Baba-Loo Caro-Kann B12 Monograph

昨日ChessCafe http://www.chesscafe.com/ )を見ていたらCaro-Kann B12のモノグラフの新版が15年ぶりに発売されるという記事がありました。

 

そもそもモノグラフとは?Caro-Kann B12とは?と疑問に思われた方に少し注釈を加えておきます。モノグラフとはChess Informant社が出版している、定跡本です。定跡本とはいっても、いわゆる”Sicilian Najdorf”のようにある程度幅広く網羅したものではなく、”Sicilian Najdorf Classical Variation”というように、さらに細かな分類の1ラインを扱った内容となっています。Caro-Kann B12のほうですが、B12とはECOコードのことで、ラインごとに分類されているのはご存知ですかね。その中でCaro-Kann B12とはCaro-KannAdvance Variation1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5)を指します。

 

「だから何?」と思われるでしょうが、興味のあるラインなので、さっと目を通していたら、なんと自分の名前が出てきました!

9.Bd2 Be7 10.Na5 [10.Rc1 0-0 11.c4 dc4 12.Na5 Rb8 13.Nc4 Ndb6 equal; M.Baba - Loo Pak Kwan, Kuala Lumpur 2008] Rb8 [10...Qc7 11.c4 dc4 12.Nc4 Ndb6 13.Ba5 Qd7 equal] 11.c4 dc4 12.Nc4 0-0 13.Ne3 Bg6 [13...Be4!? Roiz] 14.Bc3 Ncb6 equal; E.Berg - Roiz, Plovdiv 2008 see 102/85;

http://www.chesscafe.com/informant/informant.htm

 

ゲームは去年のマレーシアでのものですが、ここで問題が一つ。

相手の名前が違う!

Loo Pak Kwanではなく、正しくはLoo Swee Leongでした。どこで間違ったかは分かりませんが、このまま間違ったまま出版され、後に残っていくのですかね。

 

何はともあれ、ゲーム自体は面白かったので、ここに解説を付けます。

 

Baba Masahiro (2225)

Loo Swee Leong (UR)

Malaysian Open 2008 (7)

 

1.e4 c6 2.d4 d5 3.e5 Bf5 4.Nf3 e6 5.Be2 Nd7 6.0–0 Ne7 7.Nbd2 h6 8.Nb3 Nc8

 

最もポピュラーな定跡の一つであるカロカンでは、次々と新しいアイディアが生まれてきます。特にアドバンス・バリエーションはその性質が強いと思います。近年のアドバンス・バリエーションにおいて、最も革新的なアイディアは、「黒がc6-c5と突かなくてもよい」という考え方です。以前は黒からc6-c5と突くのが筋であるように見られていましたが、これをせずにゆっくりピースをマヌーバリングして、違うところから手を作るというものです。

 

9.Bd2

 

モノグラフにもありましたが、結論から言うと、この手では白はアドヴァンテージを取れません。9.Be3 Be7 10.Nfd2 0–0 11.f4とするのが今のところはベストです。

 

9...Be7 10.Rc1 0–0 11.c4 dxc4 12.Na5 Rb8 13.Nxc4 Ndb6

 


モノグラフはこの局面をイコールと判断しています。私もそう思います。白は
c2-c4でクイーンサイドを開いて攻め口を開いたように見えますが、逆にd5のマスが開いてしまい、黒ナイトの強力なアウトポストを作り出してしまいました。

 

14.a4 Nxc4 15.Bxc4 Nb6 16.Ba2 Bg4 17.a5 Nd5 18.h3 Bxf3

 

試合中は18...Bf5とビショップをキープしたほうが良いとを考えていましたが、黒には次のプランがありました。

 

19.Qxf3 Bb4!

 

困ったことにaポーンを守れません。なにも代償なしにワンポーンダウンでは負けるので、次の筋で何とかアタックを作ります。

 

20.Qd3 Qxa5 21.Bb1 f5 22.exf6 Rxf6!

 

ここはRxが正着です。22...Nxf6? なら、23.Bxh6! gxh6 24.Qg6+ Kh8 25.Qxh6+ Kg8 26.Qg6+ Kh8 27.Rc4!で次にd4-d5を狙い、白攻勢(おそらく勝勢)です。試合中は23.Bf4 Rbd8 24.Be5でも白にコンペンセーションはあると考えていましたが、23.Bxh6!が可能でした。

 

23.Be3 Rbf8 24.Qh7+ Kf7 25.Bd3

 

なんとか白マスビショップをh5にもっていきたいところです。

 

25...a6 26.Be2 Ne7??



 

Bh5+を防ぐため、黒クイーンの5thランクの横の筋を通します。しかし、これは勝負を決定づけるブランダーでした。正着は26...Nf4! 27.Bxf4 Rxf4³です。

 

27.Rc5!!

 

クイーンのh5への利きを遮断する、思い切ったエクスチェンジ・サクリファイスです!

 

27...Bxc5 28.Bh5+ Ng6 29.dxc5 Qd8 30.Bxh6!

 

間違ってはいけないのは、30.Rd1?? Qxd1+! 31.Bxd1 Rh8 32.Qxh8 Nxh8–+です。ルークをdファイルに回す前に、まずg7にプレッシャーをかけます。

 

30...Rg8 31.Rd1 Qe8 32.Rd3+-



 

白の駒は全てアタッキングポジションにあり、Rg3Rf3などのスレットが強力です。

 

32...Kf8 33.Bg5

 

33.Rg3??には33...gxh6です。

 

33...Rh8 34.Qxh8+ Nxh8 35.Bxe8 Rf5

 

35...Kxe8には36.Bxf6 gxf6 37.Rb3!+-でクイーンサイドのポーンを取って終了です。

 

36.h4 Kxe8 37.Rd8+ Kf7 38.Rxh8 Rxc5 39.Rd8 Rb5 40.Rd2



 

b2のポーンを守り、あとはテクニックの問題です。白はまず、b2を守っているだけのルークをアクティブにするため、キングをクイーンサイドにもっていき、b2をキングで守ります。

 

40...e5 41.f3 Ke6 42.Kf2 a5 43.Ke2 a4 44.Kd1 Rc5

 

cファイルをカットされましたが、焦る必要はありません。白はゆっくり相手の出方を見ます。

 

45.Rd3 b5 46.Rd8 Rc4 47.Kd2 c5 48.g3 Rb4 49.Kc2 Rc4+ 50.Kb1 Rb4 51.Rd3 Rc4 52.Rd2 Rb4 53.Rc2 Kd5

 

53...Kd654.Be3 c4 55.Bd2 Rb3 56.Rc3でルークを交換し、白勝ちです。

 

54.Be7 Rc4 55.Rxc4 Kxc4 56.h5 Kd4 57.Bf8 Ke3 58.Bxg7 Kxf3 59.Bxe5 1–0


百傑優勝者インタビュー

ここまで百傑戦についてはゲーム、結果中心で、プレーヤーの心理面等はお伝えできなかったので、ここで百傑戦優勝者にインタビューしてみました。

 

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1.まず優勝についてのコメントを一言お願いします。

 

小島:

最終戦で負けたのは残念ですが、なんとか連覇できて嬉しいです。森内さん、南條、龍二さんとの試合をしっかり勝ちにいったことが良い結果に結びついたと思います。

 

野口:

狙っていたわけではないので、驚いた。前日から期間中、毎晩誰かと飲んでいて、リラックスできていたのが大きいと思う。ドレスデンの後、Samとの会食に呼んでもらってなかったら、そのままチェス辞めていたと思うので、みなさんありがとう。

 

野口さんがチェスを続けるきっかけを作れたのを嬉しく思います。

 

2.ベストゲームはどれですか?また、ワーストゲームは?

 

小島:

ベストゲームは森内さんか龍二さんで迷いますね。森内さんとの試合は馬場さんがコメントを付けて紹介しているので、チェス通信の棋譜解説は龍二さんとの試合にするつもりです。ワーストゲームはSamとの試合でしょうね。最後しっかりドローをとらないと駄目でした。

 

野口:

ベスト:権田、杉本、南條戦の3つ。1つには絞れない。内容はともかく、相手を気にせず、最後まで集中が切れなかった。ワースト:小島戦。最後の読み抜けはひどい。

 

トーナメントの戦略上、小島戦をドローにしておいたことは結果的には最終成績にうまくはたらきましたね。

 

3.二人とも森内さんと当たっていますが、森内さんとのゲームはどうでしたか?

 

小島:

序盤は少し間違えて苦しかったですが、中盤以降うまく指せたと思います。終盤ではこちらのキングも多少危険で、時間も少なかったので学生選手権での馬場さんとの試合のようにならないか、ひやひやしました。

 

野口:

相当強いと感じた。内容も時間も負けていたが、何故か最後にはどちらも逆転していた。運を感じる。

 

内容には差があるとはいえ、お二人とも大きな勝利だったと思います。

 

4.大会の進行はスムーズでしたか?何か運営に関して不満な点はありましたか?

 

小島:

試合開始の合図をきちんとして、静かに揃って始められると良いですね。それと最終戦のペアリングがどうしてあのようになったのか、誰か説明して欲しいです。

 

オーガナイザー側の演出でしょうw

その組み合わせがないとつまらないですしね。

 

野口:

入賞に絡む時しか思わないのだが、しっかりしたアービターが常時会場にいてほしい。出来れば1日コースと会場を分けてほしい。騒音が気になるので。また、上位ボードだけでいいので、もう少しスペースがあると有難い。

 

そうですね。やはり大田区産業プラザのほうがチェスの大会には適した会場だということでしょうか。

 

5.今回、私(馬場)が出ませんでしたが、もし私が出ていたら二人の順位は変わっていたと思いますか?

 

小島:

馬場さんならば私とはドローで野口さんには勝つでしょう。よって私の単独優勝になります。

こういうコメントを期待しているんですよねw

 

当然私にも勝つから関係ないとのコメントを予想していましたw

 

野口:

影響はあると思うが、自分のコンディションのほうが大切。改めて同じメンバーで同じ大会をしたとして、自分が同じ結果を出せるとは思えない。

 

6.ドレスデン・オリンピアード後、ご自身のチェスに対する考え方や気持は変わりましたか?

 

小島:

特に大きな変化はないですが、やはり自分はチェスから離れられないのだということは分かりました。

 

野口:

意外に、チェス以外の知り合いからの反響が大きかったので驚いた。陰で見ていてくれた方々に、今回少しいい報告が出来るので嬉しい。

 

胸を張って報告してください!

 

7.百傑に参加された方々へ、何かアドバイスでもありましたらご自由にどうぞ

 

小島:

指し回しに関してはいくらでも言いたいことはあります。むやみに弱点を作らないこと、あせって駒を交換することばかり考えず丁寧に指していくこと、相手が何をやりたいのかきちんと考えること、小さなチャンスを見逃さないこと。そしてこれらを自然に理解していくために、少しずつでもチェスとのふれあいを増やしていくのが良いでしょう。

 

野口:

12月から2月まで全くチェスをやってなくて、ちょうどチェスをやりたくなった時期に大会が重なって幸運だった。精神状態って重要だなと実感した。

 

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以上です。お二人とも、どうもありがとうございました!



百傑戦 優勝者のゲーム

百傑優勝者の勝ちゲームの棋譜です。

 

Noguchi Koji (1997)

Moriuchi Toshiyuki (2145)

百傑 2009 (5)

 

1.Nf3 Nf6 2.g3 d5 3.Bg2 g6 4.b3 Bg7 5.Bb2 0–0 6.0–0 c5 7.c4 d4 8.e3 Nc6 9.exd4 cxd4 10.Re1 Re8 11.d3 e5 12.b4 Bf5 13.b5 Nb4 14.Nxe5 Nd7 15.Nf3 Qb6 16.Rxe8+ Rxe8 17.Bf1 Bg4 18.Nbd2 Ne5 19.h3 Nbxd3 20.hxg4 Nxb2 21.Qb3 Nxg4 22.Ng5 d3 23.c5 Qf6 24.Nde4 Qe7 25.Re1 d2 26.Nf6+ Bxf6 27.Rxe7 Rxe7 28.Be2 Bxg5? [28...h5] 29.Bxg4 Re1+ 30.Kg2 d1Q 31.Bxd1 Nxd1 32.c6 bxc6 33.bxc6 1–0

 

Kojima Shinya (2277)

Nakamura Ryuji (2207)

百傑 2009 (7)

 

1.Nf3 c5 2.c4 Nf6 3.Nc3 e6 4.g3 b6 5.Bg2 Bb7 6.0–0 Be7 7.d4 cxd4 8.Qxd4 d6 9.Bg5 0–0 10.Rfd1 Nc6 11.Qd2 Qb8 12.Rac1 Rd8 13.e4 h6 14.Bf4 Ne5 15.Qe2 a6 16.Nd4 Qc7 17.b3 Rac8 18.h3 Ned7 19.Ndb5 axb5 20.Nxb5 Qb8 21.Bxd6 Bxd6 22.Nxd6 Nc5 23.Nxc8 Rxd1+ 24.Rxd1 Qxc8 25.e5 Nfe4 26.Qc2 Ng5 27.Qd2 Nf3+ 28.Bxf3 Bxf3 29.Qd8+ Qxd8 30.Rxd8+ Kh7 31.Rd6 b5 32.cxb5 Kg6 33.b4 Nb7 34.Rd7 f6 35.a4 Kf5 36.exf6 gxf6 37.a5 Ke5 38.a6 Nd6 39.b6 Bc6 40.b7 1–0

 

Nanjo Ryosuke (2216)

Noguchi Koji (1997)

百傑 2009 (7)

 

1.d4 g6 2.e4 Bg7 3.Nc3 d6 4.Bc4 Nf6 5.Qe2 Nc6 6.e5 Nd7 7.Nf3 Nb6 8.Bb3 0–0 9.Bg5 Bg4 10.0–0–0 Qc8 11.Rhe1 Qf5 12.Qe3 Bxf3 13.gxf3 dxe5 14.dxe5 Qxe5 15.Qxe5 Bxe5 16.Bxe7 Bf4+ 17.Kb1 Rfe8 18.Bf6 Rxe1 19.Rxe1 Bxh2 20.Ne4 Nd7 21.Bc3 Be5 22.Rd1 Nb6 23.Bxe5 Nxe5 24.f4 Ng4 25.Rg1 Nh6 26.a4 Kg7 27.Nc5 Re8 28.a5 Nc8 29.Nxb7 Nf5 30.Rd1 h5 31.Nd8 Nfd6 32.Nc6 Re2 33.c4 h4 34.c5 Ne4 35.Rh1 Nxc5 36.Bc2 Rxf2 37.Rxh4 Rf1+ 38.Ka2 Rc1 39.Rh2 Rf1 40.Rh4 Rf2 41.Kb1 Kf6 42.b4 Ne6 43.f5 gxf5 44.Rh8 Nd6 45.Nxa7 Nd4 46.Ba4 Ne4 47.Rh3 Nd2+ 48.Kb2 Ne4+ 49.Kb1 f4 50.Nb5 Nd2+ 51.Kc1 Nxb5 52.Bxb5 Ne4 53.Ra3 Nd6 54.Bd7 Rf1+ 55.Kd2 f3 56.Bh3 Nc4+ 57.Kd3 Ne5+ 58.Ke4 Rh1 59.a6 Rxh3 60.a7 f2 61.a8Q f1Q 62.Qd8+ Kg7 63.Qg5+ Ng6 0–1


百傑戦2009(3日目) Dramatic End

最終ラウンドの決定的なゲームをお届けします。




Kojima Shinya (2277)
Sam  Collins(2429,IM)
百傑
2009 (8)

 

1.Nf3 d5 2.d4 Nf6 3.c4 e6 4.g3

 

小島君がカタランを指し始めたのはごく最近のことです。Cappelleの最終ラウンドもカタランでした。

 

4...Bb4+ 5.Bd2 Be7 6.Bg2 0–0 7.0–0 c6 8.Qc2 b6 9.Bf4 Nbd7 10.Nc3 dxc4 11.Nd2 Nd5 12.Nxc4 Ba6 13.Ne5 Nxe5 14.Bxe5 f6 15.Nxd5 cxd5 16.Bc7?!

 

これは意外な手です。あとあとビショップがcファイルでピンにならないよう、16.Bf4のほうが良いと思います。

 

16...Qd7 17.Rfc1 Rac8 18.Qc6 Qxc6 19.Rxc6




19...Rf7?!

 

狙いはBd8です。Cファイルのピンを利用するのは自然なプランですが、ここは19...Bb5! 20.Rc2 g5! と白のビショップの退き場であるf4を奪うアイディアがありました。このあと21.Rac1 Bc4 22.e4 Rxc7 23.exd5 b5 24.b3 exd5 25.bxc4 dxc4は白が頑張ってドローにしに戦う局面です。

 

20.Rac1 Bc4 21.e4?!

 

21.Rxe6! Bxa2 22.Bh3で白に悪いところはありません。

 

21...Bxa2 22.exd5 Bxd5 23.Bxd5 exd5 24.Bd6 Rxc6 25.Rxc6 Bxd6 26.Rxd6 Kf8!

 

冷静な一手です。私だったらすぐに26...Rc7とルークをアクティブにしようとしそうですが、Samは急ぎません。

 

27.Rxd5 Ke8 28.Kg2 Rd7!



 

これが黒の狙いでした。ルーク交換後のポーンエンディングはクイーンサイドのアウトサイドパスポーンがものを言い、単純に黒勝ちです。例えば29.Rxd7 Kxd7 30.Kf3 Kd6 31.Ke4 a5など。

 

29.Rh5 Rxd4 30.Rxh7 Kf7³ 31.Rh8 Rb4 32.Rd8 a5 33.Rd2 g5!

 

このあたりの黒の手は、決して相手にチャンスを与えることなく一手一手局面を良くするマスターのテクニックがよく表れていると思います。

 

34.h3 Kg6 35.Re2 a4 36.Kh2 b5 37.Kg2 Rb3 38.Kh2 Kf5 39.Kg2 b4 40.Kh2 Rd3

 

ここは40...a3! と突くチャンスで、41.bxa3 bxa3 42.Ra2 Ke4で黒勝ちです。

 

41.Kg2 Rd5 42.Re8 Ra5 43.Re2 a3 44.bxa3 bxa3 45.Ra2 Ra4?

 

白にパスポーンを作らせないよう、h3-h4を防いだ手ですが、次の白のキングの上がりで、黒キングがb3のマスまで到達しにくくなりました。正着は45...Ke4! 46.h4 gxh4 47.gxh4 Kd4 48.h5 Kc4 49.h6 Kb3であとはhポーンをルークで落としにいくだけです。

 

46.Kf3! g4+!? 47.hxg4+ Kg5 48.Kg2 Kxg4 49.f3+ Kf5 50.Kf2 Ke5 51.Ke3 Kd5 52.Kd3 Ra8 53.Kc3 Rc8+ 54.Kd3 Ra8 55.Kc3 Kc5 56.g4 Kd5 57.Kd3

 

難しいですが、57.f4 Ke4 58.g5 f5 59.g6 Kxf4 60.Kd2 Rg8 61.Rxa3 Rxg6 62.Ke1=はドローポジションです。

 

57...Ra4



58.Ke3??

 

勝負はいつも一手の違いで決まるものです。もし58.Kd2だったら本譜のようにb3に黒キングが来るのを防げ、ドローでした。こうブランダーが出るのはエンディングを知らないというよりは、Rowson言うところの、「それまでの過程でプレーヤーは憔悴しきっている」ためだからだでしょう。

 

58...Kc4 59.f4 Kb3 60.Ra1 a2 61.Rg1 Kb2 62.Rg2+ Kc3 63.Rg1 a1Q 64.Rxa1 Rxa1 65.Ke4 Ra5 66.f5 Re5+ 0–1

 

ドラマチックな終幕でした!


百傑戦2009(3日目) 小島、野口同時優勝!

百傑3日目の速報です。

7Rの上位5Bの結果は以下の通りです。

 

小島 慎也 (2277) - 中村 龍二 (2207) 1-0

南條 遼介 (2216) – 野口 恒治 (1997) 0-1

石井 伊知郎(1925) – 桑田 (1831) 0-1

上原 慎平 (1984) – 森内 俊之 (2145) 0-1

Sam Collins (2429) – 坂井 延寿 (1929) 1-0

 

そして、注目の最終ラウンド、Samが意地を見せました!

 

小島 慎也 (2277) - Sam Collins (2429) 0-1

野口 恒治 (1997) – 桑田 (1831) 1/2-1/2

森内 俊之 (2145) – 南條 遼介 (2216) 1-0

中村 龍二 (2207) – 権田 源太郎 (2088) 1-0
 

最終順位は

 

優勝 小島 慎也 (2277) 6.5P

優勝 野口 恒治 (1997) 6.5P

3 森内 俊之 (2145) 6P

4 中村 龍二 (2207) 6P

5 桑田 (1831) 6P

6 Sam Collins (2429) 6P

 

で、小島君と野口さんの同時優勝(タイブレークを行えば小島君のほうが上)となりました。

おめでとうございます!


百傑戦2009(2日目)

4Rの大一番です。小島君と森内さんが激突しました。


 

Moriuchi Toshiyuki (2145)

Kojima Shinya (2277)

百傑 2009 (4)

 

1.e4 c5 2.Nc3!?

 

少し驚きですが、小島君のスベシニコフのテリトリーに入らないようにするには正しい選択かもしれません。

 

2...e6 3.g3 d5 4.exd5 exd5 5.Bg2 Nf6 6.d3 d4 7.Ne4 Nxe4 8.dxe4 Nc6 9.Ne2 Bd6 10.0–0 0–0 11.Nf4 Bxf4 12.Bxf4 Be6 13.Qh5 c4?!

 

13...b6のほうが手堅いと小島君も認めていました。

 

14.Rad1 Qd7 15.Qc5

 

私の直感は15.h3でした。

 

15...Rfd8 16.Bg5?

 

白はf4を突かないと始まらないので、ビショップをf4から動かしますが、これは黒を助けるだけでした。

 

16...f6 17.Bc1 Rac8 18.f4 b6 19.Qa3 b5 20.f5

 

e5にナイトの強力なアウトポストができます。この時点で白がどうすれば良いかいまいちプランが見えないのに対し、黒はセンターを開いて勝負という明確なプランがあり、黒優勢だと思います。

 

20...Bf7 21.g4 d3!



 

白クイーンがh3,g3へ行くのを遮断する好手です。そしてd3のパスポーンが勝負を決めます。

 

22.cxd3 Qd4+ 23.Kh1 cxd3 24.g5 Bh5 25.Rd2 Ne5 26.gxf6 gxf6 27.Qe7 Qd6 28.Qxa7 Nc4 29.Rg1 Kh8 30.Rf2 d2–+ 31.Bxd2 Nxd2 32.Qe3 Qd4! 33.Qf4 Rd7 34.Qh4 Rg7 35.Rf4

 

35.Rxd2には35...Qxd2 36.Qxh5 Qxg2+!で以下メイトです。

 

35...Rxg2 36.Kxg2 Rg8+ 37.Kh3 Rxg1 0–1



 

続く5Rの上位3Bの結果は以下の通りです。

 

小島 慎也 (2277) - 南條 遼介 (2216) 1-0

野口 恒治 (1997) – 森内 俊之 (2145) 1-0

Sam Collins (2429) – 上原 慎平 (1984) 1-0

 

1Bで南條君を下した小島君が5連勝で抜け出しました。また、森内さんが2連敗と大波乱です。野口さんは好調です。

 

6Rの上位対決の結果は、

 

野口 恒治 (1997) - 小島 慎也 (2277) 1/2-1/2

南條 遼介 (2216) - Sam Collins (2429) 1-0

塩見 (2036) -中村 龍二 (2207) 0-1

 

となりました。このラウンド、南條君が強いプレーを見せてくれました。


 

Nanjo Ryosuke (2216)

Sam Collins (2429,IM)

百傑 2009 (6)

 

1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4 4.Nf3 c5 5.Qd3!?

 

非常に珍しい手に見えます。

 

5...0–0 6.Bg5 h6 7.Bh4 cxd4 8.Nxd4 Nc6 9.Nxc6 dxc6 10.0–0–0 Qxd3 11.Rxd3 g5 12.Bg3 Bxc3 13.Rxc3 Ne4 14.Rd3 f6 15.f3 Nxg3 16.hxg3 Kg7 17.e4 e5 18.Rd6!

 

黒ビショップの唯一の展開先であるe6のマスを抑えるとともにdファイルを支配します。

 

18...Rf7 19.Be2 Rd7 20.Rhd1 Re7 21.Rd8±



21...c5 22.R1d6 b6 23.f4!

 

黒が展開する前に白から仕掛けます。おそらく最も良いタイミングだと思います。

 

23...exf4 24.gxf4 Rxe4

 

24...gxf4には25.e5! fxe5 (25...Rxe5 26.Bf3 Rb8 27.Rc6+-) 26.Bh5で次の狙いの27 Rg6+ Kh7 28 Rgg8が厳しいです。

 

25.Bd3 Re7 26.Bf5 Bxf5

 

黒はエクスチェンジをあきらめざるを得ません。26...Bb7?には27.R6d7! Kf7 28.Rxf7+ Kxf7 29.Rd7+で黒はビショップを失います。

 

27.Rxa8 Be4 28.fxg5 hxg5 29.Rad8 Bxg2 30.R6d7 Kf7 31.Kd2 f5 32.Rxe7+ Kxe7 33.Rg8 Kf6 34.Ke2 f4 35.Kf2 Bh3 36.Ra8 g4 37.Rxa7 g3+ 38.Kf3 Bf5 39.Ra8 Bg4+ 40.Kg2 Ke5 41.Re8+ Kd4 42.b3 Kd3 43.Rg8 Bh5 44.Rg5 Be2 45.Rg6 b5?

 

これはやや自滅に見えます。45...Ke3のほうがずっとタフです。

 

46.cxb5 Ke3 47.Re6+ Kd2 48.b6 Ke1 49.Rf6 Bf1+ 50.Kg1 1-0



 

私の知る限り、南條君のIM戦初勝利です。おめでとう!


百傑戦4R速報

4Rの速報です。上位2Bの結果は以下の通り、若手の勝利となりました。

 

森内 俊之 (2145) - 小島 慎也 (2277) 0-1

南條 遼介 (2216) - 中村 龍二 (2207) 1-0

 

ちなみにSam4R体調不良でbyeでしたが、5Rから復活したようです。5Rの上位3Bの組み合わせは、

 

小島 慎也 (2277) - 南條 遼介 (2216)

野口 恒治 (1997) – 森内 俊之 (2145)

Sam Collins (2429) – 上原 慎平 (1984)

 

となっています。そろそろまだまだどうなるか分かりませんね。


百傑戦2009(1日目)

百傑戦1日目の速報です。全55名の参加というのは百傑戦にしてはちょっと寂しい感じがします。

 

リスト上位5名は以下の顔触れです。

 

Sam Collins (2429,IM)

小島 慎也 (2277)

南條 遼介 (2216)

中村 龍二 (2207)

森内 俊之 (2145)

 

Samに加え、龍二さんや森内さんが参加されていて、なかなか新鮮なメンバーですね。ちなみにSam1R迷ってしまってbye(0.5P)ということです。ちょうどいいハンデなのですかね。

 

明日、夕方以降に顔を出しにいこうと思います。


明日から百傑!

明日から百傑ですね。全日本の東京予選でもあるので、参加される皆さん、頑張ってください。さて、今回はIMの参加もあるということで盛り上がりそうですね。Samにとっては、ドレスデン以来のクラシカルチェスです。今回はSam攻略法、とまではいかないですが、Samが最も弱い一面を見せたゲームを紹介します

 

Uesugi,Shinsaku(2222)

Sam Collins(2412,IM)

Dresden 2008 (7)

 

1.Nf3 c5 2.g3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 g6 5.Bg2 Bg7 6.Nb3 Nf6 7.Nc3 d6 8.0–0 0–0 9.e4 Bg4 10.f3 Be6 11.f4

 

このポジションで黒にとって戦略上、重要なマスはc4です。Nc6-e5-c4と来て、c4にナイトが居座られると厄介なので、e5を抑えるため、f4までポーンを突きます。一見、白はスペースを広げたかのように見えますが、a7-g1ダイアゴナルやg4のマスが弱くなり、黒にNg4Qb6+Nf2+などのタクティカルチャンスを与える可能性もあります。

 

11...b5!?

 

Mishaを交えた局後の検討で疑問とされた手です。ですが、私にはそんなに悪くは見えません。ただ、自然な手にも見えません。おそらく黒は、まずハーフオープンファイルにルークをまわして、a,bポーンの突き方はのちのち決定すれば良かったでしょう。

 

12.Nd5 Rc8

 

12...Bxd5 13.exd5 Na5 14.Nd4 Ng4!? 15.Qxg4 Bxd4+ 16.Kh1は白がわずかに有利に見えます。

 

13.Kh1 Re8 14.a4 a6?!

 

白はaファイルを開きたいので、それを手伝う本譜は疑問です。おそらく14...b4が絶対手です。

 

15.axb5 axb5 16.Be3 Nd7

 

16...Ng4? 17.Bb6 Qd7 18.c3(Bg1,Nb6)では黒は厳しいです。

 

17.c3 b4 18.Ra4!? bxc3 19.bxc3 Ncb8?

 



黒は窮屈なポジションを改善するため、マヌーバリングを試みますが、
Misha言うところの”too artificial”な手です。黒はナイトの位置を改善するため、Nd7c5とマヌーバリングし、そのあとにb8に下げたナイトを戻すことを目指します。しかし白の22手目があり、このプランは実現しませんでした。

 

20.c4 Nc5 21.Nxc5 dxc5 22.f5! Bd7

 

22...Bxd5 23.cxd5 Nd7 24.fxg6 hxg6 25.Bh3で白は非常に攻撃的なポジションを得ます。スレットは、26.Rxf7!! Kxf7 27.Be6+ Kf8 28.Qg4 Ne5 29.Qf4+ Bf6 30.Qh6+ Bg7 31.Ra1! です。

 

23.Ra7

 

黒ナイトの動きを縛ります。23...Nc6??には24.Rxd7!があります。

 

23...Rf8?

 

この手の意味はよく分かりません。有効なプランが見つからないほど苦しい状況である証拠です。唯一のチャンスは23...e6ですが、24.fxe6 Bxe6 25.Ne7+で白勝ちです。

 

24.Bf4 Bd4? [24...Kh8] 25.f6! exf6 26.Bxb8 +- Kg7 [26...Rxb8 27.Rxd7! Qxd7 28.Nxf6+ Bxf6 29.Qxd7] 27.Bc7 Rxc7 [27...Qe8 28.e5! fxe5 29.Nf6 Qe7 30.Nxd7 Qxd7 31.Bxe5+] 28.Rxc7 1–0


Cappelleのゲームをアップ&Samの百傑戦参加

小島君のCappelleでの7,8,9Rのゲームを各記事中にアップしました。

全体的にSlav系が多く、私には難解でした。

 

また、Samの百傑戦出場が決定したようです!

ドレスデン後、初の公式戦ということでやる気満々です。

私は参加しませんが、参加される方は簡単に負けないよう、頑張ってください。


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