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Khanty-Mansiysk Olympiad Review (5)

WRITTEN BY

Yamada Kohei

 

 

Day4 -Second Part-

 

少し時間が空いてしまいましたが、4日目の続きです。僕の相手は2200台でしたが、ここまで、それほど内容が良くなかったようなので、勝つチャンスは十分にあると考えていました。

 

Chumfwa Kelvin (2224,ZAM)

Yamada Kohei (2071,JPN)

Khanty-Mansiysk Olympiad Men (4)

 

1.d4 d5 2.c4 c6 3.Nc3 dxc4 4.Nf3 Nf6 5.a4 Bf5 6.e3 e6 7.Bxc4 Bb4 8.0–0 0–0 9.Nh4 Bg4

 

メインラインは9.Qe2ですが、9.Nh4も悪くない選択です。黒の応手は本譜のように白のキングサイドを乱しておくか、おとなしく9…Nbd7 10.Nxf5 exf5 11.Qc2 g6e4のマスをコントロールし続けるかのどちらかです。

 

10.f3 Bh5 11.g4 Bg6 12.Nxg6 hxg6 13.Qb3 Qe7

 

実戦は白のキングサイドを乱して戦う方針を選びます。下手をするとそのままつぶされる可能性もありますが、うまく立ち回ることができればキングサイドの伸びすぎをとがめることができます。力が試されるところですが、相手の悩みの種は多いほうがいいだろうと判断しました。

 

14.g5

 

14.e4 Nbd7 15.Bg5には15…e5!と反撃されるので、ナイトを押し込めておくのは悪くない選択だと思います。

 

14...Nd5 15.e4 Nb6 16.Be2 a5!?N




このゲームで僕は序盤から小刻みに時間を使っていました。そのほとんどはこの手への評価に使いました。
Slavの考え方の基本はセンターにどう反撃するかです。このa5の意図はb4のビショップをポーンとNa6で支えておき、Nd7e5(あるいは単にe5)とセンターに反撃するというものです。さらには白からのa5も一時的にではありますが、消しています。ダイレクトにセンターに反撃するなら16…c5 17.dxc5 Bxc5 18.Kh1 Nc6 19.a5 Nd4! Polugaevsky–Torre,TolucaInterzonal 1982もありますが、どちらが勝るかは難しいところです。

 

17.Na2 Na6 18.Be3

 

18.Bxa6には18…Rxa6!と取り返すことができます。

 

18...Nd7 19.Rac1 e5!

 

ここでセンターへの反撃です。

 

20.Nxb4

 

20.d5?!には20…Bc5! 21.Kh1 cxd5 22.exd5 Bd4!を用意していました。白にはg5d5b2と守るべきポーンが多く、次のNac5にも備えなくてはなりません。23.Bxa6!?には23…bxa6!で次にRab8とさせれば黒大成功です。

 

20...Nxb4 21.dxe5 Qxe5 22.Rfd1 Rad8 23.Rd2 Qe7! 24.h4

 

黒はルークにひもをつけつつ、g5を狙います。もし23.Rcd1?!ならば23…Nc5!です。次の手にもかなり時間をかけました。

 

24...b6!

 

Nc5の準備です。この手を指して手ごたえを感じました。相手はダブルビショップを持っていますが、いい使い途が見当たりません。

 

25.Kg2 Nc5 26.Bxc5 bxc5=




相手はアフリカの選手にしては珍しく、長考を繰り返していました。こちらも序盤の小考があったので、時間に関してはお互いさまでしたが、ここまでのところ相手の読みを上回っている自信はありました。しかし、周りを見渡すと思ったほど景色がよくありません。悪くなかったはずの塩見さんがだんだん押し込まれており、小島、南條もどうやって勝つのかわからない局面になっています。僕の局面も悪くないとは言え、勝つほどのチャンスがあるわけではありません。

 

27.Rcd1 Rxd2 28.Rxd2 Rd8 29.Qd1 Rxd2 30.Qxd2 Qe5

 

ルークを2枚換える間に2度の小考を挟んで、持ち時間の差はほとんどなくなりました。後10手はラピッドチェスを覚悟しなければなりません。

 

31.Bc4 Qd4 32.Qe2

 

普通ならこのあたりでドローを考え出すところです。上相手に黒ならここでオファーしてドローでも十分なはずですが、どうやらこのまま進むと14番ボードで1.5Pは取られそうだという結論に達しました。次の手はかなり悩みましたが、手数と相手の持ち時間を見て勝負を仕掛けることにしました。

 

32…Kf8!?

 

白の将来的な狙いであるh5g6をあらかじめ外しておいた…というのは建前で、実際の狙いはキングサイドのポーンを突くために、キングをb7b6まで持っていこうというものです。相手に持ち時間があるとまずいですが、相手はこの構想をとがめるだけの時間を持っていません。下手に咎めようとクイーンが動くと、その瞬間に黒のクイーンも白陣に入ってきます。そして僕がこの手を指したもっとも大きな理由は、相手が「中終盤のタクティカルな局面では安全な手を優先させる」ということを、事前のプレパレーションで知っていたということです。

 

33.b3 Ke7 34.Qf2 f6?!

 

キングが離れる前にf7を取られないようにしておきます。34…Qd6が普通だと思いますが、とにかく40手目に到達する前にキングを安全な場所に逃げておこうと思いました。このあたりは「どの手が正しいか」よりも「どの手なら相手が悩むか」を基準に手を選択していました。

 

35.Qg3!? Kd7?

 

もちろん悪手です。ですが、あえて指しました。すでにチームは1.5Pを落としており、南條もドローっぽいエンディングになっていました。相手の持ち時間は56分というところでしたから、勝負をかけるならここだと思いました。

 

36.Qh3+?




そしてその勝負手が通りました!チェックするなら
36.Qg4!とチェックし、36…Kc7 37.gxf6 gxf6 38.Qxg6!とやって白優勢です。しかしこのラインを選択されることはない、と確信していました。ひとつは黒のクイーンが残っているところで、白のクイーンが離れてしまうため。そしてもう一つはb4で眠っていたナイトが38…Nc2と生還するためです。実際には38…Nc2 39.Kh3!と指して問題ないのですが、時間がない中ではそう冷静に指せるものではありません。

 

36...Kc7 37.Qg3+ Kb7 38.gxf6 gxf6?! 39.Qf2?

 

そして持ち時間が2分を切ったところで「安全な手」が来ました。黒のキングはb7に逃げ込み、キングサイドのポーンはいい形で残っています。勝負手がすべて通ったおかげで、ここからなら勝ちに行けると判断しました。

 

39...Qd6 40.f4 Kb6

ここで40手目です。持ち時間がない中での攻防は終わりました。次は働いていないb4のナイトをなんとか戦場に戻すことを考えます。実は40...Kb6という手の代わりに40...Nd3が可能なのですが(Mishaに指摘された時は見えなかった自分に呆れてひっくり返りそうになりました)、今見ると40.Bxd3 Qxd3は完全にドローです。結果的にここで40…Nd3に気がつかなかったのが幸いしました。

 

41.Kh3 Qd1!

 

後ろからのチェックを狙いつつ、Nc2を見せます。ここからの攻防はNc2を実現させるか否かの戦いです。

 

さらにこのあたりで南條のボードで事件が起き、南條が勝ちの局面になりました。相手も追加された30分を小刻みに使いながら悩んでいます。ザンビアチームからみると、早々に1.5Pとって22002000の戦いを残しているわけですから、勝てないとおかしいマッチですが、南條が勝ったことによりチームの引き分けが見えてきました。しかしこのときはChumfwaも僕もドローという選択肢は頭の中になかったように思います。考えていたのはただ一つ、自分が勝ってチームも勝つことです。

 

42.Qf1 Qd2 43.Qg2 Qe3+ 44.Kg4 Qc1 45.Qf1 Qe3 46.Qg2 Qc1 47.Qf1 Qd2 48.Qe2 Qd4




当然のドロー拒否です!黒は白キングをにらみつつ、なんとかナイトを助け出そうとします。無駄に手だけ進んでいるようですが、この間に白の時間はどんどん減っていきました。

 

49.Kf3 Qa1 50.Kg2 Qc1 51.Qf1 Qd2+ 52.Qf2 Qd1 53.Qe2 Qd4 54.h5!

 

相手の持ち時間はほとんどありません。ありませんでしたが、白は正解を見つけ出しました。勝ちに行くならこの一手です。これで黒も簡単に指すわけにはいかなくなりました。下手にキングを追うと、「王手は追う手」という将棋の格言通り、f6のポーンをキングで落とされて劣勢になります。幸い時間はまだ少し残っていたので、ここで腰を落ち着けます。

 

54...gxh5 55.Kh3 Qg1

 

 白のセンターポーンは強力なので一つ消しに行きます。55…f5!という手も少しだけ考えましたが、リスクが大きいと判断してあきらめました。相手は時間が少ないわけですから、無理に局面を打開しなければどこかでチャンスがくると思っていました。

 

56.Qxh5 Qh1+ 57.Kg4 Qxe4 58.Qf5?!

 

この手を見た瞬間、「来た!」と思いました。待っていたチャンスの到来です。58.Qf7!と指し、58…Nd5 59.Bxd5ならドローで妥協せざるを得ませんでした。この手を指してきたということは、まだ相手は勝ちに来ているということです。相手の持ち時間は1分半。狙っていた筋でしたが、わざと頭を抱えて考え込みます。相手が勝ちを探すことで持ち時間を消費してくれることを狙っていました。

 

58...Qg2+ 59.Kh5 Nd5!




40
手目から狙い続けて、とうとうナイトが戦場に戻ってきました。相手は明らかに動揺していましたが、ドローにしようという考えはなさそうでした。それを見て僕はもう一度局面に集中します。

 

60.Bxd5 Qxd561.Qxd5??はクイーンを取り返して、黒のポーンが早いので勝ち。60…Qxd561.Kg6なら…61…Qxb3! 62.Qxf6 Qxg3…勝てるかどうかわからないが、指せそうだ…60…Kh6なら…Qh2からf4を落としてやや良さそう…。

 

考えていると一分半は短いものです。ふと気がつくと相手の持ち時間が3秒を切っています。Chumfwaもそれに気が付きあわてて

 

60.Bxd5 0–1

 

と着手したところで相手の時間が落ちました。盤上よりも盤外で勝負している時間のほうが長かったような気がしますが、なにはともあれ勝ちは勝ちです。これで2.51.5、ザンビアに大逆転勝利です。局後、ずっと見守っていてくれたMishaと握手し、プレイングエリアの外に出たところで南條とハイタッチ。内容はともかく今大会で一番熱いマッチだったと思います。

 

これでチームの星を五分に戻しました。一方のザンビアは痛い敗戦のはずですが、ここから突然1番ボードと2番ボードが覚醒し、1番ボードChunfwa Stanley7.5/102番ボードJere Daniel6.5/10と獅子奮迅の活躍を見せ、気がつくと最終ラウンドでトルクメニスタンを2.51.5でくだし、47位という好成績を収めていました。このオリンピアードではアフリカ勢と多く当たりましたが、どの国もかなり強くなってきている印象です。最近チェスに力を入れている韓国と同じように、中堅国を脅かす存在になるのもそう遠いことではなさそうです。

 

日本の次の当たりはIPCA(国際障害者チェス協会)です。GMIMを擁した強豪チームということもあり、日本チームは気合いを入れて挑みました。特に気合いが入っていたのは、GM Lutherと対戦する小島でしょう。前日から相当な準備をしていったようです。

 

実はこのLuther−小島戦は、今回の日本チームのゲームで一番僕の印象に残っているゲームです。棋譜を見ていただけではわからないGMの強さを、間近で見ることができたせいでしょう。うまく指していると思っていた小島が、負けになったときの驚きは今でも忘れることができません。そこで特別にこの試合は小島本人に解説を依頼しました。ぜひ日本チーム大将の素晴らしい指しまわしと、それをはねのけたGMの強さを味わってほしいと思います。


コメント
 今回もまた、対局者ならではの迫真の棋譜解説ですね。堪能しました。次回の小島さんの解説もとても楽しみです。
 些細な訂正。「センターに反撃するなら16…c5 17.cxd5」は「17.dxc5」だと思います。
  • みとじん
  • 2010/11/25 7:05 AM
ご指摘ありがとうございます。

修正しました。
  • bmasahiro
  • 2010/11/25 11:08 PM
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