Manabe Hiroshi(2039)-Baba Masahiro(2213)
Matsudo Year End 2009 (3)
position after 28...Qe7-c5+
白はc3とe5に弱点を抱えており、さらに黒にdファイルを取られています。白マスビショップも働かせようとするのは難しいですし、私はこの時点で黒が十分勝つのに必要な条件はそろっていると思っていました。さて、黒クイーンのチェックに対して3通りの防ぎ方がありますが、どれが正解でしょう?
29.Qf2?
正解は29.Kf1でした。これに対しては29...Rxe5 30.Qxe5+ Qxe5 31.Rxd8 Qxc3をずっと考えていました。2ルーク vs クイーンではありますが、白のルークは連携しづらく白マスビショップはアタックに参加してこないため、黒のパスポーンが勝負を決めると判断していました。しかし、実際には30.Be4!?という妙手があり、e5のルークがdファイルに戻れず、白にdファイルを取り返され、ワンポーンアップでも黒に特に大きなアドヴァンテージはありません。本譜では黒にチャンスがあります。
29...Rxd1+!
29...Qxf2+? 30.Kxf2 Rd2+も考えていましたが、31.Ke1!でルークの総替えが免れません。B vs Nのエンディングになると、黒のポーンはすべて白のビショップのターゲットになるのでもちろんこれは避けます。試合では少し考えて単純にポーンを取れる筋を見つけました。
30.Rxd1 Rxd1+ 31.Bxd1 Qxe5
この手がポイントです。メイトがあるので白クイーンはe1の守りから離れられません。
32.Qa7+ Kh6
もし数手後の展開を予想できていたなら間違いなく32...Kf6と指していたでしょうが、結果論にすぎません。この時はh6で黒キングは安全だと考えていました。
33.Kf2
33.Qxa5?? Qe1#には注意しなければいけません。
33...Qxc3
2ポーンアップであり、ポーンを進めれば勝ちだと考えていました。しかし、その楽観的な読みは次の1手でやや揺らぎます。
34.g4!
突如メイティングネットを張られました。白には明確なメイトの筋(h4-g5-Qxh7#)があります。
34...Qd2+ 35.Be2 Nc6 36.Qf7!!
そしてこれが絶妙な1手です。黒の狙いの36..Nd4? には、37.Qf8+ Kg5 38.h4+! Kxh4 39.Qe7+! Qg5 40.Qxh7+
ANALYSIS DIAGRAM
で終了です。
36...Qd4+?
実戦的には黒が生き延びる筋を見つけるのはとても困難です。しかし2ポーンアップの黒が完全に負けかと言えばそうではなく、とても難しい勝ち筋がありました!ここがこのアナライズのクリティカル・ポジションです。
36...Kg5!□ (オンリームーブです。時にはキングは上がった方が安全な場合もあります。) 37.Kg3!
ANALYSIS DIAGRAM
(あくまで白の狙いは黒キングです。37.Qxe6 Qd4+ 38.Kg3 Qf4+ 39.Kg2 Qe5 40.Bxc4 Qxe6 41.Bxe6 Kf4–+ も37.h4+ Kxh4 38.Qxh7+ Kg5–+も黒勝ちです。)37...Qe1+□ (これもオンリームーブです!37...Qd6+? は38.f4+! で38...Kh6 39.g5#または38...Qxf4 39.Qxf4#です。) 38.Kh3 Qf2□! 39.Qxe6 Qc5! (はたしてQf2-Qc5などという手が人間に見えるのでしょうか。) 40.Kg3 Qe5+!
ANALYSIS DIAGRAM
(直後にポーンフォークを許すこのチェックが最も明快な黒の勝ち筋だと思います。40...Kh6 41.f4 Kg7はまだ黒が勝てるかは怪しいです。) 41.Qxe5+ Nxe5 42.f4+ Kf6 43.g5+ Ke6 44.fxe5 Kxe5
ANALYSIS DIAGRAM
(これであとはKd4-Kc3-Kb2とキングがパスポーンの前に回り込んだあとcポーンを突いて黒勝ちです。)
37.Kg2+- Qe5 38.Qf8+ Kg5 [38...Qg7 39.g5+] 39.f4+ 1–0