予選最終日の3日目、R.7-R.9の3試合です。
さすがに今日は特に運営に問題なく、スムーズにいきました。
まずはバングラデッシュとのマッチです。
私は長年、バングラデッシュの不動の1位だったGM Rahmanと。Rahmanとは2006年、2008年のMalaysian Openで対戦しており、1敗1ドローです。RahmanはGMで当然チェスが強いのはもちろんですが、非常に紳士で優れた人柄であり、私の尊敬するプレーヤーの1人です。
□Rahman,Ziaur (GM,2533,BAN)
■Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
Asian Online Nations Cup 2020(7)
1.d4 Nf6 2.Bg5 Ne4 3.Bf4 c5 4.f3 Qa5+ 5.c3 Nf6 6.d5 Qb6 7.Bc1 e6 8.e4 exd5 9.exd5 Bd6
[今回はTrompowskyに対して、ちょっと変わったこのラインを用意していました。Trompowskyはほんの初めの数手で同じピースを何度も触るちょっと不思議なオープニングです。]
10.c4 O-O 11.Bd3 Re8+ 12.Ne2 Bf8 13.Nbc3 d6 14.O-O Nbd7 15.b3 Ne5 16.Bc2 g6 17.h3!
[静かなこの1手が強力で、g4のマスを奪われるとe5のナイトの行き先がありません。]
17...Bg7 18.Bd2 a6 19.f4 Ned7 20.g4!?
[正直、こんなにアグレッシブに来るとは思っていませんでした。]
20...Qd8 21.Ng3 h6 22.a4 Nh7 23.Kg2 Rb8 24.Rc1 Ndf8 25.Qf3 Qh4 26.Nce4 h5 27.f5!
[決定的なブレークスルー。黒の反撃は届きません。]
27...hxg4 28. hxg4 gxf5 29.Nxd6 Re5 30.Ndxf5 Bxf5 31.Nxf5 Qf6 32.Bf4 Ng6 33.Bxe5 Qxe5
34.Nh6+! Bxh6 35.Qxf7+ Kh8 36.Qxg6 1-0
[最後は接続が切れて時間が落ちましたが、投了するに値する局面です。]
チームは1.5-2.5で負け。上2ボードがポイントを取ってくれただけに悔しい負けです。特にTuさんはGMを完全に土俵際に追い詰めましたが、ステールメイトのトリックでドローに逃げられてしまいました。
続くR.8はタイと。
正直、あまり警戒していなかったチームですが、レイティング以上にどのプレーヤーも実力があるのは間違いありません。
□Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
■Wiwatanadate,Poompong (FM,1952,THA)
Asian Online Nations Cup 2020(8)
1.e4 e6 2.d4 d5 3.Nd2 c5 4.Ngf3 Nf6 5.e5 Nfd7 6.c3 Nc6 7.Bd3 Be7 8.O-O h6 9.a3 O-O 10.b4 cxd4 11.cxd4 f5 12.exf6 Bxf6
13.Nb3?
[何となくいつも指さない手を指してしまいました。普段は13.Bb2と指します。]
13...e5 14.dxe5 Ndxe5 15.Nxe5 Nxe5 16.Bb1 Bg4! 17.Qc2?! Rc8!
[これが軽視していた手で、Qh7+があまり効きません。おそらくゆっくり考えていれば17.f3と指していたでしょう。]
18.Qh7+ Kf7 19.Ba2?
[19.f4と突けば19...Rh8? に20.fxe5 Rxh7 21.Bxh7で対抗できるので、まだ勝負は分からなかったでしょう。]
19...Be2! -+
[このg4-e2-d3で白クイーンを捕獲するアイディアは完全に盲点でした。19...Rh8 20.Qf5でクイーンを逃がすことしか頭にありませんでした。白は駒損を免れません。]
20.Nd4 Bd3 21. Nf5 Rh8 22.Nxh6+ Ke6! 23.Nf7 Kxf7 0-1
[白番なのにあっけなく終わり、非常に申し訳ない1戦でした。白は多くのブランダー、そして黒は多くの好手... 完敗です。]
チームも1.5-2.5で負け、この時点で準決勝への望みはほぼ絶たれました。
最終ラウンドはアフガニスタンと。
この日2連敗の私が抜けても良かったと思いますが、出場の機会をいただきました。
□Sakhawaty,Sepehr (1491,AFG)
■Baba,Masahiro (FM,2289,JPN)
Asian Online Nations Cup 2020(9)
1.Nf3 Nf6 2.g3 g6 3.Bg2 Bg7 4.O-O O-O 5.d4 d5 6.c4 c6 7.cxd5 cxd5 8.Nc3 Ne4 9.Nxe4 dxe4 10.Ne5 Qd5
[Fianchetto Grunfeldでセンターポーンを交換するバリエーション。勝つために、黒は対称形を崩して勝負します。]
11.Qa4 Nd7 12.Qc4 Qxc4 13.Nxc4 f5 14.Bg5 Re8 15.Rfd1 b6 16.Rd2 Ba6 17.Ne3
[白のピースの配置が良くないのを見て、ここで仕掛けます。]
17...h6 18.Bf4 g5 19.Be5 Nxe5 20.dxe5 e6 21.f4 exf3 22.exf3 Rad8 23.Rxd8 Rxd8 24.f4 Bf8 25.Rd1 Rxd1+ 26.Nxd1 Bc5+ -+
[駒割はイコールですが、黒のダブルビショップが強力すぎて、すでに黒勝ちのエンドゲームです。メインのターゲットはf4のポーン。]
27.Kh1 Be2 28.Nc3 Bd3 29.Bf3 gxf4 30.gxf4 Be3 31.Be2 Bc2 32.Bc4 Kf7 33.Ne2? Be4# 0-1
[最後はメイトで勝利。]
最終戦は4-0で勝利!
日本の最終順位は12位でした。スタート順位も12位なので、実力相応の結果でしょうか?
個人としては5勝3敗でした。
今回、初めてOnlineの国際戦に参加して思ったのが、「こういう大会もありだな」でした。運営面ではいろいろトラブルはありましたが、どの国のプレーヤーも国旗を背負って戦っているので、そんなに簡単に倒せるプレーヤーはいませんでした。圧倒的に強いメンバーをそろえていたインドが6位と苦戦したことも、この大会のレベルの高さを物語っていたと思います。
やはりオリンピアードと同じでチーム戦は個人でのオープントーナメントとは違った雰囲気・緊張感があります。今回、日本チームはExperiencedプレーヤー3人とYoung Talent2人で構成され、とてもバランスの良いチームだったと思います。IMの南條くんはもちろん、日本チームでTuさんがプレーしてくれるのはとても心強いですし、若手2人はこれから上のボードで日本を引っ張っていく存在で、ますますの成長が期待できます。本大会のアナウンスが出て真っ先に手を挙げたのは私だったと思いますが、出場できて良かったです!
国際大会でのチーム戦は2008年のDresden Olympiadしかなく、これを最後に日本代表からは退きました。「もう出場することはないかな」と考えていましたが、今大会で少し考えも変わりました。
最後に、観戦・応援してくだった全ての方々に御礼申し上げます!
live解説のアーカイブは以下のリンクから!
https://www.youtube.com/watch?v=u2_Eox1i0Ms