Dresden Dream(13)

9Rはホンジュラス。中米の国が立て続けにきました。しかし前日のニカラグアに比べるとだいぶ劣り、ようやく我々より下と思えるチームと当たりました。ペアリングが出たあと相手のゲームをチェックし、そんなに問題ないと結論を出し、小島君を休ませ、野口さんに初勝利を飾ってもらおうと決めました。



ホンジュラス戦の開始時
手前左のチームは前日対戦したニカラグアこの日はベルギーと対戦


 

Baba Masahiro (JPN,2220)

Fajardo David Ponce (HON,UR)

Dresden 2008 (9)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4  Again!! e6 7.Bb3 Be7 8.Qf3 Nbd7 9.0–0 Ne5?!

 

9...0-0からQc7b5のほうが良いアイディアです。e5のナイトは白にf4を突かれて追い返されるだけです。

 

10.Qe2 0–0 11.Kh1 Qc7 12.f4 Nc6 13.Nxc6 bxc6 14.e5 Nd7?!

 

14...Nd5を予想していました。これに対しては15.Nxd5 cxd5 16.c3からBc2Rf3Rh3などのキングサイドアタックを考えていました。

 

15.exd6 Bxd6 16.Ne4!

 

タイミングよくセンターに跳び出せてやや白有利です。

 

16...Be7 17.Bc4

 

Bc4-Bd3とジグザグにビショップをアタッキングポジションであるd3に持っていこうとしました。17.c3としないのは17...a5からBa6を狙われるのを嫌ったのと、黒マスビショップをa1-h8ダイアゴナルにセットできないためです。

 

17...Nb6 18.Bd3 c5 19.b3 f5!?



これには驚きました。黒はe6をどう守るのかはなはだ疑問でした。

 

20.Ng5 Rf6?!

 

これにも少なからずショックを受けました。当然20...Bf6だと思っていましたから。

 

21.Bb2 Rh6

 

狙いは22...Bxg5 23.fxg5?? Qxh2#!

ここでようやく相手は後々のことを考えて弱点を作らないように指すより何らかの一発的な手を狙おうとしていることが分かりました。もちろんこれはあまり強くないプレーヤーのやることですが、実戦的には一発狙いはが成功するケースはわりと多くあります。白は注意深く指さなければいけません。

 

22.Be5 Qc6 23.Rae1

 

e6にプレッシャーをかけます。しかし後の変化を見るとe6を落としに行くプランは間違っていたことが分かります。23.Rad1のほうが正しいルークの手でした。

 

23...Bb7

 

このロングダイアゴナルは私を悩ませました。

 

24.Qf3?!

 

もしクイーン交換すれば黒の弱点(a6,c5,e6)が残る形となり、白が勝つと考えていました。しかし24...Qxf3 25.Nxf3 Nd5だと黒のピースはアクティブで、黒の弱点をどう狙っていけばよいか、そこまで簡単ではありません。24.Rf3! Rg6 25.Rg3とすべきです。

 

24...Qc8 25.Qf2 Rg6 26.Nf3 Qc6 27.c4 Nd7 28.Bb2 Bd6 29.Qe3 Qc7 30.Nh4 Rh6 31.Qg3 Nf8 32.Re2 Qf7 33.Nf3


 

 

ここでトラブルが発生します。相手がクイーンをh5に動かしました。もちろんこれにはQxg7#です。このメイトに気付いた相手はクイーンをg6に戻しました。ここでh5に置いたとき手を完全に手を離したかどうかははっきりしませんが、私はQh5が明らかに着手の意図があったものと判断しました。そこでタッチを指摘したわけです。もちろん向こうは認めないですが、一度指摘したものを簡単に引き下げるわけにもいかず、そのまま1分くらい時間が流れました。ここでアービターが近くにいればすぐに裁定を下すところですが、運悪く離れていました。代わりに場の雰囲気を読んだMishaがやってきて、「とりあえず時計を止めてください。アービターを呼んできます」と話し、アービターを探しに行きました。アービターとの簡単なやり取りがあった後、しばらくしてもう一度Mishaがやってきて、「我々はタッチを証明できないので指し続けてください」と説得され、プレーは続行しました。

 

33...Qg6 34.Ng5?

 

トラブルに完全に集中力はかき乱され、正しい選択をできなくなっていました。34.Qxg6! Rxg6 35.Ne5なら白にアドヴァンテージがあります。

 

34...Rh5!

 

次に35...h6という悩ましいスレットがあります。残り時間も少なく明らかに焦っていました。その様子を見て、ここでMishaが寄ってきて、「次の手を指したらドローオファーしてください」と指示されました。この時点ですでに残りの3B2.5P取っていたため、私のボードの結果にかかわらずチームの勝ちは決定的していましたし、相手はレイティングを持っていなかったので私はその通りにしました。

 

35.Kg1(=)

 

向こうはドローを受けるかどうか考えている様子はありませんでした。なぜなら次の明らかな手でポーンアップできるからです。

 

35...Bxf4 36.Qxf4 Rxg5 37.g3 Rg4?

 

白クイーンの侵入を防いでおくべきでした。37...Rc837...Rd8が好まれます。

 

38.Qc7!±

 

これは秘かに狙っていた手でした。黒が前々に作り出した弱点のポーンを落としに行きます。

 

38...Ra7 39.Be5 Qf7 40.Qxc5


40手目を指し、時間が追加されます。このタイミングによい形でポーンを取り返すことができ、再び落ち着きを取り戻しました。

 

40...Ba8 41.Qc8 Bb7 42.Qc7 Qxc7 43.Bxc7 Bc8 44.Bb8 Rd7 45.Re3 Ng6?

 

このゲームで初めて勝ちのチャンスが訪れました。




46.Bxf5! exf5 47.Re8+ Kf7 48.Rxc8 Ne7 49.Rc7 Rxc7 50.Bxc7

 

ポーンアップし、あとは丁寧に指すだけです。

 

50...Rd4 51.Rf2 g6 52.Bf4 Re4 53.Rd2 Nc6 54.Rd7+ Re7 55.Rxe7+ Kxe7 56.Kf2 Kf6 57.Ke3

 

これでも勝ちには変わりませんが、あとでMisha57.Bd2!を指摘されました。この局面でビショップのベストポジションはc3なので、まずそこにビショップを置くべきだということです。

 

57...g5 58.Bc7 h5 59.a3 1–0

 

白のクイーンサイドのパスポーンが勝負を決めます。ここで相手の時間が切れました。

 

非常に疲弊するゲームでしたが、1Bの重責を果たせてひとまず安堵しました。そして何より野口さん、初勝利おめでとうございます!!


Dresden Dream(12)

この日から雪が降りました。ドレスデンにも冬の到来です。


ホテル裏の風景


ホテル正面


会場


モスク(昔はタバコ工場だったようです)


8Rはニカラグアでようやく実力の近いチームと当たりました。しかしスタート順位は日本より上です。前日までの相手と比べてだいぶ落ちたので日本国内では楽勝モードな雰囲気だったかもしれませんが、オリンピアードでは簡単なマッチなどありません。

 

Baba Masahiro (JPN,2220)

Espinoza Felix (NCA,2243)

Dresden 2008 (8)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4

 

またもSozinです。

 

6...e6 7.Bb3 b5 8.Qf3

 

悪くはありませんがBg5Qf30-0-0のセットアップにしたいなら8.Bg5から入ったほうがより強制力があります。

 

8...Qb6!

 

間髪入れずに指されました。1B3Bではそれぞれ小島君と晋が黒でSveshinikovを指していましたが、晋のボードのほうが手は早く進んでいたため、それを見たニカラグアの1Bはメインを外してきました。4Bの佐野君はDragonになりましたが、相手は全く時間を使っていません。ここでようやくニカラグアのほうが我々よりよく準備してきたことに気付きました。早くもプリパレーション外となったので時間を使って考え始めます。

 

9.Be3

 

9.0-0も考えましたが9...b4! (9...Qxd4? 10.e5 Nd5 11.Nxd5 exd5 12.Bxd5 Ra7 13.Be3 +-)10.Na4 Qxd4 11.e5 Nd5ではダメだろうと読みました。

 

9...Qb7 10.a3

 

次に白が考えなければいけないのはe4のポーンをいかにして守るかです。次にb4と突かれればe4を守っているc3のナイトがどかされます。e4を捨てて戦うのもありかもしれませんが全く自信はありませんでした。そこで堅く行きます。

 

10...Be7

 

10...Nbd7(Nc5)のほうを怖れていました。これには11.Bg5といったん指して0-0Rfe1くらいでしょうか。

 

11.Qg3

 

ここでg7を狙いながらf3のマスを空けることで次に11.f3e4のポーンを守れます。オープニングでのトラブルはこれで解決です。

 

11...0–0 12.f3 Bd7 13.0–0 Nc6 14.Nxc6 Bxc6 15.Bh6 Ne8 16.Rad1 a5!

 

白はキングサイドからの攻めるには援軍が少なすぎます。黒のクイーンサイドからの反撃が速いです。

 

17.Bg5

 

d6を弱点にするため、このビショップは交換します。

 

17...a4 18.Bxe7 Qxe7 19.Ba2 Qb7

 

次にb4でクイーンサイドがこじ開けられるので、

 

20.Rd4

 

と指しました。こうして反撃を抑えてdファイルから圧力をかけようとしましたが...



20...e5!

 

これには驚きました。d5を穴にしてビショップの筋も通すので直感で排除しがちな手ですが、ルークを追い払えばb4が突け、黒は勝負できます。

 

21.Rd2

 

ルークをどこに引くかで迷いました。21.Rb4Nc7Na6でルークが罠にかかります。Rd3Rd2ですが、最終的にはRd2を選びました。MishaRd3を考えていて、 21.Rd3 b4 22.axb4 Qxb4 23.Rb1を示しましたが、最後のRb1はとてもパッシブに見え、これも直感で排除しがちです。しかしよく見るときちんと反撃を抑えている手ですね。

 

21...b4 22.Nd5 bxa3 23.bxa3 Bxd5

 

23...Qb2 24.Ne7+ Kh8 25.Nxc6 Qxa2 26.f4 Qc4 27.Ne7 Qxe4は非常に面白い勝負だと思いますが黒に若干、分があります。本譜では安全に来ました。

 

24.Bxd5 Qb6+ 25.Qf2 Rb8 26.Qxb6 Rxb6 27.Rfd1

 

弱点のd6に圧力をかけますが、白のacのポーンも弱いのでこの時点でイコールです。

 

27...Nc7 28.Bc4 Rd8


確かここだったと思いますが、向こうがドローオファーしてきました。一瞬耳を疑いました。というのは本オリンピアードでは30
手目まで合意によるドローは禁じられているからです。本来なら受けてもいい局面ですが、ここで受けると両者不戦敗?とか最悪のケースを考えてとりあえず30手目は超えるように指しました。

29.f4!?

 


このタイミングで勝負します。29...exf4には30.e5がありますが、黒は30...d5でポーンを返せば全く心配ありません。

 

29...Rc6 30.Bd5 Nxd5 31.Rxd5 f6!

 

白の最後の望みは31...exf4?! 32.e5で次にexd6でパスポーンを作ることです。バックランクのメイトを防ぎ、パスポーンも作らせない本譜の手は安全でベストな選択だと思います。ゲームは完全なドローのルークエンディングとなります。

 

32.fxe5 fxe5 33.Rxe5 Rxc2 34.Red5 Rb8 35.R1d2 Rxd2 36.Rxd2 Rb3 37.Rxd6 Rxa3 38.Ra6 Ra2 39.Ra7 Kf8 ½–½

 

このラウンド、私のボードが一番早く終わりました。小島君はまだ難解な中盤で、晋は今にもつぶれそうで、佐野君は危ないところを何とか耐え、ドロー以上は取れそうでした。私は観戦席に戻ってマッチの行方を見守りました。結果、最終的には4Bともドローでマッチもドローとなりました。


学生選手権2日目

さて、大会2日目です。

Round4

Baba-Kitatani
 1-0
Sicilian Sozin

Sozin
3ピースvsクイーンのバリエーション(タジキスタン戦で紹介したやつです)
実際指してみるとなかなか勝ちきるのは難しいです。やや疑わしくも勝ち。

Round5

Ishihara-Baba
 1/2
Grunfeld

序盤、中盤と全くアドヴァンテージは取れずに迎えたエンディングでなんとかパスポーンを作って勝勢に。普通にポーンを突いておけば勝ちでした。しかし事件は起きました。簡単に状況を説明すると、

W
Qe5 Pe6
B
Ke8 Pe7
で、バックランクでのメイトを防ぐにも、f8にキングが行くとQh8#d8にキングが行くとQb8

一瞬負けかと思いましたがパペチュアルに逃れました。

Round6

こうして向かえた最終戦。1年を締めくくるのにはもったいないくらいの相手です。

Baba Masahiro (2215)
Kojima Shinya (2292)

学生選手権2008 (6)

1.d4!

お互い研究ラインを良く知っているので、勝ちたいなら研究ラインを外す必要があります。

1...d5 2.c4 c6 3.Nf3 Nf6 4.Nc3 e6 5.Bg5 h6 6.Bh4 dxc4 7.e4 g5 8.Bg3 b5 9.Be2 Bb7 10.0-0 Nbd7 11.Ne5 Bg7 12.Nxd7 Nxd7 13.Bd6 a6

Anti-Moscow
ですが、研究ラインではありません。昨日パラパラとNew In Chess Magazineを見ていて「面白いかも」と思って指してみただけです。そうとうごちゃごちゃになるので白黒つけたいならうってつけのラインでしょう。

14.Qd2 Bf8 [14...c5] 15.Bxf8 Rxf8 16.Qe3 Qb6 17.Rfd1 e5

実はこの手を見てなかったのですが、そんなに問題はないかもしれません。

18.Bg4 0-0-0 19.Qg3?!



ピンのためe5は取れないですしd5と突きこすこともできないのでd4のポーンをどうするか悩みました。そこで思いついたのが本譜の手筋です。もちろんベストではないでしょうが少し局面を混乱させます。

19...exd4 20.Qd6 f5!

白の狙いはBxd7+からQxf8なのでこの手は絶対手です。(20...Qc7には21.Qxd4OK

21.Bxf5 Rxf5 22.exf5 dxc3 23.bxc3 c5

23...Nc5 24.Qxh6 Nd3 25.Rd2
のほうが白を困らせていたでしょう。
 
24.Qe7
Rd6-Rad1 Nf6 25.Rxd8+ Qxd8 26.Qxc5+ Kb8 27.Qe5+ Ka8 28.Qe1



これもベストではないでしょうが、ルークをプレーに参加させたいのと、
g2を守るため一度引きました。

28...Qd5 29.Qf1

29 f3
には29...g4!で崩されます。

29...Qxf5 30.a4 Kb8 31.axb5 axb5

白はなるべく局面を開いて黒キングを狙いたいところです。

32.Rd1 Ng4

黒の狙いは33...Qf4 34.g3 Qf3

33.Rd8+ Kc7 34.Rd4 h5 35.h3 Ne5 36.Qa1 Nc6

一見よさそうに見える36...Nd3? には 37.Qa5+ Kc6 38.Rxc4+で白にチャンスありです。
 
37.Rd1 g4 38.h4 Qf6 39.Qb1 Qxc3? 40.Qxb5 Qb3 41.Qd5 Kb6?!

41...Ba6
でまだ黒に勝ちのチャンスがあります。

42.Rc1 Ba6 43.Qxh5

白はパスポーンを得て、一気に流れが変わりました。

43...Qb2 44.Qg5 Nd4? 45.Qg6+!+-

重要なチェックです。b1をルークのためにおさえます。

45...Ka5 46.Rb1

クイーンがどけば47.Qb6+からメイトです。

46...Ne2+ 47.Kh1 Qd4 48.Qh5+!

 

これも重要な位置でのチェックです。48...Ka4 49.Qe8+で浮いたナイトをゲットです。48.Qf5+! Ka4 49.Qc2+でも同様です。

1-0

大きな大きな勝利で2008年を締めくくりました!

最終順位は

1
位 山田 弘平 5P
2位 小島 慎也 4.5P
3
位 馬場 雅裕 4.5P

でした。

参加者の皆様お疲れ様でした。そしてNew Championの山田君、おめでとう!!


学生選手権1日目

今日からスタートです。朝なかなか起きられず、会場に着いたのは試合開始10分前。


Round1

Mimura-Baba
 01
Sicilian Najdorf

クラシカルラインのわりと古めのライン。Valleoが新手出したやつです。(って分からないか。。。)
三村君、去年とうってかわって強くなりましたね。3Rには桑田君にも勝ちましたし(かなりシャープなゲームだった)これからの伸びに期待ですね。このページも見てくれているようですし、何かアドバイスできることがあれば積極的にしていきたいです。

R、何人かドタキャンした人間がいたため、不戦勝のボードが3つも出てしまいました。エントリーして当日来られない場合は必ずペアリング前に主催者に連絡しましょう。試合開始後でも何らかの理由で来られない場合は必ず主催者と相手の方に謝罪を入れること。常識です。

Round2

Baba-Morimoto
 01
French Tarrasch

オープニングからそこまで大きくはないが確実なアドヴァンテージをキープしていって40手目付近で勝勢になりましたが、驚愕のブランダーで敗勢に。そのまま負けました。森本君はなかなか手堅いですね。

Round3

Yoshimura-Baba
 01
Sicilian Alapin

おそらくオープニングから黒に不満はなかったでしょうが、RPPNNの交換になる手筋を許してちょっと危なくなるも何とか勝ち。


1
日目終わって早くも全勝者はいなくなりました。

トップは2.5P

Kojima
Sano
Yamada
Morimoto
Matsubara

5人かな?



4R
のペアリングは以下の通りです。

1 Matsubara,  (25) : Kojima, S (1)
2 Yamada, K (5) : Morimoto, D (9)
3 Sano, T (4) : Yoshimura, K (13)
4 Baba, M (2) : Kitatani, M (24)
5 Mimura, K (15) : Suzuki, K (11)
6 Inoue, S (6) : Kitagawa, T (19)
7 Togawa, G (18) : Ishihara, T (10)
8 Kuwata, S (7) : Uchida, N (14)
9 Kawashima, Y (16) : Chihara, G (17)
10 Matsuki, T (21) : Ohtsuka, S (27)
11 Ijiri, Y (20) .5:.5 BYE
12 Yamamoto, G (23) .5:.5 BYE


学生選手権2008

日時:2008年12月26日(金)、27日(土)
会場:国立オリンピック記念青少年センター
(小田急線参宮橋駅徒歩5分)
   センター棟 109号室(二日目は408号室)
形式:6Rスイス式
持ち時間:60分+初手より1手30秒加算

参加資格:JCA会員の大学、大学院生
参加費:1000円
参加申込み:
12/20までにメール<tomusano0716@gmail.com>
当日申込みは、原則的に1Rbyeとなります。

備考:
・チェスクロック、チェスセットをお持ちの方は必ず持参して下さい。
・最終日を除き、予約byeには1/2ポイントが与えられます。
・集合時間に不在の場合、1R−byeになることがあります。
・タイブレークはソルコフで行います。
・JCA公式戦です。JCA未加入の方はあらかじめ入会手続きを完了しておいて下さい。
競技主任:学生チェス連盟代表 佐野富<tomusano0716@gmail.com>

トーナメントスケジュール:
12/26(金)、27(土)
6ラウンドスイス式、60分+初手より1手30秒加算

12/26 
09:45 集合
10:00 1ラウンド
14:00 2ラウンド
17:00 3ラウンド

12/27 
10:00 4ラウンド
14:00 5ラウンド
17:00 6ラウンド
19:20 表彰式
(進行状況により開始時間の変更があります)


さて、2008年を締めくくるのにふさわしいトーナメントがあさって開始します。

今のところの情報は東大9人、慶応7人、東北大4人で、全部で25人とのこと。小島君、南條君は当然参加でかなりヒートアップしそうです。

Dresden Dream(11)

オリンピアードも半ばを過ぎ、徐々に慣れてきました。7Rはアイルランド。GM1BBaburinだけですが、向こうはレイティングリストの上から4人を当ててきたので当然厳しいマッチとなりました。

Kelly Brian (IRL,2488,IM)

Baba Masahiro (JPN,2220)

Dresden 2008 (7)

 

1.c4 Nf6

 

もちろんGrunfeldの対策もしていましたからこちらから入ります。

 

2.Nc3 e5 3.g3 Nc6 4.Bg2 Bc5 5.a3 a6 6.e3 d6 7.Nge2 0–0 8.d4 exd4 9.exd4 Ba7 10.0–0 Re8 11.h3

 

さて、困りました。というのはメインのプリパレーションは11.b3で、11...Bf5 12.h3(12.Bb2 Qd7) Ne4!で黒はe4をコントロールし、満足なポジションであるというものだったのですが、本譜で11...Bf5?!には12.g4! Bg6 13.Bg5! が入ります。非常に細かいムーブ・オーダーですが、白はこのニュアンスを見逃しません。

 

11...h6

 

有効な待ち手です。12.g4(g5)に対しては12...h5! と崩しに行く予定でした。

 

12.b4 Rb8



これも待ち手です。いずれ黒は白マスビショップを展開し、
c6のナイトをe7-g6(or f5)とマヌーバリングしたいので、b7のポーンを守っておくことは非常に意味のあることです。黒の11-12手目は今回のオリンピアードでの私のプレーの注意深さを象徴する典型的な手だと思います。国内でも焦って無理をせずにこうやってゆっくり手を作っていくことが重要だと感じました。

 

13.Bf4 Ne7 14.Rc1 Ng6 15.Be3 Be6 16.Qd3 c6

 

黒は3段目以下で低く構え、次にセンターで対抗しようと準備します。

 

17.Rfe1 d5!

 

黒マスビショップ用のダイアゴナルh2-b8を開き、e4のマスもコントロールします。

 

18.c5 Qd7 19.g4 h5 20.f3

 

典型的なマスターの手です。テンションをキープします。

 

20...Rbc8

 

b8をビショップのために空けます。Rbd8なら21.Bg5!が入りますし、Ra8だとBb8のあと、ルークの連携が取れません。ここは注意深くc8を選びます。

 

21.Nf4 Nh4 22.Bf2 Nxg2 23.Kxg2 Bb8

 

ビショップがようやくアクティブになりました。黒のポジションに全く不満はありませんが、ひとつ注意しなければならないものがありました。時間です。

 

24.Nce2 Re7??

 

ここまで非常に良い流れで来ていて、自信を持って指せていました。しかしここで次の白の手を見落としてしまいました。

 

25.Bh4!

 

ショックなことにキングの前のポーンの形を崩さざるを得ません。

 

25...hxg4 26.hxg4 Bxg4

 

Bxf6-gxf6は明らかに悪いので、ここで勝負を仕掛けることにしました。

 


27.fxg4?

 

私のみならず相手も時間切迫なので安全な手を選択してきました。しかしここは27.Bxf6! Bf5(私はこの手で大丈夫だと思っていました。相手もおそらくここまでしか見てなかったでしょう) 28.Qd2!! gxf6 29.Nh530.Nxf630.Qh6が受かりません!検討で28.Qd2!!を見つけたのはMishaで、IMよりも一歩先を考えていると感じました。

 

27...Qxg4+ 28.Qg3

 

28.Bg3?には 28...Rce8で黒が一気に勝勢になるのでこの手は絶対手です。

 

28...Qf5

 

時間切迫の中、この手を見つけ、やや興奮してきました。白のピースはピンであったり、浮いているので、実際、この手は実戦的に白を悩ませます。しかし両者次の白の巧手を見ていませんでした。

 

29.Rf1?

 

29.Qh3!がその手です。c8のルークがクイーンの筋にいることがポイントです。黒の28手目の正着は28...Qxg3+ 29.Bxg3 Rce8でした。残り2分程度でしたが、盤面を良く見て起死回生のタクティクスを見つけ出します。

 

29...Rxe2+! 30.Nxe2 Qe4+ 31.Qf3 Qxh4

 

流れは一気に黒に傾きました。

 

32.Rh1 Qg5+ 33.Kf1 Re8!

 

白の狙いは34.Qh3からQh8#Qxc8のダブルアタックなので、これを防ぎます。

 

34.Qh3 Kf8 35.Rg1 Qh5

 

時間がないので安全に行きます。実際は35...Qd2! とクイーンを残したほうがよく、36.Qh8+ Ke7 37.Qxg7?には37...Rg8!でクイーンが罠にかかります。

38.Qxh5 Nxh5 37.a4 Re4(Nf4) 38.Rd1 g6 39.b5 axb5 40.axb5 Bc7

 

ここで持ち時間30分追加です。

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朝霞クリスマス

今日は朝霞のクリスマス大会。参加するつもりはありませんでしたが顔を出したついでに2ゲームほどやってきました。以下はその中の一つです。

Baba Masahiro

Kobayashi Yusuke

Asaka Christmas 2008(2)

 

1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 Nf6 4.e5 Nfd7 5.Bd3 c5 6.c3 Nc6 7.Ngf3 Be7 8.0–0 a5 9.Re1 cxd4 10.cxd4 Qb6 11.Nb1 Nxd4 12.Nxd4 Qxd4 13.Nc3 Qb6 14.Qg4 g6

 

14...Kf8 is the move in the game of Rublevsky-Lputian Poikovsky 2003

 

15.Nb5 0–0 16.Bh6 Rd8 17.Rac1 f6?? 18.Bxg6 Bf8

 

The critical moment for me. I put whole my energy on the combination starts from next move. 

 


19.Nd6! Bxh6 20.Qxe6+?!

 

20.Be8+ leads mate in 14 moves.

 

20...Kh8

 

clearly the only move

 

21.Nf7+ Kg7 22.exf6+ Kxg6 23.Ne5+!



This is the point. If 23...Kg5 24.h4+ and mate.

 

23...Nxe5 24.Qxb6

 

Although it is not the best way to enlarge my winning advantage, I like this combination.

 

24...Nf7 25.Rc3 Ra6 26.Rg3+ Kf5 27.Qd4 Re6 28.Rf3+ Kg6 29.Qd3+! Re4 30.Rxe4 dxe4 31.Qxe4+ Kg5 32.Qf4+?

 

32.h4+ Kh5 33.Qxh7 wins easily.

 

32...Kh5 33.Qa4 Bg4 34.Qb5+ Bg5 35.h4 Kxh4

 

35...Bxf3 36.gxf3 Kxh4 37.Qc4+ +-

 

36.g3+ Kh5

 

36...Kh3 37.Qf1#

 

37.Rc3 Rd1+ 38.Kg2 Bd7 39.Qe2+

 

39.Qb3!

 

39...Bg4 40.Qe8 Kg6 41.Rc7



The game is over. The rest is easy but not so accurate.

 

41...Bxf6 42.Qxf7+ Kg5 43.Rxb7 Bf5 44.Rb5 Kg4 45.Qxf6 Be4+ 46.f3+ 1–0


Dresden Dream(10) -Rowson vs Kojima-

スコットランドとの大将戦は歴史に残る大一番となりました。

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ANNOTATED BY

Kojima Shinya

Rowson,Jonathan (SCO,2596,GM)
Kojima,Shinya (JPN,2272)
Dresden 2008 (6)

1.d4 d5 2.Nf3 Nf6 3.c4 c6 4.e3 Bg4 5.h3 Bxf3 6.Qxf3 e6 7.Bd3 Nbd7 8.0–0 Bd6 9.Rd1 0–0 10.Nc3 Qe7 11.Qe2

 

近年非常に良く指されている4.e3 Slav の一変化で、この辺りまでは用意通りでした。

 

11...dxc4!

 

この定跡は黒が早々にダブルビショップを放棄する代わり、すばやい展開とe5からのセンターブレイクで勝負するものです。11...Rfe8 12.c5!? Bc7 13.f4 は黒としてはやや指しにくいと思います。

 

12.Bxc4 e5 13.d5 e4!

 

ここで黒はポーンストラクチャーを乱さぬことよりも、相手の駒を有効に使わせないこと、加えて
e5にマスを作り、自分の駒をより良い位置に持っていくことを優先します。13...cxd5?! 14.Nxd5 Nxd5 15.Bxd5 は白が何の支障もなくBd2-Bc3と組めるので、黒としては指したくありません。

14.dxc6 bxc6 15.Qc2!?

 

ここは試合中どう指してくるのか非常に興味深く待ち、そして感心した局面です。15.Bd2?! Qe5! 16.g3 (16.f4!? exf3 17.gxf3) 16...Qf5! 17.Be1 Bc7 (17...Qxh3!? 18.Qf1! Qxf1+ 19.Bxf1 Be5 20.Nxe4) こうなると明らかに黒が指しやすいです。

 

15...Rad8 16.Bf1 Rfe8 17.Bd2 h5!?

 

このような端のポーンを進める手は私の好みです。h4まで進めることにより、白にg3を突かせない狙いです。

 

18.Ne2 c5

 

18...h4!? 19.Qxc6 Ne5! は試合中は不十分だと読んでいましたが、どうも十分なポーンの代償がありそうです。

 

19.Bc3 Nb6 20.Nf4 Bxf4 21.exf4 Nfd5 22.Bd2 Nb4

 

22...e3 23.fxe3 Nxe3 24.Bxe3 Qxe3+ 25.Qf2 は若干ではありますが、白が良いと思い、指しませんでした。

 

23.Bxb4 cxb4 24.Rxd8 Rxd8 25.Re1 Rd4 = 26.h4 f5 27.g3 Qd6 28.Rc1 Rd2 29.Qb3+ Qd5?

 

これはひどいポカでした。今思えば、どうしてb4が落ちることに気づかなかったか不思議です。29...Kh7=

 

30.Qxb4 Kh7 31.Rc5 Qd6 32.Rb5 Qxb4 33.Rxb4 Nd5 34.Rb7 e3 35.fxe3 Nxe3 36.Re7?!

 

ここは36.Bh3とすれば、まだ白が大きな優勢を保ったまま試合を続けることが出来ました。

 

36...Nxf1 37.Kxf1 Rxb2 38.Rxa7

  

 

こうしてこの局面になりました。ここから白が勝てるのかどうか、それがポイントです。結論として自分はこのエンディングはドローではないかと思っています。これを考える前に、端のポーンを後ろからルークで止められているエンディングを確認しましょう。

 

                              REFERENCE  DIAGRAM

 

この形は明らかにドローです。白が勝つためには自身のルークとキングを入れ替え、プロモーションする以外ありません。そのためにKe1-Kd1-Kc1-Kb1とルークに寄っていった後、キングを前進させますが、Kb6のタイミングでRb1+とされるとチェックが切れずドローとなります。黒はキングをg7h7で往復させるか、ルークをaファイルで移動させて、白のキングがb6に到達するのを待っていれば問題ありません。黒がキングをポーンに寄せようとするのは間違いで、Kf7?? Rh8で白の勝ちとなります。これを理解していないと本譜でも分からない所があると思います。本譜との違いは、クイーンサイドにお互いポーンが3つずつ残っていること、そして白がaポーンを6段目で止めることができる点です。

 

38...Kh6 39.Ra6+ g6!?

 

 

この手はブランダーだと指摘されましたが、果たしてそれは本当でしょうか。本譜の通り黒のキングは身動きが取れなくなりますが、f5を守ったので、ルークでaポーンとgポーンを睨み、Ra8に対してKg7と下がれば良い、と黒にとってやるべきことがシンプルになります。実際白は黒のキングをh6に縛った上で勝つ手段があるのでしょうか。

 

40.Ra7 Rc2 41.a4 Rc1+!

 

ここで黒はチェックを続けることでg3を捨てるか、h3に逃げ込むか白に選択を迫ります。

 

42.Kf2 Rc2+ 43.Ke1!?

 

白はg3をあきらめました。試合中は、キングをh3に逃げられた上でa6までポーンを進められるとまずいのではないか、と考えていましたが、それは間違いでした。

43.Kg1 Rc1+ 44.Kg2 Rc2+ 45.Kh3? Rd2 46.a5 Rb2 47.a6 Ra2!


                                ANALYSIS  DIAGRAM


48.Ra8 Kg7 49.a7 Kh7 これでaポーンをとってドローです

 

43...Rg2(=) 44.a5 Rxg3 45.a6 Ra3?

 

この手でもまだドローのチャンスがありますが、黒にとって非常に難解になってしまいます。ここはもっと簡単にドローを確定させる方法がありました。

45...Rf3! 46.Ra8 Kg7! 47.a7 Ra3!  先述の通り、白のポーンが7段目まで進んでいるためドロー確定です。試合中46...Kg7! に気づきませんでした。

 

46.Kd2 Ra1 47.Kc3 Ra5 48.Kb4 Ra1 49.Kb5 Rb1+ 50.Kc5 Ra1 51.Kb6 Rb1+ 52.Kc7 Rc1+ 53.Kb8 Ra1 54.Ra8 Ra4??

 

 

これはひどいブランダーで、黒の負けになってしまいます。代わりに54...Kg7! でドローでした。

54...Kg7! 55.Kb7 Rb1+ 56.Ka7 Rb4 57.Rd8 Rxf4 58.Kb6 Rxh4 59.a7 Ra4 60.a8=Q Rxa8 61.Rxa8 Kf6!

 

 

                               ANALYSIS  DIAGRAM

62.Kc5 Ke5! 63.Kc4 Kf4! 64.Rg8 f4 65.Rxg6 h4 66.Rh6 Ke3 67.Rxh4 f3=

 

このように最善を尽くせばドローになるのですが、この3ポーンvsルークがどちらにとって間違いやすく難解なエンディングかと言えば、間違いなく黒でしょう。そのため45手目で単純なドローを逃したことは黒にとって痛手だったのです。白がこの後、ブランダーを指して逆転しなければ・・・

 

55.Ra7??

 

この手は私の54...Ra4?? 以上に多くの人を驚かせたと思います。私も目を疑いました。ちなみに白の単純な勝ち筋は試合中、私も気づいていました。

55.a7! Rb4+ 56.Kc7 Rc4+ 57.Kb6 Rb4+ 58.Ka5 で白勝ちです。

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Dresden Dream(9)

6Rはスコットランドでした。スコットランドが5Rに優勝候補の中国と対戦して1.5P取ったことは大きなニュースとなりました。メンバーはRowson(2596,GM)Aagaard (2528,GM)Shaw John(2469,GM)Arakhamia-Grant(2448,IM)McNab(2455,GM)Rowson以外は40歳を超えていて、ベテランプレーヤーばかりです。しかし逆に考えればスコットランドではまだ若い世代が育っていないのかもしれません。このうちArakhamia以外は著書があることで馴染みがある名前かもしれません。グルジア出身のArakhamiaは女性のプレーヤーで、今回初めてOpen Sectionでプレーすることになったようです。


スコットランドはAagaardが休みで、我々は上から4人で臨みました。http://www.chessedinburgh.co.uk/chandlerarticle.php?ChandID=297#round6にはマッチの様子がスコットランドサイドから書かれています。

 



Baba Masahiro (JPN,2220)

Shaw John (SCO,2469,GM)

Dresden 2008 (6)

 

私自身のShawとの対戦は初めてですが、日本のプレーヤーでは高橋礼二君が2005年のCappelle la Grandeで対戦しています。もっとも、そのゲームでは高橋君がナーバスになりすぎましたが。

 

1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 e5 4.Nf3 Nbd7 5.Bc4 Be7 6.0–0 0–0 7.Re1 c6 8.a4 b6

 

ここで2RAl-Sayed戦から外れます。もちろんこちらのほうがメインですので、完全にプリパレーション内でした。Mishaには「プリパレーションだと悟られないように次の手には2分くらいかけてね」と半分冗談交じりにアドバイスされましたw

 

9.d5 cxd5 10.Nxd5 Nxd5

 

しかしここで外されました。私たちの研究は10...Bb7 11.b3 Rc8 12.Re2 Nxd5 13.Bxd5 Bxd5 14.Qxd5 Nf6 15.Qd1などでした。

 

11.Bxd5 Rb8

 


さて、ここから完全に自力で考え始めます。まず、白は12...Nf6 13.Bb3(Bc4) Bb7e4にプレッシャーをかけられるのにどう対処するか考えなければいけません。20-30分考え、次のプランを思い付きました。

 

12.c3 Nf6 13.Bb3 Bb7 14.Bc2

 

黒ビショップは開いたダイアゴナルに、そして白ビショップは閉じたダイアゴナルへ位置し、白としてはやや損な感じですが、大切なのは弱点を作らないことと相手に反撃を与えないことです。今、黒はなかなかd5が突けません。

 

14...h6

 

白の黒マスビショップを制限する手ですが....

 

15.c4!

 

センターにバインドを組み、さらに次の16.b3でクイーンサイドのスペースを広げ、黒マスビショップをa3-f8のダイアゴナルにセットします。

 

15...Qc7 16.b3 Rbc8 17.Ba3 a6

 

ここで黒の狙いの18...b5を防ぐには19.Bd3,19.Ra2,19.Re2,19.Rc1などありますが、おそらくこの中で最善であろう19.Bd3dファイルをふさいでしまい、d6への圧力がなくなりパッとしませんでした。何かうまくd6を狙えないか考え、次の手を見つけました。

 

18.Nh4!

 

f5の弱点を目指します。18...b5?には19.Nf5!が先に入り、20.Nxe7-21.Bxd6のスレットが強力です。

 

18...g6 19.Bd3 Qd8 20.Bc1

 

d6がターゲットでなくなったので、今度は新たなターゲットを狙います。

 

21...Kg7 21.g3 Nd7 22.Ng2 Nc5 23.Bc2 h5 24.Bb2

 

ピンを利用してNf4-Nd5を狙います。

 

24...Bf6 25.Qe2 Qe7 26.Rad1 Rh8 27.Qd2 Rcd8 28.h4 Rhe8

 


どちらも駒の配置を改善するだけで、なかなかアクションを起こしません。私も大体有効な手は作り終えてしまい、さらに時間もなくなってきたのでやや局面をかき混ぜようとしました。

 

29.Qb4?! Qc7 30.Qd2 Bc6!

 

ビショップのポジションを良くする手です。ビショップをc6に置き、Qb7と重ねればb5からのブレークもe4のポーンも狙えます。少し黒が圧してきました。

 

31.Qe2 Qb7 32.Ra1 b5 33.axb5 axb5 34.b4 Na6

 

ここで34...bxc4が可能なようですが、コンピューターのような正確な読みがなければ指せません。もう少しで時間が足されますから、どちらもできるだけリスクの少ない手を選びます。

 

35.Bc3 bxc4 36.Qxc4 Nc7 37.Ba4

 

黒のビショップのほうが良いので、ここで交換します。

 

37...Bxa4 38.Rxa4 d5

 

黒が長らく待ち望んでいたブレークです。

 

39.exd5 Nxd5 40.Ra5

 

ビショップはキープしておいたほうが良いですが、40...Nb6が見えてやや焦りました。もっとも、40...Nb6に対しては41.Qb5で問題ありませんが。

 

40...Nxc3 41.Qxc3 e4 42.Qa3 Bd4

 


42...Rd2!なら黒に勝ちのチャンスがありますが、43.Ra7を防ぐこの手も非常に自然です。

43.Ne3 Rc8 44.Qa4 Bxe3?

 

突然全てのアドヴァンテージを破棄しました。

 

45.Rxe3 Rc1+ 46.Kg2 Rd8 47.Rc5! Rb1 48.b5 Re8 49.Qc4! Re7 50.Qc3+ f6 51.Qc4

 

このあたりで白は勝てるのではと考え始めましたが、それはだいぶ楽観的だったようです。ドローで満足するべき局面です。

 

51...Qd7 52.Rxe4 Qb7

 

52...Rxe4 53.Qxe4 Rxb5 54.Rxb5 Qxb5 55.Qe7+ Kh6 56.Qxf6を期待していましたが、さすがにそうはなりませんでした。

 

53.Rc6 Rxe4 54.Qxe4 Rxb5 55.Re6 ½–½


Dresden Dream(8)

5Rの相手のタジキスタンは日本よりも上なはずでしたが、当然勝ちに行く雰囲気がチーム内には出来上がっていました。それは3,4Rに比べるとだいぶ楽になったからでしょう。ペアリング発表になったらさっそく相手のゲームをチェックしました。そこでは衝撃の手のオンパレードでした。適当なオープニング、あやしい中盤のプラン、サクリファイス等まったくもって予想不可能でした。Mishaからのチームへのアドバイスは「向こうはサクリファイスしたりセオリーに反した手を指してきて局面の複雑化を狙ってくるから、サクリファイスされた駒を取って、あとは注意深く指せば大丈夫」とのことでした。



この日抜け番の晋は中2階の観戦席で本を読みながら待つ
この日は観戦席から遠いサイドでプレーしていた

Isaev Jamshed (TJK,2400,IM)

Baba Masahiro (JPN,2220)

Dresden 2008 (5)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4

 

Sozin!

実を言うとNajdorfを指すとき6.Bc4と指されるのが最も嫌いです。これは私が今回白でSozinを選択した大きな理由で、Sozinは非常に危険なタクティカルラインを含んでおり、定跡をよく知らないと一瞬でつぶれます。

 

6...e6 7.Bb3 b5 8.Bg5 Be7 9.Qf3 Qc7 10.0–0–0

 


非常に攻撃的なセットアップです。ここで10.e5!?も面白く、10...Bb7 11.exd6 Bxd6 12.Qe3 Bc5 13.0-0-0 Nc6 14.Qxe6+!?Ivanchuk’s birthday bomb(注:今年のNice RapidIvanchukが自身の誕生日に指した新手です)として多くの議論を呼びました。

 

10...Nbd7

 

ここで10...0-0?11.e5 Bb7 12.exf6! Bxf3 13.fxe7 Re8 (13...Bxd1? 14.Nxe6!) 14.gxf3で白攻勢です。このラインを学んだのは2001年のジャパンオープンでした。そのゲームを紹介しておきます。10...0–0? 11.e5 Bb7 12.exf6 Bxf3 13.fxe7 Re8 14.gxf3 d5?! 15.Rhg1 (15.Nxe6! fxe6 16.Nxd5) 15...Nd7 16.Kb1 Nb6 17.Bf6 g6 18.Rg4 Nc4 19.Nxd5? exd5 20.Nf5 h5 21.Rg5 Kh7 22.Rdg1 Nd2+ 23.Ka1 Nxb3+ 24.axb3



24...Rg8 (24...Qxh2!) 25.Ne3 d4? (25...Qxh2!) 26.Bxd4 Qxe7 27.Nd5 Qe6 28.Nf6+ Kh6 29.Be3 Qxf6? 30.Rf5+ Kg7 31.Bh6+ 1/2-1/2 K.S.-M.B Japan Open 2001

 

11.Bxe6?

 

10...Nbd7はこの手を間接的に防いだものですが、Isaevが次の黒の手を見ていたかどうかは分かりません。ただ、ここでかなりの時間を費やして考えていたため、3手くらい先の局面を考えていたのだろうと思います。ここで11.e5!? が面白く、11...Bb7 12.Qg3 Nxe5! (12...dxe5 13.Bxe6 fxe6 14.Nxe6 Qc6 15.Nxg7+ Kf7 16.Bxf6! (16.Nf5 Rag8!) 16...Nxf6 17.Nf5は黒が正確に受けるのが難しい) 13.Bxe6 fxe6 14.f4 Bc8! 15.fxe5 dxe5 16.Rhe1 0–0 17.Qxe5 Qxe5 18.Rxe5ならだいたいイコールです。

 

11...Ne5

 

当然この手です。

 

12.Qh3 fxe6 13.Nxe6 Bxe6 14.Qxe6 Qd7

 

ここから数手が最も重要です。駒を返さずに白のアタックを緩和し、キングを安全にする方法を考えます。14...Qc4? には15.Rxd6! があり、14...Ned7? には15.Nd5! で一瞬で白良しになります。

 

15.Qb3 Nf7

 

15...Nc4 と本譜で悩みましたが、よりコンパクトに駒をまとめました。16.e5!? がやや面倒ですが、16...Nxe5で特に問題ないというのが局後の検討での日本チームの結論です。

 

16.h4 Qb7 17.f4 0–0

 

アドヴァンテージを保つための絶対手です。コンピューターは簡単に黒勝勢と安全な手を示しますが、ディフェンスサイドはそれをしっかり見つけるのは難しいものです。

 

18.e5 dxe5 19.fxe5




19...Ng4!

 

この手がポイントです。20.Bxe7 Qxe7 21.e6 Nfe5 22.Nd5 Qxe6 23.Ne7+ Kf7! は黒勝勢です。

 

20.Rde1 Kh8

 

この手を指して黒勝ちを確信しました。キングの安全性が確保されたらもう恐れるものはありません。

 

21.Qe6 Nxg5 22.Qxg4 Nf7 23.Re2 Nh6 24.Qe6 Rae8 25.Qb3 Nf5 26.Nd5?

 

片方のナイトフォークしか見えていないようでした。

 

26...Nd4 0–1

 

IM17戦目にして初の勝利です!チームも2.5-1.5で勝ちました!!


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