2/23(金)〜2/26(月)にBig Rook Chess Academy主催で7RのFIDE Standardトーナメントが開催されました。このトーナメントは、タイのプレーヤーにとっては今年のチェスオリンピアードの選考も一部兼ねており、トップの戦績のタイプレーヤーと、タイ女性プレーヤーはオリンピアード選考会のreserve枠に内定することになっていました。(代表に内定するわけではない)
大会名にTCA(Thailand Chess Association)が入っているのは、このトーナメントがTCAのオフィシャルなトーナメントだということを示しています。ただし、実態は1クラブが運営する通常のオープン・トーナメントでした。
会場はBig Rook Chess Academyの本拠地で、バンコクでも高級一軒家が多く立ち並ぶ地域の一画でした。
会場は10番ボードまで3Fのスペース、11番ボード以降が2Fの大きなスペースの会場でした。
タイムテーブル:
2/23(Fri) 19:00 R.1
2/24(Sat) 10:00 R.2
2/24(Sat) 15:30 R.3
2/25(Sun) 9:00 R.4
2/25(Sun) 14:30 R.5
2/26(Mon) 9:00 R.6
2/26(Mon) 14:30 R.7
大会は平日金曜の夜からスタート。仕事が終わった後、会場に直行し、エントリーしてそのままR.1をプレーするという流れでした。2/26(月)は祝日だったため、特に休みを取る必要はなく、全ラウンドプレーできました。
今大会は会場のスペースに限りがあったため、参加人数も制限されていました。最終的には制限ギリギリの62名のプレーヤーが参加し、プレーヤーの家族もあわせ、Big Rook Chess Academyは文字通り飽和状態。タイトルホルダーはGM1名、IM1名、FM6名の8人で、前回のBig Rook Chinese New Year Rapidに次いで、2600overのノルウェーのGM Christiansen, Johan-Sebastianもエントリーしていました。
当然のことながらGM Christiansen, Johan-Sebastianが優勝本命とみられて始まったトーナメントですが、GM ChristiansenはR.1のみプレーしたあと、食中毒でその後のラウンドを棄権。本命が消え去り、いきなり優勝の行方は分からなくなりました。(GM Christiansenは大会最終日のBlitzトーナメントには回復して戻ってきました。)
私は勝ちとドローを繰り返して4勝3ドローで5.5Pで終了。上位ボードで戦い続けていたこともあり、最終的に3位入賞を果たし、賞金3,000バーツ(約12,000円)をいただきました。
今大会で一番面白かったのはR.5のゲームで、それまで全勝中の地元タイのFMを追いかける形で1番ボードでの対戦でした。
□Wiwatanadate, Poompong (FM,1986,THA)
■Baba, Masahiro (FM,2184,JPN)
TCA x Big Rook Olympiad Challenge 2024(5)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.Bb5+ Nc6 4.0–0 Bd7 5.Re1 Nf6 6.c3 a6 7.Bf1 Bg4 8.d4!?
[…Bxf3に対してgxf3とポーンの形を崩してでもセンターを抑えにいくアイディアは近年よく見られます。]
8...e6 9.d5 Ne5 10.Be2 Bxf3 11.Bxf3 Be7 12.Bf4 Nxf3+ 13.Qxf3 e5 14.Bg3?!
[ここは14.Be3のほうがビショップは働きます。白が気を付けなければいけないのは14.Bg5? Nxd5!]]
14...0–0 15.a4 b5 16.Na3 Qd7 17.Qe2 Rfb8 18.h3 g6 19.Bh2 Nh5 20.g4
[この手には少し驚きました。]
20...Ng7
[20...Nf4 21.Bxf4 exf4とするのは黒のfポーンが弱点になるだけに見えました。]
21.axb5 axb5 22.f4 exf4 23.Bxf4 h5 24.Rad1 Ra4 25.Qf3 b4 26.Nb1 bxc3 27.Nxc3 Rab4 28.e5 hxg4 29.hxg4
[私が期待していたのは、29.e6? gxf3 30.exd7 f2+! 31.Kxf2 Rxf4+–+]
29...dxe5 30.Rxe5 Bd6 31.Re4
[31.Ne4 Bxe5 32.Bxe5 Rxe4 33.Qxe4 Rb4ならg4がチェックで落ちます。]
31...f5 32.Rxb4 Rxb4 33.Bxd6 Qxd6
[33...Rxg4+ 34.Qxg4 fxg4 35.Bxc5は白のdポーンが強力で、果たして黒がクイーンとgポーンで勝てるかはっきりしなかったため、やめました。]
34.gxf5 gxf5?!
[34...Rxb2で...Qh2+を狙うのは、35.fxg6で逆に黒が危なくなります。 ...Qh2+のあとが続きません。黒のここまでの手はe4に白ナイトを飛ばせないように指していたため、あまり考えはしなかったのですが、34...Nxf5が最善で、35.Re1 Rxb2 36.Re8+ Kf7 37.Re2 Rxe2 38.Nxe2 Qe5でまだ黒にチャンスがあったと思います。]
35.Rd2 Qh6 36.Rg2 Rh4 37.Ne2! Kh7 38.Qc3 Rh3
39.Qxh3
[シンプルに駒清算し、イコールのエンディングになります。]
39...Qxh3 40.Rh2 Qxh2+ 41.Kxh2 Kg6 42.Nf4+ Kf6 43.d6 Ne6 44.Kg3 Ke5 45.Nxe6 Kxe6
46.Kf4 Kxd6 47.Kxf5 Kd5 48.Kf6 c4 49.Kf5 Kc5 50.Ke5 Kb4 51.Kd4 Kb3 52.Kc5 Kxb2 53.Kxc4 ½–½
[K vs Kまで戦うファイティング・ドローでした。]
優勝はBig Rook Chess Academy専属のコーチ、フィリピンのFM Jony Hablaでした。
最終結果
https://chess-results.com/tnr883385.aspx?lan=22&art=4&flag=30
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中国の春節にあわせ、2/10(土)にBig Rook Chess Academy主催で7RのFIDE Rated Rapidトーナメントが開催されました。会場は昨年10月のThe Rooky International Openの時と同じAway Bangkok Riverside Kene Hotelです。この会場は今後もバンコク開催の大会で頻繁に使われるようになりそうです。
今大会は賞金・会場・日程といったコンディションが良かったためか、いつもより多くのマスターが集まりました。中でも、スタンダード・レイティングが2600overのノルウェーのGM Christiansen, Johan-Sebastianの参加は注目を集めました。
私は先月、先々月とRapidのレイティングをかなり落としていたのもあり、リスト9でスタート。初めの2戦を勝って、R.3から上位ボードでの厳しい戦いがスタートしました。
R.3はタイに来てからの天敵、IM Badmatsyrenov(2398)から通算5戦目にて初ポイントとなるドロー。
続くR.4は最近上がり調子のBatashevs(2215)に短手数で勝ち。Mini Pattaya Openと昨年12月のRed Knight Rapidでは負けていたので、今回が初勝利となりました。
R.5はついに1番ボードまで上がり、リストトップのFM Anikonov(2480)とドロー。12月のJCA x AVANA Openではrepetitionの指摘忘れから負けになったので、まずはドローでもポイントを取れて良かったです。
好調を維持したまま、R.6は白番でプロコーチであり、タイでの大会上位常連であるFM Habla(2229)と対戦。前回、The Rooky International Rapidでは黒で短手数のドローに終わりましたが、今回は白番だったので勝ちを目指しました。
□Baba, Masahiro (FM,2201,JPN)
■Habla,Jony (FM,2229,PHI)
Big Rook Chinese New Year Rapid 2024(6)
1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e6 6.Ndb5 Bb4 7.a3 Be7?!
[すでにセオリー(7...Bxc3+)から外れます。ただ、白にa3を突かせて黒にメリットは無いので、単純に手損だと思います。]
8.Nd6+ Kf8 9.Be2
[ここでの候補手はBf4、Bc4、Be2の3つでしたが、misplacedな黒キングを頭から攻めるのに早めにfポーンを突くため、0-0を急ぐことにしました。]
9...Ne8 10.Nxc8 Rxc8 11.0–0 a6 12.Be3 Qc7 13.f4 d6 14.f5
[プラン通り、fファイルから攻めます。]
14...Nf6 15.fxe6 fxe6 16.Bg4 Kf7 17.Bh3
[e6へのプレッシャーをキープしたまま、18. Qh5+ g6 19.Qh4でf6へも圧力をかける狙いです。]
17...h5 18.Ne2!
[すでに白良しなのは明らかですが、のんびりすべきではなく、攻めを急いだほうが良いと感じました。e6にプレッシャーをかけるため、ナイトをe2経由でd4またはf4に配置変えします。]
18...Nd8 19.Nd4 b5 20.c3
[cポーンを守っただけでなく、Qb3やa4からのaファイルオープンを考えていました。]
20...Qb7 21.Qd3 Rc5 22.Rae1 g5
[苦し紛れのカウンターです。22...Re5でe6を守る場合、23.Nf3と返す予定でした。]
23.Nxe6!
[白のアタックの準備は完了しているので、ピースを切って黒キングをおびき寄せます。]
23...Nxe6 24.Bxe6+ Kxe6 25.Bxc5 dxc5
26.e5 c4
[ここで黒の時間が落ちました。26...Nd5 27.Qf5#も26...Ng4 27.Qf5+ Kd5 28.Qe4+ Ke6 29.Qxb7も白勝ちです。]
1–0
最終R.7はタイNO.1のIM Laohawirapap(2280)にドロー。向こうとしてはドロー以上で2位以上が確定するので、無理はせず、repetitionでゲーム終了。
最終的に3位入賞し、トロフィーと賞金3,500バーツ(約14,000円)をいただきました。久しぶりに良いパフォーマンスで満足です!
優勝はGM Christiansen, Johan-Sebastianでした。(黒のプレーヤー)
最終結果
https://chess-results.com/tnr883357.aspx?lan=22&art=4&flag=30
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2022年はコロナでチェスも指してなく、この総括をスキップしてしまいましたが、今年は自由な世界が戻ってきて、総括も復活です。
まずは2023年の戦績は以下の通り。
================================
試合数:98試合(□48 ■50)
結果:(勝ち70 負け13 ドロー15)
勝率:79.1%
================================
2023年は4月に中国からタイへ国異動しました。これにより、生活環境も大きく変わりましたが、チェス環境も大きく変わりました。
5月のBig Rook Chess Festivalをスタートに、合計Standard 3トーナメント23戦、Rapid 12トーナメント75戦をプレーしました。(ブリッツ大会もFIDE公式戦1トーナメント、非公式戦2トーナメント出ています。)コロナの3年の鬱憤を晴らすかの如く、アクティブにプレーした1年でした。
タイ自体は決してチェスが強い国ではなく、立ち位置的には日本とほぼ同等です。しかし、トーナメントやスクールをはじめ、チェスにまつわる環境は日本より先を行っていると思います。それに引き寄せられてタイ国外から多くのプレーヤーも集まってきます。
2024年も引き続きタイでプレーします。すでにStandardトーナメントの計画も出てきていますので、スケジュールを合わせて出場していこうと考えています。
それでは、皆様、良いお年を〜
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12/24(日)はRed Knight Chess Clubで恒例のFIDE Rated Rapidトーナメントでした。前日、Kasetsart Rapid Openだったので2日連続のRapidトーナメントです。
この日はクリスマスイブだったからか参加者も少なく、私のエネルギーも少なく、2戦負けて4位で終了。プライズは3位までなので、これも逃す結果に。。。
最終結果
https://chess-results.com/tnr862731.aspx?lan=22&art=4&flag=30
Red Knight Chess Clubには2023年、4度のFIDE Rated Rapidトーナメントに参加し、大変お世話になりました。
Red Knight Chess Clubは2024年1月〜4月までのスケジュールをすでに公表していて、1/28(日)と3/31(日)がFIDE Rated Rapidトーナメントの予定です。1/28(日)のRapidが私にとって2024年初のプレーになりそうです。
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12/23(土)は、タイの名門国立大学、カスサート大学でThe Rooky Chessが主催するRapidトーナメントでした。
今大会は非健常者のプレーヤーも参加する特色のあるトーナメントで、賞金の配分を見ても非健常者のプレーヤーを優遇するシステムでした。タイでは年に何回か、このようなトーナメントが開催されています。本来、どのトーナメントにも非健常者は参加できるはずですが、例えば、10月のThe Rooky Internationalではトーナメント会場が2階でエレベーターが無かったので、車椅子では会場にアクセスできなかったため、非健常者が全ての大会にスムーズに参加できるわけではありません。
大会は6R制でタイムコントロールは15分+10秒なので、丸1日がかりのスケジュールでした。私はメインのOpenセクションでリスト1位スタート、全ラウンド1番ボードでプレーして5勝1ドロー。最終ラウンドで引き分けたラトビアの青年、Batashevsも同ポイントで並びました。タイブレークは上から順にDirect Encounter、Buchholz Cut 1、Buchholzで、タイブレーク2番目のBuchholz Cut 1ですでに彼の方が上回っていたので、本来ここで順位がついてもルール上問題なかったはずです。しかし、大会途中にオーガナイザーから同ポイントで並んだ場合はプレイオフを行うとアナウンスがあり、Openセクションの優勝者を決めるのに私とBatashevsの間でプレイオフが行われました。今思えば、このプレイオフは私に対する救済措置だったかもしれません。(1番ボードで戦い続けてポイントもトップタイになったプレーヤーが負けるタイブレークはどこか問題がある)
プレイオフはまず3分+2秒のブリッツを白黒1戦ずつ行い、初め白番で私が負けましたが、次の黒番で勝利。ブリッツは1-1のタイになりました。最後は白5分vs黒4分で黒が負けなければ黒勝ちのアルマゲドンで勝負を決めることになり、色はトスで決められ、私が白を引きました。このゲームは勝ちにいかなければいけないプレッシャーから無理攻めが出て、ゲームに負けてプレイオフを落としました。結局、当初のタイブレーク通り2位に落ち着き、トロフィーと賞金2,000バーツ(約8,000円)を頂きました。
あとで主催者でありFIDEアービターのPiroonが、「このプレイオフはアービターとして大きな経験だった」と話していましたが、プレーヤーの私にとってもプレイオフは初めてでユニークな経験だったのは間違いありません!
最終結果
https://chess-results.com/tnr862877.aspx?lan=22&art=4&flag=30
今回、視覚障害者のプレーヤーのプレーを初めて見ました。おそらくオリンピアードでIBCA(視覚障害者のチーム)と当たったことのある人は分かると思いますが、日本ではいまだ見られない光景です。(少なくとも私は経験がありません。)
プレーヤーとペアになる介助者は、チェスのルールを理解しているだけでなく、ゲームの経験がある程度ないとできないように見えました。メイン盤の駒を動かすタイミング、時計を押すタイミング、相手の手を視覚障害者用の盤に移すタイミングなど、タイムラグの無いよう、円滑にゲームを進めるのはテクニックが必要です。あと、視覚障害者はクロックを見ることはできないので、持時間がどの程度なのかは適時、介助者に聞くことができるのかな? と色々考えさせられました。
The Rooky Chessは3月終わりか4月頭にStandardトーナメントを開催する予定があるとのことですので、そちらの情報を待っています。
カスサート大学のキャンパスは広大で、バスやバイクタクシーで目的地へ移動する必要があります。
キャンパス内はスタバもあればホテルもあれば何でもそろっていて、さながら1つの街のようです。
昼食は大学の学食を利用させてもらいました。
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タイ最大のオープン・トーナメントであるBangkok Chess Club Openを主催するBangkok Chess Clubは毎週金曜の夜に活動しています。19時頃からバンコク中心部のイングリッシュ・パブに人が集まりだし、20時過ぎからメインのBlitzトーナメントが開催されます。トーナメント形式は参加人数にもよりますが、ラウンドロビンでだいたい9〜11Rが多いです。毎月4週目の金曜だけは、FIDEの公式Blitzトーナメントが開催されていて、優勝者にはパブで使えるクーポン券が渡されます。
多くの参加者は、このBlitzトーナメントに参加するのを目的に来ていますが、もちろん参加しないで知り合い同士でチェスを指したりだらだら雑談して過ごしたりしても問題ありません。トーナメント参加費や会費はなく、どのレベルのプレーヤーでも歓迎なので、バンコクに来られた際は立ち寄ってみても良いかと思います。(事前連絡不要なのでふらっと立ち寄れます。)
会場はイングリッシュ・パブThe Royal Oak
2Fを借り切っています
12/15(金)は時間があったので、Blitzトーナメントに参加することにしました。タイに来てからは2回目で、前回の参加は4月でした。この日は参加人数が多かったため、2クラスに分かれてのラウンドロビンとなりました。持ち時間は一般的な3分+2秒で、9Rのラウンドロビンで、私のグループにはFIDEマスターが他に1人参加していました。
トーナメント前に生ビールで糖分補給!
最終的には7勝2ドローで2位に2P差をつけて優勝。前回4月のときは優勝を逃していたため、今回、わりかしスムーズに優勝できたことは嬉しく思っています。やはり、勝っているときはBlitzも楽しいです(笑)
クロステーブル
↓Bangkok chess clubのHP
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2024年1発目のスタンダード・トーナメントの案内が出ました。Big Rook Academy主催で、2/23〜2/26にタイの首都バンコクにおいての開催です。大会詳細はFacebookでBig Rook Academyを検索しても、大会ポスターのQRコードを読み込んでも見ることができます。
日時 : 2024/2/23(金)〜2/26(月)
場所 : Big Rook Chess Academy
フォーマット :
Standard : 7R 90分+30秒
Blitz : 7R 3分+2秒
タイムテーブル :
2024/2/23(金)
18:00 Players Report
18:45 Technical Meeting
19:00 Round 1
2024/2/24(土)
10:00 Round 2
15:30 Round 3
2024/2/25(日)
09:00 Round 4
14:30 Round 5
2024/2/26(月)
09:00 Round 6
14:30 Round 7
18:30 Awarding Ceremony (Standard)
19:00 Blitz Round 1-7
20:45 Awarding Ceremony (Blitz)
大会はStandard(Classical)とBlitzの2部門になります。両方出てもどちらか一方でも問題ありません。タイは2/24-26が3連休ですので、これにあわせたスケジュールです。初日の2/23は平日ですが、R.1が19時スタートですので、仕事終わりにR.1をプレーすることができます。(つまり、有休をとる必要が無い)
日本も2/23が祝日だと思うので、2/23にバンコクに飛んで、2/26の深夜便で戻る強行スケジュールでの参加も可能です。
今回の会場のBig Rook Chess Academyは比較的バンコクの中心部にあります。タクシーでのアクセスが必須ですが、バンコク中心部のホテルからならそれほど時間はかかりません。
Let’s play in Bangkok!!
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12/2(土)は、Jirapak Chess Academy(JCA)が主催するRapidトーナメントでした。
大会フォーマットは7Rのスイス式、タイムコントロールは15+10、セクションはOpen、U14、U12、U10、U8、U6の6つに分かれていて、総勢110名を超える参加人数となりました。
今回は大会会場のAVANA Hotelがスポンサーで、このホテルのConvention Hallを借り切っての開催でした。会場自体は古びてはいましたがそれなりに豪華でした。ただ、ホテルのロケーションはいまいちでした。路線の最寄り駅も徒歩40分と離れていて、アクセスにはタクシーを利用する他ありませんでした。(帰りは頑張って歩いてみましたが、やはりかなり駅まで距離がありました)ホテル利用客は中国人観光客がメインのように見えましたが、観光には絶対おすすめできないロケーションです。
ホテル周囲はほぼ住宅地だったため、昼食はホテル内でビュッフェが用意されていました。これは参加費に含まれており、メニューも豊富で、食事のクオリティーは高かったです。ただ、200人近いプレイヤーとその家族がいっせいに押し寄せるので、食事の取り合いになり、早く行かないと無くなるかもしれませんでした。幸い、私は昼食会場のオープンとほぼ同時に食事にありつけました。
ゲームのほうは非常に低調で、全く特筆すべきところがなく、4.5P/7で終了。今月はまだRapidトーナメントが2つ残っているので、そちらを頑張りたいと思います。
最終結果
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10/29(日)にRed Knight Chess ClubでFIDE Rated Rapidトーナメントがありました。出場は6月、8月に続いて3度目になります。10月はMini Pattaya OpenとThe Rooky International Openに参加し、日程も近かったため、初めは参加しないつもりでした。しかし、オーガナイザーからの熱烈な誘いもあり、出場者のラインナップも過去一番ということで、トーナメント前日に出場を決めました。
初めの3Rを勝ち、続くR.4は、名実ともにタイのNO.1プレーヤー、FM Laohawirapapとペアリングされました。Laohawirapapはジュニアプレーヤーでこのゲームの1〜2日後にIMになりました。(タイ初のIM!) タイにいれば遅かれ早かれ当たる相手で、今回初対戦となりました。
□Baba, Masahiro (FM,2259,JPN)
■Laohawirapap, Prin (FM,2339,THA)
Red Knight Chess Club Rapid October 2023(4)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 g6 6.Be3 Bg7 7.f3 a6 8.Qd2 h5!? 9.Be2
[DragonとNajdorfを合わせた形に…h5と突くのが相手の得意戦法でした。Laohawirapapは9月の杭州アジア大会で山田弘平くんと中国のWei Yiに対しても同じ戦法で勝負しています。その時の山田くんのチョイスは9.Bc4で、序盤からタクティカルな応酬になりました。9.Be2はNegiの推奨する手で、どちらかというとポジショナルな戦いを目指すことになります。]
9...Nc6
[Wei Yi戦では9...Nbd7でした。]
10.0–0 Bd7 11.Nd5 0–0 12.c4 Rc8 13.Rac1 Nxd5 14.cxd5 Nxd4 15.Bxd4 Bxd4+ 16.Qxd4 Qa5 17.a3 Rxc1 18.Rxc1 Rc8 19.Rxc8+ Bxc8 20.Kf2
[駒交換が進み、白に特にアドバンテージは無くなりました。ここでこちらからドローオファーし、相手の出方を見てみることにしました。このオファーは断られます。]
20...Bd7 21.f4 Bb5 22.Bxb5 Qxb5 23.e5 Qb3 24.h3
[中央でアクションを起こす前に白キングを安全なゾーンに逃避させることにしました。]
24...h4 25.Kg1 a5 26.Kh1 b5 27.f5!?
[黒キング周りのポーンを崩しに行きます。27...gxf5 28.exd6 exd6 29.Qxh4 Qxd5 30.Qg5+はパペチュアルに終わります。]
27...Qg3 28.exd6 exd6 29.fxg6 fxg6 30.Qe4!
[ここで初めて白に少し分があるように感じました。黒キングのほうが守りは薄く、どちらかと言えば黒のポーンのほうが弱点は多いです。また、黒クイーンのe1からのチェックを抑えているのもポイントです。]
30...Kf8 31.Qe6 Qe5 32.Qc8+
[32.Qxg6 Qxd5 33.Qf6+ Ke8 34.Qxh4は白の1ポーンアップですが黒には強力なパスポーンができ、どちらが良いのかはっきりしませんでした。]
32...Qe8
[32...Kg7 33.Qb7+ Kf6 34.Qxb5 Qe1+は黒からパペチュアルチェックでドローです。]
33.Qc3 Qe2?!
[はじめ、この手のポイントが良く理解できませんでした。単純にQf6+を許します。この1手で負けになるわけではありませんが、白にチャンスを与えるべきではありません。33...Qe5! なら黒はバランスを保てます。]
34.Qf6+ Ke8 35.Qxg6+ Kd8??
[これが敗着でした。そしてこの手は予想していなかったので、Qxd6がチェックだと気付くのに少し時間がかかりました。
35...Kd7? には36.Qg4+! Qxg4 37.hxg4で白勝ちのポーンエンディングです。例えば37...Ke7 38.Kh2 Kf6 39.Kh3 Kg5 40.g3 hxg3 41.Kxg3 Kf6 42.Kf4 Kg6 43.g5+–
正しくは35...Ke7で、36.Qg7+ Ke8 37.Kh2なら白勝ちというよりはドローでしょう。もしかしたら相手は36.Qh7+からのh4取りや36.Qe6+からのアウトサイドvsインサイドのポーンレースを気にしたのかもしれません。]
36.Qxd6+ Ke8 37.Qe6+!
[クイーンを強制交換し、1ポーンアップのポーンエンドゲームは簡単に白勝ちです。]
37...Qxe6 38.dxe6 Ke7 39.g3 hxg3 40.Kg2 Kxe6 41.Kxg3 Kd5 42.h4 Kc4 43.h5 Kb3 44.h6 Kxb2 45.h7 Kxa3 46.h8Q a4
[先にパスポーンの進行方向にクイーンが到達するので、黒ポーンのプロモーションの夢は叶いません。]
47.Qa1+ Kb3 48.Kf3 b4 49.Ke3 a3 50.Kd3 a2 51.Kd2 Ka3 52.Kc2 b3+ 53.Kc3 Ka4 54.Kb2 1–0
R.5はIM Badmatsyrenovに良いところなく負け。(3敗目) この時点で優勝はなくなりました。
最終ラウンドはタイのFM Wiwatanadateとでした。彼はプレーヤー(FM)、アービター(IA)、コーチ(FI)の仕事でいつも多忙な日々を送っています。そして私のタイでのチェス生活をサポートしてくれています。対戦はこれが3度目で、1度目は2020年のAsian Online Nations Cup、2度目は今年のBig Rook Chess Festivalで、どちらも負けています。今年まで面識はなかったですが、調べてみると2009年のホーチミンでのゾーン選手権に出場していたので、その時同じ会場でプレーしていたことになります。(補足ですが、Tuさんも同じ会場でプレーしていました。)
何はともあれ、ここは絶対勝ちたいゲームでした。
□Wiwatanadate, Poompong (FM,1899,THA)
■Baba, Masahiro (FM,2259,JPN)
Red Knight Chess Club Rapid October 2023(6)
1.c4 e5 2.Nc3 Nc6 3.g3 Bc5 4.Bg2 d6 5.e3 a6 6.Nge2 Ba7 7.0–0 h5
[もはやEnglishに対してメインラインとなっているこのラインをここで使います。ダブルエッジなポジションを目指せるので、Rapidで勝ちたい時には適した戦法だと思います。]
8.h3 h4 9.g4 f5 10.Qc2 Nge7 11.d4 fxg4 12.d5 Nb8 13.Be4 0–0 14.Bd2 Nd7 15.hxg4 Nf6 16.f3
[g4ポーンを強化しますが、e3ポーンを弱くします。]
16...Qd7!?
[クイーンをビショップの前に重ねる奇抜な手です。 ...Nxg4がスレットになっているかどうか確信はありませんでしたが、とりあえず試してみます。]
17.Kh2 c6 18.Rg1 cxd5 19.cxd5 b5 20.Raf1 Bb7 21.g5
21...Bc8!!
[ここまで黒の手はd5に孤立ポーンを作らせ、これを落としにいくプランでしたが、直前の白の手を見てプランを変えます。b7に出したビショップをc8に戻すのは難しい判断ですが、ベストです!]
22.Rg2 Qh3+ 23.Kg1 Nxe4 24.Qxe4
[24.fxe4? Bxe3+も24.Nxe4 Nxd5 (24...Rxf3 25.Nf6+!?)も黒満足です。]
24...Bf5 25.Qb4 Bc5!
[d6ポーンを守るとともに白クイーンを悪いマスに追いやる重要な1手です。]
26.Qb3 Bd3!
[流れるように好手が続きます。Rh2で黒クイーンがトラップされないよう、退路は確保しておきます。]
27.Rh2 Qf5 28.Rxh4 Qxg5+
[28...Bc2! 29.Ng3 Qd3で白クイーンをトラップできたようですが、私の狙いは白キングに集中していました。]
29.Rg4 Qh6
[e3ポーンを睨んでおきます。ベストなタイミングと方法でここを落としにいきます。]
30.Kg2 Nf5!
[黒の全てのピースが躍動し、白キングに向かいます!]
31.Rh1 Nxe3+ 32.Bxe3 Qxe3
[…Qxf3+、…Qf2+、…Bxe2とスレットが多すぎて白には受けがありません。]
33.Ng1 Qf2+ 34.Kh3 Bf1+! 0–1
[35. Rg2 Rf4! で次にメイトです。]
最終結果
https://chess-results.com/tnr831199.aspx?lan=22&art=4&flag=30
最終的に3位。賞金1,500バーツ(約6,000円)をもらって帰りました。次回は12月予定です。
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大会2日目の午前は7RのRapidトーナメントでした。大会名にSuperが付いているのは、タイムコントロールが10分+2秒と、通常のRapidゲームより短いからだと思います。
このトーナメントは出場費が一律850THB(3,500円)でタイトルホルダーのディスカウントが無かったせいか、Standardに参加していた多くのトッププレーヤーが出場を見送っていました。逆にこのRapidトーナメントだけ参加しているプレーヤーもいました。Openセクションは全41名参加で、私がリストトップでトーナメントはスタートしました!
初戦は勝ちきれずドロー、R.2を勝ってR.3は強敵との対戦でした。
Ko,Ko Ohn (FM,2178,MYA) – Baba Masahiro
The Rooky Super Rapid 2023(3)
position after 48.Raxa6
[白にも黒にも主張するところがあり、どちらが良いかよく分からず指し続けていました。]
48…Be5 49.d6 Re4 50.Bd2 Qh4 51.d7
51...Rd8
[ここで51...Re1+ 52.Bxe1 Qxe1+ 53.Qf1 Qg3+ 54.Qg2 Qe1+のパペチュアルの筋は見えていましたが、勝ちを求めていたため、リスクを承知でプレーを続けました。]
52.Re8+ Kg7 53.Rxd8 Qxd8?
[この手は負けです。ただ、お互い白の決定打が見えていませんでした。本譜のようにルークを取り返すのではなく、53...Rg4でクイーンを狙いに行くのが正着です。そしてこの後、白に4手の難しい絶対手があり、黒も白にクイーンを作らせてドローという壮絶な応酬となります。54.Bxh6+! Kxh6 55.g7+! Kxg7 56.Rg8+! Kxg8 57.Rg6+! Rxg6 58.Qxg6+ Bg7 59.Qe8+ Kh7 60.d8Q Qg3+でドロー!]
54.Qh3?
[54.Bxh6+! Kxh6 (54...Kg8 55.Ra8!! Qxa8 56.Qa2+!! は白勝ち!) 55.g7+! (6段目のルークの横の利きでチェック!)で白勝ちです。]
54...Rg4+ 55.Kf1 Bf4
[Qd3くらいでまだ白勝勢ですが、ここでアービターが時計を止めに入りました、私も気づいていませんでしたが、相手の時間が落ちていました。]
0–1
残りのラウンドも負けなしでしたが、決して安定したものではありませんでした。R.5のゲームでは序盤から悪くなり、はっきりした負けゲームでした。
Portugalera,Ric (2101,PHI) – Baba Masahiro
The Rooky Super Rapid 2023(5)
position after 59.Nxf6+
[黒は単純に2ポーンダウンで誰が見ても敗勢ですが、ここでリザインすべきでしょうか? ゲームを理論上ドローにできるアイディアが無ければリザインも分かりますが、まだ私にはドローに持ち込むアイディアが2つありました。1つはビショップを犠牲にして白ポーンを2つ落とし、RN vs Rのエンドゲームにして50手持ちこたえるもの、もう1つは何とか1つポーンを落としてドローのルークエンドゲームに持ち込むものです。次の25手は耐えてチャンスを待つ時間です。]
59…Kh6 60.Nd5 Kh7 61.Rg3 Ra2 62.Rg4 Be1 63.Rf4 Kg6 64.Ne3 Bd2 65.Rf3 Kg5 66.Rf5+ Kg6 67.Nc4 Be1 68.Ne5+ Kg7 69.Nd3 Bc3 70.Kg3 Rd2 71.Nf4 Bb4 72.Ne6+ Kg6 73.Nf4+ Kg7 74.Nd5 Bd6+ 75.Kg4 Bc5 76.f3 Rg2+ 77.Kh3 Rg1 78.Nf4 Bd6 79.Ne6+ Kg6 80.Nf4+ Kg7 81.e5 Be7 82.e6 Bd6 83.Rf7+ Kg8 84.Kh2?
84…Re1!
[辛抱強く待ってようやくチャンス到来です。白は大事なeポーンを守れません!]
85.Rf6 Bxf4+ 86.Rxf4 Rxe6
[ついにドローのルークエンディングとなりました!]
87.Kg3 Ra6 88.Kg4 Ra1 89.Kg5 Rg1+ 90.Kf6 Ra1 91.Rf5 Kf8 92.Kg6+ Kg8 93.f4 Rg1+ 94.Rg5 Ra1 95.Kf6+ Kf8 96.Re5 Ra6+ 97.Re6 Ra4 98.f5 Ra1 99.Rb6 Kg8!
[ドローへのオンリームーブです。99…Ke8は負けです!]
100.Rb8+ Kh7 101.Kf7 Ra7+ 102.Kf6 Ra6+ 103.Kg5 Kg7 104.Rb7+ Kg8 105.Rc7 Rb6 106.Rd7 Ra6 107.f6
107...Ra1!
[6段目までポーンを突かせたらすぐに背後からチェックをかけられるよう、後ろに回り込みます。]
108.Rd8+ Kf7 109.Rd7+ Kf8 110.Kg6 Rg1+ 111.Kf5 Rf1+ 112.Ke6 Re1+ ½–½
[Rapidにもかかわらず、長丁場のゲームだったので、最後は多くのギャラリーがボードを取り囲んでいました。]
Super Rapidは4勝3ドローで5.5Pで終了。タイブレークで負け、4位となり、3位入賞はなりませんでした。フィリピン勢3人に表彰台を独占され、悔しい結果となりました。
最終結果
Super Rapid
https://chess-results.com/tnr821087.aspx?lan=22&art=4&flag=30
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10/20〜23にタイのバンコクで7Rのスタンダード・トーナメントと7Rのラピッド・トーナメントが開催されました。
The Rooky Chess Clubは比較的新しく設立されたクラブで、バンコクを拠点に活動を続けています。そんなThe Rooky Chess Clubが運営する初めての国際大会が今回のThe Rooky International Openです。もちろん、The Rooky Chess Clubのメンバーだけではこのような大きな国際トーナメントを運営するのは難しいので、他のクラブからもスタッフとして運営の手助けをするのがタイでのトーナメントのやり方です。
トーナメントの案内は8月末に出ました。特色としては、会場を白亜の神殿のようなプールが写真映えする、タイドラマ「The Warp Effect」のロケ地にもなったチャオプラヤ川沿いのホテル、Away Bangkok Riverside Kene Hotelに選んだことでした。スケジュール、出場費、賞金、センサーボード、Live Gameなどのトーナメント環境は5月のBig Rook Chess Festivalを参考に計画していたことはよく分かりました。
タイは10/21〜23が3連休で、10/20に休みを取ると全ラウンド出場できるので、スケジュール的にも出やすいトーナメントだったと思います。頑張れば日本からも出場可能なスケジュールだったので、私からオーガナイザーにはJCF(Japan Chess Federation)にも正式に案内を出したらどうかと提案しました。(注:この時は、エントリーしている人数が少なかったため、多少オーガナイザー側に焦りがあった)
実際、こう提案した後、すぐにオーガナイザー側からJCFに大会案内メールを送っていましたが、その後のやり取りは定かではありません。これとは別に何名か日本から私に直接問い合わせもありました。いずれにせよ日本からのプレーヤーの参加は実現しませんでしたが、大会の宣伝や海外からの集客をいかに伸ばしていくかは今後、タイ側のオーガナイザーやプレーヤーとも話していきたいと思っています。
タイムテーブル:
10/20(Fri) 9:00 R.1
10/20(Fri) 14:30 R.2
10/21(Sat) 9:00 Super Rapid
10/21(Sat) 14:30 R.3
10/22(Sun) 9:00 R.4
10/22(Sun) 14:30 R.5
10/23(Mon) 9:00 R.6
10/23(Mon) 14:30 R.7
会場はAway Bangkok Riverside Kene Hotelの離れのホールでした。建物は2階建てで、トーナメントホールは2階でした。1階にもホールがあり、参加人数が多くなって2階で収まらなくなった場合は、そちらも利用できたと思います。人数制限を設ける必要なく、うまく柔軟に対応しているなと感心しました。
オープンクラスのボードはほぼセンサーボードでLive中継されました。
大会特製のスコアシートと手土産のカップ
トロフィーはスタイリッシュ!
スタンダード・トーナメントはOpenセクションとChallengerセクションの2部門に分かれており、25のFederationから計100名を超えるプレーヤーが参戦しました。OpenセクションはIM3人、FM6人、WFM2人、WCM1人の計12人のタイトルホルダーがいました。私はリスト5でスタート、5位までトロフィー+賞金があったので、何とか入賞を目指して戦うことにしました。
初めの3Rを2勝1ドローで迎えたR.4、相手はベトナムの女子マスターでした。
Nguyen,Thi Minh Oanh (WFM,1880,VIE) – Baba Masahiro
The Rooky International Open 2023(4)
position after 44...Kg6
[ここまで苦しいながら粘って迎えた局面。クイーンサイドのポーンが2 vs 1だったらまだチャンスがありますが、3 vs 1だと厳しいです。にもかかわらず、かすかなドローチャンスを狙っていました!]
45.a4?!
[このケアレスな1手で白は勝ちを逃します!白キングはこのタイミングでクイーンサイドに向かわなければいけませんでした。45.Kd3!]
45...Rd8!
[dファイルで白キングをカットオフします。私のアイディアは、2ルークで白キングをhファイルまで追い込み、あわよくば白クイーンを挟まなければメイトを防げない状況を作ることです。白パスポーンが進むのが早いか、白キングをhファイルまで追い込むのが早いかの勝負です。]
46.Qc6+ Kg7
[驚くべきことに、ここでチェスエンジンは局面評価値±0.0を示してきました。このまま±0.0を保ちながらゲームは進みます。]
47.Qg2+ Kf8 48.Qc6 Re7+ 49.Kf3 Kg7 50.Qc5 Rf8+ 51.Kg4 Ref7 52.b5 Kh8
[狙いはRg8+ Rh7+]
53.Qe5+ Kh7 54.Qh5+ Kg8 55.Qd5 Kh7 56.Kg5 Rg8+ 57.Kh5 Kg7 58.a5 Kf6 59.Qd6+ Kf5 60.Qd5+ Kf6 61.Qf3+ Ke7 62.Qe4+ Kf6 63.b6 Rfg7
[ここは63...axb6 64.axb6の交換を入れるか迷いました。最終的にはbxa7でポーンが割れたほうがあとで回収しやすいと考え、放置することにしました。]
64.Qf4+ Ke6 65.Qe4+ Kf6 66.Qf4+ Ke6 67.Qh6+ Kd5
[これも正確に指せばドローになりますが、実戦的にはベストでないです。67...Kf5! で68.bxa7 Rg5+ 69.Kh4 Rg4+からのドローが最もはっきりしていて間違いもありません。当初の予定から割れた白ポーンを回収しに行く予定だったので、キングをクイーンサイドに向けて進めてしまいました。]
68.bxa7
68...Rxa7??
[しかしこれがブランダーでした。黒ルークの連携が切れると、クイーンによるチェックでどちらか一方のルークが狙われるのは分かっていたので、クイーンによるチェックは細かくチェックしていました。しかし、ポーンによるチェックを忘れていました!
代わりの手ですが、68...Rg2? はQd2+を防ぎ、…Rh2#も狙い、一見勝ちにも見えます。しかし、白には奇跡のリソースがあります。69.c4+! Kd4 (69...Kxc4 70.Qc6++–) 70.Qf4+ Kc5 71.Qe5+ Kb4 72.Qb8+!+– これで次にa8Qで2個目のクイーンを作られます。注目すべきは…Rh2+も…Rh8+も防がれていることです!
黒がイコールを保つには1手のみで、これが実に難しく、68...Rg3!! 69.Qd2+ Kc6 70.a8Q+ Rxa8 71.Qh6+ Kd5 72.Qd2+ Kc6=]
69.Qd2+
[69.c4+!! で、黒キングがどこへ行っても白は次にクイーンによるチェックでどちらか一方のルークを落とせます!]
69...Kc6
70.Qd3?
[ここは白のラストチャンスで、70.Qh6+! Kd5 71.c4+!! です。]
70...Rxa5+ 71.Kh6 Rc8 72.Qc4+ Rc5
[ここまでくるとはっきりしたドローです。最後は少し欲が出て、白キングを8thランクに追い込めないかトライしましたが、パペチュアルチェックを逃れることはできませんでした。]
73.Qe6+ Kb7 74.Qb3+ Ka6 75.Qa4+ Kb7 76.Qb3+ Ka6 77.Qa4+ Kb6 78.Qd4 R8c6+ 79.Kg7 Kb7 80.Qb4+ Kc8 81.Qg4+ Kc7 82.Qf4+ Kb7 83.Qb4+ Ka6 84.Qa4+ Kb6 85.Qd4 Kb7 86.Qb4+
½–½
このラウンドをドローに逃げることができたのが大きく、続く2Rを連勝、最終ラウンドは1番ボードでトップを独走するIM Shkapenkoとでした。
□Baba, Masahiro (FM,2248,JPN)
■Shkapenko, Pavel (IM,2405,RUS)
The Rooky International Open 2023(7)
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Bc5 4.0–0 d6 5.Bxc6+ bxc6 6.d4 exd4 7.Nxd4 Ne7
[ここで相手よりドローオファー。優勝を確定させるためでした。私もドローで入賞確定だったのと、何より負けなしでトーナメントを終わらせたかったので、ドローを受けました。]
½–½
最終ラウンドは早く終わったため、ようやく他のボードをゆっくり観戦することができました。あとは最終順位が出るのをゆっくり待つだけでした。
最終結果
Standard
https://chess-results.com/tnr821084.aspx?lan=22&art=4&flag=30
最終4位で悲願の海外(スタンダード)オープントーナメント初入賞となりました!スタイリッシュなトロフィーと賞金2,400THB(約10,000円)をもらってトーナメント終了となりました。
次回、Super Rapid編のレポートです。
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10/13〜17にタイのパタヤで9Rのスタンダード・トーナメントが開催されました。
パタヤでは過去2018年、2019年に9Rのスタンダードの国際トーナメント(Pattaya Open)が、2020年にはコロナの影響か、少し縮小した形で7Rのスタンダードの国際トーナメント(Mini Pattaya Open)が開催されていました。今回は3年ぶりの開催となり、9Rに戻ったものの、2018年、2019年に比べるとまだ小規模なためか、トーナメント名にはMiniが付いていました。
このトーナメントの案内が出たとき、私はすでに10/20〜23にバンコクで開催されるThe Rooky International Openにエントリーしていたため、パタヤの大会にも出るかどうかは少し悩みました。悩んだ理由の1つはスケジュール、もう1つは運営です。
まず1つ目、タイは10/13〜15が3連休で、全ラウンド出場するには10/16と10/17に休みを取らなければいけませんでした。そして全ラウンド出場すると10/13〜10/23の11日間に中2日挟んで計16Rのスタンダードのゲームと7Rのラピッドのゲームをプレーすることになり、体力的にかなりタフになります。
2つ目は運営の件ですが、オーガナイザーが8月のPattaya Rapidと同じで、その大会のレポートにも書きましたが、彼らの運営に少し違和感がありました。そしてそのあと、Pattaya RapidはFIDEレイティングトーナメントとしてFIDEのトーナメントリストに登録されていたものの、結果報告がされることはありませんでした。さらに、トーナメントが終了してから30日間過ぎると結果報告がされていないトーナメントはFIDEのトーナメントリストから除外されるという規定があるため、今となってはPattaya RapidがFIDEレイティングトーナメントとして登録されていた証拠は残っていません。この件についてFacebookでオーガナイザーに問合せしましたが、反応はあったものの具体的な回答やアクションはありませんでした。後ほど、このやり取りを見ていたタイのマスターの1人が教えてくれたのですが、以前にも同様のことがあり、TCA(Thailand Chess Association)から正式にこのオーガナイザーへの警告があったということです。
多少の不安要素はあったものの、タイトルホルダーも複数参加し、トーナメントとしては面白そうだったので最終的には参加を決めました。FMは参加費が少しディスカウントされて1,000THB(4,000円)でした。(GM・IM・WGM・WIMは無料、FM・CM・WFMは1,000THB、FIDEレイティング1500以上1,500 THB、1500未満2,000 THB、UR2,500 THB)
タイムテーブル:
10/13(Fri) 9:00 R.1
10/13(Fri) 14:00 R.2
10/14(Sat) 8:30 R.3
10/14(Sat) 13:30 R.4
10/15(Sun) 9:00 R.5
10/15(Sun) 14:00 R.6
10/16(Mon) 9:00 R.7
10/16(Mon) 14:00 R.8
10/17(Tue) 9:00 R.9
10/14だけは夜にブリッツ・トーナメントがあったため、スケジュールが30分前倒しになっていました。90/30のタイムコントロールで、ラウンド間のインターバルが5時間は短いです。実際、R.7では150手以上続いたゲームがあり、R.8開始時間が15分以上遅れました。また、午後のラウンドは会場に着いてからペアリングが判明することもあり、十分な準備・休養のないままプレーを開始せざるを得ませんでした。90/30のタイムコントロールで1日2R行う場合は、試合間のインターバルは最低5時間半、欲を言えば6時間以上欲しいところです。
会場はパタヤ市役所内のホールで、余裕のあるスペース、静かなコンディション、ロケーションもよく、試合環境としてはとしてはこの上ないところでした。今回、ホテルは会場から徒歩10分程度のところで(比較的)安宿にしました。日中ほとんどの時間はトーナメントホールにいるので、ホテルは休憩だけできればよく、最低限でOKです。
ゲームのほうはスムーズにいかず、レイティングも大きく落としましたが、ハードなゲームが多かったのは良かったです。最もハードだったのは最終戦で、予期せぬハード・ファイトとなりました。相手のBadmatsyrenovとは、5月のオープントーナメントに続き、2戦目です。(前回は黒番で負け)
□Baba, Masahiro (FM,2248,JPN)
■Badmatsyrenov, Oleg (IM,2406,RUS)
Mini Pattaya Open 2023(9)
1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Bd3 Bc5 6.Nb3 Be7 7.Qg4 g6 8.Qe2 d6 9.0–0 Nd7 10.Nc3 Qc7 11.Bd2 b6 12.Rae1 Bb7 13.f4 Ngf6 14.e5 Nd5 15.Ne4 b5?
[ここでプリパレーションを外れました。15...dxe5 16.fxe5 0–0 17.Nf2! が用意していたラインでした。]
16.Nxd6+ Bxd6 17.exd6 Qb6+
[すぐにポーンを取り返す17...Qxd6には、18.f5! が強力です。]
18.Kh1 0–0 19.Na5 Rfe8 20.Nxb7 Qxb7 21.f5??
[ここまでオープニングが成功した以上に大きなアドヴァンテージを築いたはずですが、ここでブランダー。突く前に何度も確かめたはずですが、単純な見落としがありました。]
21...exf5! 22.Qf2
[22.Qxe8+ Rxe8 23.Rxe8+ Nf8?? 24.Bh6が勘違いしていたラインで、23...Kg7! を見落としていました。]
22...N7f6 23.Qd4
[チェスエンジンによると、ここは23.Bxf5!が可能で、23...gxf5 24.Qxf5は白勝勢と出てきましたが、21手目にポーンをタダ捨てした後にさらにビショップも捨てる判断はなかなか難しいと思います。]
23...Qb6 24.Qxb6 Nxb6 25.Ba5 Nfd7 26.Rxe8+ Rxe8 27.Rd1 Nc4 28.Bxc4 bxc4 29.b3 Re5 30.Bc7 f6 31.Kg1 Kf7 32.b4?!
[32.Kf2! で黒ルークの2ndランクへの侵入を防いでおくべきでした。白はクイーンサイドでポーンのマジョリティーがあるため、焦ってポーンを突いていってしまいました。]
32...Ke6 33.a4 Re2 34.Rc1 Kd5 35.Kf1 Rd2 36.b5 axb5 37.axb5 Kc5 38.Rb1 Rxc2 39.b6 c3 40.b7 Rb2!
[白のパスポーンは止められ万事休すで、リザインも考えましたが、もう少し続けてみることにしました。]
41.Rc1 Kc4 42.Ba5 Rxb7 43.Rxc3+ Kd5 44.Bc7 Ne5
45.Ra3 Rb1+ 46.Ke2 Rb2+ 47.Kf1 Rd2 48.Ra6 Nd7 49.Ra8 h5 50.Rd8 Kc6 51.Rg8 g5 52.h4!
[苦しいながらこの手に賭けました。52...gxh4なら黒ポーンは割れ、狙いやすくなります。]
52...g4! 53.Rh8 f4 54.Rxh5 Ne5 55.Rf5 Nd3 56.h5 Rf2+ 57.Kg1 Rb2 58.Kf1 Rf2+ 59.Kg1 Re2 60.Ba5 Ra2 61.Kf1
[61.h6? は白が先にメイトになります。61...Ra1+ 62.Kh2 g3+ 63.Kh3 Nf2+ 64.Kh4 Rh1#]
61...Kxd6 62.h6 Ke6 63.h7 Ra1+ 64.Ke2 Rh1 65.Rb5 Ne5 66.Rb7 Nd7 67.Bd2 Rxh7 68.Bxf4 Rh5 69.Kf2 Rd5 70.Rb4 Nc5 71.Rb6+ Kf5 72.Be3 Ne4+ 73.Ke2?
73...Ra5
[ここはStudy-likeな黒の勝ちがありました。73...Nc3+! 74.Kf2 Rd3! で白ビショップは行くところがありません。(75.Bh6 g3+ 76.Ke1 Rd1#; 75.Bc5 Ne4+) 75.Rc6 Nd1+ 76.Ke2 Rxe3+ 77.Kxd1 Kg5は白キングがeファイルでカットオフされ、黒勝ちのエンドゲームです。]
74.Bd4 Ra2+ 75.Ke3 Ra3+
[75...Rxg2??には76.Rb5+からナイトが落ちます。]
76.Ke2 Rg3 77.Kf1 Rd3 78.Bb2 Rd1+ 79.Ke2 Rg1 80.Ke3 Re1+ 81.Kd3 g3 82.Bd4 Nf2+ 83.Kc4 Ne4 84.Kd3 Nf2+ 85.Kc4 Re6 86.Rb3 Ne4 87.Rf3+ Kg6 88.Kd5 Re8 89.Be3 f5 90.Bf4
[黒のgポーンは次に落ち、この時点でドローになると思いました。実際、最悪のシナリオでもR vs RNで50手粘ればドローなので、少し安心してしまったのが裏目に出ました。黒は次に巧妙な罠を仕掛けてきました。]
90...Rd8+ 91.Ke6 Rd1 92.Bxg3??
92...Ng5+!
[黒にはナイトが残っているので、自分の駒をフォークポジションに置かないよう、注意していたはずですが、この手を完全に見逃していました。92.Ke5! で次にgポーンを落としに行けば、ドローでした。]
93.Ke5 Nxf3+ 94.gxf3
[Tablebaseによると、黒勝ち。しかし、ここから理論上ドロー、黒勝ちを繰り返します。詳しく解析するとここでは書ききれないので、Tablebaseの示す手だけ載せておきます。類似のエンドゲームでAronian-Dubov, World Cup 2017を思い出しました。]
94...Rg1?!
[94...Ra1! と94...Rc1!だけが黒勝ちです。それではなぜ94...Rb1? は黒勝ちではないのでしょう?]
95.Bh4?!
[95.Kf4! のみドローです。]
95...Ra1 96.Bd8 Ra8?!
[96...Rc1! のみ黒勝ちです。]
97.Bh4?!
[97.Bb6! のみドローです。]
97...Ra5+ 98.Kf4 Ra4+ 99.Kg3 Kf7?!
[99...Kh5! と99...Rd4! のみ黒勝ちです。]
100.Bg5!
[ポジションはまたドローです!]
100...Ke6 101.Bh6 Kd5 102.Bg5 Rc4 103.Bf6 Kc5 104.Bg7 Kb4 105.Be5 Kb3 106.f4??
[このポーンを突くのは良くないと分かっていましたが、黒キングがe2まで来てRc3からfポーンを落とされるのを防ぐ手を見つけられませんでした。しかし、fポーンを落とさないようにすることその考え自体が間違いでした! 106.Bf6 Kc2 107.Be5 Kd3 108.Bf6 Ke2 109.Bg5 Rc3 110.Kf4 Rxf3+ 111.Ke5で次にBf4と挟んでf5を落としてドローです!!]
106...Rc1–+ 107.Kh4 Rg1!
[明らかな手ですが、オンリームーブです。fポーンを落としに行って黒勝ちです。]
108.Bf6 Kc4 109.Kh5 Kd5 110.Bg5 Ke4 0–1
[4時間半を超えるハードなゲームでした。]
Mini Pattaya Openはハーフの4.5Pで終了。勝ち越せなかったトーナメントは正直、あまり記憶にありません。
最終結果
https://chess-results.com/tnr823883.aspx?lan=22&art=4
懸念していた運営ですが、それほど問題なかったと思います。それでもあえて指摘する点があるとすれば以下の2点です。
大会初日、8:30までに会場に来てエントリーを済まさないとR.1のペアリングに組み込まれないはずが、R.1にペアリングされて結局不戦のプレーヤーが複数いた。(何のためのエントリー?)
スコアシートは60手で終わるので、ゲームが60手を超えそうな場合はアービターが新しいスコアシートを配りに来なければいけないが、配りに来なかった。(アービターがプレーヤーのほうを向いていない良い例)
来年もPattaya Openは開催されるかもしれないので、またその時パタヤに戻ってきたいと思います!
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9/30(土)はシラチャでRapidトーナメントでした。シラチャは日本人(主に駐在員とその家族)が多く住む、海沿いの街です。バンコクからは車で1.5〜2時間の距離です。今回のトーナメントはタイ語での案内しか出ていなくて、直前まで出るかどうか悩みましたが、タイの日本人街と呼ばれるシラチャがどんな街なのか気になっていたので、とりあえず行ってみることにしました。
大会は5Rのスイス式、タイムコントロールは15+10、大会会場はシラチャの中心、ロビンソンデパートのパブリックスペースでした。オープンセクションは12人の参加者で、私がリストトップでした。このトーナメントもエントリーリストが前日にならないと出ず、運営が問題ないか少々不安でしたが、当日行ってみると良い運営でした。
試合のほうは全勝と行かず、4勝1ドローでしたが何とか優勝。レイティングでは圧倒的にトップでしたが、当たった相手がレイティング以上にきちんと指してきて、全ゲームが良い勝負になりました。(前月のパタヤRapidとは大違い)
それに加えてこの日は大ポカがかなりありました。極めつけは次の局面。
白で9.Nxd5とナイトを取った場面です。9...Qxd5と取り返す1手ですが、10.Bxb4 Nxb4でナイトがb4に行ったらまた戻ることになるのを嫌い、
9…Bxd2+??
と、先にチェックを入れておいて10.Qxd2 Qxd5で黒満足と読んでいましたが。。。
10.Nxd2!
あまりのショックで思わず声が出ました。d5のナイトにビショップの守りがつき、黒は単なるピースダウンです。即リザインでもおかしくありませんが、もう少し指してみることにしました。Carlsenもピースダウンで続けたこともありましたし。。。
結果、70手近く指し、勝ちました。途中は結構頑張りましたが、勝勢にはならず、怪しい局面で相手の時間が落ちました。
最終結果
https://chess-results.com/tnr826143.aspx?lan=22&art=1
トロフィーのコレクションが増えてきました!
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10/13〜10/17にタイのビーチリゾート、パタヤにおいてFIDEトーナメントが開催されます。大会詳細が出ましたので重要な部分を一部、掲載します。
日時 : 2023/10/13(金)〜10/17(火)
場所 : Pattaya City Hall
フォーマット :
Standard : 9R 90分+30秒
Blitz : 9R〜11R 3分+2秒
タイムテーブル :
2023/10/13(金)
08:00 Registration
08:30 Technical meeting
09:00 Standard R 1.
14:00 Standard R 2.
2023/10/14(土)
08:30 Standard R 3.
13:30 Standard R 4.
18:30 Blitz Tournament
2023/10/15(日)
09:00 Standard R 5.
14:00 Standard R 6.
2023/10/16(月)
09:00 Standard R 7.
14:00 Standard R 8.
2023/10/17(火)
09:00 Standard R 9.
15:00 Awarding ceremony
大会はStandard(Classical)とBlitzの2部門になります。両方出てもどちらか一方でも問題ありません。タイは10/13(金)が祝日ですので、全ラウンド出場するには16(月)と17(火)は休みを取る必要があります。まだ確定はしていませんが、せっかくなので出場する方向で進めたいと思っています。
大会への申し込みはQRコードから、大会詳細はFacebookで「Pattaya Chess Club」を検索すれば出てきます。
今大会はパタヤという絶好のロケーションでの開催となります。パタヤは良い意味で老若男女が楽しめる奇跡の一大歓楽地です。時間に余裕があれば、10/20(金)〜10/23(月)のThe Rooky International Openとあわせて参加することもできますし、この期間はタイチェス界も非常に盛り上がること、間違いなしです。
Let's get together in Pattaya!!
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9/2(土)に、FIDE戦のブリッツトーナメントに参加してきました。午前は全てのプレーヤーにオープンのトーナメント、午後はタイ籍のプレーヤーのみに参加資格のあるトーナメントの2部制、どちらも9Rのスイス式、タイムコントロールは3+2でした。私は午前の部に参加してきました。
大会会場はバンコクのちょっと外れにあるショッピングセンター、Seacon Squareのパブリック・スペースでした。最近、Yellow Lineなるモノレール路線が開通したばかりで、Seacon Squareはその駅前なのですが、バンコク中心部からの乗換えがとにかく悪い...仕方なくGrab Taxiを利用。
大会参加者はタイのNO1プレーヤーLaohawirapapやフィリピンのプレーヤー達との争いになると思っていましたが、序盤からボロボロとポイントを落とし、悲惨な結果でした。
私もこれまで何万ゲームとブリッツを指してきましたが、公式のブリッツトーナメントに参加したことはほとんどありません。もちろん老化で反射神経が鈍ってきているのもありますが、OTBのブリッツは慣れが必要です。今回、フィリピンのプレーヤー達を見ていてそう思いました。タイでは公式のブリッツトーナメントもよく開催されているので、食わず嫌いせず、ちょくちょく参加していこうと思います。
最終結果
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8/26(土)に、パタヤに遠征に行きました。今回のRapidトーナメントはCentral Chess on Tourという、各地を巡ってトーナメントを開催しているツアーの一環です。「そろそろまたパタヤに行きたいな〜」と思っていた頃、ちょうどたまたまパタヤでの開催の案内を見つけたので、飛びついて行ってみることにしました。いつものように参加費600バーツ(2400円)を事前に振り込み、エントリー完了。会場裏の比較的良さそうなホテル(5つ星と公称しているが、実際は3つ星レベルくらい)も予約して、金曜夜にパタヤに乗り込みました。
大会は6Rのスイス式、タイムコントロールは10+5、大会会場はパタヤビーチの北のほうのショッピングモール、Central Marina Pattayaのパブリックスペースでした。Rapidトーナメントと並行して、2日制のStandardトーナメントも開催されていましたが、こちらはU1800のレイティング制限があるため、参加できず。
試合のほうは、6連勝で優勝。今までタイで出たトーナメントの中では一番レベルは低かったです。試合は良いとして、気になったのは運営。もちろん、少ない人数で頑張ってこのようなトーナメントを開催してくれるのはありがたいですが、垂幕・トロフィー・会場のハード面を整備するのに力をかけすぎ、ソフト面が少しおろそかになっていたのが気になりました。具体的には、
何はともあれ、いつも通りトロフィーと賞金2,000バーツ(8,000円)をいただき、主目的のパタヤをエンジョイできたので良かったです!
最終結果
https://chess-results.com/tnr811017.aspx?lan=22&art=1
Hilton Pattayaのルーフトップバーで1杯🍺
パタヤビーチの夜景と心地良い風が最高です!
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10/20〜10/23にタイの首都バンコクにおいてFIDEトーナメントが開催されます。大会詳細が出ましたので重要な部分を一部、掲載します。
日時 : 2023/10/20(金)〜10/23(月)
場所 : Away Bangkok Riverside Kene Hotel, Bangkok
フォーマット :
Standard : 7R 90分+30秒
Super Rapid : 7R 10分+2秒
タイムテーブル :
2023/10/20(金)
08:00 Players report for the Standard.
08:30 Opening ceremony and technical meeting for the Standard.
09:00 Standard R 1.
14:30 Standard R 2.
2023/10/21(土)
08:00 Players report for the Super Rapid.
08:30 Technical meeting for the Super Rapid.
09:00 Super Rapid R 1 to 7.
12:30 Awarding ceremony for the Super Rapid.
14:30 Standard R 3.
2023/10/22(日)
09:00 Standard R 4.
14:30 Standard R 5.
2023/10/23(月)
09:00 Standard R 6.
14:30 Standard R 7.
19:00 Awarding ceremony for the Standard and closing ceremony
大会はStandard(Classical)とRapidの2部門になります。両方出てもどちらか一方でも問題ありません。タイは10/23(月)が祝日のため、10/20(金)だけ休みを取れば、全日程に出られるので、私は出場しようと思っています。
大会への申し込みは以下のページからで申し込めます。
Registration Form
https://forms.gle/7Me8av9w1g4xg9gc9
上記に掲載しなかった参加費・賞金・ホテルの割引などの情報については以下から確認できます。なお、タイトルホルダーは参加費無料です。
Terms and Regulations
今回の会場のホテルは、神殿のような神秘的なプールが写真映えする、タイドラマ「The Warp Effect」のロケ地にもなったホテルです。2022年4月に開業したばかりで、今人気急上昇中のチャオプラヤ川沿いのリゾートホテルです。タイのトーナメントは運営自体すばらしいですが、それに一要素加えて、このような話題性のある会場選びをしてくれています。
バンコクでの開催で短期日程なので、日本からも比較的参加しやすいトーナメントだと思います。日本から参加する場合、行きは「10/19(木)の深夜便で飛んで10/20(金)の早朝にバンコク到着、そのままR.1をプレー」、帰りは「10/23(月)の深夜便で飛んで10/24(火)の早朝に日本に到着、そのまま出社」というような強行日程で出場も可能です。もしバンコクを観光したいならSuper Rapidをスキップして時間を作り出すことも可能です。
Let's get together in Bangkok!!
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8/20(日)にRed Knight Chess ClubでFIDE Rated Rapidトーナメントがあり、6月に続いて出場してきました。トーナメントはクラブを切り盛りするFM Menkinoski氏により、とても良くオーガナイズされています。今回も前回と同様、リストトップでしたが、2100台のフィリピンプレーヤーが2名いたため、優勝争いはこの2人とすると予想していました。しかし、終わってみればトーナメントの進行は全く違う形になっていました...
□Hong,Ian (1583,KOR)
■Baba, Masahiro (FM,2268,JPN)
Red Knight Chess Club Rapid August 2023(5)
R.5の私の相手は将来有望な韓国人の少年でした。おそらくタイ在住なので、私も他のトーナメントでちょくちょく見かけていて、上のプレーヤーからかなりポイントを取っていることも知っていました。実際、このRapidトーナメントでも2100+の上3人に全員当たり、50%取り、最終的には2位につけていました。クラシカルのレイティングは1800〜1900あるため、レイティングにとらわれず、気を付けなければいけない相手です。彼がフィリピンプレーヤー2名からポイントを削ったため、私はその2名とは当たらずに終わったのです。
1番ボードで優勝の行方を決定するゲームは、セオレティカルなゲームになりました。
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.f3 e5 7.Nb3 Be6 8.Be3 Be7 9.Qd2 0–0 10.0–0–0 Qc7
[Najdorfの中でも人気のEnglish Attackです。これまで、白でも黒でも特にこのオープニングを経験してきました。最近は10...Nbd7以外の手も指しています。]
11.Kb1b5 12.g4 b4 13.Nd5 Bxd5 14.exd5 a5 15.h4
[キングサイドのポーンを突いていって黒キング前を崩しにいく自然な手ですが、実際は遅いです。15.g5とナイトを追い払うのがベストとされています。しかし、15...Nh5とhファイルをカバーされると、白はキングサイドのポーンを突いていくのが難しくなるので、本譜のようにh4-h5まで突いてからg4-g5とナイトを追い払いたくのは分かります。私も昔は同じ思考回路で、よく白でこの手順でポーンを突いていました。]
15...Nbd7 16.h5 Nb6 17.Bxb6 Qxb6 18.g5 Nd7 19.g6 a4
20.Nc1
[20.gxh7+には20...Kh8とあえて白ポーンを取り返さないのがよくあるディフェンスです。h7のポーンが邪魔になって白はなかなかアタックを続けることができません。特に白は黒マスビショップが不在なので、g7をアタックすることが難しいです。このまま黒キング前のポーンを放置しても良かったのですが、白に黒マスビショップがいないので、...h6とhファールを閉じ、逆に…Bg5から黒マスビショップをアクティブにする手が強力だと気付きました。]
20...h6 21.Nd3 b3 22.gxf7+ Rxf7 23.Bh3 Nf8
[このナイトは守りの要で、黒キング周りの弱点であるh7・g6・e6の白マスをカバーします。]
24.cxb3 axb3 25.a3 Bg5 26.Qe2 Rc7
[c2へのルーク侵入を狙います。白にとって気持ちの悪いスレットになってはいますが、実際は26...Ra4!? のほうが次の27.Qe4を防ぐ意味でも良い手でした。]
27.Nb4??
[期待していた手が飛んできました!この手自体はc2へのルークの侵入を防ぎ、次にc6に飛べればcファイルを完全にシャットできるので、指したくなるのは分かります。しかし、次の強力な1手で勝負が決まってしまいます。27.Qe4ならまだまだ難しい勝負でした。]
27...Qxb4!!
[このクリーンサクリファイスのタイミングを待っていました!]
28.axb4 Rca7 0–1
[aファイルからのメイトが受かりません。]
最終結果
https://chess-results.com/tnr803748.aspx?lan=22&art=4&flag=30
この週末は、前日のトーナメントに続き、2日連続で優勝。トロフィーと賞金3,000バーツ(約12,000円)をもらって帰りました。次回は10月予定です。
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8/19(土)はインドの独立記念日で、これに紐づけ、バンコクで1dayトーナメントが開かれました。主催は在タイのインド商工会で、会場もインド商工会の建物でしたが、トーナメントの運営はJirapak Chess AcademyとThailand Chess Associationによるものでした。
大会はU8・U10・U12・U16・Openの5つのセクションに分かれていて、各セクションとも7Rのスイス式、タイムコントロールは15+0でした。FIDEレート戦ではなく、賞金も無しです。
今回は参加費一律600バーツ(2400円)で、いつものようにQRコードでの前払いでした。エントリーリストが前日夜にならないと出ず、さらに今年初めての得体の知れないトーナメントだったので、出場するかどうか最後まで迷いました。しかし、今年タイに来たばかりで色々トーナメントに顔を出すのは良いだろうと思い、最終的に参加を決めました。
ゲーム自体はと言うと、初めの2戦は明らかに敗勢になるなど危ない場面はありましたが、3戦目以降は持ち直し、7戦全勝で優勝しました。リストトップで特にライバルというライバルはいなかったので、優勝しないといけないトーナメントでしたが、自動的に優勝できるとは限りません。今回は運が良かったほうだと思っています。
独特な形のトロフィー!
最終結果
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L.Kubbel
Ragaer Tageblatt, 1914
h2のポーンは今にも落ちそうで、黒はドローに逃れることができそうです。しかし、白が正確にプレーすると、白が勝ちます。
1. h3! Kg3 2. Ng5 Kf4 3. Ne4
白ナイトはg5でh3のポーンを守ったあと、黒キングがg3に近づけないよう、e4に来ます。白キングがh3ポーンの守りに近づいてくるのを防ぐため、黒キングはオポジションを取りながらf3-f4-f5を動きます。
3...Kf3 4. Kd4 Kf4 5. Kd5 Kf5
黒キングにオポジションを取られて白キングはこれ以上h3ポーンに近づけません。しかし、次に奇跡の1手があります。
6. Nc3!!
勝ちへのオンリームーブです。普通の感覚として、白ナイトはh3ポーンを守らなければいけないので、なるべくh3に近い方にいなければいけないように思えますが、その感覚を裏切るような1手です!
6...Kf4 7. Ne2+ Kf3 8. Ng1+
h3ポーンを守りながら黒キングをポーンの進行方向から遠い側へおびき寄せます。白はナイトを犠牲にしてキングでh4のポーンを取りに行き、勝ちのポーンエンドゲームに持ち込みます。
8...Kg2 9. Ke4 Kxg1
10. Kf3!
まだ注意が必要で、10. Kf4? は10…Kf2 11. Kg4 Ke3 12. Kxh4 Kf4=でこれはドローのエンドゲームです。
10... Kf1 11. Kg4
これでh4のポーンを取り、白勝ちです。黒キングはパスポーン進行方向に回り込めません。
Great and Practical Study!
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7/8(日)に、タイ東北部の玄関都市、Korat(正式名称はNakhon Ratchasima)でFIDE RatedのRapidトーナメントが開催されました。Koratはバンコクから車で4〜5時間ほど離れているので、バンコク開催の大会に比べてどうしても人は集まりませんが、バンコク以外での大会を経験するため、参加することにしました。
大会会場は大型ショッピングモールのスペースでした。中国でもそうでしたが、タイでは商業施設の一画を大会会場にすることが多いです。メリットとしては「余裕のあるスペースが借りられる」、「誰もが観戦できるので、他者に活動の様子をアピールできる」、「プレーヤーの付き添いの家族らは施設内で時間をつぶせる」というようなことが挙げられるでしょうか?公共施設の部屋を借り切って開催した方が静寂性は保たれるように思えますが、実はオープンスペースでのゲームもそんなに周りの騒音は気になりません。
大会は5Rのスイス式、タイムコントロールは25+10でした。私は基本的に15+5以上のタイムコントロールであれば、Rapidのゲームでも棋譜を取ります。自分のゲームを保存してしっかり見返すことは大事なことです。逆に言えば棋譜も残らず指しっぱなしになってしまうトーナメントには参加したくないというのが本音です。
今回はタイトルの有無にかかわらず、参加費は600バーツ(2400円)徴収されました。QRコードでの前払いになるので、タイの銀行口座を持っていないと支払えないかもしれません。海外からの飛び入り参加の場合は、直接オーガナイザーにコンタクトを取る必要がありそうです。
大会は4Rまで大きな問題なく4連勝。最終ラウンド、負けると優勝を逃す状況でした。
□Azarian,Mohamad Hosein (IRI)
■Baba, Masahiro (FM,2266,JPN)
Korat The Mall Rapid 2023(5)
1.e4 c5 2.c3 Nf6 3.e5 Nd5 4.d4 cxd4 5.Nf3 e6 6.Bc4 d6 7.Bxd5 exd5 8.Qxd4 dxe5 9.Qxe5+ Qe7 10.Bf4 Nc6 11.Qe3 Qxe3+ 12.Bxe3 f6 13.Nbd2 Be6 14.Nb3 0–0–0 15.Nbd4 Nxd4 16.Nxd4 Bd7 17.0–0–0 Bd6 18.Nb3 b6 19.f3 Rhe8 20.Rde1 Re7 21.Bf2 Rde8 22.Rxe7 Rxe7 23.Nd4 Be5 24.Re1? Bf4+ 25.Kc2 Rxe1 26.Bxe1 Bxh2 27.g3 Bg1
[相手のミスに助けられ1ポーンアップし、ダブルビショップを持っているので勝ちも遠くないかと思いましたが、ここから簡単ではありませんでした。]
28.Kd3 Kc7 29.g4 Bh2 30.Bf2 Kd6 31.Bh4 Bf4 32.Bf2 g6
[キングサイドにパスポーンを作りに行きます。]
33.Bh4 Be5 34.Bf2 h5 35.gxh5 gxh5 36.Bh4 Ke7 37.Ke3 Kf7 38.f4 Bd6 39.f5 Be5 40.a3 Ke7 41.Bf2 Kd6 42.Bh4 a5 43.b4
43...axb4
[ここで43...a4とするか放っておくか本譜のように取るか迷いましたが、時間のない中、判断できませんでした。本譜のようにポーン交換を選択したのは、a4をビショップのために使いたかったからです。しかし、おそらく43...a4とするのが正解で、「a3に弱点ポーンを残し、将来的にc1–h6のダイアゴナルに黒マスビショップを配置し、a3ポーンを落としに行って自身のaポーンを進める」というのが黒の勝ち方だったと思います。]
44.axb4 Ke7 45.Bf2 Ba4 46.Bh4 Bh2 47.Bf2 Bd7 48.Bh4 Bg1+ 49.Kd3 Be8??
[うすうす危険を感じていましたが、これはびっくりするくらいのブランダーでした。50.Nf3! Bb5+ 51.Kd2でビショップがトラップされます!]
50.Bg3? b5
[黒マスビショップを逃がすためにはこの手しかありません。]
51.Bh4 Bh2 52.Bf2 Bf4 53.Bh4 Bg5!
[ここで黒ポジションに進展があり、膠着状態が崩れました。hポーンを突いていけます。]
54.Bf2 Bd7 55.Bg3 h4 56.Bh2 h3 57.Bg3 Bh4! 58.Bh2
[58.Bxh4 h2–+]
58...Bf2?!
[私はこれで白はツークツワンクで、この手は好手だと思っていたのですが、59.Ke2! Bxd4 60.cxd4 Bxf5 61.Kf3とされると、2ポーンアップにもかかわらず、勝てません!正しくは、58...Be1! でc3ポーンに狙いを付けた後、黒キングをキングサイドから侵入させるべきでした。具体的には、59.Bf4 Kf7 60.Bh2 Kg7 61.Bf4 Kh7 62.Kc2 Bh4 63.Kd1 Bg5 64.Bd6 Kh6–+]
59.Bf4?! Bg1 60.Nf3 Bxf5+–+
[ようやく邪魔だったf5のポーンを落とせ黒勝勢となりました。あとは黒キングをキングサイドから侵入させていけば勝ちです。]
61.Ke2 Bb6 62.Nd4 Bd7 63.Kf3 Kf7 64.Kg3 Kg6 65.Ne2 Be6 66.Bd6 Be3 67.Kf3 Bd2 68.Bf4 Be1
[e1は黒マスビショップのベストポジション]
69.Bh2 Kg5 70.Nf4 Bg4+ 71.Ke3 Bxc3 72.Nxd5 Be5 73.Nf4
[73.Bxe5 fxe5 74.Kf2 h2 75.Kg2 Bf3+はナイトを落として黒勝ちです。]
73...Kf5 74.Bg3 Bd6 75.Kf2? [75.Bh2 Bxb4–+] Bxf4 0–1
最終結果
https://chess-results.com/tnr790519.aspx?lan=22&art=4
今回は優勝しなければいけないトーナメントだったので、優勝できてまずは安堵です。トロフィーと賞金3000バーツ(約12000円)をいただいてバンコクに戻りました。
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バンコクには常設のチェスクラブがあります。その名はRed Knight Chess Club♔
Homepage
https://www.facebook.com/RedKnightChess
バンコク中心部のAsokにクラブを構え、普段はスクールとして活動、定期的に各種トーナメントを開催しています。Asokは東京で言えば渋谷みたいな繁華街ですから、そこに常設のクラブを構えてビジネスとして成り立たせるのは簡単ではないことは予想できます。コロナ禍でクラブの場所を一度移して少し縮小したということですが、今はコロナ禍をしのぎ切り、活発に活動を続けています。
6/11(日)に半日制のRapidとBlitzのFIDE Ratedトーナメントがありました。私はRapidのみ参加。6Rのスイス式で、タイムコントロールは15+5と少し余裕のある時間設定でした。小規模のトーナメントですが、FIDE戦なので、IA(インターナショナル・アービター)がついているあたり、しっかりしているなと思いました。
最終結果
https://chess-results.com/tnr776179.aspx?lan=22&art=4&turdet=YES&flag=30
今回はスタートランクトップだったこともあり、6連勝で優勝。トロフィーと賞金3000バーツ(約12000円)をもらいました。ゲーム内容もまずまずでした!
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2023年4月より4年7ヶ月過ごした中国を離れ、タイに異動になりました。中国駐在中をほとんどコロナ禍で過ごしたことになり、しばしOTBのチェスからは離れていました。今年、ようやくゼロコロナの呪縛から解き放たれ、国を変えてOTB再開です。今回は5月にバンコクで行われたRapidとStandardのトーナメントの紹介です。タイでチェスと言うと、毎年開催される大きな国際大会のBangkok Chess Club Openが有名ですが、実際タイに来てみると、他にもかなり盛んに大会、例会等のイベントが開かれていることが分かりました。
Big Rook Chess Festivalは、Big Rook Chess Academyが主催のトーナメントで、Blitz 7R、Rapid 7R、Standard 7Rを4日間でこなす日程でした。私はRapidとStandardに参加、Blitzには出ませんでした。タイムコントロールはRapidが10+2、Standardが90+30でした。大会参加費はGM・IM・FM・CMは無料でした。WGM・WIM・WFM・WCMは有料なので、私も含めて男性のFM・CMあたりはかなり優遇されていると感じました。おそらく、タイにはフィリピンやミャンマーからコーチとして来ているFMが多く、そうした人が大会に出やすいように配慮されているのだと思います。
タイムテーブル:
5/4(Thu) 9:30 Rapid
5/4(Thu) 14:30 R.1
5/5(Fri) 9:00 R.2
5/5(Fri) 14:30 R.3
5/6(Sat) 9:30 R.4
5/6(Sat) 14:30 R.5
5/7(Sun) 9:00 R.6
5/7(Sun) 14:30 R.7
5/4は祝日のため、5/5だけ休みを取って、全ラウンド出ることにしました。
会場はバンコク市内のThomson Hotelでしたが、今一つ交通の便が良くなく、公共交通は船(!)のみで、基本的にタクシーでのアクセスとなりました。
参加者は100人程度でしたので、それほど大きな会場ではなかったですが、狭苦しくはなく、コンディションは良かったと思います。ただ、エアコンの吹出口の真下は寒く、長袖着用は必須でした。
初日、会場に到着してエントリーを済ませ、まずはRapidスタートです。
用意されているボードは、ほぼセンサーボードで、Lichessにてゲームがライブ配信されていました。このあたり、かなり運営は手慣れています。
さて、肝心の試合のほうはと言うと、3年分の衰えを感じさせる内容でした。多少は予想していましたが、Rapid、Standardともにレイティングを落とした結果になりました。
最終結果
Rapid
https://chess-results.com/tnr744666.aspx?lan=22&art=4&flag=30
Standard
https://chess-results.com/tnr744672.aspx?lan=22&art=4&flag=30
Standardのトーナメントはどうしても日程が長くなりがちなので、予定を調整して出ることが難しいですが、ようやくOTBが解禁されたので、なるべく大会参加していきたいと思っています。
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Lichess上で昨日開催されました。
日時:2022/4/9(土)
試合数:7R
試合数:15分+10秒/手
参加者は70名程度で、タイトルホルダーもちらほらいました。結果は4勝2敗1ドローといいところはなかったのですが、R.2のゲームでちょっとした事件が起きました。
Baba Masahiro – Fu,Zixi
Golden Lotus Cup 2022(2)
position after 30.Nf6
[時間が無い中、ピースを切って黒キングへのダイレクトアタックに期待していました。しかし、黒には十分な受けがありました。]
30…Qc2!
[私は30...Bxf6 31.exf6 Qg8 (31...Qf8!) 32.Ne5 で次にNg6+が決定的だとしか考えていませんでした。]
31.Nh4?
[初めに予定していた31.Ng5には、31...Bxf6 32.Nxf7+ (32.Nxh7 Bg7!) 32...Kg8 33.exf6 Nxf6! 34.Qxf6 Qd1+ 35.Kh2 Qxh5+ 36.Kg1 Qxf7 37.Qd8+ Kg7 38.Qxb6 Nd3 39.f3とちょっと長いですがほぼ強制的な手順になります。これはそんなに簡単ではありませんが、徐々に黒が勝つ形だと思います。本譜はNg6+ からQxh7#を狙いますが、次のディフェンスの1手が強力です。]
31...Bf8! 32.Qf4
[32.Ng6+には32...Qxg6!]
32...Nd3 33.Qg3 Nxf6 34.exf6 Bh6 35.Ng6+
35...fxg6
[35...Kh7でも白リザインです。本譜では何手か白のチェックが続きますが、すぐに途切れます。]
36.Qb8+ Kh7 37.Qb7+ Kg8 38.Qb8+ Kf7 39.hxg6+ Kxf6 40.Qd8+ Kf5 0–1
終わってみれば白の無理攻めを正しく受け切った黒の勝ちというゲームです。
しかし、次のゲームも勝った私の相手は、「Lichessの利用規約に違反」ということでアカウントを削除されました。Lichessに登録したばかりで、たった3ゲームだけ試合して、(しかもトーナメントの途中で)即座にアカウント削除というのはちょっとおかしいと思います。確かに私の相手はFIDEレーティングも持っていないですが、中国はこの2年間、ほぼFIDE戦はなかったので、特に若いプレーヤーのレーティング有る無しやレーティングを持っているプレーヤーの今のレーティングは全く当てになりません。
私は、チーティング行為はなかったと思います。相手の名前をよく覚えておこうと思います。
]]>
マカオでのオンライントーナメントの案内です。久しぶりのオンライントーナメントなので参加しようと思います。マカオなので日本との時差も1時間なので、日本からも参加しやすいトーナメントではないでしょうか?
https://mp.weixin.qq.com/s/PI-H5lbVvIO1STD07rv6og
日時:2022/4/9(土)
場所:·Lichess
試合数:7R
タイムコントロール:15分+10秒/手
タイムテーブル:
10:00(日本時間)〜
参加費:50中国元(約1000円)、タイトルホルダーは無料
連絡先:1007818544@qq.com
]]>例年通り、今年の総括です。
2021年の戦績は以下の通り。
今年は全てRapidです!
==============================
試合数:56試合(□28 ■28)
結果:(勝ち28 負け18 ドロー10)
勝率:58.9%
==============================
2021年も昨年に引き続き、コロナの影響で思うようにチェスができない1年となりました。
OTBでのゲームは広州での7戦のみで、他は全てオンラインでのゲームでした。メインはNCS Sunday Cupで、こちらは半年に及ぶ戦いの末、先日グランドファイナルが終了しました。今年、去年と違う活動としては、3月のCappelle la Grandeのオンライン大会をはじめ、少しフランス主催のオンラインblitzトーナメントに参戦してみたことです。これはこれで面白かったですが、時差が問題で、どうしても夜中にゲームをしなければいけないのは難点でした。
世界ではwithコロナを選択し、チェスイベントもコロナ以前の水準に戻ってきたように思います。日本でも少しずつOTBトーナメントが開催されてきています。来年早々にはNCS理事選も行われ、新理事による体制がスタート、変化のある1年になるかもしれません。
私自身はと言うと...
来年の大きな目標は特に今のところ思い付きません...
とりあえずマイペースにチェスを楽しみたいと思います!
まだまだ不自由な生活が続きますが、皆様、良いお年を!
※写真は今年の私の思い出です。チェスは関係ありません。
]]>
先日のNCS Sunday Cup Grand Finalではいくつか面白いエンドゲームが現れました。中継だと追い切れないところがあったと思いますので、少し解説を加えたいと思います。
まずは私のゲームから。
Baba,Masahiro – Nanjo,Ryosuke
NCS Sunday Cup Grand Final 2021
position after 49.Bxf5
[難解な中盤を経て、このエンドゲームに到達しました。まず、結論としてこれは黒勝ちのエンドゲームであり、私も知っていました。いつかこのエンドゲームが現れた時に備えてちょうど2週間前に全く同じエンドゲームをCarlsen-Anand, Morelia/Linares 2008で復習していましたが、残念ながらビショップ側を持つことになるとは... 白の唯一の希望は50手ルールです。]
49...Rb2
[まずは白キングをバックランクに縛り付け、このあと黒キングをゆっくりg3まで進めていきます。]
50.Kg1 Ke7 51.Kf1 Kf6 52.Bg4 Ke5 53.Bc8 Kf4 54.Ke1 Kg3 55.Kf1 Rf2+!
[重要なチェック。56.Kg1? だと56...Rc2! でビショップに当てつつRc1#の狙いもあるのですぐに黒勝ちです。]
56.Ke1 Rf7 57.Ke2 Re7+ 58.Kf1 Rc7 59.Bg4 Rf7+ 60.Ke2 Rf4 61.Ke1?
61...Kg2
[ここは61...Rxg4! 62.hxg4 Kg2! ですぐに黒勝ちです。60...Rf4はこの黒勝ちのポーンエンドゲームに持ち込むための1手であったはずが、お互い見逃していたのは奇妙です。]
62.Bc8 Re4+
[これで白キングはeファイルでカットされます。そしてこれが黒勝ちのメソッドで、黒はできるだけ遠くに白キングを追いやってからh3のポーンをルークで取れば勝ちです
63.Kd2 Kf2 64.Kd3 Re8 65.Bf5 Kg3 66.Kd4 Kf4 67.Bg4 Rd8+
[こうして白キングはdファイルでカットされました。結論として、dファイルでカットできれば、これ以上白キングを遠くに追いやる必要はなく、あとはh3のポーンに向かえばOKです。]
68.Kc3 Kg3 69.Kc2 Rd4 70.Be6 Kf4
[もちろんこの手も勝ちを逃すわけではありませんが、70...Rd6 71.Bf5 Kg2 72.Kc3 Rf6 73.Bg4 Rf4で、次に...Rf3+から...Rxh3が防げません。]
71.Bg4 Ke5 72.Bf3 Kf4 73.Bg4 Ke3 74.Be6 Rd2+ 75.Kc1 Ke2 76.Bf5 Ke1 77.Bg4 Rd4 78.Be6 Rd6 79.Bf5 Rc6+
[さらに白キングは遠くに追いやられました。あとは黒キングがh3に向かい、ルークでh3を取ってゲームセットです。]
80.Kb2 Kf2 81.Bd7 Rc7 82.Be6 Kg2 83.Bf5 Kh2 84.Kb1 Rc3 85.Kb2 Rxh3! 0–1
次はフォートレスかと思われたゲームです。
Tran,Thanh Tu – Scott,Tyler
NCS Sunday Cup Grand Final 2021
position after 67.Kf4
[白は両ポーンを守りながらf5で黒キングをカットオフし、さらに黒のhポーンも進めないようにして一見面白いフォートレスを築いたかのように見えました。しかし、結論から言うと、これはフォートレスになりません。しかし、黒が目指す形が難しく、勝ちまでの道のりは長いです。]
67...Qf1+
[本譜もまだ黒勝ちですが、ベストは67...Qg2! です。白はg4のポーンを守りつつキングを動かす手がありません。そうなると、白はルークを動かすしかありません。(aポーンを突いたりすると、...Qf1+からすぐに取られます。)例えば、68.Rh5 (68.Re5+ Kf6 69.Rf5+ Kg6 70.Rh5 Qf2+ 71.Ke4 Qg3! はg4ポーンを落として黒勝ち) 68...Qf2+ 69.Ke4 Qg3!
ANALYSIS DIAGRAM
この手がカギとなります。そして、注目すべきはh6のポーンを捨てて黒が勝つということです! 実戦ではなかなか最後に残った自分のポーンを捨てる判断をするのが難しいですが、実際、これが黒の勝ち方です。
70.Rxh6+ Kf7 71.Kf5 Qd3+!
ANALYSIS DIAGRAM
72.Kg5□ (他の手はルークが落ちる) 72...Kg7! 73.Rh5 Qg3! (またしてもこの手!)
ANALYSIS DIAGRAM
74.Kf5 Qf3+ 75.Ke5 (75.Kg5 Qf6#がポイント) 75...Qxg4
ANALYSIS DIAGRAM
これで黒が勝ちに近づきました。このあと、aポーンを落としに行き、最後はQ vs Rのエンドゲームを50手ルールに引っかからないように指して黒勝ちです。チェスはハードです! 本譜は勝ちのプランを見つけるには十分な時間がなく、パペチュアルとなります。]
68.Kg3 Qe1+ 69.Kh3 Qh1+ 70.Kg3 Qe1+ 71.Kh3 ½–½
このエンドゲームから学べる大事なことは、Q vs Rのエンドゲームでは、Q側は...Qg2や...Qg3に見られるように、チェックよりキングの逃げ道を抑えたり静かに後ろから近づいたりする手のほうが強いということです。
Let‘s enjoy Christmas night with some endgames!
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12/19は予選を勝ち抜いた6名によるNCS Sunday CupのGrand Finalでした。
予選にシードはなく、参加者全員が同じ条件で6回予選を戦うため、番狂わせは起こりにくかったと思います。結局、タイトルホルダーは皆、Finalに残っていました。(さらに6人中4人は昨年のGrand Finalと同じ顔ぶれ)
今回、IM南條遼介くんがプレーヤーとして加わり、Finalのレベルも上がりました。南條くんの予選での戦績は圧倒的だったので、「誰が彼を止めるか」というのも注目点だったと思います。
私の最終結果は1勝2敗2ドローで4位でした。
レイティング通りの結果だったので、客観的に見れば可もなく不可もなくといったところでしょうか...
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Yamada,Kohei (FM,2161,JPN)
NCS Sunday Cup Grand Final 2021(1)
[グランプリ予選とJapan Openでの山田弘平くんのパフォーマンスは素晴らしく、この1戦をどう戦うか悩みました。]
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4
[今回、私の昔のレパートリーのSozin Attackを指すことに決めていました。Sozin Attackは2008年Dresden Olympiadでのテーマであり、出場した9戦のうち4戦がこのオープニングでした。(白3戦、黒1戦) その後、しばらくした後、Najdorfに対しては6.Bg5をメインに指すようになりましたが、今回、昔の記憶を掘り返すことにしました。]
6...e6 7.Bb3 b5 8.0–0 Be7 9.Qf3 Qb6 10.Bg5!? Nbd7
[10...Qxd4? には11.e5! があります。Sozin Attackで白がクイーンをf3にセットしたとき、この手は要注意です。]
11.Rad1 b4 12.Na4 Qb7
[...Qb6から...Qb7に下がるアイディアはこのラインでポピュラーですが、b7とd7に駒が居座っているので、黒は白マスビショップを展開するのが難しいのが難点です。]
13.Rfe1 0–0 14.Qg3 Ne5?!
[ここで準備を外れました。準備していたのは14...Re8で、おそらく...Nf8、Bd7と組み替えられれば黒としては問題解決です。なので、白はf4からアグレッシブにポーンを突いていく必要があります。]
15.f4
[この手を指す前、しばらく考えました。15...Nxe4に対して答えを出すのに時間がかかったからです。実際は15...Nxe4? には、16.Rxe4 Bxg5 (16...Qxe4 17.Bxe7+–) で17.Ree1! とすれば、ポーンフォークが残るので白のピースアップとなります。この素直にルークが下がる1手を見つけるのに時間を要しました。]
15...Nc6 16.Nf3
[ここは少し迷いましたが、ナイトを引く手を選択しました。おそらく16.Nxc6 Qxc6 17.e5 dxe5 18.fxe5 Nh5 19.Qg4 Bxg5 20.Qxg5 g6 21.Rd4で白満足で、客観的に見てもこちらがベストな選択だったと思います。]
16...Kh8 17.e5 Ne8?!
[これはパッシブすぎました。ただ、17...dxe5 18.fxe5 Nd7 19.Bf4としても黒は白マスビショップをどう展開するか問題は残ります。]
18.Bxe7 Qxe7 19.Nb6
[これで白は端ナイト問題を解決できました。]
19...Rb8
[19...Qa7 20.Qf2なら白は問題ありません。]
20.Nxc8 Rxc8 21.f5!
[タイムリーにセンターの2ファイルを開きます。]
21...dxe5 22.Nxe5 Qc5+ 23.Kh1 Nxe5 24.Qxe5?!
[ここはクイーン交換でも良いかなと思ってクイーンで取り返しましたが、24.Rxe5のほうが確実にe6のポーンを取れるので、ルークで取り返すべきでした。]
24...exf5?
[時間切迫でのブランダー。24...Qxe5 25.Rxe5 exf5なら黒はまだ持ちこたえることができます。ただ、ディフェンスが続き、面白くはないポジションです。]
25.Qxc5 Rxc5 26.Rd8 1–0
[ナイトを守ることができないので黒ここで投了となりました。]
優勝は5連勝で南條くんでした。
そして結局、誰も彼を止めることはできませんでした!
大会実況は以下のリンクから。
【早指し日本一決定戦】NCSサンデーカップ グランドファイナル 2021.12.19 - YouTube
解説に携わった皆様方もお疲れ様でした! 大会実況あってのNCS Sunday Cupでした。
来年、同じようにRapid Leagueがあったら、またプレーしたいと思っています。
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11/14はNCS Sunday Cupのグランプリ予選最終戦でした。グランプリ・ファイナルに向けて当落線上にいる私にとっては特に重要なラウンドです。
□Nakamura,Naohiro (2111,JPN)
■Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
NCS Sunday Cup GP6 2021(4)
1.c4 e5 2.Nc3 Nf6 3.Nf3 Nc6 4.g3 Bb4 5.Bg2 0–0 6.0–0 e4 7.Ng5 Bxc3 8.bxc3 Re8 9.f3 e3!?
[このポーンの突き捨てはKasparov-Karpov Sevilla 1987のマッチで有名になりました。白がdxe3と取ったら白のポーンは崩れ、c3、c4のポーンが格好のターゲットになります。本譜のように取らない場合は、e3に突き刺さったポーンが白がセンターを制圧するのを妨げます。]
10.d3 d5 11.Qa4 h6 12.cxd5 Nxd5 13.Ne4 f5 14.Nc5 f4!?
[白の白マスビショップを自由にさせないよう、抑え込む1手です。ここまでNakamura-Aronian Saint Louis 2017のゲームと同様で、この...f4のアイディアを試してみました。]
15.Bb2 fxg3
[せっかく…f4で白ビショップを抑え込んだのをすぐに解消するのはもったいないように見えますが、私の頭の中には白キング前を少しでも弱くして、ダイレクトにアタックするプランがありました。一般的な黒のプランとしては、...Rb8から...b5と突き、ルークをRb6→Rg6と回すのと、ナイトは...Nde7から...Nf5として、できるだけ長く白マスビショップを抑え込むのが良いプランとされています。]
16.hxg3 Qg5 17.Ne4 Qg6 18.Qd1 Nf4!
[思い切ったこのナイトの飛び込みは、g6にクイーンをセットした時点での狙いの1手でした。]
19.gxf4?
[次に...Rxe4から...Qxg3が決定的なので、g3を守るかナイトを取るかの選択ですが、本譜は敗着でした。g3を守る19.Qe1が正解で、これに対しては19...Bh3 20.Bxh3 Nxh3+でナイトを残してアタックを続けようと考えていました。]
19...Rxe4!
[...Nf4と合わせたコンビネーション。ダイレクトな19...Bh3も考えましたが、20.Ng5□ Bxg2 21.Qb3+! があり、21...Kh8 22.Kxg2で、22...hxg5? には23.Rh1+があるので黒はピースを取り返せません。(この場合、黒のベストは22...Re5からのパペチュアルチェック)
本譜はQb3+! のような返し手が無く、20.fxe4ならば20...Bh3 21.Rf2 exf2+ 22.Kxf2 Qxg2+で単にピースアップとなります。]
20.Kh2 Rxf4 21.Qe1 Qg5
[Qg3を防ぎます。22.Qg3?? Rh4+]
22.Rh1
22...Bf5
[ここはスタンダードなプランに沿って22...Ne7も強いですが、私はa8のルークをなるべく早く...Re8–e6–g6でアタックに参加させたいと考えていました。]
23.Kg1 Ne5 24.c4
24...Nxf3+??
[この手自体も悪いですが、さらに悪いのはこの手でナイトを捨てていることに気付いていなかったことです。24...Re8と指して、...Ng6-Nh4-Re6-Rg6とゆっくり駒を白キングに向けて集めていけば良かったでしょう。]
25.exf3 Rxf3 26.Qh4 Rg3 27.Qxg5 Rxg5 28.Re1 Re8 29.Bc1 Bxd3 30.Rxe3 Rxe3 31.Bxe3
[ここでようやく黒のピースが1つ足りないことに気が付きました! 単にポーンアップだと思って指していましたから、事実に気付いた時はだいぶショックでした... ここからはドローを目指して戦うことに。]
31...Ra5 32.Bxb7 Bxc4 33.Rh2 Rxa2
[気をつけなければいけないのは、33...Bxa2?? 34.Rxa2 Rxa2 35.Bd5+]
34.Rxa2 Bxa2 35.Bxa7 Kf7 ½–½
[ここで私からドローオファーしました。黒のポーンがプロモーションすることはないですし、ポーンが全て落ちても勝負のつくマテリアル・バランスではありません。]
結果的に予選は通過したので、来月のグランプリ・ファイナルに準備して臨みます。
大会実況は以下のリンクから。
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近年のトップレベルのゲームを見ていると、1.e4に対する受けは、1...c5に取って代わって1...e5が第一選択肢になってきたように思えます。これは、一時の流行なので、また主流が変化する可能性は十分あります。にもかかわらず、1.e4プレーヤーにとって、1...e5は避けては通れない重要なオープニングです。
1...e5に対して白黒いくつか選択肢がありますが、その中でRuy Lopezが最も古典的で多くのプレーヤーに愛用され続けてきました。Ruy Lopezは1.e4の中で最も王道と言えます。
なぜRuy Lopezが王道なのか?
理由は定かではありませんが、「ナイト・ビショップを展開してキャスリングしてルークを中央に置いて他のピースを展開してからセンターで開局」という流れが、チェスの最も基本的なオープニングのルールに即しているからではないかと推測しています。
今年発売されたCaruana's Ruy Lopezは、現役のトッププレーヤーであるGM Caruanaが自身の薦めるラインをオープンにするという衝撃的な1冊です。1.e4のレパートリー本では、GM Negiのシリーズが有名で多くのプレーヤーに愛用されていますが、Negiはプロのプレーヤーをリタイアしている身なので、自身の薦めるラインをオープンにするのは納得できますが、Caruanaの場合そうではありません。それでもこのタイミングでCaruanaが本を出版するというのはどういう意図があるのか、非常に興味深いところです。(ちなみにCaruanaは実戦では自書で薦めるライン以外も指しています)
本の内容ですが、Ruy Lopezの各ラインについて、1手1手の意味と狙い・局面評価が非常に簡潔で分かりやすい説明でまとめられています。色々本を購入して読んでいると、GMでも説明が上手い下手はありますが、Caruanaは説明が上手いほうのGMだということがよく分かりました。
本書は本の副題にA White Repertoire for Club Playersとあるように、白番目線で1.e4のクラブプレーヤーを対象にしているようです。前述のNegiのシリーズは、細かいmove order、主導権のためのsacrifice、ほんのわずかなadvantageのためにクイーン交換してendgameに持ち込むなど、考え方と目指す方向がGM視点なので、果たしてクラブプレーヤーがそこまで追いかける必要があるか、追いつけるかは不明です。しかし、Caruanaの本の場合、1手1手の意味を説明する方に重点を置いているので、その点、副題のfor Club Playersというのは合っているように思います。
最後に私の興味の範疇ですが、Negiは全6冊の1.e4シリーズの最後に、1...e5の巻で締めくくろうとしています。おそらく今、執筆中だと思いますが、Caruana's Ruy Lopezが先に発売されたことにより、内容に少し影響はあるのではないかと思います。(Negiの薦める1...e5対策がまさかScotchということはないでしょうから...) Caruanaの薦めるラインに対してNegiがどういったラインを薦めるのか、非常に興味深いところです。
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10/17はNCS Sunday CupのGP5でした。今回は全6回の予選の5回目です。
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Scott,Tyler (1937,JPN)
NCS Sunday Cup GP5 2021(3)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e6
[Keres Attackへの誘い。これまで長い間、...e6のストラクチャーに対しては、Be3を指していました。Be3は...a6にも...Nc6にも対応できるmightyな1手で、早い時期からEnglish Attackを好んで指していた私にとってはこちらの方がメインの手でした。しかし、時は流れ、新たな局面を追い求め...]
6.g4!?
[こうして人生2度目のKeres Attackとなりました。]
6...h6 7.h4 Nc6 8.Rg1 d5 9.exd5 Nxd5 10.Nxd5 exd5 11.Be3 Qxh4!
[黒はこのポーンを取れます。展開を急ぎたい白にとってはこのポーンが落ちることはあまり気になりませんが、やはり1ポーンは1ポーンで、白は展開なりアタックなりどこかで埋め合わせなければいけません。]
12.Nb5!?
[ここは12.Qf3が最もpopular、12.Qe2!?はGM Negiの推奨。本譜はナイトフォーク(Nc7+)を狙う単純な1手ですが、「This is completely harmless」とのGM Dudaの評価通り、セオリーとして推奨されている1手ではありません。にも関わらず、対応には注意が必要です。]
12...Qh2?
[ルークをアタックしながらc7でのナイトフォークを防ぐ手ですが、次の白の1手でクイーンは完全にout of playになるため、良くありません。ここはNc7+を防ぐためにクイーンを戻さなければいけませんでした。クイーンを戻すマスとして、d8とe7がありますが、12...Qd8なら13.Bf4が厄介に見えます。私がメインに考えていた12...Qe7には13.Qxd5 Be6 14.Qe4でだいたいイコールということですが、黒マスビショップの進路にクイーンを置くのは少しためらうのは分かります。]
13.Rg3
[ルークを守ると共にクイーンのc7への利きをシャットダウンする明らかな1手ですが、こうなると黒が困ります。c7のマスをどう守るか、]
13...Bb4+ 14.c3 Ba5
[c7のマスは守れましたが、d6のカバーが外れたので...]
15.Nd6+ Kf8
[15...Ke7は16.Bc5が強力すぎます。黒キングは何とかg8へ逃れたいところですが…]
16.Nxf7!
[展開でリードしていて黒クイーンも戦場外な今、攻めを加速させます。そのため、黒キング前のガードを剝がします。16.Nxc8 Rxc8 17.Qxd5だと、悪くはないですが、黒キングへの具体的なアタックは見えません。]
16...d4
[黒はナイトを取ることができません。16...Kxf7 17.Qxd5+ Be6 18.Rf3+ Ke7 19.Bc5+は白勝ち。]
17.Nxh8 dxe3 18.Qd6+ Kg8
[18...Ne7? 19.Rf3+はh2のクイーンが落ちます。]
19.Bc4+ Be6!
[このディフェンスの1手を見落としていました。黒はビショップを捨ててバックランクにルークの利きを通します。19...Kxh8だったらメイトまで一直線です。20.Qf8+ Kh7 21.Bg8+ Kg6 22.Qf7+ Kg5 23.Qxg7+ Kf4 24.Qf6+ Ke4 25.Rxe3#]
20.Qxe6+ Kxh8 21.0–0–0 Qxf2?!
[黒は21...exf2でパスポーンを作り、これをプロモーションにつなげる他、望みはありませんでした。単純にポーン交換であれば駒割アップの白が勝つのは難しくありません。]
22.Qxe3 Qxe3+ 23.Rxe3 Bb6 24.Re2 Rf8 25.Rd7 Bd8 26.Kc2 b6 27.Bd5 Nb8 28.Rxa7 Bf6 29.Rb7 g6 30.a4 h5 31.gxh5 gxh5 32.Re6 Na6 33.Rbxb6 Nc7 34.Rxf6 1–0
大会実況は以下のリンクから。
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9/13はNCS Sunday CupのGP4でした。気付けば予選も後半戦で、本選に残るためにはそろそろGPポイントが欲しいところです。今回は前々回と同様に解説ゲストにIM池田惇多くんを迎えての実況解説。池田くんが今回最も印象に残ったと話す次のゲームを紹介します。
□Yamada,Kohei (FM,2131,JPN)
■Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
NCS Sunday Cup GP4 2021(3)
1.e4 c5 2.Nf3 Nc6!?
[いつもの…d6ではなく…Nc6を選択。3.d4だったらどうしたかは秘密!]
3.Bb5 d6
[Moscow Variationにトランスポーズ。このあと双方、オーソドックスに展開を進めます。]
4.c3 Nf6 5.Qe2 Bg4 6.h3 Bh5 7.d3 e6 8.Nbd2 Be7 9.Nf1 Qc7 10.g4 Bg6 11.Ng3 a6 12.Ba4 b5 13.Bc2
13...d5 14.e5 Nd7 15.Bf4 b4 16.0–0 0–0
[白のショートキャスリングを見て黒もショートキャスリング。]
17.Ba4!? bxc3 18.bxc3 Rab8
[唯一黒が主導権を主張できるのはクイーンサイドなので、ここを起点に反撃の準備。]
19.Rfe1 Rb6
[bファイルにルークを重ねてb2への侵入を狙います。]
20.h4 h6 21.h5 Bh7 22.Bxc6 Qxc6 23.g5 hxg5 24.Bxg5
24...f6!
[おそらくこのゲームでのベストムーブ。黒はe6を弱点にする代わりにfファイルを開き、2ビショップの力を引き出し、double-edgedなポジションを目指します。白のキングサイドからのアタックが速いので、bファイルにルークを重ねるプランをやめ、本譜のプランを選択しました。]
25.Bh4?!
[ビショップはこの位置ではmisplacedです。私がメインに考えていた25.exf6 Bxf6だったら非常にシャープな戦いになります。]
25...Rf7 26.d4 Bf8 27.exf6?! gxf6!
[キングサイドの主要なマスをこのポーンでしっかり押さえ、白のキングサイドの3つのマイナーピースは一時的にout of playになります。]
28.Kh2 Bd6 29.Kh1
[29.Qxe6?? Bxg3+]
29...Bc7 30.Rg1 Kf8
[黒キングはこのマスが一番安全です。]
31.Rae1 Qd6 32.h6?
[ここは32.Nf1! からBg3のピースの組換えが必要でした。]
32...Qf4
[クイーンを白キングに近づけ、ここから最後のアタックを作り出します。]
33.Qe3 Qg4 34.dxc5 Be4!
35.cxb6
[35.Nxe4 Qh3+ 36.Nh2 Qxh2#もしくは35.Kg2 Bf4! 36.cxb6 Bxe3 37.Rxe3 Ne5で黒勝ちです。]
35...Bxf3+
[35...Qh3#を見逃しましたが、勝敗には影響ありません。]
36.Rg2 Qh3+ 0–1
続くR.4のゲームではちょっとしたコンビネーションが現れました。
Baba Masahiro –Furuya Masahiro
NCS Sunday Cup GP4 2021/09(4)
position after 24…Kh7
25.Nhxf7!
[アタック開始!]
25...Rxf7 26.Bxg6+ Kg7 27.Bxf7
27...Bxg1 28.Rxg1 Rh8
[28...hxg2+ 29.Qxg2+ Kf8 30.Qg7+は白勝ち。]
29.gxh3+
[ロングダイアゴナルを開ける怖い1手ですが、黒に...Nf4のディスカバードチェックのタイミングが無ければ問題ありません。果たして白のアタックは続くのか?]
29...Kf8
30.Ng6+! Kg7□
[30...Kxf7 31.Nxh8+ Kf8 32.Bh6+はメイトを防ぐのに黒はクイーンを挟まなければいけないので、ゲームセット。]
31.Nxh8+ Kxh8
[31...Kf8 32.Bh6#がポイントです。黒は攻めを受け切ったかのように見えますが...]
32.Rg8+!!
[ナイトの利きをh5のマスからそらすためだけのルーク・サクリファイス! 勝ちへのオンリームーブです。]
32...Nxg8
[キングが避ける32...Kh7には、33.Qd3+で次にメイト。]
33.Qh5+ Kg7 34.Qg6+ Kf8 35.Qxg8+ Ke7 36.Bxd5
[シンプルにナイトを取ってピースアップ。池田くんの指摘したトリッキーな...Qc4に対しては、Qe6+からBa5+でフィニッシュ。]
1–0
最終ラウンド、Tuさんに負けましたが、2位でGPポイント7を獲得。暫定順位も少し浮上しました。
大会実況は以下のリンクから。
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8/22はNCS Sunday CupのGP3でした。今回は全6回の予選の3回目です。そろそろ安定した成績が欲しいところですが、なかなか思うようにいきません!
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Nakamura,Naohiro (2111,JPN)
NCS Sunday Cup GP3 2021(2)
1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 Bf5 5.Ng3 Bg6 6.h4 h6 7.Nf3 Nd7 8.h5 Bh7 9.Bd3 Bxd3 10.Qxd3 e6 11.Bd2
[以前は11.Bf4をよく指していましたが、最近は11.Bd2にシフトしました。f4に出したビショップはd2に引くことも多いので、11.Bd2と指した方が考えることは少ないです。]
11…Ngf6 12.0–0–0 Be7 13.Kb1 0–0 14.Ne4 Qb6
[ここは14...Nxe4 15.Qxe4 Nf6 16.Qe2 Qd5 17.Be3がメインラインで、ほぼそこまではノータイムで進むことが多いです。本譜の14...Qb6は初めて見る手で、どう対応すべきか考えました。15.g4 Nxg4 16.Rhg1(Rdg1) f5はそのあとに手が続くかはっきりしなかったので、やめました。白の目標は黒の王手がどうあれ、g2-g4-g5とキングサイドを開けることです。]
15.Nxf6+ Bxf6?!
[ここは15...Nxf6と取り返す1手でした。d7のナイトはf6以外、良いマスがありません。]
16.g4 Nc5
[b2でのメイトがあるため白がdxc5と取れないのを利用し、ナイトが跳び出します。次に...Na4の狙いもあり、少し白キング前が怖いようにも見えますが、b3で受けるとそれ以上黒にはありません。さらにa4に跳んだナイトは戻るルートが無く、黒はピースダウンの危機となります。...Na4が怖くなければ17.Qa3のような手は必要なく、クイーンはキングサイドアタックに加担できるポジションに置くべきです。]
17.Qe2!
[カロカンのメインラインではe2が白クイーンにとってベストポジションであることが多く、この場合も当てはまります。そして、ここで重要なのは黒ナイトをe4に跳ばさないことです。]
17...Rfd8 18.b3
[d4のポーンを捨てますが、dファイルをコントロールできるので、十分代償があるように見えました。]
18...Bxd4 19.Nxd4 Rxd4 20.Be3 Rxd1+
[20...Rd5には、21.Qc4でRxd5とb4のダブルスレットです。このQc4があるのが17手目にe2にクイーンを引いたメリットの1つです。]
21.Rxd1 Ne4??
[これは勝負を決定づけるブランダーでした。ただ、c5ナイトのピンを外すのが難しく、簡単に間違いが起こるポジションです。黒が駒損しないためには21...Qa5ですが、dファイルのコントロールとマイナーピースの差があり、さらに白にはg4-g5からのキングサイドアタックがあるため、1ポーン損しているものの、形勢は白有利です。]
22.Qc4!
[クイーンとナイトのダブルアタックで駒得確定。22.Bxb6 Nc3+ 23.Kb2 Nxe2 24.Be3でナイトをトラップする手も考えましたが、24...f5 25.gxf5 exf5 26.Re1 f4で黒はナイトを救助できます。]
22...Rd8 23.Bxb6
[23.Rxd8+ Qxd8 24.Qxe4がシンプルです。もちろんこれは分かっていましたが、単にピースアップするか、本譜のようにQ vs Rの駒得にするかの選択で、後者を選んだのでした。]
23...Rxd1+ 24.Kb2 Rb1+!
[この手は少し軽く見ていて、次に…Nd6から…Nb5+があるのを見ていませんでした。b6のビショップが取られてQ vs RNの駒バランスになるかと思いきや、Q vs Rの駒得をキープできる筋を発見しました。]
25.Ka3 Nd6 26.Qd3 Nb5+ 27.Kb4 axb6 28.c4
[26手目でQd3としたポイントで、ナイトとルークのダブルアタックでどちらか一方を取り返せます。]
28...Nd4?
[見落としでしょうが、28...Rb2としても黒には十分な反撃はありません。]
29.Qxb1 c5+ 30.Kc3 Ne2+ 31.Kd2 1–0
大会実況は以下のリンクから。
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本日はNCS Sunday CupのGP2でした。思えば前回のSunday Cup以来、全くonlineでゲームをしていませんでした。今回、解説のゲストにIM池田惇多くんを迎えての実況解説。詳細に実況してもらった次のゲームに解説を加えました。
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Hirao,Satoshi (1958,JPN)
NCS Sunday Cup GP2 2021(4)
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Nf6 4.0–0 Nxe4 5.d4
[今回はBerlinに対して真向勝負。クイーンレス・ミドルゲームのメインラインを選択。]
5...Nd6 6.Bxc6 dxc6 7.dxe5 Nf5 8.Qxd8+ Kxd8
[Berlinの難しさは、白黒目指す形がこれといってないことだと思います。どう手を進めるのか、手の作り方がとても難しいオープニングです。]
9.h3 Bd7 10.Nc3 h6 11.Bf4 Kc8 12.Rad1 Be7 13.g4 Nh4 14.Nxh4 Bxh4 15.Kg2 Be7 16.Bg3 g5
[f2-f4を止める良い1手ですが、私はここで16...h5をメインに考えていました。]
17.f4 gxf4 18.Rxf4 Be6 19.Ne4 b6 20.Rdf1 Kb7
21.Rxf7!
[fファイルにルークを重ねた時点でこの手しかないという明らかなエクスチェンジ・サクリファイスですが、正しいサクリファイスです。このあと、Nd6+、Nf6、e6など白に様々な手が生まれます。]
21...Bxf7 22.Rxf7 Rhe8 23.Nd6+?
[これはちょっとストレートすぎました。23.Nf6や23.Rh7など他の選択肢のほうがベターでした。]
23...cxd6 24.exd6 Rad8 25.Rxe7+ Rxe7 26.dxe7 Re8
[ここでBh4とパスポーンを守り、次にBf6-h4-g5などキングサイドのポーンを突いていく手も考えましたが、少しスローに感じました。黒はKc7-Kd7-Ke6で白のパスポーンを十分止めに行く時間があります。そこで、次の手を考えました。]
27.Bf4!? h5
[27...Rxe7 28.Bxh6でキングサイドに2パスポーンを作り、28...Re2+ 29.Kf3 Rxc2 30.Bg7としたあと、h、gポーンを突いていくのが私の狙いでした。これで勝てるかは分かりませんが、eポーンよりg、hポーンのほうが黒キングから遠く、黒が止めに行くのが難しいと判断。]
28.Bg5 hxg4 29.h4!
[29.hxg4と取り返してe、gにパスポーンを作るよりe、hとなるべく離してパスポーンを作ったほうが黒は止めにくいのを見越した、狙いの1手です。]
29...Kc7 30.Kg3 Kd7 31.Kxg4 Ke6
[黒キングはタイムリーにe6に到着し、白キングのf5からの侵入を防ぎました。まだ明らかな勝ちの手順は見えませんが、白のほうが指しやすいと思っていました。]
32.h5 c5 33.h6 c4 34.Kf4 a6 35.a4
[a6よりb5にポーンの根元があったほうが白から落としにいきやすいので、クイーンサイドのポーンを1つ換えにいくことにしました。]
35...b5 36.axb5 axb5 37.Ke4
[キングサイドは膠着状態なので、クイーンサイドのポーンを落としにいきます。]
37...Rh8 38.Kd4 Kf5 39.Bd2?
[39.Bh4 Ke6 40.Ke4で黒はツークツワンク。もし黒ルークがhファイルから離れたら、白はBg3–Be5で勝てます。ただ、40...Kf7 41.Bg5 Kg6 42.Kf4だと白勝ちらしいですが、まだ具体的にどう勝つか理解していません!]
39...Ke6 40.Kc5 Kxe7 41.Kxb5 Rc8?
[ほんの1マスの差が勝敗を分けます。41...Rb8+! 42.Kxc4 Rxb2はまさかのtablebase drawでした。例えば、43.Kd3 Rb1 44.c4 Rh1 45.Ke4 Kd6=]
42.Bc3! 1–0
[h7-h8で白のプロモーションが止まりません。最後、ドローチャンスを与えてしまいましたが、ゲームを通じて比較的よく白のBerlinをハンドリングできたゲームだと思っています。]
大会実況は以下のリンクから。
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6月よりNCSのRapid Onlineトーナメントが始まりました。昨年はNCS Rapid Online Championshipという名前で開催されたRapid Onlineトーナメントですが、今年は名を変えNCS Sunday Cupになりました。大会の形式自体はほぼ変わっていません。
プレーヤーは以下の選考を抜けた20名。
(1) NCS Rapid Online Championship 2020 決勝進出の 6名
(2) 2021年4月1日発表のNCSレーティング上位順で参加希望の8名(辞退の場合8名まで繰り下がる)
(3) オープン予選を勝ち上がった 6名
私は(1)での参加となりました。
今回はゲーム内容に乏しく、選べるものが無かったので、エンドゲームの部分だけ切り出して解説を加えたいと思います。
Baba Masahiro – Shiomi Ryo
NCS Sunday Cup GP1 2021/06(4)
position after 74…b1Q
[黒ポーンのプロモーションを止める術を間違え、このエンドゲームになりました。もちろん黒勝ちですが、少しトリッキーです。白の希望はナイトフォークとステールメイトです。]
75.Ne6 Kb4 76.c5 Qd3+ 77.Kc6 Qc4 78.Kd6 Qd3+ 79.Kc6 Qf5 80.Kd6 Qe4 81.c6
[cポーンをここまで進めることができました。黒はキングでこのポーンを追いかけます。]
81...Kb5 82.Nc7+ Kb6 83.Nd5+ Ka7 84.Ne7 Qb4+ 85.Kd7 Qd4+ 86.Kc8 Qd6 87.c7 Qe6+
[87...Qxe7??はステールメイト!]
88.Kd8 Qd6+ 89.Kc8 Kb6 90.Nd5+
[90...Qxd5! 91.Kb8 Qb7#があるのでダメですが、他に手はありません。最後のチェックメイトまで指すかなと考えていましたが...]
90...Kc6?! 91.Kb8
[ここでRapidにありがちなちょっとした事件が起きました。]
91...Kxd5?
[この手を見てここまでの足掻きが報われたように思えました。c7のポーンを取らせてのステールメイトの形が実現するからです。91...Qe5! で1手待つのが正しく、これだと白はツークツワンクになります。92.Ka7 Qa1+! 93.Kb8 Qb2+で白はメイトを防ぐにはナイトを捨てるしかありません。(94.Kc8には94...Qh8#)]
92.Kb7 Qe7
[白キングがa8に逃げ込んでc7のポーンをクイーンに取らせればステールメイトで、当然私はこれを目指していたわけですが...]
93.Kb8??
[ここでKa8でもKb8でもステールメイトでドローになると考えていたのが間違いでした。正解は1つだけ、93.Ka8! でした。]
93...Kc6 94.c8Q+ Kb6!
[この有名な形が盤上に現れました。b8でなく、a8にキングがいれば、ここでQb8+で逃れることができたのですが...]
95.Qd8+ Qxd8# 0–1
大会実況は以下のリンクから。
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5/16(土)、YouTubeのNCSチェス講座でゲスト講師をやらせてもらいました。
今回はNCS登録者1000人突破&開設1周年ということで特別企画でした。
表題の通り、名局の解説ということでしたが、なかなか解説するゲームが決まらず。悩んだ挙句、私がチェスを始めた初期からよく知っているKarpov-Kasparov World Championship 1985の第4ゲームを扱うことにしました。
このゲームは”White Key Symphony”として知られ、Karpovの白マスの戦略の上手さが特に際立つゲームです。ただ、見どころはそれだけではなく、序盤、積極的に指すKasparovに対して大きく攻めに出ないKarpovの忍耐強さ、40手目の封じ手を超えてからのKarpovの繊細な手を絡めつつ徐々に黒キングを追い込んでいく様、Kasparovの驚異的なディフェンス力、最後のKarpovの華麗なタクティクスからのメイティングアタックなど、本当に見どころの多い名局中の名局(名曲)です。
どうしても見どころが多いので、当初1時間〜1時間半で終わらせようと思っていた講座が2時間半を超えてしまいました!
アーカイブが残っていますので、ぜひご視聴ください。チェスプレーヤーの必修科目です(笑)
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最近は月1のペースでOnline Blitzに参戦しています。今回はEurope Echecsの主催するBlitz大会で、形式は3月のCappelle Blitz、4月のC'Chartres Blitzと同様の3分+2秒/手の11Rスイス式です。
はじめ、全部で172名のエントリーがありましたが、実際プレーしていたのは162名でした。私はスタートランク32位で、今回もShirov、Kamskyといったビッグネームも参戦していました。このBlitz大会に参戦する最大の意義は、少し勝ち進めばこのようなビッグネームと真剣勝負ができるところだと思います。
大会は中国時間21:00(日本時間22:00)から開始なので、夕飯時にビールを飲むか迷いましたが、誘惑に負けず禁酒! 今回は休日の夜だったので、体力も十分余っていました。
R.1、R.2を連勝し、R.3でTabatabaei(GM,2613,IRI)と当たりました。このゲームは悪くなかったのですが、最後にクイーンを取られ負け。残念。
R.4、R.5をまた連勝してR.6でShchekachev(GM,2515,FRA)に負け。これはなす術なく敗れました... このラウンドの後、10分休憩。いつも休憩後に大きく崩れるので後半戦に全力投球です。
再開後、R.7をまた下に勝ち、続くR.8はカザフスタンのIMとでした。
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Urazayev,Arystanbek (IM,2429,KAZ)
Europe Echecs Online Blitz 2021(8)
1.e4 c6 2.d4 d5 3.Nd2 dxe4 4.Nxe4 Nf6 5.Nxf6+ exf6 6.c3 Bd6 7.Bd3 Na6!?
[この手がBlitz moveなのか最新のトレンドなのかは分かりませんが、ナイトをa6からd5 or e6に持っていくのは悪くは見えません。]
8.Ne2 Nc7 9.Qc2 h5 10.Be3 Be6 11.Nf4
[黒のダブルビショップを消しにいきます。Nxe6で白マスビショップを消しても本譜のように…Bxf4で黒マスビショップが消えても白にとってはプラスだと感じました。]
11...Bxf4 12.Bxf4 Nd5 13.Bd2 b5 14.0–0 h4 15.h3 Kf8 16.a4!
[黒のクイーンサイドのポーンの形を崩しにいきます。aファイルがオープンになれば白の攻撃の起点ができます。]
16...a6 17.Rfe1 Qd7 18.axb5!
[黒から...axb5と取り返せないこのタイミングでポーン交換します。a6のポーンが黒にとって悩ましい弱点となります。]
18...cxb5 19.Be4 Rc8 20.Qd3
[少しずつ駒の位置を改善していきます。ここでやってはいけないのは20.Rxa6?? Nb4]
20...Qd6 21.Qf3 g6 22.Bxd5
[ダブルビショップは手放しますが、このナイトを消さないと突破点が無いように思いました。異色ビショップになりますが、白のほうが圧倒的にポーンの形は良いので、白に分があります。]
22...Bxd5 23.Bf4 Qc6 24.Qg4 Kg7 25.Re7 Rhe8 26.Rae1 Rxe7 27.Rxe7
[白ルークが敵陣に残り、これを利用してアドバンテージを広げる策を考えます。]
27...Rh8 28.Rc7 Qe8 29.Be3 Rh5 30.Rc8 Qe7
[30...Qe6 31.Qxe6 Bxe6には、32.Ra8! で弱点であったa6のポーンを落としにいけます。]
31.Rb8 Bc4?
[これはおそらく見落としだったでしょう。次のクイーンの侵入が決定的です。]
32.Qc8! f5 33.Qg8+ Kf6 34.Rb6+!
[ちゃんとこのチェックが見えていたのは良かったです。]
34...Be6 35.d5
[ピースアップし、残りは一本道です。]
35...f4 36.Bd4+ Kf5 37.dxe6 fxe6 38.Rb8 Rh7 39.Rf8+ Ke4 40.Qxg6+ Kd5
41.Rc8 Qd7 42.Rc5+ Kd6 43.Qe4 Rh5 44.Rxh5 1–0
ようやく上への勝利です! 次は厳しい当たりが予想されましたが...
Kamsky!!
当たりました。本物のKamsky(GM,2665,USA)です。
そして当然ですが強かったです...
ノーチャンス。
このあと、R.10の相手はレイティング1627と1000以上も下がりましたが、ここで当たるということは結構ポイントを取っているということでしょう。さらっとここまでの当たりをチェックしましたが、案の定2100+に2連勝していました。警戒はしたものの、勝つのは難しくありませんでした。
最終ラウンドはVlachos(IM,2438,GRE)と。これが一番弱かったゲームで、20手で負け。
かくして7勝4敗の7Pで、172人中24位。7Pグループの中でも上の方だったので、今回の結果は悪くなかったと思います。優勝はDeac Bogdan-Daniel(GM,2627,ROU)でした。
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労働節休暇中(5/1〜5)は中国各地で多くのチェスイベントが開かれ、ほぼコロナ前の状態に復活してきています。各地での大会の情報も入り始めてきたため、どれかに出ようと迷った末、今回、広州で開かれた1日制のラピッドトーナメントに出てきました。OTBでのゲームは2020年2月のPortugal Open以来、実に15ヶ月ぶりです!
大会会場は広州の市内中心地から30分ほど行ったところにあるホテルの離れの大ホールでした。写真では綺麗でしたが、実際行ってみるとかなり古びたホテルで、やや残念。広州はすでに30℃以上と暑く、屋外プールが開放されていました。
この大会は定級A・B、10級〜2級の子供たちのトーナメント(等級催)に加え、年齢・棋力関係なく誰でも参加できるオープンクラスの全部で12のセクションに分かれ、総勢528人の参加者が集いました。メインは子供のトーナメントなので付き添いの保護者も多く、会場周りは多くの人でごった返していて、会場内に入るのも容易ではありません。
1日で30分指しきりのゲームを7Rこなすため、朝は早く、8:30からR.1スタートでした。参加人数が多く会場内の混乱ぶりは激しく、スムーズに始まらないと思っていましたが、意外にも1分も遅れず、定刻通り開始となりました。
私の出たオープンクラスは84名の参加者で、おそらくレイティング的には私がトップだったでしょうが、ゲームが始まるとそんなに勝つのは簡単ではありませんでした。午前中のR.1〜3は3連勝したものの、R.4でメインライバルのLe Ruyet(FM,2249,FRA)に負け、この時点で優勝はかなり難しくなりました。R.5もほとんど負けだったのですが、起死回生の1手で逆転。これを勝って続くR.6も勝ち、最終ラウンドに臨みました。R.6終了時点でLe Ruyetが全勝の6Pで、後続は5人が5Pで並んでいる状況でした。
□Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
■Tang,Keran (1997,CHN)
Guangzhou 2021(7)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 Nc6 6.Bg5 e6 7.Qd2 Bd7
[ここでドローオファーされましたが、受ける理由がありません。Rauzerの...Bd7はポピュラーな変化であるにかかわらず、実戦経験は極めて少ないです。おそらく本譜では8.Ndb5の可能性があるので、7...a6を入れてから8...Bd7が正しいムーブ・オーダーです。]
8.0–0–0 a6 9.f4 Be7 10.Nf3 Qc7 11.Bd3 0–0–0 12.Rhe1 h6 13.Bh4 g5
[e5にナイトのポストを作るよくあるプランですが、ここで上手くいくかは分かりません。]
14.fxg5 Ng4 15.Kb1 Rdg8 16.h3 hxg5 17.Bxg5 Bxg5 18.Nxg5 Nge5 19.Rf1 Be8 20.Nf3 Rg6 21.a3 Rg3 22.Qf2 Rhg8 23.Rg1
[白は1ポーンアップをキープできるので、この時点で白のアドヴァンテージは固いと感じていました。]
23...Qe7 24.Ne2 Nxf3 25.gxf3 Rxg1 26.Rxg1 Rh8 27.Rg3 Qh4 28.Qg1 e5 29.Nc3 Nd4 30.Nd5 Bc6 31.Rg8+ Kd7 32.Rxh8 [32.Qg7!] Qxh8 33.Qg4+ Ne6 34.Bc4 Qh6 35.Qf5 Qg6 36.Nb6+ Ke7 37.Bxe6 Qxe6
38.Qxe6+?!
[はじめは38.Qg5+でクイーンをキープして戦うことを考えていましたが、エンドゲームでも勝てると迷いが生じました。ここでのクイーン交換はベストの選択ではなかったと思います。]
38...Kxe6 39.c4 f5 40.Nd5 Bd7 41.Kc2 Kf7 42.h4 f4!
[f3のポーンが黒ビショップのターゲットになります。]
43.Kd3 Kg6 44.b4 Bh3 45.a4?? Bf1+ 46.Kd2
[46.Kc3には46...Be2でf3が落ちます。]
46...Bxc4 47.Ne7+ Kh5 48.Nf5? d5 49.Nd6 b5 50.axb5 axb5 51.exd5 Bxd5 52.Nxb5 Bxf3 53.Nd6?
[詳しいラインは省きますが、53.Ke1! Kxh4 54.Kf2はテーブルベースドローです。]
53...Kxh4–+ 54.b5
54...e4?!
[54...Bd5! が黒勝ちのオンリームーブです。ビショップで白のパスポーンの進行をにらみつつ、自身のfポーンを進める準備をして黒勝ちです。]
55.Nf5+
[これで黒のパスポーンの進行を止めることができ、もう白に負けはありません。]
55...Kh3 56.b6 e3+ 57.Nxe3 Bb7
[57...fxe3+ 58.Kxe3ですぐドローだと思っていたので、この手にはちょっと驚きました。]
58.Ke2 Kg3 59.Nf1+ Kg2 60.Nd2 Kg3 61.Nf1+ Kg4 62.Kf2 Kf5 63.Nd2 Ke5 64.Nf3+ Ke4 65.Ng5+ Ke5 66.Nf3+ Kd5 67.Nh4 Kc5 68.Ng6 f3 69.Ne5 Kxb6 70.Nxf3 ½–½
[ここでアービターがドローの裁定を下しました。もちろん正しい裁定だと思います。ちなみにこの時点の残り時間は私が1分、相手が2分と私のほうが不利でした。
私の相手も結果に同意はしていたものの、アービターに少し抗議していました。中国語での会話でしたが、私は彼が何を言いたいか理解しました。最終ポジションはDead drawではなく、黒は白の時間を落とすのに指し続けることもできたはずだということです。今まであまり考えたことはありませんでしたが、KN vs KBは理論的にN側もB側もどちらも相手の助けがあればメイトにできます。(例えば白:Kh1 Nh2 黒:Kf2 Bg2)
オンラインならばKN vs KBのMaterial balanceになった場合、即座にドローになりますが、OTBでは勝手が違います。このMaterial balanceでは、"Insufficient mating material"のルールは適用されず、どちらか一方のプレーヤーが続ける意思があった場合、ゲームは続行になるということです。もし相手が続けてきた場合、私は50手ルールでドローに持ち込むしか方法はなかったはずですが、残り1分で棋譜を取りながら50手指して50手ルールのクレームまですることは事実上不可能です。
ただ、こういうケースのためにアービターの裁定が優先となるルールでしたので、今回それが適用された形となったのでした。
実は同じような議論は前にもされており、有名なのは2008年Women’s World ChampionshipでのMonika SockoとSabina FoisorとのArmageddonのゲームです。Armageddonでは白6分、黒5分の持ち時間で、白のM.Sockoは勝たなければいけない状況でした。ゲームはKN vs KNのMaterial balanceとなり、S. Foisorはこの時点でドローのアピールをしましたが、M.Sockoは続け、S. Foisorの時間を落としました。このあと、アービターを巻き込んで大論争となりましたが、結局M.SockoのKN vs KNはメイトの形があるとのアピールが支持され、M.Sockoの勝ちが認められたのでした。]
最終的に5勝1敗1ドローで4位でした。賞金400元とメダルをもらい、記念写真に納まり終了。これはこれで良い思い出です!
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5/9(日)の日本時間22:00からEurope Echessが開催するOnlineのBlitzトーナメントがあります。3分+2秒/手の11Rで、だいたい3時間で全ゲーム終了する予定です。フランスのチェス雑誌Europe Echessは、月1ペースで賞金有りのOnlineトーナメントを開催しており、トップGMをはじめ、アマチュアから多数のタイトルホルダーまで数多くのプレーヤーが参加しています。
Open de Blitz - 9 mai 2021 - Europe Echecs (europe-echecs.com)
GWは全ての日本国内大会が中止になったので、試しにOnlineトーナメントに参加するのはいかがでしょうか?
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5/1〜5/5は中国の大型連休(労働節)で、この期間に各地で多くのイベントが開かれます。ほとんどどれも1日制のRapidトーナメントですが、今回は初めて訪れる地ということで観光も兼ねて中国南部最大の都市、広州でのトーナメントに出ることにしました。OTBでのゲームは実に1年以上ぶりになります。ローカル感漂うトーナメントですが、それはそれで経験ということで...
日時:2021/5/2(日)
場所:広州市白雲区 颐和大酒店
試合数:7R
タイムコントロール:30分SD
エントリー締切:2021/4/25
タイムテーブル:
8:30 R.1
9:40 R.2
10:50 R.3
13:00 R.4
14:10 R.5
15:20 R.6
16:30 R.7
賞金:
1位:2000元
2位:500元+298元相当チェスセット
3位:400元+298元相当チェスセット
4位:400元
5-6位:300元
7-8位:200元
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先月のCappelle Onlineに引き続き、フランスのOnline Blitzトーナメントに参加しました。形式はCappelle Onlineとほとんど一緒だったので心配事は無かったのですが、1つ大きな問題が。
フランスは3/28から夏時間になっており、3月のCappelle Onlineの時と比べて時差が1時間短くなっていました!!
たまたま早めにプレーゾーンに接続したため発覚したわけですが、「30分前にプレーゾーンに入っておけばいいや」と高を括っていたら、トーナメントに参加できなかったところでした。(2戦連続不戦でアウト)
かくはともあれ中国時間21:00(日本時間22:00)から無事にトーナメントはスタートしました。私のスタートランキングは237人中50位で今回もIvanchuk、Shirov、Kamskyといった有名GMを初め、多数のタイトルホルダーが参加していました。
前回Cappelleの時は下に取りこぼさなかったのですが、今回はボロボロ取りこぼし、最終結果は6勝4敗1ドローの6.5Pで、237人中60位。GM Yuffa(2584)とIM Sonis(2493)以外は下のプレーヤーとの対戦だったので、散々な結果でした。
内容も内容で、クイーンやルークやタダで取ったり、ルークがタダで取られたり、ただでルークを取れるのを見逃したり... まあ、土曜まで働いた後のトーナメントなのでコンディションが良い訳はなく。(コンディションのせいだったことにしたい。)
優勝はJobavaでした。
また、定期的にOnlineトーナメントが開催されると思うので、懲りずに参加を続けていきたいと思います。
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4/10(土)の日本時間23:00からOnlineのBlitzトーナメントがあります。
形式はCappelle Online Blitzと同じで3分+2秒/手の11Rです。
Open de Blitz du CChartres - 10 avril 2021 - Europe Echecs (europe-echecs.com)
面白そうなので、今回も参加しようと思っています。
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イスラエルのGM Smirinが前著King’s Indian Warfareに続いてまた名著を世に送り出しました。
King’s Indian Warfareについては、ここではBook Reviewを書いていませんが、私の読んだ本の中で間違いなく5冊に入るような名作だったので、ぜひこちらもチェックしてみて下さい。
さて、Sicilian WarfareはSmirinのSicilian Defenceのゲーム・コレクションです。King’s Indian Warfareと違う点は、Smirinが白黒両方でSicilianを指しているという点です。一見、オープニングの本にも見えますが、中身はそうでなく、純粋にエキサイティングなSicilianバトルを鑑賞、楽しむ内容に仕上がっています。
先日、Arkell’s Endingsを紹介しましたが、Arkellが駒交換して局面をシンプルにしてエンドゲームを目指すタイプのプレーヤーなのに対し、Smirinはタクティカルで非常に複雑な局面で力を発揮するプレーヤーです。同じGMでもスタイルはそれぞれ、ただ、2人ともプロとして長いキャリアがあり、その中で指してきたゲームは宝の山です。このように本にまとめ、読者と経験をシェアする機会を設けてくれて感謝しています。
本編はSmirin自身の51ゲームと+アルファで構成されていますが、どのゲームも分岐のゲームがまた面白いです。分岐のゲームも並べると、全部で100数十ゲームあり、なかなかのボリュームです。
Sicilianのゲームなので時としてあまりに難解な局面が出てくることがあります。例えば次の局面はSevian-Smirin Rockville 2016のゲームです。すでに何が何だか分からないポジションですが、ここでさらに…Nxe4! と踏み込めるでしょうか??
あるいは次の局面はKasparov-Smirin Tel Aviv 1998のゲームからですが、ここまで至るのに何があったかなかなか想像つきにくいですね?
おそらく並の2300プレーヤーだったら簡単にGMに潰されてしまうであろうポジションでも、Smirinは見つけにくいオンリームーブの連続で切り抜けてしまいます。
本書にもサンプルページがあり、Game 1のSmirin-Rytshagov戦を見ることができます。
https://www.newinchess.com/media/wysiwyg/product_pdf/8377.pdf
非常にエキサイティングなゲームで、e4プレーヤーだったら誰でもこんなゲームがしたい!と思うでしょう。
本書は決して簡単な内容ではありませんが、さらさら並べて「Sicilianってこんなもんなんだなあ〜」と思って見る程度でも良いと思います。Sicilianプレーヤーだけでなく全てのプレーヤーにおすすめの1冊です!
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Capelle la Grande Online 2021の後半はBlitz編です。
トーナメントの流れは前日のRapidとほぼ変わらず、日本時間23:00(中国時間22:00)から開始で、形式は3分+2秒/手のタイムコントロールの11Rスイスでした。ただ、Rapidよりも参加者のレベルが高く、Ivanchuk、Kamsky、Cheparinov、Jovabaなどのビッグネームをはじめ、多くのタイトルホルダーがそろっていました。そしてエントリー締め切りぎりぎりに世界女子チャンピオンのJu Wenjunも参加を表明し、オンラインのオープンブリッツ大会としてはこれ以上ないようなレベルだったかと思います。私はスタートランキング75位でスタート。
初戦勝つと、R.2でいきなりCheparinovと当たりました。
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Cheparinov, Ivan (GM,2667,BUL)
Cappelle la Grande Online Blitz 2021(2)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 h6 8.Bh4 Qb6 9.Qd2 Qxb2 10.Rb1 Qa3 11.e5 dxe5 12.fxe5 Nfd7 13.Ne4 Qxa2 14.Rd1 Qd5 15.Qe3 Qxe5 16.Be2 Bc5 17.Bg3 Qd5
18.Nxc5 Qxc5 19.O-O O-O 20.Bf2 Nc6 21.Nxc6 Qxc6 22.Bd3 e5 23.Be4 Qe6 24.Bd5 Qg6 25.Qb3 Nf6 26.Bc5 Nxd5 27.Bxf8 Nf4 28.Rxf4 exf4 29.Rd8 Be6 30.Qb6 Rxd8 31.Qxd8 Qxc2 0-1
[CheparinovのPoisoned Pawn Variationに飛び込んでいいところなく終了。]
このあと、下には取りこぼさなかったため、GMとの対戦がいくつかありました。
R.7ではCheparinovと同国のGM Enchevと対戦。
□Enchev,Ivajlo (GM,2501,BUL)
■Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
Cappelle la Grande Online Blitz 2021(7)
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.f3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nb6 6.Nc3 Bg7 7.Be3 0–0 8.Qd2 Nc6 9.0–0–0 f5 10.h4 fxe4 11.h5 Bf5?
[正しい手順を忘れていました。本譜だと12.g4!で困るので、11...gxh5でg6にビショップを引くマスを作らないといけません。]
12.hxg6? Bxg6 13.fxe4
13...Rxf1?
[白のダブルビショップを消し去りd4のポーンも良い形で落とせる、非常に魅力的に見えるエクスチェンジ・サクリファイスで、瞬時に指してしまいましたが、もっと良い手がありました。13...Nxd4! が可能で、14.Bd3 (14.Bxd4 Qxd4 15.Qxd4 Bxd4 16.Rxd4 Rxf1+がポイント) 14...Qd6 15.Nge2 Nxe2+ 16.Qxe2なら限りなく単純な1ポーンアップで黒良しでしょう。]
14.Rxf1 Nc4 15.Qd3 Nxe3 16.Qxe3 Nxd4 17.Nf3 c5 18.Nh4!
[黒の守りの要である白マスビショップを消しにいく良い手です。]
18...Qd6 19.Nxg6 Qxg6 20.Nd5 Re8 21.Rh3 Qa6?
[f1のルークとa2のポーンのダブルアタックで、かなり黒にチャンスありと楽観的に感じていました。それがものの数手後にリザインすることになるとは...]
22.Qf2! Rf8 23.Nxe7+ Kh8 24.Qxf8+! Bxf8 25.Rxf8+ Kg7 26.Rg8+! Kf7 27.Rxh7+
[なんと次にRg6+! でa6のクイーンが取られます。攻撃的で良いと思っていたa6のクイーンの位置が仇になりました。]
1–0
このトーナメントで最も思い出深いゲームとなったのは、ロシアのGM Demchenkoとの対戦でした。
□Demchenko,Anton (GM,2610,RUS)
■Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
Cappelle la Grande Online Blitz 2021(9)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Qxd4 Nc6 5.Qe3 Nf6 6.Nc3 g6 7.h3 Bg7 8.Bc4 0–0 9.0–0 b6 10.Rd1 Nd7 11.Qe2 Bb7 12.Bb3 Nc5 13.Bf4 Qc8 14.Rac1 Nxb3 15.cxb3 Qe6 16.Ng5 Qf6??
17.Nd5!
[これで黒は駒損を避けられません。16...Qd7だったらほぼイコールです。]
17...Qxb2 18.Qxb2 Bxb2 19.Rxc6 Bxc6 20.Nxe7+ Kg7 21.Nxc6 h6 22.Nf3 Rfe8 23.Nd2 Be5 24.Be3 Rac8 25.Nxa7 Rc2 26.a4 Re7 27.Nb5 f5 28.exf5 gxf5 29.Nc4 f4 30.Bxb6 f3 31.Nxe5 dxe5 32.gxf3 Kf6? 33.Be3?!
[33.Bd8! が簡単な1手ですが、ブリッツだと2600GMもこんな手を見逃します。]
33...Rg7+ 34.Kf1 Rb2 35.Rd6+ Ke7 36.Bxh6 Rf7 37.Bg5+ Kf8 38.Kg2 Rxb3 39.Bf6 Kg8 40.Bxe5 Rbxf3
[この黒がいつ投了してもおかしくないような状況で、事件は起こりました!]
41.Bf4??
[41.Bg3を指そうとしたところの明らかなマウススリップです。]
41...R3xf4 42.Rd2 Rxa4
[直前のマウススリップで相手が動揺しているだろう隙に、ここで私からドローオファーしました。実際、局面はほぼイコールで、黒が最善を指すと本譜のような1ポーンダウンのルークエンディングになります。しかし、こんな状況下でも相手はいたって冷静で、ゲームを続けます!]
43.Nc3 Ra3 44.Nd5 Rg7+ 45.Kh2 Rf3 46.Re2 Rh7 47.Kg2 Rfxh3 48.Nf6+ Kf7 49.Nxh7 Rxh7
[こうして1ポーンダウンのルークエンディングになりました。正しく指せばドローですが、実戦そしてほとんど考える時間のないブリッツでは一筋縄にはいきません。ここから長い長い我慢の時間が始まります。]
50.Ra2 Kg6 51.Kg3 Rb7 52.Ra6+ Kg7 53.Kg4 Rb1 54.f4 Rc1 55.Kg5 Rg1+ 56.Kf5 Rb1 57.Ra7+ Kf8 58.Ra6 Kf7 59.Re6 Rb5+ 60.Re5 Rb1 61.Ra5 Rb2 62.Ra7+ Kf8 63.Kg5 Kg8 64.Ra6 Kf7 65.Rf6+ Kg7 66.Rg6+ Kf7 67.Rc6 Rg2+ 68.Kf5 Ra2 69.Rc7+ Kf8 70.Kg5 Kg8 71.Re7 Kf8 72.Kf6 Ra6+ 73.Re6 Ra1 74.Rb6 Kg8!
[オンリームーブ。74...Ke8? だとなぜダメなのかは大抵のエンドゲームの教本に出てきます。]
75.f5 Rf1 76.Rb8+ Kh7 77.Ke6 Kg7 78.Rb7+ Kf8 79.Kf6 Kg8! 80.Rb5 Rf2 81.Rb1 Rf3 82.Rg1+ Kf8 83.Rb1 Kg8! 84.Rb8+ Kh7 85.Ke6 Kg7 86.Rb7+ Kf8 87.Rc7 Rf2 88.Kf6 Kg8! 89.Rg7+ Kf8 90.Rg4 Rf1 91.Kg6 Rf2 92.Re4 Rg2+ 93.Kf6 Rf2 94.Re3 Rf1 95.Rg3 Rf2 96.Kg6 Rf1 97.Ra3 Ke7 98.Re3+ Kf8 99.Rb3 Ke7 100.Rb7+ Kf8 101.Rf7+ Kg8! 102.Rd7
[ずっと白も黒も同じような手を繰り返しているにもかかわらず、3回同時局面にはなりません。Europe Echecsの対局サイトでは、同時局面が3回現れると(=Three-fold repetitionが成立すると)強制的にドローになるシステムなのは、前日のRapid最終戦のドローで分かっていました。にもかかわらず、なかなか我慢の時間が終わりません。白は同じような手を指しているように見えますが、実際はルークをbファイル、cファイル、dファイルと少しずつ変えてきながら同時局面になるのを避け、相手のミスを待ち続けています。実に巧妙な、実戦的なテクニックです。]
102...Rg1+ 103.Kf6 Rf1 104.Rd5 Rf2 105.Rd8+ Kh7 106.Rf8 Rf1 107.Ke6 Kg7 108.Rf7+ Kg8 109.Re7 Kf8 110.Rb7 Re1+ 111.Kf6 Kg8! 112.Rb8+ Kh7 113.Kf7
[ここで初めて白からf7にキングを進め、fポーンをさらに進める準備にかかりました。状況が変わったので黒は注意が必要です!]
113...Rc1!
[この手か113...Ra1しかドローになりません。(Rd1はダメです!)ルークはサイドからチェックできるよう方向転換します。]
114.Rb7 Kh6 115.f6 Rf1??
[49手目から60手以上ミスなく耐えてきましたが、ここでついに負けの手を指してしまいました。115...Ra1でサイドからのチェックを残してまだドローです。]
116.Rb2!
[黒からRa7+がなく、次にRh2+からKg7で白はパスポーンを単純にプロモーションさせられます。13分20秒にも及ぶハードなゲームはここで私の時間が落ちて終了。このラウンド、最後まで残ったボードでした。]
1–0
結局、Cheparinov(2667)、Nasuta(2512)、Enchev(2501)、Demchenko(2610)の4人のGMに負け、あとは下に全勝し、7勝4敗の7Pで最終順位は276人中61位でした。優勝はロシアのGM Fedossevで、500€の賞金を手にしました。
大会の結果やゲームは以下のサイトで見ることができます。
Capelle la Grande Onlineは予想以上に実のある内容で、眠い時間帯の中、参加した甲斐がありました。オンラインならいつでも参加できるので来年も、と思ってしまいますが、やはり実際の会場でのトーナメントは特別な雰囲気があるので、早くOTB開催ができるようにと願っています。
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多くの伝統的なオープン大会がコロナ禍で開催を見送る一方、フランスの一番有名なオープン大会はオンライン開催という形で伝統を閉ざさないようにしました。
オンラインなので通常のクラシカルとは違い、RapidやBlitzの変則的な大会形式にはなりましたが、今回、主催者から直接お声がけいただいたので、参加することに。今回、RapidとBlitzにエントリーすることにしました。エントリー費は各トーナメントともに5€で、クレジット決済できました。
3/5(金) Bullet
3/6(土) Rapid
3/7(日) Blitz
3/8(月) Women
まずは昨日に行われたRapid編です。
トーナメントは日本時間23:00(中国時間22:00)から開始で、10分+3秒/手のタイムコントロールの9Rスイスでした。はじめは7Rとの情報が出ていたのですが、当日の朝に来たメールに9Rにすると書かれており、ギョッとしました。9Rだとだいたい終了までに5時間かかるので、普段寝ている時間にプレーする自分にとっては睡魔をどう克服するかが課題でした。(結局、克服できませんでしたが!)
22:00(ここからは中国時間で表記)からR.1が開始なので、参加者は21:30までにZoomに入り、Europe Echecsのプレーゾーンで待機します。Chess.comやLichessなど慣れた場所でのゲームではないので、多少不安はあったものの、割と分かりやすいサイトで、特に問題なくプレーできました。
プレーヤーはZoomで割り当てられた部屋でアービターの監視下の元でプレーするのはAsian Nations Cupの時と同じだったので、こちらも特に問題なし。やはりオンラインの大会は一度経験しておくと次から全然違います。
ペアリングは自動的に組まれ、対戦相手が発表された後に3分間のインターバルがあり、プレーヤーたちはゲームに備えます。R.1〜R.5まではほぼノンストップ、R.5のあとに10分間の休憩がありました。そのあとR.6〜R.9まではまたノンストップです。
Rapidトーナメントの登録者は202人で、私はスタートランク37位でしたが、上の方のタイトルホルダー達が続々とドロップアウトしていったため、実質何人参加していたかは分かりません。
普段寝ている時間帯でのプレーなので、冴えわたるプレーは期待できませんでしたが、それを鑑みてもゲームの内容は良くなく、5勝3敗1ドローの41位で終了。結局タイトルホルダーとの対戦はカザフスタンのIMの1名のみで、あとはフランスの地元プレーヤー達でした!
今回はそんな中、比較的エキサイティングだったゲームを紹介します。
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Joly,Fabrice (1976,FRA)
Cappelle la Grande Online Rapid 2021(5)
1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Qb6 5.Nb3 Nf6 6.Nc3 e6 7.Qe2!?
[Keres attackとEnglish attackをミックスさせたようなセットアップを目指します。]
7...d6 8.Be3 Qc7 9.g4 Be7 10.g5 Nd7 11.f4 a6 12.0–0–0 b5 13.h4 Bb7 14.Bg2 Nb6 15.Bxb6 Qxb6 16.Rhe1 0–0 17.h5 Rfe8
18.g6
[白には他にも良い手がありますが、g5-g6やh5-h6のポーン突きはだいたい白にとってメリットがあります。]
18...fxg6 19.hxg6 h6 20.Bh3 Bc8 21.a3
[この手はいつも突くか突かないかジレンマです。突けば…b4から黒の攻めを加速させ、突かなければこれまた…b4からc3の安定した位置のナイトを追い払われます。]
21...b4 22.axb4 Qxb4 23.Kb1 Bf6 24.e5!? dxe5 25.Ne4 Nd4
[黒は黒マスビショップを取らせるのと引き換えに白キングの前のディフェンダーのナイトを消して勝負しにきました。]
26.Nxd4 exd4 27.Nxf6+ gxf6 28.g7
[安全に28.Qe4 Rb8 29.Qxd4とポーンを取り返すのがベストだろうとは分かっていたものの、これではおそらくドローなので、ちょっとギャンブルしました。]
28...Rb8 29.b3 a5 30.Qh5 Bd7 31.Qxh6 a4?
[31...Qc3なら... Rxb3+を避けられないので、パペチュアルでドローだったでしょう。]
32.Rg1 axb3 33.Qh8+ Kf7
34.g8Q+! Ke7!
[34...Rxg8 35.Qh7+! (この手がポイント!)Ke8 36.Rxg8+ Qf8 37.Rxf8+ Kxf8 38.Qh8+では黒はほとんど全ての駒を失い、ゲーム終了。黒は本譜でキングの逃亡を図りますが、2つのクイーンから逃れるのは簡単ではありません!]
35.Rg7+?!
[この手も勝ちを逃すわけではありませんが、35.Qxf6+! Kd6 (35...Kxf6 36.Qg7#) 36.Rxd4+というシンプルな手を見逃していました。]
35...Kd6 36.Rxd7+! Kc5!?
[36...Kxd7 37.c3+–]
37.c3!
[黒の最後の望みはbxc2+からの一発逆転なので、この可能性を消します。ちょっと長いですが、37...Qxc3には38.Rc7+から強制メイトがあります。(この手順はゲーム中見えていません。)37...Qxc3 38.Rc7+ Kb4 39.Qxe6 Qxc7 40.Rxd4+ Kc3 (40...Ka3 41.Qa6+ Qa5 42.Qxa5#) 41.Rd3+ Kb4 42.Qxb3+ Ka5 43.Rd5+ Ka6 44.Bf1+ Ka7 45.Ra5+ Qxa5 46.Qh7+ Ka8 47.Bg2+で黒メイト受け無し。]
37...dxc3 38.R1d5+!?
[白はいかにしてボードの隅っこにいるクイーン×2をゲームに戻すかが勝利へのカギとなります。本譜はg8のクイーンを戦場に戻すためのサクリファイスです。他にも勝ち方はあり、クイーンは2つ必要なく、1つ犠牲にするのが手っ取り早いです。例えば、38.Rc7+ Kb6 39.Qxe6+! Ka5 40.Ra7+ Kb5 41.Qa6+ Kc5 42.Rc7#など。]
38...Kc6
[38...exd5 39.Qxd5+ Kb6 40.Qxf6+ Re6 41.Qfxe6+ Qd6 42.Qexd6#(これはゲーム中見えていました!)]
39.R7d6+ Qxd6
[39...Kc7 40.Qhg7+ Re7 41.Qxe7#(これもゲーム中見えていました!)]
40.Rxd6+ Kxd6
[相手のクイーンが消え、ちょっと冷静になって局面を見てみると、白の駒得は圧倒的なので、黒キングをメイトにしにいく必要はありません。]
41.Qxe8 c2+ 42.Kb2
[ここで42.Kc1??はブランダー大賞となります。42...b2+! 43.Kxc2 b1Q+で一発逆転、黒勝ちになります!]
42...Rxe8 43.Qxe8 Kd5 44.Qxe6+ Kd4 45.Bf5 1–0
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イングランドのGM Arkellによるエンドゲーム・コレクションです。
自身の特に面白い33のエンドゲーム解説が長々とした分岐ラインを用いず、シンプルな言葉で書かれています。そのため、エンドゲームの本でよく見られる辞書のような重さは無く、全部で159ページとコンパクトな内容です。いたるところにArkellのチェス哲学もあるので、あわせて楽しめます。
Arkellはオープニングには全く興味がないが、駒数が減ってきたときの指し方には自信があると言っています。Arkellはちょうど彼の敬愛するUlf Anderssonのようなエンドゲーム・プレーヤーで、オープニングで積極的にアドヴァンテージを取りにいかず、自然な流れからほんのわずかなアドヴァンテージを見つけ、エンドゲームのフェーズで勝ち切るというプレースタイルを持っています。
読み進めてみると、それぞれのエンドゲームのアドヴァンテージがあまりにも小さく、「本当に勝てるの?」という局面が次々と現れてきます。
例えば次の3例は全て白番のArkellがほんの少し優勢なのは分かりますが、実際に勝ちに繋げられるでしょうか?
本書は「非常におすすめです」と言いたいところですが、明らかにエンドゲームの入門書ではなく、おそらくレイティング2000以上のある程度経験のあるプレーヤーでないとよく理解できないかもしれません。2000になる前の高校生の頃の自分だったら、退屈に感じ、途中で放り投げていたような気さえします。逆に本書が面白いと感じて読み進められる方は、かなりの棋力があると言って良いと思います。
サンプルページがありますので、まずこちらをチェックされると良いでしょう。
https://www.newinchess.com/media/wysiwyg/product_pdf/8369.pdf
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主催者から拡散してくれということなので、情報をアップします。今年はオンラインで開催です!
3/5(金) Bullet
3/6(土) Rapid
3/7(日) Blitz
3/8(月) Women
日本とフランスでは8時間の時差があるため、現地時間夜から開始のBulletとWomenには参加しにくいとは思いますが、RapidとBlitzは少し夜更かしすれば参加可能だと思います。私もRapidは参加してみようかと考えています。
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1/24(日)は予選を勝ち抜いた6名によるRapid Online Championshipのファイナルでした。
今回、事前にペアリングが発表されていたのと、プレーヤーとアービターはSkypeで繋がっていたのが予選と異なっていた点です。また、Lichessだとラウンドロビンのトーナメントにうまく対応しておらず、対戦場がChess.comに移されました。
結果は2勝3敗で4位と冴えませんでしたが、7月からの予選を含めたRapid Online Championshipは非常に面白い企画で、私自身もとても楽しめました。Onlineでのトーナメントが主流になっている今に沿った企画で、今後、新たなトーナメントの形として定着していくのではないでしょうか?
個人的には平尾くんとのゲームに重点を置いていました。なぜなら、予選では4連敗していたからです。予選での4戦は全て黒番で、Najdorf×2回、Dragon、Frenchを試しましたが、一瞬も優勢になることなく敗れていました...
今回も黒番。5度目の正直なるか??
□Hirao,Satoshi (1958,JPN)
■Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
NCS Rapid Online Championship Grand Final 2021(5)
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 Be7 8.Qf3 h6
[今回はこの1手をはさむことにしました。]
9.Bh4 Qc7 10.0–0–0 Nbd7
11.f5!?
[11...Bd3 g5ならBrowne Variationにトランスポーズします。このラインについては8月のPaulとのゲームを見て下さい。ここは11.Be2がメインで本譜はサブラインです。ただ、この手も想定内で、次の1手を用意していました。]
11...0–0!?
[Classical Variation(6.Bg5)で黒はキングサイドにキャスリングする、クイーンサイドにキャスリングする、キャスリングしないで戦うという3通りありますが、私の経験上、キングサイドにキャスリングすることが最も少ないです。白は早々にクイーンサイドにキャスリングしているので黒が逆サイドにキャスリングするのは「どうぞ攻めて下さい」と挑発しているようにも見えますが、最新のチェスエンジンによる詳細な解析により、黒OKだということが分かっています。]
12.Qh3
[e6にプレッシャーをかけますが、このクイーンはmisplacedに見えました。白はキングサイドのポーンを突いていきたいですが、自身のhポーンの前にクイーンとビショップがいてはhポーンを突くには時間がかかります。12.fxe6 Ne5 13.Qh3 (13.exf7+ Rxf7は白にとってややリスキー) 13...fxe6 14.Be2 (14.Nxe6?! Qa5 15.Be2 Kf7!) 14...Qd7というのがGM Negiの示すメインラインですが、やはり簡単にキングサイドのポーンは突けず、黒のクイーンサイドからのカウンターと良い勝負になると考えていました。]
12...Nc5!
[白クイーンがf3から離れたので、このナイトはe5に行く必要が無く、よりアタッキングなポジションに跳びます。c5はe4のポーンをアタックしつつe6も守るナイトのベストポジションです。]
13.Bxf6 Bxf6 14.g4 b5
[白黒双方が相手キングに向かってポーンを突き始めましたが、g5のマスは十分カバーされているので白からのg5は効果的ではありません。対して黒からの…b4はe4の守りのナイトをどかして...Nxe4と取る、ダイレクトなスレットになっています。]
15.Bg2 Bb7 16.a3 Qb6
[…Bxd4から…Nb3+でエクスチェンジアップを狙います。黒のピースは良く連携が取れていて、ほぼNajdorfの理想形と言って良いでしょう。17.Kb1で上のスレットを受けた場合は17...b4 18.axb4 Qxb4で白キングは非常に危険です。]
17.g5
[このポーンを突き捨て、e6のポーンを取りにいく手ですが、上述の…Bxd4から…Nb3+のスレットが残っているので、うまくいきません。...Bxg5+でこのスレットが消えるのはもったいないので...]
17...hxg5!
[ポーンで取り返します。キングサイドの形が崩れるのは全く問題ありません。]
18.fxe6 Bxd4 19.Rxd4 Nb3+ 20.cxb3 Qxd4 21.e7
[白はパスポーンを得ましたが、最終マスに進めるのにサポートする駒がありません。]
21...Rfe8 22.Qd7 Rab8
[落ち着いてb7のビショップを守り、あとはe7ポーンを回収するだけです。]
23.Rd1 Qe5 24.Rxd6 Rxe7 0–1
[5度目の正直!]
優勝は青嶋未来くんで、5Pの完全勝利でした!
実況中継は以下のリンクになります。
https://www.youtube.com/watch?v=8TBO-98IaQ0&t=227s
毎度、試合を実況中継してくれるというのも今回のRapid Online Championshipの売りで、解説の南條くん、篠田くんは毎回、貴重な時間を費やし、精力的に大会を盛り上げてくれました。とにかくしゃべり続けなければいけないので、おそらくプレーヤーよりもエネルギーを消費しているのではないでしょうか?
彼ら以外にもこのトーナメントを裏で支えてくれた方々がたくさんいます。Onlineなのでスタッフが一堂に会しなくても運営可能ですが、その分Onlineだからこそスタッフがその場その場ですぐに協力して対処できないため、先だった緻密な計画が必要になります。
Online時代はまだしばらく続きます。NCSでもまた次の企画があると思いますので、その時はまた参加したい思っています!
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指し初めはOnlineですが、最近3/2をやめて10/0のタイムコントロールでプレーすることにしました。10/0だと考える時間があり、ゲームのクオリティーが上がります。昨日はオーストリアのIMにうまく勝ちました。
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Schnider,Gert (IM,2416,AUT)
Lichess Rapid 2021/01
1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.Ngf3 cxd4 5.exd5 Qxd5 6.Bc4 Qd7
[最近はd8やd6でなく、d7にクイーンが下がるのがFrench Tarraschで流行りになっています。]
7.0–0 Nc6 8.Nb3 Nf6 9.Nbxd4 Nxd4 10.Nxd4(△Bb5) a6 11.Bf4 Bc5 12.Be5 b5?
[次にb7にビショップをセットするための自然なこの1手がブランダーとは、なかなか想像しにくいです… 次にBb3と手拍子で指さず、ちょっと考え次のタクティクスが思い浮かびました。]
13.Bxe6!! fxe6 14.Bxf6
[ポイントは14...gxf6? 15.Qh5+だとe8キングとc5ビショップのDouble attack!]
14...0–0! 15.Be5 Bb7 16.Qg4!
[e6のポーンを狙いつつ、g7に圧力をかけ、自陣のg2も守っておくクイーンのベストポジション]
16...Bd5 17.Rad1 Rf7 18.b3
[はじめ18.Rd3がすぐにできないか考えました。18...Bc4 19.Nb3 Bxd3 20.Nxc5
ANALYSIS DIAGRAM
これならナイトによるDouble attack(ナイトフォーク)で白は2ピースvs ルークの駒得になるでしょうか?答えはNoです。20...Bf5! 21.Qf3 Qe8は黒のエクスチェンジアップで形勢逆転!]
18...b4
[c2–c4を恐れてこれを防いだ1手でしょうが、c2–c4は白にとってうまくいきません。18...Raf8 19.c4?! bxc4 20.bxc4 Bxc4 21.Nf5 exf5 22.Qxc4=]
19.Rd3 Raf8 20.Rg3 Bd6! 21.Qh5
[21...g6? 22.Rxg6+ hxg6 23.Qh8#の罠を仕掛けつつ、21...Bxe5 22.Qxe5なら弱点なく白は1ポーンアップを保てるのでOKです。]
21...Rf5?
[e5ビショップとh5クイーンのDouble attack! 黒はこれでルークvsダブルビショップの有利な駒割になると考えたと思いますが、大きな見落としがありました。]
22.Nxf5 Rxf5
[22...Bxe5? 23.Nh6+ Kh8 24.Qxe5はピンで黒はナイトさえも取り返せません。]
23.Qxf5! exf5
24.Rxg7+ (キングとクイーンのDouble attack!) Qxg7 25.Bxg7
[ここで黒は見落としに気付きます。25...Kxg7 26.Rd1! は究極のDouble attack!! 白はエクスチェンジアップが確定し、あとは難しくありません。]
25...Be4 26.Bb2 Bxc2 27.Rc1 Be4 28.f3 Bb7 29.Bd4 Kf7 30.Bc5
[ビショップを1つ交換してしまうのが分かりやすいでしょう。]
30...Ke6 31.Re1+ Kd5 32.Bxd6 Kxd6
33.Kf2 a5 34.Kg3 Bc8 35.Kf4 Be6 36.Re5 a4 37.Rxe6+ Kxe6 38.bxa4 1–0
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例年通り、今年の総括です。
2020年の戦績は以下の通り。
=====================
試合数:63試合(□32 ■31)
結果:(勝ち35 負け19 ドロー9)
勝率:62.7%
=====================
2020年はコロナで始まりコロナで終わる1年でした。コロナは日々の生活にも大きく影響を及ぼし、当然チェス活動も大きな影響を受けました。
今年はOTBでのチェスができなくなった分、オンラインでのチェスがメインになりました。私もOTBはPortugal Openの17戦(Classical 9戦・Rapid 8戦)のみで、他は全てオンラインでのゲームとなりました。オンラインでのトーナメントはNCSのOnline ChampionshipとAsian Nations Cupで、どちらもRapidのタイムコントロールでしたが、非常に充実した内容でした。
私のように海外にいると、オンラインのトーナメントは海外にいながら日本と繋がっていられるというメリットがあります。一方、Asian Nations Cupの時のように、オンラインではまだ運営がままならず、スタンダードな大会として定着させるにはまだまだ課題が山積みというデメリットがあります。
今年はRapidのゲームが多かったので、じっくり考えて手を作るより、直感第一で指してきた感があります。これが成功した例もありますが、複雑な変化を読むのをさぼったり簡単な手を見逃したりして、いつもよりポイントを多く失いました。そんな中、Portugal Open最終戦のIM Alshameary戦は、ロングタイムコントロールで貴重な白星を挙げたので、今年のベストゲームに挙げたいと思います。(このゲームの結果次第でPortugal Openの印象が大きく変わる重要な1戦でした。)
2021年の予定は全く未定ですが、まだしばらくオンラインでの活動が続くと思います。
コロナの一足も早い終息を願って…
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出だしは順調、そのあと失速し、2.5Pで終了。
あとから分かったのですが、トーナメント最後のTuさんと真鍋さんのゲームの結果次第では予選落選の可能性があったようです。Tuさん絶体絶命の中、奇跡的にドローに逃れ、この結果、私は何とか6位に留まりました。
□Higashino,Tetsuo (2069,JPN)
■Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
NCS Rapid Online Championship 2020/12(2)
1.c4 e5 2.g3 Nc6 3.Bg2 Bc5 4.e3 d6 5.Nc3 a6 6.Nge2 Ba7 7.d4 h5
[ここ最近、馬鹿の一つ覚えで指しているラインですが、それなりに高い勝率を保っています。このhポーンをどう処理するか、ここで東野さんは少し考え…]
8.Bxc6+!? bxc6 9.dxe5 dxe5 10.Qxd8+ Kxd8
[8.Bxc6+から強制手順で試合はクイーンレスミドルゲームに突入しました。白は黒のポーンストラクチャーを崩し、キングをセンターに留め、0-0-0+で展開をスピーディーに完了できるので良いプランに見えます。しかし、黒は白陣の白マスビショップの弱さを利用してプレーできるのと、e5、c6のポーンはf4、d4、d5といった重要なマスを守っており、決して悪くなってはいません。この変化は研究手順内です。実戦例としてはKovalyov,A-Anand,V Tbilisi 2017がありました。]
11.b3 h4 12.Bb2 Nf6
[12...hxg3? 13.0–0–0+ Ke8 14.hxg3は白のポーンストラクチャーを崩すのに失敗していますし、hファイルを取られてしまい、黒ピンチです。]
13.0–0–0+ Ke8 14.h3 hxg3 15.Nxg3 Be6 16.Nce2 Nd7 17.h4 f6 18.h5 Kf7
[b2のビショップに対してe5-f6-g7のポーンで対抗し、空いたf7がキングにとってとても良いマスに見えました。]
19.Rh4 a5 20.Ne4 Nc5
[解説の南條くんはこのナイト交換は白にとって得だと説明しています。ただ、黒のナイトもあまり将来性が無いように思えたので、交換しにいきました。]
21.N2c3 Nxe4 22.Nxe4 Rh6?
[aファイルから突破するか、hファイルから突破するか迷った挙句、ちぐはぐな手を指してしまいました。前の手との一貫性を考えると、22...a4! から突破する1手でした。これに対して、23.bxa4 Bxc4? 24.Ng5+! を気にしてなかなかポーンを捨てることができませんでしたが、すぐに23...Bxc4? でなく、23...Bb6でポーンはあとから回収できます。]
23.Bc3 Bf5 24.Ng3 Be6 25.Bxa5
[手を繰り返してドローにはせず、白から勝負です。ここで25...Bxe3+? 26.fxe3 Rxa5でポーンを取り返す手は見えますが、27.a4か27.Kb2でポジションは白良しです。ここは少し考えて...]
25...Bc5!
[黒の黒マスビショップは絶対に残さないといけないピースです。26.b4と白が頑なにキングサイドポーンを守ってきたときには、26...Be7のあと、...c5とcポーンを突いて対抗しようと考えていました。]
26.Bxc7
[c7のポーンは白ルークのd6への侵入を防ぐ以外、役に立ちません。このポーンと引き換えにa2のポーンを取れるなら、1ポーンダウンでも黒OKです。]
26...Rxa2 27.Kb1? Ra7?
[ここはお互い見落としでした。27...Rxf2 28.Ne4でこのナイトフォークまでしか見えておらず、28...Bf5! を忘れていました。]
28.Bd8
[28.Bd6?には28...Rd7! があります。]
28...Rh8 29.Ne4 Bf5 30.Kb2 Bxe4 31.Rxe4 Rxh5
[ここでポーンを取り返し、黒がはっきり優勢になりました。]
32.Kc3 Rh2 33.f4 Raa2 34.fxe5 f5
[白にパスポーンを作らせるのは怖いように見えますが、メイティングネットを張りつつ、d8のビショップを落としにいくプランが私の頭にありました。]
35.e6+ Ke8 36.Re5 Rac2+ 37.Kd3 Bd6?
[ルークに当てにいくことしか見えていませんでした。解説の方々指摘する通り、37...Bb4! が強力です。]
38.Rxf5 Kxd8 39.Ke4?
[39.Rf7! で黒キングをバックランクに封じ込めるのが強力でした。Rd7+、Rxg7、はたまたRa1からのRa8+のスレットがあり、おそらく黒がこれを勝つのは難しいでしょう。本譜だと黒キングが危険ゾーンから逃げられます。]
39...Ke7 40.Rg5?!
[40...Kxe6?? 41.Rg6+の狙いを残した手だと思いますが、40.Rf7+ Kxe6 41.Rxg7でgポーンをすぐに消しておいた方がドローチャンスはあります。]
40...Rcg2?!
[細かいですが、次の41.c5を防ぐため、40...Rhg2が正しい手でした。]
41.Rg1
[41.c5! Bb8 42.Rd7+ Kxe6 43.Rdxg7 Rxg5 44.Rxg5が白のベストですが、44...Rh4+ 45.Kd3 Be5でまだ黒が勝つ可能性は高いです。本譜のようにgポーンが残れば黒の勝ちはほぼ問題ありません。]
41...Rxg5 42.Rxg5 Kf6 43.Rg1 Rh4+ 44.Kd3 Rh3
[...Rxe3+から...Bc5+を狙ってみました。]
45.Kd4 g5 46.c5 Be7 47.b4 Kxe6 48.Ke4
[48.e4? Bf6+ 49.Kc4 Rc3#]
48...Rh4+ 0–1
実況中継は以下のリンクから!
https://www.youtube.com/watch?v=0oopIrEi1Fs&t=18112s
決勝は1/24(日)です!
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SloveniaのFM Peter Kokolのページです。OnlineでCoachingをしているので、その宣伝です。
Peter Kokolはプレーヤーとしてレイティング2300台後半ありますが、早くからコーチングに転向して10年以上コーチングの経験があります。FIDE Instructorの資格も持っています。
Peter Kokolは上海在住だった時期があり、彼には上海で会いました。今はコロナの影響もあり、祖国に戻っているようです。
レッスンは全て英語ですが、非常に話しやすい人柄なので、片言でも気軽に話せると思います。レッスン料はレッスンの内容によって異なり明確には書いてありませんが、無料のデモレッスンがあるようなので、まずはそちらで内容を確認すれば良いと思います。
外国人のコーチは日本人とはまた違ったチェスを教えてくれると思います。
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オランダのLegend、TimmanによるBest Game集です。その長いキャリアの中から100ゲームを選定し、このたび世の中にリリースしました。1967年から2019年までの半世紀以上の中から「わずか」100ゲームを選定するのは非常に大変な作業だったでしょうし、どの100ゲームを選んだかが私の中で最大の関心事でした。
Timmanは以前に何冊も本を出していますが、自身のゲーム集はTimman’s Selected Gamesだけでした。この本については以前、レビューを書いていますので、そちらを参考にして下さい。
http://chessplayer.jugem.jp/?eid=33
Timman’s TriumphsはSelected Gamesと違い、ファイティングゲームというよりはミスのない綺麗な勝ちゲームが多いです。例えば、次のゲーム。
Kovacevic,Vlatko (2555) - Timman,Jan (2610)
Bugojno (7) 1984
Position after 25.g4
25...Nf4!!
[Qe5-g3でのディフェンスをかわすこの1手です。]
26.Rxc8
[26.exf4 Qh4 27.Rxc8 Qxh3! 28.Rxe8+ Kh7 29.Qxg7+ Kxg7 30.Bb2+ f6 31.Re7+ Kf8 32.Re8+ Kxe8 33.d7+ Kf7は白のチェックが切れてメイトが受からず、黒勝ち。]
26...Nxh3+ 27.Kh2 Qh4 28.Rxe8+ Kh7
29.Qxg7+ Kxg7 30.Bb2+ f6 31.Re7+ Kh6 32.Bxf6 Qxf2+ 0–1
Selected Gamesと重複して選定されているのはわずか10ゲームのみです。このゲーム集の特徴としては、Timmanが黒番のゲームが多いということです。普通、Best Gamesになるとどうしても白番のゲームの割合が多くなるのに対し、この本の場合は約半数が黒番です。100ゲームのうち私が知っていたのはわずか24ゲームで、まだまだ私の知らないところに名局が眠っているんだなと改めて感じさせられました...
Phenomenal career of Legend!
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本来2020年にMoscowで開催されるはずだったオリンピアードは、コロナの影響で2021年に延期されていました。しかし、2022年のMinskオリンピアードのホスト国であるベラルーシが、(おそらく)財政的な理由からオリンピアードと本来2021年に開催予定のWomen’s World Chess Cupを開催できないと白旗を振り、ホスト国を降りました。
FIDEは2022年のオリンピアード、2021年のMen’s World Chess Cup、2021年のWomen’s World Chess Cupの3つの開催国を探さなければいけなく奔走しましたが、このご時世なので候補は見つからず。そんな中、手を挙げたのがロシアで、上記3つの大会すべてロシアで開催するとFIDEに助け舟を出しました。(ちなみにFIDE会長はロシア人)
しかし、本来予定されていた2021年のMoscowオリンピアードと翌年2022年にロシアでもう1回オリンピアードを開催するのは難しいと判断したか、延期されていた2021年のオリンピアードは中止し、次は2022年と決めたのでした。また、2024年のオリンピアード開催国にハンガリーが立候補し、2024年はハンガリーの首都Budapestでの開催となります。
まとめると、
【旧】
2021年 Moscow(Russia)
2022年 Minsk(Belarus)
【新】
2022年 Moscow(Russia)
2024年 Budapest(Hungary)
となります。
今回の変更は、当然ながら日本代表選考にも響いてきます。すでに2021年のMoscowオリンピアードの代表はほぼ決定していたからです。昨夜は今内定している代表メンバーが2022年のMoscowオリンピアードの代表にスライドすることも考えていましたが、今朝冷静に考えてみると、2021年のオリンピアードは中止になったので、2022年のMoscowオリンピアードの代表選考は再選考にするのが妥当かと思っています。例えば、もし来年の東京オリンピックが中止になった際、4年後の2024年の夏季オリンピックの代表選手は間違いなく再選考になることと考え方は同じです。
この考えはこれまでエネルギーをかけて代表を勝ち取ってきた方々にとっては受け入れがたいものだと思います。ただ一方で、今年の全日本選手権を優勝したTuさんは、再選考の機会が無ければ2022年のオリンピアードには出られません。Tuさんは2022年のMinskオリンピアードでの代表を目指していて、今年初めにチェス籍を日本に移していました。しかし、チェス籍を移してから2年は新しい国での代表にはなれないルールがあるため、2021年オリンピアードの選考大会である先日の全日本選手権を優勝したにもかかわらず、代表権は取得できませんでした。
ここまで見てみると、もちろんこのような状況下は誰も予想できず仕方なかったと思いますが、オリンピアード代表選考方法のデメリット部分が出てしまったように思います。私が以前提案したように、レイティングが選考基準だったらまだ代表選手は選出されておらず、問題なかったはずです...
http://chessplayer.jugem.jp/?eid=970
おそらく近々にNCSからアナウンスがあると思います。
ここまで代表権にこだわる理由は、以前書きましたので、以下をもう一度ご参照ください。
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https://mp.weixin.qq.com/s/lK6QEjukO1D1ronqf_EAdw
男子组:韦奕、余泱漪、李超、赵骏、白金石、卢尚磊、温阳、许翔宇、居文君、张睿、黄仁杰、林艺;
女子组:谭中怡、倪诗群、郭?、翟墨、肖依依、谷笑冰、宋宇新、宁凯玉、李雪怡、袁烨、颜天?、胡聿
興化市はHou Yifanのホームタウンですが、今回参加はないようです。あと、理由は分からないですがFIDEレイティング戦ではないようです。もうコロナショックからはほとんど立ち直った中国ですが、プレーヤーへのPCR検査での陰性証明、会場のホテルから出られないなど、制約を設けています。
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今回は11月の初めに全日本チャンピオンになったTuさんとの1戦を紹介します。Tuさんには過去ほとんど白で当たっているにもかかわらず、2016年全日本選手権でのゲーム以外、勝ちがありません!
□Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
■Tran,Thanh Tu (CM,2346,JPN)
NCS Rapid Online Championship 2020/11(3)
1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Bd3 Bc5 6.Nb3 Ba7
[7月のOnline Championshipでは6...Be7をTuさんは選択。どちらもポピュラーな変化です。]
7.Qg4 Nf6 8.Qg3
[8.Qxg7? Rg8 9.Qh6 Bxf2+!があるので、g7ポーンはpoisoned pawnです。]
8...Nc6 9.Nc3 Nh5!?
[端にナイトが跳ぶちょっと変わったアイディアで白クイーンを追い払います。この手はGM Kamskyくらいしか指していません。]
10.Qg4 g6 11.Bg5 f6 12.Bd2 Ne5 13.Qe2 Qc7 14.g3
[f4にナイトが跳ばれないよう、カバーしておきます。]
14...b5 15.f4
[15.0–0–0?! b4はc3のナイトが行くところがありません。ただ、15.a3!?と一度...b4を受けておくのはあったかもしれません。]
15...Nxd3+ 16.cxd3
[16.Qxd3 Bb7ではe4ポーンがひどく弱いので、ポーンで取り返します。この時点で、白はキャスリングをほぼ放棄することになります。]
16...Bb7 17.Nd1 Rc8 18.Rc1 Qb8 19.Rxc8+ Qxc8 20.Bb4 f5 21.Nf2 Nf6 22.Kd2
[プラン通りキングはセンターにキープし、ルークをcファイルに回す準備をします。]
22...Kf7
[見えにくいですがここは黒のチャンスで、22...fxe4! 23.Nxe4 Bxe4 24.dxe4 Qc4!だと白はe4ポーンを守れません。]
23.Rc1 Qa8 24.exf5
[e4を巡る攻防は終わり、白は一安心です。]
24...gxf5 25.Nc5 Bf3 26.Qe5 Rg8?
[次のBc3に対して...Rg6でのディフェンスの準備だと思いますが...]
27.Nxd7!!
[この強力な1手がありました! 黒のディフェンスを食い破り、ルークを攻めに参加させます。全て先が見えたわけではありませんが、直感が「いける]と判断。27.Nxe6も少し考えましたが、27...Re8 28.Ng5+ Kg6で黒は逃げられます。Qxf6+がダイレクトなスレットになっている本譜のほうが強力です。]
27...Nxd7 28.Rc7 Rd8
[28...Bc6 29.Qd6+–]
29.Nh3 h6 30.Bc3
30...Ke7
[30...Qd5には31.Qg7+ Ke8 32.Qg8+ Ke7で、33.Bf6+!!という物凄い1手があります。33...Kxf6 34.Qxd8++–]
31.Bb4+ Kf7 32.Bc3 Ke7 33.Qg7+!
[手を繰り返した後、勝ち筋を見つけました。]
33...Ke8
[33...Kd6 34.Be5+ Kd5 (34...Nxe5 35.Qxe5#) 35.Rxd7+ Rxd7 36.Qxd7+ Kc5 37.Qd6#! は美しくメイトです。]
ANALYSIS DIAGRAM
34.Bb4 Qb8 35.Qe7# 1–0
実況中継は以下のリンクから!
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1勝2敗1ドロー(+1bye)で1ゲームしか解説するゲームが無いなと思っていましたが、あとで実況中継を見て、次のゲームに解説を付けることにしました。
□Aoshima,Mirai (FM,2349,JPN)
■Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)
NCS Rapid Online Championship 2020/10(3)
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.Bg5 Ne4 5.h4!?
[マイナーなチョイス。ただ、GM Jovabaが指しているので、今後指すプレーヤーは増えてくるかもしれません。]
5...Bg7 6.cxd5 Nxc3 7.bxc3 Qxd5 8.f3!?
[一瞬、8.e3の間違いかと思うような1手です。g3のマスがひどく弱くなりますが、その代わりにf3-e4でビッグセンターをキープするといったところでしょうか。青嶋くんは以前、このラインを試しており、対戦相手のPaulからはそのゲームを入手していました。(Aoshima,M-Iinuma,P IVL 2019 0-1)ただ、このゲームでは白のプランはあまり成功していなかったように見えたので、黒の受け方を真剣に考えていませんでした。あとでGM同士の実践例がないか調べてみると、Bukavshin,I-Eliseev,U Khanty-Mansiysk RUS 2015 1-0 の1ゲームだけヒット。知っている方もいらっしゃるとは思いますが、残念ながらどちらのGMも若くしてこの世を去っています...]
8...Qd6
[...Qg3+で白のコーディネーションを崩すのは悪くないと思います。]
9.e4 Qg3+ 10.Ke2 c5 11.Qd2(△Bf4) Qc7 12.Kf2 cxd4 13.cxd4 Nc6 14.Bb5 0–0 15.Bxc6 Qxc6 16.Ne2 b6? 17.Bxe7
[単純にこのポーンが落ちるのを見落としていました。ただ、あとから見返すと、1手前の時点ですでに落ちてる! と思ったら、16.Bxe7には16...Qd7! でd4ポーンとe7ビショップのダブルアタックで、17.Bxf8 Qxd4+ 18.Qxd4 Bxd4+でa1のルークを取り返せます。この後のポジションはダブルビショップを持ってる黒が優勢で、a2を落としに行き、クイーンサイドのパスポーンを突いていって勝つシナリオが見えます。なので、白はe7を取る前に先にd4を守っておいたのでした。]
17...Re8 18.Bg5 Ba6 19.Rad1 Rac8 20.d5 Qd7 21.h5 f5
[黒は白のセンターパスポーンをクイーンでブロックしている状態なので、何かしらアクティブな反撃が必要であり、この手に望みを託します。]
22.Rh4 fxe4 23.fxe4
23...Rc4?
[e4のポーンを取るのとcファイルにルークを重ねて...Rc2を狙う1手ですが、a6のビショップの効き筋を遮り、反撃としては遅すぎます。代わりに23...h6! 24.Bxh6 (24.Be3? g5) 24...Bxe2 25.Kxe2 Qa4! は...Rxe4と...Rc2が白にとって厄介なスレットになっていて、2ポーンダウンの黒のほうが指しやすいように見えます。
ANALYSIS DIAGRAM
26.Kf1? には26...Bxh6 27.Qxh6 Qxd1+など。少なくとも、短時間で白がこの局面をきちんと処理するのは難しく、黒としてはこの流れが最も実戦的だったでしょう。]
24.d6!(△Qd5+) Re5 25.h6! Bf8
[ここで25...Rec5も考えましたが、26.hxg7 Rc2 27.Qf4 Rxe2+ 28.Kg1で白キングは安全です。h6に突き刺さったポーンは厄介で、実際このポーンが勝負を決めます。]
26.Ng3 Rec5 27.Kg1 Qxd6
[ここは危険なパスポーンを取り除くしかありません。]
28.Qxd6 Bxd6 29.Rxd6 Rxg5
30.Kh2
[30.Rf4からRd8#が見えましたが、hポーンの後ろからのサポートと自身のキングのディフェンスのために本譜のようにhファイルにルークを残すのも十分に強力です。]
30...Kf7 31.Rd7+ Ke6 32.Rxh7 Rc3 33.Rh3 Rc2 34.Rxa7 Bf1!?
35.h7!
[最後のお願いも華麗にスルーされます。35.Nxf1?? Rcxg2+ 36.Kh1 Rg1+ 37.Kh2 R5g2#]
35...Bxg2?
[35...Rxg2+ 36.Kh1で読むのをやめてしまいましたが、36...R5xg3 37.Rxg3 Rxg3 38.h8Q Rh3+ 39.Qxh3 Bxh3 40.Rb7
ANALYSIS DIAGRAM
でまだ少し白が勝つにはテクニックが必要です。]
36.h8Q Bxe4+ 37.Kg1 Rc1+ 38.Kf2 1–0
篠田くんと山田弘平くんがこのゲームを実況中継でしてくれていますので、あわせてどうぞ。
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予選最終日の3日目、R.7-R.9の3試合です。
さすがに今日は特に運営に問題なく、スムーズにいきました。
まずはバングラデッシュとのマッチです。
私は長年、バングラデッシュの不動の1位だったGM Rahmanと。Rahmanとは2006年、2008年のMalaysian Openで対戦しており、1敗1ドローです。RahmanはGMで当然チェスが強いのはもちろんですが、非常に紳士で優れた人柄であり、私の尊敬するプレーヤーの1人です。
□Rahman,Ziaur (GM,2533,BAN)
■Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
Asian Online Nations Cup 2020(7)
1.d4 Nf6 2.Bg5 Ne4 3.Bf4 c5 4.f3 Qa5+ 5.c3 Nf6 6.d5 Qb6 7.Bc1 e6 8.e4 exd5 9.exd5 Bd6
[今回はTrompowskyに対して、ちょっと変わったこのラインを用意していました。Trompowskyはほんの初めの数手で同じピースを何度も触るちょっと不思議なオープニングです。]
10.c4 O-O 11.Bd3 Re8+ 12.Ne2 Bf8 13.Nbc3 d6 14.O-O Nbd7 15.b3 Ne5 16.Bc2 g6 17.h3!
[静かなこの1手が強力で、g4のマスを奪われるとe5のナイトの行き先がありません。]
17...Bg7 18.Bd2 a6 19.f4 Ned7 20.g4!?
[正直、こんなにアグレッシブに来るとは思っていませんでした。]
20...Qd8 21.Ng3 h6 22.a4 Nh7 23.Kg2 Rb8 24.Rc1 Ndf8 25.Qf3 Qh4 26.Nce4 h5 27.f5!
[決定的なブレークスルー。黒の反撃は届きません。]
27...hxg4 28. hxg4 gxf5 29.Nxd6 Re5 30.Ndxf5 Bxf5 31.Nxf5 Qf6 32.Bf4 Ng6 33.Bxe5 Qxe5
34.Nh6+! Bxh6 35.Qxf7+ Kh8 36.Qxg6 1-0
[最後は接続が切れて時間が落ちましたが、投了するに値する局面です。]
チームは1.5-2.5で負け。上2ボードがポイントを取ってくれただけに悔しい負けです。特にTuさんはGMを完全に土俵際に追い詰めましたが、ステールメイトのトリックでドローに逃げられてしまいました。
続くR.8はタイと。
正直、あまり警戒していなかったチームですが、レイティング以上にどのプレーヤーも実力があるのは間違いありません。
□Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
■Wiwatanadate,Poompong (FM,1952,THA)
Asian Online Nations Cup 2020(8)
1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.Ngf3 Nf6 5.e5 Nfd7 6.c3 Nc6 7.Bd3 Be7 8.O-O h6 9.a3 O-O 10.b4 cxd4 11.cxd4 f5 12.exf6 Bxf6
13.Nb3?
[何となくいつも指さない手を指してしまいました。普段は13.Bb2と指します。]
13...e5 14.dxe5 Ndxe5 15.Nxe5 Nxe5 16.Bb1 Bg4! 17.Qc2?! Rc8!
[これが軽視していた手で、Qh7+があまり効きません。おそらくゆっくり考えていれば17.f3と指していたでしょう。]
18.Qh7+ Kf7 19.Ba2?
[19.f4と突けば19...Rh8? に20.fxe5 Rxh7 21.Bxh7で対抗できるので、まだ勝負は分からなかったでしょう。]
19...Be2! -+
[このg4-e2-d3で白クイーンを捕獲するアイディアは完全に盲点でした。19...Rh8 20.Qf5でクイーンを逃がすことしか頭にありませんでした。白は駒損を免れません。]
20.Nd4 Bd3 21. Nf5 Rh8 22.Nxh6+ Ke6! 23.Nf7 Kxf7 0-1
[白番なのにあっけなく終わり、非常に申し訳ない1戦でした。白は多くのブランダー、そして黒は多くの好手... 完敗です。]
チームも1.5-2.5で負け、この時点で準決勝への望みはほぼ絶たれました。
最終ラウンドはアフガニスタンと。
この日2連敗の私が抜けても良かったと思いますが、出場の機会をいただきました。
□Sakhawaty,Sepehr (1491,AFG)
■Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
Asian Online Nations Cup 2020(9)
1.Nf3 Nf6 2.g3 g6 3.Bg2 Bg7 4.O-O O-O 5.d4 d5 6.c4 c6 7.cxd5 cxd5 8.Nc3 Ne4 9.Nxe4 dxe4 10.Ne5 Qd5
[Fianchetto Grunfeldでセンターポーンを交換するバリエーション。勝つために、黒は対称形を崩して勝負します。]
11.Qa4 Nd7 12.Qc4 Qxc4 13.Nxc4 f5 14.Bg5 Re8 15.Rfd1 b6 16.Rd2 Ba6 17.Ne3
[白のピースの配置が良くないのを見て、ここで仕掛けます。]
17...h6 18.Bf4 g5 19.Be5 Nxe5 20.dxe5 e6 21.f4 exf3 22.exf3 Rad8 23.Rxd8 Rxd8 24.f4 Bf8 25.Rd1 Rxd1+ 26.Nxd1 Bc5+ -+
[駒割はイコールですが、黒のダブルビショップが強力すぎて、すでに黒勝ちのエンドゲームです。メインのターゲットはf4のポーン。]
27.Kh1 Be2 28.Nc3 Bd3 29.Bf3 gxf4 30.gxf4 Be3 31.Be2 Bc2 32.Bc4 Kf7 33.Ne2? Be4# 0-1
[最後はメイトで勝利。]
最終戦は4-0で勝利!
日本の最終順位は12位でした。スタート順位も12位なので、実力相応の結果でしょうか?
個人としては5勝3敗でした。
今回、初めてOnlineの国際戦に参加して思ったのが、「こういう大会もありだな」でした。運営面ではいろいろトラブルはありましたが、どの国のプレーヤーも国旗を背負って戦っているので、そんなに簡単に倒せるプレーヤーはいませんでした。圧倒的に強いメンバーをそろえていたインドが6位と苦戦したことも、この大会のレベルの高さを物語っていたと思います。
やはりオリンピアードと同じでチーム戦は個人でのオープントーナメントとは違った雰囲気・緊張感があります。今回、日本チームはExperiencedプレーヤー3人とYoung Talent2人で構成され、とてもバランスの良いチームだったと思います。IMの南條くんはもちろん、日本チームでTuさんがプレーしてくれるのはとても心強いですし、若手2人はこれから上のボードで日本を引っ張っていく存在で、ますますの成長が期待できます。本大会のアナウンスが出て真っ先に手を挙げたのは私だったと思いますが、出場できて良かったです!
国際大会でのチーム戦は2008年のDresden Olympiadしかなく、これを最後に日本代表からは退きました。「もう出場することはないかな」と考えていましたが、今大会で少し考えも変わりました。
最後に、観戦・応援してくだった全ての方々に御礼申し上げます!
live解説のアーカイブは以下のリンクから!
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大会2日目はR.4-R.6の3試合でした。
先週の土曜日と同様に、14:30前にはZoomに入り、部屋が割り当てられるのを待っていました。間もなくして8番部屋へと招待されると、何だか前回メンバーとは違う人たちが...
他の日本メンバーが見当たらなく一人寂しく待っていると、どうも前回メンバーと違う人々は割り当てられた部屋が違ったらしく、アービターから「部屋から退出してくれ」と言われていました。招待されて入った部屋から退出命令を受けたプレーヤー達は困惑していたのは間違いありません。その後、日本・マレーシア・ラオスのプレーヤー達が部屋にそろい、用意が整ったのでした。なぜ前回と同じように部屋に割り当てができないのか...
結局、予定時刻から40分ほど過ぎてからゲームがスタートしました。R.4はイエメンとの対戦でした。
□Al-Halila,Ayman (IM,2138,YEM)
■Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
Asian Online Nations Cup 2020(4)
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3 Bg7 4.Nc3 d5 5.Bf4 0–0 6.e3 c5 7.Be2?! cxd4 8.exd4 Nc6 9.0–0 dxc4 10.Bxc4 Bg4 11.Be3 Rc8 12.Be2 Nd5 13.h3 Bf5 14.Qb3 Nxe3 15.fxe3 Na5
[序盤は黒が一方的に成功しています。]
16.Qb4 a6 17.e4 Bd7 18.Rad1 b5 19.Nd5 Nc6 20.Qd2 e6 21.Nc3 b4 22.Na4 Nxd4 23.Nxd4 Bxa4 24.b3 Bb5 25.Qxb4 Bxd4+?
[次の...Qb6と...e5でエクスチェンジアップできる幻想が見えてしまいました。25...Bxe2 26.Nxe2 Qg5くらいでまだ黒にややチャンスがあると思います。]
26.Rxd4 Qb6 27.Kh1 Qc5 28.Bxb5 axb5 29.Qd2 h5 30.Rd7 Qc2?? 31.Qf4!
[弱点のf7が受からなくなってしまい、黒ピンチです。]
31...e5 32.Qf6 Qc6
[33.Rxf7! Qxf6 34.R7xf6 Rxf6 35.Rxf6 Kg7 36.Rb6で白勝ちのルークエンディングなので「まずいな〜」と思って相手の手を待っていると、なかなか次の手が来ません。相手の時間だけが過ぎていき、接続切れの可能性が出てきました。この時ばかりは不謹慎ながら、相手の時間が落ちるのを全力で願っていました。願いは届き...]
0–1!
チームは2-2での引き分け。
続くR.5はマレーシアとの対戦です。
マレーシアと言えば、長年、日本よりはちょっと格上なのですが、今回は主要代表メンバーが出場していません。なので、マッチには是が非でも勝ちたいところでした。
□Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
■Sivanesan,Subramanian (1822,MAS)
Asian Online Nations Cup 2020(5)
1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 e5 6.Ndb5 d6 7.Bg5 a6 8.Na3 b5 9.Bxf6 gxf6 10.Nd5 f5 11.Bd3 Be6 12.c3 Bg7 13.Nxb5!?
[GM Negiのrecommendation。3ポーン vs 1ピースのアンバランスなゲームになりますが、正直なところ、これをSveshnikovに対するメインのレパートリーにするのには抵抗があります。相手が知らないだろうと勝手に判断し、このラインに飛び込みます。実際は序盤で時間に大きく差がついたので、作戦成功です。]
13...axb5 14.Bxb5 Bd7 15.exf5 0–0 16.0–0 Rb8 17.a4 Qg5 18.Qf3 e4 19.Qxe4 Bxf5
20.Qe3! Qxe3 21.fxe3!
[これでc6のナイトとf5のビショップがダブルアタックになり、白はピースを取り返せます。]
21...Be6
[21...Bd7 22.Bxc6 Bxc6 23.Ne7+ Kh8 24.Nxc6 Rxb2 25.Nd4も本譜と同様、白勝勢と考えていました。]
22.Bxc6 Rxb2 23.a5 Bxd5 24.Bxd5 Bxc3 25.a6
[このパスポーンが強く、このあとベストの手順ではないですが、何とか勝利をもぎ取ります。]
25...Rb5 26.Rad1 Ra5 27.Bb7 Be5 28.Rd3 Kg7 29.Rc1 f6 30.g3 Kg6 31.Rd2 Kg7 32.Rcc2 Ra1+ 33.Kg2 Rf7 34.Ra2 Rxa2 35.Rxa2 d5 36.a7 Rxb7 37.a8Q Rf7 38.Qxd5 Kg6 39.Ra8 h5 40.Rg8+ Rg7 41.Rxg7+ Kxg7 42.Kf3 Kg6 43.Qg8+ Kh6 44.Ke4 Bb2 45.Kf5 1–0
チームは3-1で勝利!
この日最後のラウンドはグアムとでした。
もう少し上のチームと当たるかと予想していたので意外なペアリングでしたが、次のラウンドにつなげるため、ここは勝ちが必須です。
□Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
■Paras,Radcliffe (1646,GUM)
Asian Online Nations Cup 2020(6)
1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 g6 4.0–0 Bg7 5.Re1 e5 6.b4!?
[前ラウンドのゲームと変えてRossolimo(3.Bb5)を選択。あとから分かったのですが、1BのTuさんも珍しくRossolimoを採用していました。]
6...Nd4 7.Nxd4 cxd4 8.c3 a6 9.Ba4 b5 10.Bb3 Ne7 11.cxd4 exd4 12.d3 0–0 13.Bg5 d6 14.Nd2 Be6 15.Rc1 Qd7 16.Nf3 Bxb3 17.Qxb3 Rac8
[可もなく不可もない展開。白が具体的にアドヴァンテージを築くのは難しそうですが、負けるリスクも低そうです。]
18.h3 Rc3 19.Rxc3 dxc3 20.d4 Rc8 21.Rc1 Qc7 22.Bxe7 Qxe7 23.Rxc3 Rxc3 24.Qxc3 Qxe4 25.Qc8+ Bf8 26.a3!
[この手のあと少し白が良くなると考えていたので、白のe4と黒のc3のポーンの交換をしました。すぐに26.Qxa6だと26...Qb1+ 27.Kh2 Qxb4があります。]
26...Qc2??
[この手が意図したものかマウススリップかは分かりませんが、c2のマスで黒クイーンが何か狙っているわけではないので、...Qb1+と指そうとしたところのマウススリップだったのではないかと思います。26...Qb1+ 27.Kh2 Qb2 28.Qxa6 Qxf2 29.Qxb5だと、白がクイーンサイドのパスポーンを順調に進められれば勝ちですが、キング廻りが少し弱いので注意が必要です。とりあえずプレゼントだと思ってクイーンをいただきます。自分がマウススリップしないように慎重に...]
27.Qxc2! 1–0
チームは3-1で勝ち!
ということで、2日目は3勝でチーム勝利に貢献。
R.7は強敵バングラデッシュです。
live解説のアーカイブは以下のリンクから!
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昨日10/10(土)、Asian Online Nations Cup(Men)の予選R.1〜R.3が行われました。Online大会なので何かトラブルはあるだろうと予測はしていたものの、予想以上に多くのトラブルに見舞われ疲れ果てました。今回は昨日、何があったか中心に書こうと思います。
15:00からR.1が開始なので、参加者は14:30までにZoomに入り、Chess.com/liveで待機します。私はZoom部屋が開く14:00早々にはZoomに入り、そこではすでにアービター達が大会運営について話し合っていました。だんだんに参加者が集まりますが、なかなか始まる気配がありません。
プレーヤーはZoomで割り当てられた部屋でアービターの監視下の元、Chess.comでプレーするのですが、なかなかZoom部屋に割り当てられません。ようやく部屋を割り当てられ、アービターとプレーヤーでモニター・画面共有・音声などのプレー環境のチェックを1つずつ行いました。私たちのZoom部屋は、アービター2人と日本・マレーシア・ラオスのプレーヤー達で構成されていました。
プレー環境に問題ないことを確認し終えたときにはすでに15:00を過ぎていましたが、ゲームがいつから始まるか説明はありませんでした。
結局R.1がスタートしたのは予定より50分遅れでした。日本の初戦相手はフィジーです。とりあえずゲームがスタートしたのでプレーに集中します。
□Nadan,Avinesh (1486,FIJ)
■Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
Asian Online Nations Cup 2020(1)
1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.Nf3 Bg7 5.e3 O-O 6.Be2 dxc4 7.Bxc4 c5 8.O-O cxd4 9.Nxd4 Bd7 10.Bd2 Nc6 11.Nce2 Rc8 12.Bb3 Na5 13.Bc2 Nc4 14.Bc3 Nd5 15.Bb3 Nxc3 16.bxc3 Qa5 17.Qd3 Nd6 18.Rac1 Rfd8 19.Rfd1
すでに黒がだいぶ良いこのポジションで事件は起きました。突然、ゲームが中断したのです!
とっさのことに動揺し、アービターに報告しようかと思ったところ、他の参加者から先に声が上がりました。南條くんが「次の手でメイトだけど、ゲームが中断になった」と。
ようやくここで何らかのChess.comのシステム上の問題により、全てのボードでゲームが中断になったことが分かりました。アービターより、とりあえず再開するのを待ってくれと言われ、私の手番だったので19...e5をメインに考えながら待ちました。
しばらくすると、ゲームが再開しました。しかし、ゲームは続きからでなく、初手から再開したのでした!
後から分かったのですが、中原鑑くんのところは、すでに鑑くんがメイトで勝っていたということです!結局、南條くんも鑑くんも勝ったので良かったですが、トーナメントとしてはあってはならない事態です。そもそも、鑑くんにメイト負けしたフィジーのプレーヤーは一度負けているので、指し直しの際は指さずにリザインするのが礼儀ではないでしょうか?
私のところでも、相手の態度が私を少し苛立たせました。再開したゲームで相手が初手から手を変えてきたのです!
1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bd3 e5 7.Nde2 Be7 8.0–0 0–0 9.f4 b5 10.fxe5 dxe5 11.Nd5 Nxd5 12.exd5 f5 13.c4 e4 14.Bc2 bxc4 15.b3 Bf6 16.Rb1 c3 17.Be3 g6 18.b4 Nd7 19.Bb3 Ne5 20.Qc2 Nd3 21.Nxc3 Nxb4 22.Qd2 Nd3 23.Na4 Rb8 24.Nc5 f4 25.Bxf4 Bd4+ 26.Be3 Bxc5 27.Bxc5 Nxc5 28.Rxf8+ Qxf8 29.d6+ Nxb3 30.axb3 Qf5 31.Rf1 Qc5+ 32.Kh1 Bf5 33.d7 Rd8 34.b4 Qe7 35.Qa2+ Qe6 36.Qa5 Rxd7 37.Qc5 e3 38.Qc8+ Kg7 39.Qc3+ Kh6 40.Re1 Rd3 41.Qc5 Qd6 42.Qc4 g5 43.h4 Rd1 44.hxg5+ Kxg5 45.Qg8+ Bg6 46.Rxd1 Qxd1+ 47.Kh2 e2 48.Qc4 e1Q 49.Qc5+ Bf5 50.Qa5 Qh4# 0–1
結局、勝ちましたが、もし相手が中断したところまで同じように指してくるなら、私は中断したポジションまで戻そうと考えていました。しかし、相手は明らかに中断したポジションは良くないと考えて、戻すのは良くないと考えていたのでしょう。ただし、初手から変えるのはさすがにマナー違反だと思います。
R.1は4-0でフィジーに勝ち。
次の対戦を待ちますが、この待ち時間がとても長かったです。基本的に1Rは1時間で終わるスケジュールでしたが、結果集計やペアリングに時間がかかりました。なかなか始まらないので、しびれを切らした南條くんが「あと何分で始まりますか?」とアービターに聞くと、「あと37分(!)」との回答が。これほどインターバルが長くスケジュールが不明瞭だと、プレーのコンディションを整えるのが難しくなってきます。結局、R.2が始まったのは予定より2時間遅れの18:00でした…
相手は全員GMのイランでした。ただ、ここでも開始直後に問題が起きます。R.1と同じフィジーとの対戦が始まったのでした!
すぐに中断になり、イランとのゲームが始まりましたが、さらにここでも問題が。ボードペアリングが発表されていたものと違う… おそらく各チームはきちんと開始前にプレーヤーのラインアップを提出していますが、チームペアリングとボードペアリングの発表のタイミングにシステム上の問題があったのではないかと思います。
私は長らくイランチェス界を牽引しているGM GhaemMaghamiとの対戦でした。彼には2004年、マレーシアで会ったことがあります。
□Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
■GhaemMaghami,Ehsan (GM,2566,IRI)
Asian Online Nations Cup 2020(2)
1.e4 c5 2.Nf3 e6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 a6 5.Bd3 Nf6 6.0–0 Qc7 7.Qe2 d6 8.c4 g6 9.Nc3 Bg7 10.f4 0–0 11.Nf3 Nbd7 12.Kh1 b6 13.Bd2 Bb7 14.Rae1 Rac8 15.b3 Rfe8 16.Bb1 Qb8 17.Qf2 b5 18.cxb5 axb5 19.e5 dxe5 20.Nxe5 b4 21.Ne4 Nxe4 22.Bxe4 Nf6 23.Bxb7 Qxb7 24.Nc4 Red8 25.Qe2 Nd5 26.f5 exf5 27.Bg5 Bf6 28.Bxf6 Nxf6 29.Qe5 Ne4 30.h3 Qc7 31.Rxe4 fxe4 32.Qxe4 Re8 33.Qf3 Rcd8 34.Qf6 Re6 35.Qf2 Rde8 36.Kg1 Re2 37.Qd4 Re1 38.Rxe1 Rxe1+ 39.Kf2 Re6 40.Ne3 Qc3 41.Qd8+ Kg7 42.Qg5 Qd4 43.Kf3 Rf6+ 44.Ke2 Qb2+ 45.Kd3 Qxa2 46.Qd5 Qb2 47.Ng4 Qc3+ 48.Ke2 Re6+ 49.Kf2 h5 0–1
ここまであったトラブルとは裏腹に、このゲームは全てスムーズでした。GMらしいしっかりとした指し回し、時間の使い方など、全てが一流でした。完敗。
イランには0.5-3.5で負け。ただ、Tuさんが世界ジュニアチャンピオンでもあるGM Maghsoodlooにドローだったのは流石でした!
もうこの時点で疲れ果てていた私はチームリーダーのTuさんにR.3はお休みをお願いし、この日は終了。特に抜け番は事前に決めてなかったのですが、今のところうまく回っていると思います。
R.3はブルネイと対戦。このラウンドでも問題があり、南條くんの相手のWFMが執拗にドローオファーを続けてきたとのことです。相手の集中力を乱すような行為はルールでも当然認められていませんし、我々としても非常に不快です。アービターはここまでは介入できないのがonlineトーナメントの現状です。
ブルネイとは2-2のドロー。勝ちたかったところですが、とりあえず日本メンバー全員が白星を挙げたのは良かったと思います。
かくして3時間の予定だった1日目は6時間かかり、終了。プレー中は部屋に他の人間を入れないルールになっているので、家族に外で待機してもらっている人達にとっては、これほど予定が崩れるのは問題です!
Tuさんが言うように、8月のOnline Olympiadのときは運営がスムーズだったのに対し、今回は全然ダメだということです。運営側もOnlineでの大会運営にはまだ慣れておらず、正式にOnlineのトーナメントとして成立するのはまだ時間がかかりそうです。ただ、大会の試み自体は素晴らしいのと、強いプレーヤーが集まっているので、残りのゲームも楽しみにしています!
そして、篠田くんと塩見さん、長らく実況お疲れ様でした…
アーカイブは以下のリンクから。
https://www.youtube.com/watch?v=qns9Fvv4HBI
今日は女子のR.1〜R.3があります。昨日の反省がどの程度生かされるのか、大きな問題が起こらないことを祈っています。
P.S. R.1でゲームが中断したのは、色がペアリングと違ったため、全試合やり直しになったためでした。
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