9Rはホンジュラス。中米の国が立て続けにきました。しかし前日のニカラグアに比べるとだいぶ劣り、ようやく我々より下と思えるチームと当たりました。ペアリングが出たあと相手のゲームをチェックし、そんなに問題ないと結論を出し、小島君を休ませ、野口さんに初勝利を飾ってもらおうと決めました。
ホンジュラス戦の開始時
手前左のチームは前日対戦したニカラグア(この日はベルギーと対戦)
□Baba Masahiro (JPN,2220)
■Fajardo David Ponce (HON,UR)
Dresden 2008 (9)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4 Again!! e6 7.Bb3 Be7 8.Qf3 Nbd7 9.0–0 Ne5?!
9...0-0からQc7→b5のほうが良いアイディアです。e5のナイトは白にf4を突かれて追い返されるだけです。
10.Qe2 0–0 11.Kh1 Qc7 12.f4 Nc6 13.Nxc6 bxc6 14.e5 Nd7?!
14...Nd5を予想していました。これに対しては15.Nxd5 cxd5 16.c3からBc2→Rf3→Rh3などのキングサイドアタックを考えていました。
15.exd6 Bxd6 16.Ne4!
タイミングよくセンターに跳び出せてやや白有利です。
16...Be7 17.Bc4
Bc4-Bd3とジグザグにビショップをアタッキングポジションであるd3に持っていこうとしました。17.c3としないのは17...a5からBa6を狙われるのを嫌ったのと、黒マスビショップをa1-h8ダイアゴナルにセットできないためです。
17...Nb6 18.Bd3 c5 19.b3 f5!?
これには驚きました。黒はe6をどう守るのかはなはだ疑問でした。
20.Ng5 Rf6?!
これにも少なからずショックを受けました。当然20...Bf6だと思っていましたから。
21.Bb2 Rh6
狙いは22...Bxg5 23.fxg5?? Qxh2#!
ここでようやく相手は後々のことを考えて弱点を作らないように指すより何らかの一発的な手を狙おうとしていることが分かりました。もちろんこれはあまり強くないプレーヤーのやることですが、実戦的には一発狙いはが成功するケースはわりと多くあります。白は注意深く指さなければいけません。
22.Be5 Qc6 23.Rae1
e6にプレッシャーをかけます。しかし後の変化を見るとe6を落としに行くプランは間違っていたことが分かります。23.Rad1のほうが正しいルークの手でした。
23...Bb7
このロングダイアゴナルは私を悩ませました。
24.Qf3?!
もしクイーン交換すれば黒の弱点(a6,c5,e6)が残る形となり、白が勝つと考えていました。しかし24...Qxf3 25.Nxf3 Nd5だと黒のピースはアクティブで、黒の弱点をどう狙っていけばよいか、そこまで簡単ではありません。24.Rf3! Rg6 25.Rg3とすべきです。
24...Qc8 25.Qf2 Rg6 26.Nf3 Qc6 27.c4 Nd7 28.Bb2 Bd6 29.Qe3 Qc7 30.Nh4 Rh6 31.Qg3 Nf8 32.Re2 Qf7 33.Nf3
ここでトラブルが発生します。相手がクイーンをh5に動かしました。もちろんこれにはQxg7#です。このメイトに気付いた相手はクイーンをg6に戻しました。ここでh5に置いたとき手を完全に手を離したかどうかははっきりしませんが、私はQh5が明らかに着手の意図があったものと判断しました。そこでタッチを指摘したわけです。もちろん向こうは認めないですが、一度指摘したものを簡単に引き下げるわけにもいかず、そのまま1分くらい時間が流れました。ここでアービターが近くにいればすぐに裁定を下すところですが、運悪く離れていました。代わりに場の雰囲気を読んだMishaがやってきて、「とりあえず時計を止めてください。アービターを呼んできます」と話し、アービターを探しに行きました。アービターとの簡単なやり取りがあった後、しばらくしてもう一度Mishaがやってきて、「我々はタッチを証明できないので指し続けてください」と説得され、プレーは続行しました。
33...Qg6 34.Ng5?
トラブルに完全に集中力はかき乱され、正しい選択をできなくなっていました。34.Qxg6! Rxg6 35.Ne5なら白にアドヴァンテージがあります。
34...Rh5!
次に35...h6という悩ましいスレットがあります。残り時間も少なく明らかに焦っていました。その様子を見て、ここでMishaが寄ってきて、「次の手を指したらドローオファーしてください」と指示されました。この時点ですでに残りの3Bで2.5P取っていたため、私のボードの結果にかかわらずチームの勝ちは決定的していましたし、相手はレイティングを持っていなかったので私はその通りにしました。
35.Kg1(=)
向こうはドローを受けるかどうか考えている様子はありませんでした。なぜなら次の明らかな手でポーンアップできるからです。
35...Bxf4 36.Qxf4 Rxg5 37.g3 Rg4?
白クイーンの侵入を防いでおくべきでした。37...Rc8か37...Rd8が好まれます。
38.Qc7!±
これは秘かに狙っていた手でした。黒が前々に作り出した弱点のポーンを落としに行きます。
38...Ra7 39.Be5 Qf7 40.Qxc5
40手目を指し、時間が追加されます。このタイミングによい形でポーンを取り返すことができ、再び落ち着きを取り戻しました。
40...Ba8 41.Qc8 Bb7 42.Qc7 Qxc7 43.Bxc7 Bc8 44.Bb8 Rd7 45.Re3 Ng6?
このゲームで初めて勝ちのチャンスが訪れました。
46.Bxf5! exf5 47.Re8+ Kf7 48.Rxc8 Ne7 49.Rc7 Rxc7 50.Bxc7
ポーンアップし、あとは丁寧に指すだけです。
50...Rd4 51.Rf2 g6 52.Bf4 Re4 53.Rd2 Nc6 54.Rd7+ Re7 55.Rxe7+ Kxe7 56.Kf2 Kf6 57.Ke3
これでも勝ちには変わりませんが、あとでMishaに57.Bd2!を指摘されました。この局面でビショップのベストポジションはc3なので、まずそこにビショップを置くべきだということです。
57...g5 58.Bc7 h5 59.a3 1–0
白のクイーンサイドのパスポーンが勝負を決めます。ここで相手の時間が切れました。
非常に疲弊するゲームでしたが、1Bの重責を果たせてひとまず安堵しました。そして何より野口さん、初勝利おめでとうございます!!