.Bg5 Rxb3 0-1


Selected Games(34)

Paleologu Vladimir (2168 SUI)

Inoue Sho (1999)

Cappelle la Grande 2007(1)

 

井上さんにとってはこれが国際試合のデビュー戦で、初戦からレイティング170上の相手とペアリングされ、厳しい戦いが予想されました。しかし、この大会に向けて十分トレーニングを積んでいたこともあり、その成果は早くも表れたのでした。

 

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Bc5 4.b4!?

 

Evans Gambit

この大会で井上さんは1...e5からルイロペスのブレイヤーをメインの武器に戦う予定でした。ここから時間を使って一手一手長考となったようです。

 

4...Bxb4 5.c3 Ba5 6.d4 exd4 7.Qb3 Qe7 8.0-0 Bb6 9.Ba3

 
 

直接的なアプローチです。もう一つの選択肢として9.cxd4があり、9...Nxd4 10.Nxd4 Bxd4 11.Nc3 Nf6 12.Nb5 d5! 13.exd5 Bxa1 14.Ba3 Qe5 15.f4 Bd4+ 16.Kh1 Qe3 Short-Nielsen Skanderborg 2003では両者クリエイティブな戦いののち、ドローに終わりました。

 

9...d6 10.cxd4?!

 

10.e5!? Nxe5 11.Nxe5 Qxe5 12.Bxf7+ Kf8は、キャスリングの権利を奪われ、黒が一見危なそうに見ますが、白に2ポーンに見合うアタックがあるかどうかは難しいところです。ただ、本譜では黒に全く問題はないので、少なくとも白はここで局面を混乱させておくべきでした。

 

10...Nxd4 11.Nxd4 Bxd4 12.Nc3 Nf6

 

この時点で井上さんは持ち時間を77分も消費していました。試合中どこで時間を使うかはその時々のゲームによって異なり、ギャンビット系のオープニングに対しては、しっかり受け切って局面を安定させれば、あとは自然と駒が動かせるはずです。

 

13.Bxf7+

 

白はワンポーンを取り返しますが、その間に黒は万全の態勢を組めます。

 

13...Qxf7 14.Qa4+ Bd7 15.Qxd4 0-0



 

ここから黒はいかにしてスペースを取っていくかを考えます。残り時間30分のうち18分を使って黒の優勢を明らかにするセットアップを考えました。」(井上)

 

16.f3 Bc6 17.Ne2 Rfe8 18.Ng3 Qe6 19.Bb2 d5!

 

黒はセンターを開きにかかり、ここから数手で黒がセンターを支配します。

 

20.e5 Nd7 21.f4 Bb5! 22.Rf2 c5!



 

23.Qd2 d4

 

白のビショップの利きを抑え、同時に黒のビショップの白マスのラインを開きます。

 

24.Ne4 Bc6 25.Nd6 Re7 26.a4 Qd5 27.a5 b5

 

このポーンを白が取らなければ、黒は3つのパスポーンを得るので、アンパッサンは必須です。27...Rf8がベターとのことですが、私はこの手によって黒のナイトが攻めに参加できるようになるので、悪くないと思います。

 

28.axb6 Nxb6 29.Qd3[29.Ra5!?] Na4 30.Ba3 Rb8 31.Rf3 Nc3 32.Re1

 


 

32...Rb3?!

 

このルークはバックランクを守り続けなければいけませんでした。ここでの黒の決め手は、32...Qxd6!! 33.exd6 Rxe1+ 34.Kf2 Rd1 35.Qc4+ Bd5 36.Rxc3 (36.Qa6 Ne4+ 37.Ke2 Rd2+ 38.Ke1 Rb1+で次にメイト) Bxc4 37.Rxc4 Rd2+でした。言われてみれば探せないこともありませんが、ここでの黒の残り時間が1分を切っていたことを考えると、まずは安全に指して、時間が足される40手目を待つのが実戦的な戦い方です。

 

33.Qa6!

 

この試合で初めての白の攻撃です。手薄なバックランクを狙います。

 

33...h6?

 

33...Rc7または33...Rb834.Qc8+だけは防いでおくべきでした。


34.Qc8+ Kh7 35.Qf5+ Kg8 36.Qc8+ Kh7 37.Nf5??

 


 

これは欲張りすぎです。いま、負けの危険性があるのは黒ではなく白なので、ドローで満足すべきです。37.Qf5+で、パペチュアルを避けて37...g6だと、38.Qf8!が厄介で、黒は正しくディフェンスしなければいけません。たとえば38...Rg7 39.e6!(Nf7) Rg8 40.Qe7+ Rg7=ならドローになります。

 

37...Reb7 -+ 38.Bc1 Rb1 39.Rf2 d3 40.Ne3 Qe4

 

完全に黒が局面を支配しました。

 

41.Kf1 Ne2 42.Bd2 c4 43.Nd1 Ba4

 


 

いま、黒の全ての駒が理想的な配置にあります。こう局面を見てみると圧倒的です。

 

44.Nc3 Nxc3 45.Bxc3 Rxe1+ 46.Bxe1 Rb1 0-1


JCAのカルテの存在意義に関して

私は先日、学生選手権の開催を終え、JCAへ結果の報告に行きました。そこで報告用の用紙としてカルテを買わされたのですが、あのJCAで使用しているカルテが本当に必要なのかどうか、ここで考えてみたいと思います。

 

JCAのカルテは3枚複写式で、大会主催者が手書きによりプレーヤーの試合結果を1つずつ記録します。1枚はJCA保存用、1枚は大会主催者保存用、1枚はプレーヤー保存用です。以前はこのカルテを用いてペアリングを行っていましたが、現在はスイスパーフェクトの導入によりその必要はありません。現在のカルテが持つ役割は主催者にとっては試合の記録、プレーヤーにとっては記念品だと言えます。

 

しかしそれが手書きのカルテである必要は全くないと私は思います。JCAへの報告ならばスイスパーフェクトから結果をコピーして送れば良い話であり、手書きのカルテをJCAで再びデータに打ち直すのはナンセンスだと言えます。プレーヤーの記念としてならば、JCAが綺麗なフォーマットを用意し、各クラブ宛、もしくはチェス通信のように個人宛に郵送すれば現在の手書きのカルテよりもずっと喜ばれるでしょう。それにも関わらず各クラブに手書きのカルテを買わせ、無駄なコストと手間をかけている現状に私は反対です。JCAのカルテに関してどのような考えをお持ちか、皆さんからコメントを頂ければ嬉しいです。

 

2010125日  小島慎也


GMのチェスレッスン

チェスを本職とする世界のGMのほとんどはコーチングが主な収入になっています。安定した収入を得るためにはコンスタントに生徒を集めなければいけないため、ホームページを設けるなどして積極的にアピールしているGMも少なくありません。

 

今回はChessdomhttp://www.chessdom.com/)でたまたま見かけた記事からリンクをたどっていった結果、ウクライナのGM Aveskulovのページを見つけたのでここに紹介します。

 

http://chesstao.com/index.php

 

AveskulovCappelleの常連なので直接本人を見たことはありますが、あまり注目はしていませんでした。経歴を見てみると国立の大学院(おそらくLviv University)を修了したあと、チェスのプロフェッショナルの道を選んだようです。20083月にはインドネシアのSukandarをトレーニングしたとか...  チェス界にはなんだかんだ色々なつながりがありますね。

 

さて、レッスンのほうはICCFICSといったweb上で行われます。基本的に1時間30ドルということですが、まとまった時間で申し込むと安くなるようです。例えば、10時間申し込むと170ドルというように。私が特に面白いと思ったのは、ゲームのアナライズも受け付けているということです。例えば日本で指した自分のゲームを送ったら、それをアナライズしたものを送り返してくるというといった次第です。この場合1ゲーム20ドルです。どの程度のものが返ってくるか分からないので何とも言えませんが、ちょっと興味があったりします。ちなみにこれら料金一覧は”services”に分かりやすく書かれています。

 

ページを一通り見てみるとチェスの上達へのアドバイスが多く書かれていました。Aveskulovは強くなるためには「ゲームをしてアナライズする」ということを繰り返すことが大切と説いています。そして自分のゲームをしっかり復習することが何よりだと主張しています。さらに全てのクラブプレーヤーに対してのアドバイスは、1+03+0のような短い持ち時間のブリッツを多くこなしていても意味はなく、少なくとも5+5より長い持ち時間のゲームをやることだそうです。5+5のゲームを数ゲームやってそれらをしっかりアナライズすれば3+0を一晩中やるよりずっと効果があると。また、研究したポジションを紙(ノート)に書き残すことも重要だと説いています。一度紙に記録しておけばいつでも見直せます。私も年々記憶力が悪くなってきているのを実感しているので、最近はきちんとアナライズしたものを残しています。その大部分がここ(Behind the Scene)なわけですが...

 

レッスンの効果があるかどうかは人によって違うとは思いますが、自分でやっていてもなかなか効果が上がらない方は試しにこういうところに投資しても良いのではないでしょうか?


Cappelleエントリーリスト更新

Wijk aan Zeeを皮切りに、GibraltarAerofloatCappelleと今年もこれから多くの伝統的なオープントーナメントが始まります。

 

つい先日、Cappelleのエントリーリストが更新されました。

 

http://cappelle-chess.fr/fr2/default.php?page=3819

紆余曲折を経て、ようやく招待でのエントリーとなりました。日本からは小島、南條、山田と私の4人で乗り込みます。私以外は皆オリンピアード代表内定者であり、これが大舞台の前の貴重な経験の場となることは間違いありません。特に山田君はヨーロッパで試合をするのは初めてなので、11戦から得るものは多いと思います。

 

Cappelle1Rは来月13日にスタートです。


Selected Games(33)

ANNOTATED BY

Yamada Kohei

 

Yamada Kohei (2103)

Nanjo Ryosuke (2232)

学生選手権 2010 (4)

 

二日目、4Rは南條君とのゲームです。ここで勝ったほうが優勝に大きく近づくのは間違いありません。南條君との戦績は全日本快速での引き分け以外すべて負けと、大きく離されていますが、前日小島君に勝ったのでせっかくだから連覇を狙ってみようという気持ちになっていたのは事実です。前向きな気持ちが幸いしたのか、このゲームが今大会、僕のベストゲームになりました。

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4 e6 7.Bb3 b5 8.Bg5 Be7 9.Qf3 Qc7 10.000 Nbd7




お互いに想定していた局面です。
Closed Training 2R、坂井さんとのゲームはここから11.Bxf6 Nxf6 12.g4と進めて勝ちましたが、途中はあまり自信が持てなかったので手を変えます。

 

11.e5

 

NisipeanuDelchevが指していたのでこちらの変化を試してみることにしました。非常に複雑な局面になりやすく、どちらかと言うと南條君が得意とする局面になりそうな気もしましたが、なるべく相手のことを考えず自分の指したい局面にすることにしました。

 

11...Bb7 12.Qg3 Nxe5

 

黒にあまり選択肢はありませんが、本譜の対応で十分です。白も黙っている訳に行かないので、決戦に持ち込むしかありません。

 

13.Bxe6 fxe6 14.f4! Bc8!




13.Bxe6
14.f4はほとんどこの一手とも言える攻めです。コンピューターは黒良しと言いますが、相当力がないと黒を持ってまとめ切るのは大変ではないかというのが、僕の個人的な見解です。

 

14.f4の局面が黒にとっての考えどころです。方針としてはナイトを逃げるか、e6を受けるかの二択ですが、14...Ng6?! 15.Nxe6 Qc8 16.Rhe1 Kf7 17.f5 Ne518.Rxd6! Bxd6 19.Bxf6 gxf6 20.Qg7++- DelchevGopal Balaguer op 2006 と白の攻めが続いてしまいます。e6を受ける手段のうち、14...Kf7には15.fxe5 dxe5の時に16.Nxe6と切る予定でした。16...Kxe6 17.Qh3+ Kf7 18.Bxf6 gxf6 19.Rd7でいずれQh5+からパーペチャルになるので、ドローです。トーナメント的には南條君は小島君との戦いを残しているので、ドローでもこちらは満足だと考えていました。

 

南條君は長考しておそらく最強の手を選んできました(僕は知りませんでしたが、本で推奨されていた手順のようです)。14...Bc8は一度出たビショップを戻るだけに見つけづらい手ですが、センターからの攻撃さえしっかり受けておけば、ポーンアップの黒が自然に良くなりそうです。どちらも正確に指さないとすぐに形勢を損ねてしまうので、ここから長考合戦が始まります。

 

15.fxe5 dxe5 16.Rhe1?!

 

センターのポーンを上手く取り返すことができればe6の弱点が目立つのでルークを回ってみましたが、本譜の展開を考えるとあまりいい手ではないように思います。というのもこの後黒からのb4が強力なので、16.a3をもう少し掘り下げるべきでした。16.a3!? b4 17.axb4 Bxb4 18.Bxf6 gxf6 19.Ne4 Rf8 20.Nb3となれば、局面のバランスは取れていそうです。センターが強い分黒が良さそうですが、dファイルを取っている白にも楽しみがありそうです。

 

16...b4! 17.Bxf6 gxf6 18.Ne4 Rf8 19.Nf3 Bb7!




本譜の
16.Rhe1には16...b4がありました。17.Ne4?? Nxe4 18.Rxe4 Bxg5 19.Qxg5 exd417.Nce2?? Ne4! では負けなので、少し工夫しなければなりません。最初の方針通り17.Nb1 0-0に対して17.Qxe5 Qxe5 18.Re5でクイーンを換える手も考えましたが、18...Bd6 19.Re2 Bxh2は白の駒がばらばらで何をしているのかよくわかりません。

 

17.Bxf6からの手順はピースをセンターに集めて反撃を狙う手順ですが、19.Bb7がまたいい手でした。0-0-0を見てBd7と指したくなるところですが、それよりもBb7Bd5とブロックするほうが強力です。こういう局面では南條君は本当に正確に指してきます。

 

20.Qh4? Rf7 21.Qh5

 

一方、白の指し手はあまり正確ではありません。20.Qh4ではせめてe6に狙いをつけて20.Qg420.Qh3と指すところだったでしょう。21.Qh5は完全に一発狙いですが、ほかに手もないので、仕方なく指しました。ところが・・・。

 

21...Bd5?

 

完全にマウススリップです。局後南條君が真っ先に指摘したように21...Rc8 22.Rd2 Kf8! ならば白は相当苦しかったはずです。

 

22.Neg5!=

 

白にとっては急に面白い局面になりました。黒のセンターポーンは強力なものの、エクスチェンジアップ確定です。仮に黒が欲張って22...fxg5とすると23.Nxe5 Bf6 24.Rxd5!であっという間に白勝ちです。

 

22...Bd6! 23.Nxf7 Qxf7




南條君からすると良かったはずの局面から突然ルークを取られているわけですが、冷静にみるとこの局面はまだイコールです。黒にはセンターポーンとダブルビショップが残っており、このままエンドゲームに入ると黒に分がありそうです。僕としては一度悪くしている訳ですから、この局面に不満はありません。ここまでの長考でお互い持ち時間も少なくなっていますが、クイーンを引いて長期戦にします。

 

24.Qh3 Bf8 25.Kb1 000

 

キングがクイーンの利きに入るので感覚的には指しづらいですが、特にタクティクスが決まる訳でもありません。

 

26.Nd2 Kb8 27.Nb3!?

 

そこで、26.Nd2とナイトの位置をなおします。しかしb3に行くのは少し方向が違いました。ここは27.Nc4!とこちらに跳ねるのが良く、つぎにNe3としてダブルビショップを消すのが正しい指し方です。27.Nc4まで見えていれば26.Nd2には!マークを付けるのですが、試合中は全く見えていませんでした。

 

27...Rc8 28.g4 Qc7 29.Rd2 a5 30.Qf1?!

 

黒は直接白キングに圧力をかけてきます。とりあえずa4からの攻めが見えているのでそれに対処しなくてはなりません。コンピューターにかけるとこの局面で30.Qd3と指すとイコールのようです。当然こちらが本筋であり第一感の手でしたが、持ち時間が少なくプレッシャーのかかる状況ならば、間違いやすい二択を迫るほうが実戦的だろうと考え、30.Qf1と引きました。

 

30...Bc4? 31.Qxf6!




ずっと苦しいゲームでしたが、とうとう白にチャンスが巡ってきました。
30.Qf1Qb5+Qxf6を狙いにしており、南條君はチェックのほうを受けましたが、ここは30...Bh6! 31.Rf2 Bf4! とこちらを受けるのが正しく、黒良しのエンドゲームになったでしょう。以下、32.Qb5+ Ka7 33.Qxa5+ Qxa5 34.Nxa5 Kb6ならばはっきりしています。本譜はf6のポーンを取らせてしまったことで、センターが弱くなり黒は攻めに集中することができなくなってしまいました。 

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Selected Games(32)

ANNOTATED BY

Yamada Kohei

 

Kojima Shinya (2308)

Yamada Kohei (2103)

学生選手権 2010 (3)

 

小島君と南條君は、僕が真剣にチェスを始めたころから僕の憧れの存在でした。僕のレーティングが16001700の時代から、同年代の彼らはずっと日本のチェス界を引っ張ってきています。

 

強くなるためには「ライバル」が必要と良く言いますが、僕にはまだ彼らをライバルと呼べる力はありません。ですが、今回彼ら二人を破って大会を制したことで少し近づいた気はしています。少しでも早く彼らをライバルと呼べるよう、これからもがんばって力をつけて行きたいと思います。

 

まずは3R、小島君とのゲームです。学生選手権では3年連続で3Rの対戦になります。前々回は引き分け、前回は負けだったので、今回は勝ちたいところですが、欲をかかずポイントを落とさない指し方をしようと思いました。

 

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 dxe4!

 

French Rubinstein Variationです。この定跡をレパートリーに加えたのは、昨年の夏休みでした。「格上の相手からいかにポイントを取るか」という課題に対して、僕が出した一つの答えがこのRubinsteinです。チーム選手権でも指すつもりだったのですが、なぜか白を持つはめになってしまいました(Selected Game 16 Yamada–Manabe戦参照)。

 

4.Nxe4 Bd7!




黒の
4手目にはいろいろな選択肢があるところですが、もっとも手堅いのはこの4...Bd7だと思います。黒陣には駒をくりかえるためのスペースが少ないため、c8のビショップは取り残されがちです。ビショップをd7c6と展開して早めに白のピースと交換することで、その問題点を解消するのが直接の目的です。


白に主導権を渡すことになりますが、非常に堅い駒組みができること、白が主導権を具体的な優位に結びつけるのが難しいことから、トップ
GMもたまに快速チェスなどで使っていたりします。

 

5.Nf3 Bc6 6.Bd3 Nd7 7.0–0 Ngf6 8.Ng3 Be7 9.c4 Bxf3 10.Qxf3 c6 11.b3 0–0 12.Bb2 Qc7 13.Rfe1 Rfe8 14.Rad1 Rad8




僕がこの定跡を準備していることは小島君も知っていたので、この辺りまではお互いに余り時間を使わずに進みました。定跡の一変化ではありますが、神経を使わなければならないのは黒のほうでしょう。常に白から仕掛けられる筋を警戒しなければなりません。

 

たとえばこの局面で15.d5!?と仕掛けていく変化があります。15.d5 cxd5 16.cxd5 Nxd517.Bxh7!が白の狙いです。17...Kxh7 18.Qxf7 Ndf6 19.Rd4! に対して19...Nf4! ルークがhファイルに回る手を防ぎ、e6もカバーする味の良い一手です 20.Rc4 Rf8! 21.Qxg7+ Kxg7 22.Rxc7 Rf7 Navara–Rustemov Bundesliga 2007 で一応受かってはいますが、途中を間違えると即死なので黒を持ちたい場合は白の仕掛けに対してしっかり対策する必要があるでしょう。

 

黒としてはこの中盤をなんとか乗り切り、できるだけ良い条件でエンドゲームに入るのが理想です。しかし、あまりこのラインに慣れていないせいもあってかすぐに間違えてしまいます。

 

15.a3 b6?! 16.Bc2 Nf8

 

15.a3は直接的にはBb4を防いだ手ですが、どちらかというと手待ちの意味が強いと思います。それに対して15...b6は完全に手待ちですが、待つならば15...a615...Nf8で待つべきでした。将来的にc5を突くための準備だと思って指しましたが、c6が弱くなってしまいました。

 

すぐにとがめる手はありませんが(16.Ne4が一番有力そうですが、具体的に優勢かと言われると微妙です)、将来的に弱点を残してしまうため黒の方針に合っていません。

 

17.Re3 Rd7 18.h4 Red8 19.Rde1 a5 20.h5 h6




小島君はゆっくり指す方針を選びます。
h4h5は小島君の好きそうなアイディアで、白キングの逃げ道を確保して黒にポーンストラクチャーを決めさせてしまおうというものです。しかし僕は20.h6の時点ですでにイコールになっているのではないかと思っていました。というのも白のルークはeファイルで重なっており、仕掛ける場所が難しいためです。一方黒のほうはdファイルから反撃する態勢が整っているので、後は白がやってくるのを待つだけです。またh5のポーンは今のところ働いていますが、将来は黒のナイトに目標にされてしまう可能性が残っています。

 

21.Ne4?!

 

おそらく小島君も思ったより白が上手くいっていないことに気がついたはずです。21.Ne4は黒の弱点、つまりc6をターゲットにすることでもう一度主導権をとり返しに行こうとした手です。しかし不幸なことにこの手が形勢を損ねる原因になってしまいました。

 

21...Nxe4! 22.Bxe4 Bf6! 23.Bxc6 Rd6 24.Bb5 Bxd4 25.Bxd4 Rxd4




c6
の弱点を恐れずに21...Nxe4が好手です。続いて22...Bf6と出てみるとd4のポーンが落ちています。白もc6のポーンを取るしかありませんが、重荷でしかなかったc6のポーンとセンターのポーンが交換になり、どちらが得をしたかは明らかです。

 

ルークが飛び出したところではすでに黒が少し良く、もはや白のほうがドローのために戦わなければならない局面です。

 

26.b4?! axb4 27.axb4 Qd6

 

トーナメントにおいてレーティング上位者のつらいところは、下を相手に戦う場合、勝たなければならないというプレッシャーがあることです。特に小島君からみるとここで僕を相手にポイントを落とすことは避けなければなりません。26.b4はキングサイドでパスポーンを作り、あくまで勝ちを狙う手ですが焦りすぎでした。小島君も局後この手を「テキトーすぎた」と評しています。

 

たとえばポーンストラクチャーを崩さずに26.Re4 Rd2 27.R4e2とルークを一枚換えに行けば、黒良しとはいえ十分戦えたはずです。黒からみるとdファイルを制圧し、クイーンサイドとh5に明確なターゲットがあるので正確に指せば勝ちそうですが、具体的に良くするためには相当神経を使うでしょう。

 

28.Rb3 Nh7 29.Qg3 Rd1! 30.Qe3 Nf6 31.Rb1?




直接の敗因はこのルーク引きですが、すでに黒がかなり良くなっているのでこれを敗着というのは少し酷でしょう(ちなみに
31.g3には31...Rd4! を読んでおり、これで優勢だと思っていました。すべての弱点を白がカバーするのは不可能です)。

 

31...Rxb1 32.Rxb1 Ng4 33.Qe4 f5 0–1

 

最後は33...Qh2+ 34.Kf1 Rd2! が最短by 南條です。僕もこの変化は読んでいたのですが、なぜ指さなかったのかはわかりません。いずれにせよ本譜も34.Qc2 Qd1+を受けたに対して34...Qh2+Qh1+Qxg2が厳しいので白にチャンスはありません。

 

こうして3年目にして初めて学生選手権1日目を全勝で折り返し、2日目に南條君と重要な一番を戦うことになりました。


Kojima meets Habu

日本を代表する2人のプレーヤーが初対面、初対局となりました。ゲーム3+2秒のブリッツですが、検討は2時間にも及んだようです。

 

Kojima Shinya

Habu Yoshiharu

Yokohama 2010

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4 e6 7.Bb3 Nc6 8.0–0 Be7 9.Be3 0–0 10.f4 Nxd4 11.Bxd4 b5 12.Qf3 Bb7 13.Rae1 a5 14.a4 b4 15.Nd1 d5 16.e5 Ne4 17.Qh3 Rc8 18.Ne3 Bc5 19.Bxc5 Rxc5 20.f5 exf5 21.Nxf5 Qg5 22.Nd6 Ba6 23.Nxe4 dxe4 24.Rf2 Rxe5 25.Qd7 Re7 26.Qd6 e3 27.Rf3 Bb7 28.Rg3 Qf5 29.Rexe3 Rxe3 30.Rxe3 Qg5? 31.Bxf7+! 1–0


学生選手権 -結果詳細-

                Standing Table
  


                Cross Table
 


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