Capelle la Grande Online Blitz 2021

 

 

Capelle la Grande Online 2021の後半はBlitz編です。

 

トーナメントの流れは前日のRapidとほぼ変わらず、日本時間23:00(中国時間22:00)から開始で、形式は3+2/手のタイムコントロールの11Rスイスでした。ただ、Rapidよりも参加者のレベルが高く、IvanchukKamskyCheparinovJovabaなどのビッグネームをはじめ、多くのタイトルホルダーがそろっていました。そしてエントリー締め切りぎりぎりに世界女子チャンピオンのJu Wenjunも参加を表明し、オンラインのオープンブリッツ大会としてはこれ以上ないようなレベルだったかと思います。私はスタートランキング75位でスタート。

 

 

初戦勝つと、R.2でいきなりCheparinovと当たりました。

 

 

Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)

Cheparinov, Ivan (GM,2667,BUL)

Cappelle la Grande Online Blitz 2021(2)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bg5 e6 7.f4 h6 8.Bh4 Qb6 9.Qd2 Qxb2 10.Rb1 Qa3 11.e5 dxe5 12.fxe5 Nfd7 13.Ne4 Qxa2 14.Rd1 Qd5 15.Qe3 Qxe5 16.Be2 Bc5 17.Bg3 Qd5

18.Nxc5 Qxc5 19.O-O O-O 20.Bf2 Nc6 21.Nxc6 Qxc6 22.Bd3 e5 23.Be4 Qe6 24.Bd5 Qg6 25.Qb3 Nf6 26.Bc5 Nxd5 27.Bxf8 Nf4 28.Rxf4 exf4 29.Rd8 Be6 30.Qb6 Rxd8 31.Qxd8 Qxc2 0-1

[CheparinovPoisoned Pawn Variationに飛び込んでいいところなく終了。]

 

 

このあと、下には取りこぼさなかったため、GMとの対戦がいくつかありました。

R.7ではCheparinovと同国のGM Enchevと対戦。

 

 

Enchev,Ivajlo (GM,2501,BUL)

Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)

Cappelle la Grande Online Blitz 2021(7)

 

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.f3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nb6 6.Nc3 Bg7 7.Be3 0–0 8.Qd2 Nc6 9.0–0–0 f5 10.h4 fxe4 11.h5 Bf5?

[正しい手順を忘れていました。本譜だと12.g4!で困るので、11...gxh5g6にビショップを引くマスを作らないといけません。]

12.hxg6? Bxg6 13.fxe4

13...Rxf1?

[白のダブルビショップを消し去りd4のポーンも良い形で落とせる、非常に魅力的に見えるエクスチェンジ・サクリファイスで、瞬時に指してしまいましたが、もっと良い手がありました。13...Nxd4! が可能で、14.Bd3 (14.Bxd4 Qxd4 15.Qxd4 Bxd4 16.Rxd4 Rxf1+がポイント) 14...Qd6 15.Nge2 Nxe2+ 16.Qxe2なら限りなく単純な1ポーンアップで黒良しでしょう。]

14.Rxf1 Nc4 15.Qd3 Nxe3 16.Qxe3 Nxd4 17.Nf3 c5 18.Nh4!

[黒の守りの要である白マスビショップを消しにいく良い手です。]

18...Qd6 19.Nxg6 Qxg6 20.Nd5 Re8 21.Rh3 Qa6?

[f1のルークとa2のポーンのダブルアタックで、かなり黒にチャンスありと楽観的に感じていました。それがものの数手後にリザインすることになるとは...]

22.Qf2! Rf8 23.Nxe7+ Kh8 24.Qxf8+! Bxf8 25.Rxf8+ Kg7 26.Rg8+! Kf7 27.Rxh7+

[なんと次にRg6+! a6のクイーンが取られます。攻撃的で良いと思っていたa6のクイーンの位置が仇になりました。]

1–0

 

 

このトーナメントで最も思い出深いゲームとなったのは、ロシアのGM Demchenkoとの対戦でした。

 

 

Demchenko,Anton (GM,2610,RUS)

Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)

Cappelle la Grande Online Blitz 2021(9)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Qxd4 Nc6 5.Qe3 Nf6 6.Nc3 g6 7.h3 Bg7 8.Bc4 0–0 9.0–0 b6 10.Rd1 Nd7 11.Qe2 Bb7 12.Bb3 Nc5 13.Bf4 Qc8 14.Rac1 Nxb3 15.cxb3 Qe6 16.Ng5 Qf6??

17.Nd5!

[これで黒は駒損を避けられません。16...Qd7だったらほぼイコールです。]

17...Qxb2 18.Qxb2 Bxb2 19.Rxc6 Bxc6 20.Nxe7+ Kg7 21.Nxc6 h6 22.Nf3 Rfe8 23.Nd2 Be5 24.Be3 Rac8 25.Nxa7 Rc2 26.a4 Re7 27.Nb5 f5 28.exf5 gxf5 29.Nc4 f4 30.Bxb6 f3 31.Nxe5 dxe5 32.gxf3 Kf6? 33.Be3?!

[33.Bd8! が簡単な1手ですが、ブリッツだと2600GMもこんな手を見逃します。]

33...Rg7+ 34.Kf1 Rb2 35.Rd6+ Ke7 36.Bxh6 Rf7 37.Bg5+ Kf8 38.Kg2 Rxb3 39.Bf6 Kg8 40.Bxe5 Rbxf3

[この黒がいつ投了してもおかしくないような状況で、事件は起こりました!]

41.Bf4??

[41.Bg3を指そうとしたところの明らかなマウススリップです。]

41...R3xf4 42.Rd2 Rxa4

[直前のマウススリップで相手が動揺しているだろう隙に、ここで私からドローオファーしました。実際、局面はほぼイコールで、黒が最善を指すと本譜のような1ポーンダウンのルークエンディングになります。しかし、こんな状況下でも相手はいたって冷静で、ゲームを続けます!]

43.Nc3 Ra3 44.Nd5 Rg7+ 45.Kh2 Rf3 46.Re2 Rh7 47.Kg2 Rfxh3 48.Nf6+ Kf7 49.Nxh7 Rxh7

[こうして1ポーンダウンのルークエンディングになりました。正しく指せばドローですが、実戦そしてほとんど考える時間のないブリッツでは一筋縄にはいきません。ここから長い長い我慢の時間が始まります。]

50.Ra2 Kg6 51.Kg3 Rb7 52.Ra6+ Kg7 53.Kg4 Rb1 54.f4 Rc1 55.Kg5 Rg1+ 56.Kf5 Rb1 57.Ra7+ Kf8 58.Ra6 Kf7 59.Re6 Rb5+ 60.Re5 Rb1 61.Ra5 Rb2 62.Ra7+ Kf8 63.Kg5 Kg8 64.Ra6 Kf7 65.Rf6+ Kg7 66.Rg6+ Kf7 67.Rc6 Rg2+ 68.Kf5 Ra2 69.Rc7+ Kf8 70.Kg5 Kg8 71.Re7 Kf8 72.Kf6 Ra6+ 73.Re6 Ra1 74.Rb6 Kg8!

[オンリームーブ。74...Ke8? だとなぜダメなのかは大抵のエンドゲームの教本に出てきます。]

75.f5 Rf1 76.Rb8+ Kh7 77.Ke6 Kg7 78.Rb7+ Kf8 79.Kf6 Kg8! 80.Rb5 Rf2 81.Rb1 Rf3 82.Rg1+ Kf8 83.Rb1 Kg8! 84.Rb8+ Kh7 85.Ke6 Kg7 86.Rb7+ Kf8 87.Rc7 Rf2 88.Kf6 Kg8! 89.Rg7+ Kf8 90.Rg4 Rf1 91.Kg6 Rf2 92.Re4 Rg2+ 93.Kf6 Rf2 94.Re3 Rf1 95.Rg3 Rf2 96.Kg6 Rf1 97.Ra3 Ke7 98.Re3+ Kf8 99.Rb3 Ke7 100.Rb7+ Kf8 101.Rf7+ Kg8! 102.Rd7

[ずっと白も黒も同じような手を繰り返しているにもかかわらず、3回同時局面にはなりません。Europe Echecsの対局サイトでは、同時局面が3回現れると(=Three-fold repetitionが成立すると)強制的にドローになるシステムなのは、前日のRapid最終戦のドローで分かっていました。にもかかわらず、なかなか我慢の時間が終わりません。白は同じような手を指しているように見えますが、実際はルークをbファイル、cファイル、dファイルと少しずつ変えてきながら同時局面になるのを避け、相手のミスを待ち続けています。実に巧妙な、実戦的なテクニックです。]

102...Rg1+ 103.Kf6 Rf1 104.Rd5 Rf2 105.Rd8+ Kh7 106.Rf8 Rf1 107.Ke6 Kg7 108.Rf7+ Kg8 109.Re7 Kf8 110.Rb7 Re1+ 111.Kf6 Kg8! 112.Rb8+ Kh7 113.Kf7

[ここで初めて白からf7にキングを進め、fポーンをさらに進める準備にかかりました。状況が変わったので黒は注意が必要です!]

113...Rc1!

[この手か113...Ra1しかドローになりません。(Rd1はダメです!)ルークはサイドからチェックできるよう方向転換します。]

114.Rb7 Kh6 115.f6 Rf1??

[49手目から60手以上ミスなく耐えてきましたが、ここでついに負けの手を指してしまいました。115...Ra1でサイドからのチェックを残してまだドローです。]

116.Rb2!

[黒からRa7+がなく、次にRh2+からKg7で白はパスポーンを単純にプロモーションさせられます。1320秒にも及ぶハードなゲームはここで私の時間が落ちて終了。このラウンド、最後まで残ったボードでした。]

1–0

 

 

結局、Cheparinov(2667)Nasuta(2512)Enchev(2501)Demchenko(2610)4人のGMに負け、あとは下に全勝し、74敗の7Pで最終順位は276人中61位でした。優勝はロシアのGM Fedossevで、500€の賞金を手にしました。

 

大会の結果やゲームは以下のサイトで見ることができます。

37e Open International de Cappelle-la-Grande - Actualités / France - Europe Echecs (europe-echecs.com)

 

Capelle la Grande Onlineは予想以上に実のある内容で、眠い時間帯の中、参加した甲斐がありました。オンラインならいつでも参加できるので来年も、と思ってしまいますが、やはり実際の会場でのトーナメントは特別な雰囲気があるので、早くOTB開催ができるようにと願っています。


Capelle la Grande Online Rapid 2021

 

 

多くの伝統的なオープン大会がコロナ禍で開催を見送る一方、フランスの一番有名なオープン大会はオンライン開催という形で伝統を閉ざさないようにしました。

 

オンラインなので通常のクラシカルとは違い、RapidBlitzの変則的な大会形式にはなりましたが、今回、主催者から直接お声がけいただいたので、参加することに。今回、RapidBlitzにエントリーすることにしました。エントリー費は各トーナメントともに5€で、クレジット決済できました。

 

3/5() Bullet

3/6() Rapid

3/7() Blitz

3/8() Women

 

 

まずは昨日に行われたRapid編です。

 

トーナメントは日本時間23:00(中国時間22:00)から開始で、10+3/手のタイムコントロールの9Rスイスでした。はじめは7Rとの情報が出ていたのですが、当日の朝に来たメールに9Rにすると書かれており、ギョッとしました。9Rだとだいたい終了までに5時間かかるので、普段寝ている時間にプレーする自分にとっては睡魔をどう克服するかが課題でした。(結局、克服できませんでしたが!)

 

22:00(ここからは中国時間で表記)からR.1が開始なので、参加者は21:30までにZoomに入り、Europe Echecsのプレーゾーンで待機します。Chess.comLichessなど慣れた場所でのゲームではないので、多少不安はあったものの、割と分かりやすいサイトで、特に問題なくプレーできました。

 

プレーヤーはZoomで割り当てられた部屋でアービターの監視下の元でプレーするのはAsian Nations Cupの時と同じだったので、こちらも特に問題なし。やはりオンラインの大会は一度経験しておくと次から全然違います。

 

ペアリングは自動的に組まれ、対戦相手が発表された後に3分間のインターバルがあり、プレーヤーたちはゲームに備えます。R.1R.5まではほぼノンストップ、R.5のあとに10分間の休憩がありました。そのあとR.6R.9まではまたノンストップです。

 

Rapidトーナメントの登録者は202人で、私はスタートランク37位でしたが、上の方のタイトルホルダー達が続々とドロップアウトしていったため、実質何人参加していたかは分かりません。

 

普段寝ている時間帯でのプレーなので、冴えわたるプレーは期待できませんでしたが、それを鑑みてもゲームの内容は良くなく、531ドローの41位で終了。結局タイトルホルダーとの対戦はカザフスタンのIM1名のみで、あとはフランスの地元プレーヤー達でした!

 

今回はそんな中、比較的エキサイティングだったゲームを紹介します。

 

 

Baba,Masahiro (FM,2274,JPN)

Joly,Fabrice (1976,FRA)

Cappelle la Grande Online Rapid 2021(5)

 

1.e4 c5 2.Nf3 Nc6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Qb6 5.Nb3 Nf6 6.Nc3 e6 7.Qe2!?

[Keres attackEnglish attackをミックスさせたようなセットアップを目指します。]

7...d6 8.Be3 Qc7 9.g4 Be7 10.g5 Nd7 11.f4 a6 12.0–0–0 b5 13.h4 Bb7 14.Bg2 Nb6 15.Bxb6 Qxb6 16.Rhe1 0–0 17.h5 Rfe8

18.g6

[白には他にも良い手がありますが、g5-g6h5-h6のポーン突きはだいたい白にとってメリットがあります。]

18...fxg6 19.hxg6 h6 20.Bh3 Bc8 21.a3

[この手はいつも突くか突かないかジレンマです。突けば…b4から黒の攻めを加速させ、突かなければこれまた…b4からc3の安定した位置のナイトを追い払われます。]

21...b4 22.axb4 Qxb4 23.Kb1 Bf6 24.e5!? dxe5 25.Ne4 Nd4

[黒は黒マスビショップを取らせるのと引き換えに白キングの前のディフェンダーのナイトを消して勝負しにきました。]

26.Nxd4 exd4 27.Nxf6+ gxf6 28.g7

[安全に28.Qe4 Rb8 29.Qxd4とポーンを取り返すのがベストだろうとは分かっていたものの、これではおそらくドローなので、ちょっとギャンブルしました。]

28...Rb8 29.b3 a5 30.Qh5 Bd7 31.Qxh6 a4?

[31...Qc3なら... Rxb3+を避けられないので、パペチュアルでドローだったでしょう。]

32.Rg1 axb3 33.Qh8+ Kf7

34.g8Q+! Ke7!

[34...Rxg8 35.Qh7+! (この手がポイント!)Ke8 36.Rxg8+ Qf8 37.Rxf8+ Kxf8 38.Qh8+では黒はほとんど全ての駒を失い、ゲーム終了。黒は本譜でキングの逃亡を図りますが、2つのクイーンから逃れるのは簡単ではありません!]

35.Rg7+?!

[この手も勝ちを逃すわけではありませんが、35.Qxf6+! Kd6 (35...Kxf6 36.Qg7#) 36.Rxd4+というシンプルな手を見逃していました。]

35...Kd6 36.Rxd7+! Kc5!?

[36...Kxd7 37.c3+–]

37.c3!

[黒の最後の望みはbxc2+からの一発逆転なので、この可能性を消します。ちょっと長いですが、37...Qxc3には38.Rc7+から強制メイトがあります。(この手順はゲーム中見えていません。)37...Qxc3 38.Rc7+ Kb4 39.Qxe6 Qxc7 40.Rxd4+ Kc3 (40...Ka3 41.Qa6+ Qa5 42.Qxa5#) 41.Rd3+ Kb4 42.Qxb3+ Ka5 43.Rd5+ Ka6 44.Bf1+ Ka7 45.Ra5+ Qxa5 46.Qh7+ Ka8 47.Bg2+で黒メイト受け無し。]

37...dxc3 38.R1d5+!?

[白はいかにしてボードの隅っこにいるクイーン×2をゲームに戻すかが勝利へのカギとなります。本譜はg8のクイーンを戦場に戻すためのサクリファイスです。他にも勝ち方はあり、クイーンは2つ必要なく、1つ犠牲にするのが手っ取り早いです。例えば、38.Rc7+ Kb6 39.Qxe6+! Ka5 40.Ra7+ Kb5 41.Qa6+ Kc5 42.Rc7#など。]

38...Kc6

[38...exd5 39.Qxd5+ Kb6 40.Qxf6+ Re6 41.Qfxe6+ Qd6 42.Qexd6#(これはゲーム中見えていました!)]

39.R7d6+ Qxd6

[39...Kc7 40.Qhg7+ Re7 41.Qxe7#(これもゲーム中見えていました!)]

40.Rxd6+ Kxd6

[相手のクイーンが消え、ちょっと冷静になって局面を見てみると、白の駒得は圧倒的なので、黒キングをメイトにしにいく必要はありません。]

41.Qxe8 c2+ 42.Kb2

[ここで42.Kc1??はブランダー大賞となります。42...b2+! 43.Kxc2 b1Q+で一発逆転、黒勝ちになります!]

42...Rxe8 43.Qxe8 Kd5 44.Qxe6+ Kd4 45.Bf5 1–0


Cappelle la Grande 2020 -開幕-

昨日スタートしました。今年は日本から4名が参戦中です。

 

一昔前に比べれば規模は縮小したものの、最終的には330名もの参加者を集めるのはさすが、ヨーロッパの伝統ある大会です。

 

この大会の長所としては招待選手に対しては宿泊補助(ツイン+朝食)があります。短所としてはパリからもブリュッセルからもロンドンからも遠い、観光するところがない(Cappelle村で探索できるのはスーパーくらい?)、ホテルから会場まで遠い(ホテルを選べない)、飽きないよう食べるものを探すのが難しい、といったところでしょうか。しかし、短所を逆手に取れば、集中してチェスだけできる環境と言えるでしょう。

 

 

現在、R.2が進行中です。

 

ペアリング・結果は以下のリンクから確認できます。

http://www.echecs.asso.fr/FicheTournoi.aspx?Ref=49255

 

ペアリングは3グループに分けての加速スイス。1番上のグループは2P、真ん中のグループは1Pの加速ポイントが与えられているため、完全スイスの様態となるのは中盤以降となります。

 

Live Gameもありますが、中継されているのは20ボードもないため、ゲームは参加者の皆さんからの報告を待つとしましょう。


Cappelle la Grande 2014 -招待状-

以下、尚広くんからの告知です。
 
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Cappelle la Grande 2014の招待状が届きました。
 
今年は日本から6名が招待されます。
条件は例年通り、期間中の宿泊費(ホテルボレル・ツインルームx3)、大会参加費、会場での食事、パリorブリュッセルからのバスを、主催者 が負担してくれます。
 
大会期間は31日〜8日です。詳細な情報については
http://www.cappelle-chess.fr/en2/default.php
をチェックしてください。
 
招待選手として参加を希望される方は、113日までに中村尚広(rye_naohotmail.com @を半角に変えてください)までその旨をお知らせください。相談や大会の様子についての質問でも構いません。
 
参加希望者が6名を超えた場合は、基本的にはFIDEレイティングの上位者を優先しますが、最近の大会での成績や将来性なども加味して判断したいと思います。
 
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Cappelle la Grande 2014 -現況-

今年3月のCappelle la Grandeでの国際オープントーナメントについてです。
 
今回の取りまとめは中村尚広くんが行ってくれることになりました。ただ、告知等はこのページで行うようにします。
 
現在、尚広くんがオーガナイザーと交渉中です。今年から招待枠が4から6へ増強されるようなことも昨年の参加者から聞いています。(ただし、オーガナイザーとの口約束なので本当かどうかはこれから確認が必要)
 
なお、トーナメントの詳細については大会HPや過去の記事を参照して下さい。

Cappelle la Grande 2013 -Sjugirov wins-


                                                                   Photo by Ishizuka Mirai

今年のCappelleも閉幕。優勝はロシアのGM Sjugirovでした。

 

日本から参加の皆さんもお疲れ様。皆、レイティング以上の戦績を残せたことは何よりだと思っています。今回は追っていないようで、実は毎日、結果は見ていました。ただ、ゲームは見ていないのと、旅のネタ話は聞いていないので、そこについては帰国後の皆さんの報告を待っています。

 

次のCappelle la Grande International Chess Open201431日〜8日です。来年は招待枠が4枠→6枠になるという情報が入ってきています。2年前に私がオーガナイザーにリクエストして断られた招待枠の増強が、ようやくここにきて実現ということです。ここ最近、枠を余らせずに多くの日本人プレーヤーをCappelleに送り込んできた私の努力が少し実ったかなと、ちょっと自己満足。


Do you know Jean Bart ?

今年もCappelle開幕まであとわずかとなりました。

 

いつものことですが、プレーヤーの皆さんには期待しています。今回、毎日追いかけることはできなさそうですが、結果は常にチェックしています。いいゲームができたら見せてくださいね。

 

小島くんは今日のハンガリーでの重要な1戦で0.5P落とし、3つ目のIMノームに届かず。そしてCappelleのあとはすぐに帰国ということです。少なくともIMになってから帰国するものだと思っていたのですが、何か他の誘惑に負けたのでしょうか? Cappelleでノームを取れれば問題ないのですが...

 

さて、そんなCappelle前ですが、本日は日本プレーヤーの宿泊するダンケルクの英雄について、少し歴史をお勉強しましょう。

 

 

WRITTEN BY

Kanda Daigo

 

 

ジャン・バールJean Bart 1650-1695をご存知ですか?

 

カペル・ラ・グランド大会の宿泊施設がある北フランスのダンケルク市には、目抜き広場の中央にこの人の銅像が立っています。

 


 

観光案内所にも、彼の姿を描いたグッズが置いてありましたし、カーニバルにあわせたイラストもありました(2012229日撮影)。

 


 

が、いかんせん、どこにも説明がありません。地元では有名すぎて、説明の要を感じないのでしょう。仕方ないので、本屋さんに紹介してもらった伝記を一冊読みました(*)。それによると・・・

 

ジャン・バールは17世紀の後半に活躍した私掠船(しりゃくせん)の船長でした。

 

時は近世、嵐の時代。二大海運国のオランダとイギリスが大西洋の覇権を競い合い、三度にわたって戦火を交えました。イギリス=オランダ戦争(蘭英戦争)です(第一次1652年〜54年、第二次1665年〜67年、第三次1672年〜74年)。フランスは姻戚関係(王太子の嫁がイギリスの王族出身)から、イギリス側について参戦します。

 

当時、腕っ節の強い漁師たちは、戦争が始まると、命がけの「出稼ぎ」に行くのが習いでした。銃火器を積んだ改造船に乗り込み、軍の別動隊として海に乗り出し、敵の商船を襲って積み荷を奪う。それが「私掠」です。フランスの法律では、

1戦時に限り、また敵国の船舶に限り、私掠を認める。

2船舶を拿捕(だほ)したら積み荷を全て封印し、乗員と共にすみやかにフランス領の港に曳航(えいこう)すべし。

3乗員は捕虜と見なす。積み荷は、10%を国王に納め、残りは当該私掠船の船主と乗組員のものとする。

と定められていましたJacques Duquesne, pp.74-75.3が出稼ぎの報酬となります。

 

首尾よく成功すれば大きな儲けが期待されますが、とても危険な仕事です。海上で敵国の商船を見付けたら、注意深く、少しずつ距離を詰める(戦艦などが護衛についているかどうか、見極めながら)。ある程度まで近付いたら、砲火をかいくぐり(戦時には商船にも大砲が備わっていました)、素早く操船して敵の船首か船尾に回る(大砲は船腹の両側に付いているので、その射程圏の外から近付くため)。十分に接近したら敵船にカギを引っかけ、ロープを伝って乗り込み、護衛の兵士と白兵戦を繰り広げる。最後に敵船の船長を殺すか捕虜にして、勝利。正規軍さながらの海戦です。

 

港湾都市ダンケルクはこの時代、スペイン領、オランダ領、イギリス領と支配者が転々と変わった挙句、ようやく1662年にフランス領となりました。ジャン・バール12歳の時です。列強各国がこのように次々と触手を伸ばしたのも、港を領地にすれば交通の拠点を抑えられるだけでなく、周辺の漁師たち、戦時には頼もしい別動隊となる男たちを得るというメリットもあったからです。

 

ジャン・バールが船主から実力を認められ、船長に引き立てられたのは弱冠22歳の時でした。その1672年、第三次蘭英戦争がぼっ発すると、私掠船で大西洋に乗り出して神出鬼没、めざましい功績を挙げました。1674年にはオランダ海軍の軍艦「ネプチューン」号を拿捕し、その功績により「海軍大尉」の称号を与えられます。

 

こうしてジャン・バールは雇われ船長を振り出しに、立身出世の階段を駆け上がり、やがては私掠船団を率いる旗艦の艦長となります。1689年には、時のフランス国王ルイ14世から「貴族」の称号を授与されます。そして1695年、ダンケルク港に駐留するフランス海軍の艦隊司令官に任命されるまでになりましたが、惜しくもその年、病に倒れ、45年の波瀾の生涯を閉じました。

 

ジャン・バールが生きたこの時代は未だ「国」の意識が薄い時代でした。当時のダンケルクはフラマン語(現在はベルギー北部の公用語)の地域であり、ジャン・バールは生涯、フランス語をほとんど話せず、航海日誌等はすべて書記がフランス語に翻訳したとか。ですから彼はフランス人ではなく、「ダンケルク人」、まさに「郷土の英雄」なのです。

 

[*参考]Jacques Duquesne, Jean Bart, Seuil, 1992.

ちなみに、どこの国にもマニアはいるようで(笑)、ジャン・バールについて、これでもかっ、と言うくらいに情報を満載したブログも見つかりました。

<Jean BART>, http://jb.collection.free.fr/Accueil/Accueil.html


Cappelle la Grande 2013 -Invited Players-

招待選手を決めるのに色々ありましたが、本日、公式ページを確認して、日本の招待選手4名を確認することができました。

 

http://www.cappelle-chess.fr/fr2/default.php?page=3898

 

今回の招待選手は次の4名です。

 

小島 慎也(2349,FM)

小林 厚彦(1997)

石塚 美来(1790)

三村 健介(1770)

 

あと、日本から橋本あづみさんが一般参加します。

鬼コーチFM小島慎也のもと、皆さんが少しでもこの大会で力をつけて来てくれることを願っています!

 

大会は2/23-3/28日間です。


Cappelle la Grande 2013 -Invitation-



Cappelle la Grande
での国際オープントーナメントの招待状が届きました。

 

今年も4枠です。条件も例年通りで、期間中の滞在費(ツインルーム×2)、食費(3食)、大会参加費、パリ(orブリュッセル)からの移動費が向こう持ちです。トーナメント期間は2013223日〜32日です。

 

招待選手として参加を希望する方は、12/8までに私に連絡をください。ここのコメント欄に書き込んでもらっても構いません。大会について不明点などがありましたら、私か過去の大会参加経験者に問い合わせてみてください。

 

なお、参加希望者が4名を超えた時の招待選手の決定方法ですが、まずはFIDEレイティング順に上から4名とします。FIDEレイティング保持者が4名に満たなかった場合はJCAレイティング順とします。ただ、この決定方法はあくまで原則であり、今回は最近の大会でのパフォーマンス、将来性なども加味して総合的に判断したいと思います。


Cappelle la Grande 2012 -Round9-

WRITTEN BY

Kanda Daigo

 

中村(尚)、カテゴリー優勝!310日(土)、第9ラウンド]

最終第9ラウンドはこうなりました。

 

南條 =/= Bokros, Albert (2472,IM)

篠田 1-0 Lantoine, Gauthier (1630)

 

PAPP, Petra (2296) - NOGUCHI, Koji (2040)

1.e4 c5 2.Nf3 g6 3.d4 Bg7 4.d5 Nf6 5.Nc3 O-O 6.e5 Ne8 7.h4 d6 8.h5 dxe5 9.hxg6 hxg6 10.Bh6 Bxh6 11.Rxh6 Kg7 12.Qd2 Nd6 13.O-O-O Rh8 14.Rxh8 Qxh8 15.Nxe5 Nd7 16.f4 Nf6 17.g3 Bf5 18.Be2 Qh2 19.g4 Nfe4 20.Nf3(23) Qf2(29) 21.Qd3(22) c4(22) 22.Nxe4(16) cxd3?? (23) [22…Bxe4ならば黒やや良し野口] 23.Nxf2 dxe2 24.Re1 以下略1-0

Janev戦同様、チャンスはあったのですが、相手よりも時間を使わず、勝負所で雑になったのが悔やまれます。対戦したGMIMは皆、勝負所でしっかり時間を使い、必死に勝ちを取ろうとするところが自分には一番勉強になりました。」(野口さん談)

 

Doluhanova, Evgeniya(2269,WGM) - NAKAMURA, Naohiro (2000)

1. e4 c6 2. d4 d5 3. Nc3 dxe4 4. Nxe4 Bf5 5. Ng3 Bg6 6. h4 h6 7. h5 Bh7 8. Nf3 Qa5+ 9. Bd2 Qc7 10. Bc4 e6 11. Qe2 Nf6 12. Ne5 Bd6 13. O-O-O Nd5 14. Rhe1 O-O 15. Qg4 Kh8 16. Qf3 Bxe5 17. dxe5 Nd7 18. Qe2 a5 19. f4 Nb4 20. Bxb4 axb4 21.Qd2 Nb6 22. Qxb4 c5 23. Qb3 Nxc4 24. Qxc4 b5 25. Qb3 c4 26. Qb4 c3 27. bxc3 Rfc8 28. Qb3 Ra4 29. Ne2 Rca8 30. Kd2 Rxa2 31. Rc1 Qc5 32. Nd4 R8a3 33. Qb4 Qxb4 34. cxb4 Rd3+ 35. Ke2 Rxd4 0-1

Caro-Kann Classicalで、今までほとんど指されていない妙手を選択して、早々に定跡を外しました。私が格下だからか、いきなりキングを狙って来ましたが、何もなく凌いで、Qサイドの反撃につなげました。ポーンを2つ切って攻めにいったところで、相手からミスが出て勝ち。」(中村尚さん談)

 

総合成績は

南條(2280)=5.5p(423), performance=2355

中村(尚)(2000)=5.5p(423), perf.=2236

野口(2040)=4.5p(333), perf.=2188

篠田(1906)=4.5p(441), perf.=1913

神田(1933)=3.5p(341), perf.=1830

 

南條さんはその実力を遺憾なく発揮しました。GM四人とIM一人に当たりながら5.5ポイントを挙げて二つ勝ち越し、カテゴリー賞金95ユーロを獲得しました。performance2355と、レイティングを大幅に上回る素晴らしい成績です。FM誕生の日もそう遠くないことでしょう。

 

中村(尚)さんもお見事でした。総合5.5ポイントでカテゴリー(2000-2099)優勝です。壇上に呼ばれ、トロフィーが授与されました。賞金250ユーロを獲得。大会スタート時のレイティング2000ですからこのカテゴリーで一番低い位置にいながら、全員をごぼう抜きして一位!昨年のカペルの雪辱を果たすべく、一年間、積み重ねて来た努力が大輪の花を咲かせました。拍手!!

 

このお二人が余りにも素晴らしい戦績を残したので目立ちませんが、実は野口さんも特筆ものの好成績でした。GMIMFM一人ずつ、WGM二人にWIM一人と対戦。9試合中6人がタイトル保持者という厳しい当たりなのに総合成績が五割の指し分けで、レイティング100以上も上回る高いperformanceを叩き出しました。6ラウンドのFantasticなゲームは日本の棋界で長く語り草となることでしょう。指し盛りの勢いそのままに、全日本選手権での活躍が大いに期待されます。

 

篠田さんも勝率五割に到達し、かつレイティング以上のperformanceで、「招待選手として最低限の結果を残せたから、ホッとしています」と慎ましい感想。でも実際は、カテゴリー賞金25ユーロを獲得しましたから十分に健闘したと言えます。毎年カペル大会には日本人が多く参加して来ましたが、過去において、同じ年に3人が賞金を獲得したことがあったでしょうか?皆さん、おめでとうございます!!

 

私はご覧のとおり、不甲斐無い成績でした。一から出直しです。

 

他人を知る

大会の始まる三日前、私は下見を兼ねて会場に行きました。折しも運営ボランティアの人たちが長テーブルを並べるなど、設営の真っ最中でしたので、邪魔にならぬよう、遠くから見学していると、ジャージ姿のおじさんが「こんにちは!」と気さくに声をかけて来ました。過去の大会写真を見ていたので、すぐに誰だか分かりました。地元のチェスクラブの会長であり、大会運営委員長でもあるグヴァールGouvart, Michelさんでした。

 

彼の話によれば、このカペル大会の目的は「他人を知ること」だそうです。今の世の中、至る所で人と人とが“衝突”している。戦争や内戦といった文字通りの戦いもあれば、言葉と言葉をぶつけ合う外交の角突き合いがあり、国の中での住民同士のいがみ合いもある。形はさまざまだがその原因は共通で、自分と意見の違う相手を“知らない”からだ。知らないから、疑心暗鬼で簡単に“敵”になって衝突する。こんな悲しい状況を何とかしたい、という思いでチェスの大会を立ち上げたのだそうです。チェスを通じて「他人を知る機会を作りたいんです」、と。

 

こうして始まったカペル・ラ・グランド大会、1985年の第一回の参加者は68人でした。それが年々、回を重ねるごとに参加者が増え続け(と言いますか、グヴァールさんたちが努力して増やし続け)、十年後の1995年には500人の大台を超えました。スイス式9ラウンドという競技のことだけを単純に考えれば、人数が多すぎるかも知れませんが、ゲームすることだけが目的ではないのです。いかなチェス大国フランスでも、参加者が500人規模の大会は皆無です。また、今年の参加者497人の内、フランス人は「たった」265人しかいません。参加者の半数近くが外国人なのです。「他人を知る」という方針で大会が企画されていることを雄弁に物語っています。

 

大会が始まって二日目、ゲーム開始のしばらく前に席についてぼんやりしていると、年配の男性から「日本の方ですか?コインを譲ってくれませんか?」と話しかけられました。外国の硬貨を集めているのだそうで、手持ちの100105円玉をあげたら、とても喜んでくれました。数日後、会場でまたこの男性を見かけたので、どうです?と聞いたら、「今日はブラジルのコインをもらえた」と嬉しそうに話していました。この男性はきっと、自宅でコインを眺めることで外国旅行を楽しんでいるのでしょう。チェスの試合には出ないこの男性にとってもまた「他人を知る」機会となっています。大会がもたらす相乗効果と言えましょう。

 

来年もまた多くの日本人がカペルに参加し、老若男女、さまざまな国の選手と盤をはさんで対戦し、チェスを続ける喜びを体験されますよう願ってやみません。数次にわたり長々と書き連ねたレポートにお付き合いいただき有難うございました。日本人選手の記録を残す貴重な機会を提供してくださった馬場五段に深く感謝いたします。(了)

 

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訂正:カペルのレポート中に2か所、誤字がありました。訂正してお詫びいたします。

R4のミニコラム

【誤】フランスのIMイアンPayen, Arnaud 2336さん。

【正】フランスのIMイアンPayen, Arnaud 2336さん。

R6のミニコラム

【誤】勝っていました!WIMのドルハノヴァ

【正】・・・WGMのドルハノヴァ


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