Deep Analysis(8) -全ての可能性を切り捨てないで考える-


                           White to move

 

今日はチェス曜日のblogで目にとまったポジションです。川中さんも「ドローっぽい局面」と言うように、私もそう感じました。マテリアルはイコールですし、白黒両方ともポーンストラクチャーに弱点はありません。駒の位置にも差はないように見えます。しかし、ここに面白いタクティクスが潜んでいました。

 

1.b4

 

川中さんによると、「罠のつもり」。1...Qxc3? には2.Rc1! c6のナイトが落ちるということです。もちろん、一発狙いですから川中さんはこの手に「?!」をつけています。私は即座に「?」をつけました。白のクイーンサイドのポーンストラクチャーを著しく傷つけるからです。「自分から弱点を作らないこと」というのはチェスにおいては鉄則で、この手はそのルールに反します。

 

代わりに私は1.h4!? を考えました。バックランクメイトを防いでおくことは悪いことではありませんし、Nf3-g5からQxh7#の準備にもなっています。さらに、g3-Kg2とすれば白のキング周りは一歩前進です。「何をやっていいか分からない時は駒のポジションを少しでも良くすること」というのは日本コーチのMishaがよく口にするアドバイスです。「イコールに見えるポジションの時は無理して仕掛けるのではなく、小さな前進をすること」ということです。

 

しかし、ここで満足して局面の検討を終わらせると先はありません。もう一度1.b4を考えました。世の強いマスター達はこういう明らかにルールに反するような手も切り捨てないで考えます。

 

1...Qb5


 

 

昨晩、このポジションを検討している時、私は2.c4を考えました。クイーンを端っこに追いやり、黒キングへダイレクトなアタックを作ります。

 

2.c4 Qa4 3.Rxd8 Rxd8 4.Ng5 g6 5.b5! d8のルークを浮かせる) 5…Nd4 (5...Ne7 6.Nxe6! fxe6 7.Qxe6+ Kf8 8.Qf6+ Ke8 9.Re1 Rd7 10.Qh8+ Kf7 11.Qxh7+は白攻勢) 6.Qh4 h5

 


 

7.Nxf7!

 

白クイーンがd8のルークに利いているのでこのナイトは取れません。一瞬のうちに黒キング前が崩壊し、これは白が勝つ形です。

 

しかし、ここで白勝ちと結論付けてはいけません。3…Rxd8の代わりに3…Nxd8もあります。

 

3...Nxd8!


 

 

4.Ng5 g6 (4…f5!?) 5.Qh4 h5 6.g4!?

 

 

 

白は黒のキングサイドを崩しにいきますが、黒には十分なディフェンスがあります。

 

6...f6! (6...Qxa2? 7.gxh5 gh5 8.Qxh5 Qc2 9.Kh1!gファイルからのアタックが厳しい) 7.Ne4 g5! 8.Qxh5 Kg7

 


 

これでどちらにもチャンスがあると思います。

 

 

昨晩はここで「1.b4もありだな」と結論付け、満足して眠りについたのですが、今朝あらためてポジションを眺めていると、驚愕の事実に気が付きました。

 

2.a4!

 


 

昨晩は2.c4しか考えていませんでしたが、この手がありました!

 

2...Qxa4 3.Ra1 Qb5 4.c4!

 


 

なんと、c6のナイトが落ちます! つまり、1.b4はピースアップにつながるコンビネーションの第一歩であり、1.b4?!でも1.b4?でもなく、1.b4!! だったのです。

 

自分の第一感は時に信じ、時に疑ってみる必要があるということですね。


Deep Analysis(7) -Really Draw?-



小島くんの
blogで興味深いエンドゲームが出てきたので、少し考えてみました。

 

http://shinyakojima-blog.blogspot.com/2011/05/blog-post_07.html

 


Kojima Shinya (2328) - Iwasaki Yudai (2101)

            Japan Chess Championship 2011 (11)

                      position after 37...Re8-Rf8

 

実戦では38.gxf7+ Kh7 39.Rf2 g6 40.Kg2 Kg7 41.Rf4 Qxa7 42.Rf2 Qb7+ 43.Rf3 01となりましたが、ここで小島くんは、

 

38.Rf2! Qxa7 39.Bxf7+! Rxf7 (39...Kh8?? 40.Rf4!) 40.gxf7+ Kf8



 

これで黒が勝つのは難しいのではないかと考えています。まず、この考えの根拠には、白のb,fポーンと黒のgポーンが交換されて現れる以下のQ vs Rの局面は、theoreticalにはドローだということがあります。



                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

つまり、黒が勝つためには、自身のgポーンは簡単には取らせてはいけないということになります。では、具体的な手順を考えてみましょう。

 

41.Kg2 g5!

 

黒に動かせる駒はほとんどありませんが、この突きが勝ちへの第1ステップです。

 

42.Rf5

 

42.g4 には42...Qd4 43.Kg3 Qh8!+



                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

こうして次にQh4とすれば、白のg4ポーンを落とすことができます。gのパスポーンが残るため、黒は容易に勝つことができます。もちろん、44.Rh2には45...Qc3+からKxf7で勝ちです。白が42.g4と突かない場合も、この黒クイーンのhファイルからの侵入がキー・アイディアとなります。

 

42...g4! 43.Rf4 Qa2+ 44.Rf2 (44.Kg1 Qxb3! 45.Rxg4 Qd1++) 44...Qxb3 45.Rf4


 


b
ポーンを落としてから最後にhファイルからの侵入を試みます。

 

45...Qc2+ 46.Kg1 (46.Rf2 Qh7!) 46...Qg6! 47.Rf2 Qh6! 48.Rh2 Qc1+ 49.Kg2 Kxf7+



 

これで黒キングがフリーになり、あとはゆっくり上がっていくだけです。

 

以上、急いで考えてみましたがいかがでしょうか?


Deep Analysis(6) -Miles Position Part4-


                           White to move

 

白はa3ポーンだけが懸念材料であるため、これを先に守ってしまうのはどうでしょうか?

 

1.Rd3




派手な手ではありませんが、堅実で悪くありません。ここで、

 

1...Rxd3? と黒がルーク交換に応じると、2.Qxd3+ g6 3.Qd8 Kg7 4.Bc6!±




これで黒のクイーンとナイトの動きを封じ込めます。マテリアルはイコールなのに駒のポジションの差で圧倒的に形勢は白良しです。こういうのが
Dominationと呼ばれるものです。

 

ルーク交換はできないので

 

1...Rc1+

 

チェックで逃げます。

 

2.Kh2 Qc7+?

 

クイーンチェックでクイーン交換するアイディアは前回も出てきましたが、だいぶ状況が違います。その違いとは?

 

3.Qxc7 Rxc7 4.Rd6

 

黒ルークがc3にいればここでRxa3がありましたが、c7にいては先に白にa6の弱点を狙われてしまいます!

 

4…Ra7 5.Bc6!±




またも
Dominationです。黒はa6-a5で弱点を解消したいものの、突いた瞬間、Bxb5があります。白はf4-e4-e5とポーンを伸ばしていき、少しずつ局面を強化していけます。

 

黒は2…Qc7+ではなく、どう指せばよいでしょうか?

 

答えは2…Rc2!

 

f2が狙われている今、白が優勢でゲームを続けるには3.Kg3くらいしかありません。こうなると、まだまだ勝負は分かりません。

 

To be continued…


Deep Analysis(6) -Miles Position Part3-


                           White to move

 

前回まで見てきた1.Be4+では、白は勝てないということが分かりました。そこで、違う初手の可能性を考えてみます。

 

1.Be2

 

狙いはBd3+です。ナイトに取られないよう、1手使います。

 

1...Nd5!

 

1...e5? は良くありません。2.Bd3+ e4 3.Bxe4+ Nxe4 4.Rd7は、前回まで見てきた1.Be4+のラインで単に黒のeポーンがないバリエーションです。白がビショップをb1-h7ダイアゴナルに持っていくのに1手かけるため、黒もディフェンスに1手回せます。

 

2.Bd3+ g6 3.Be4



 

4.Bxd5がスレットです。黒ナイトが逃げるマスもなく、かといってナイトを守る手もありません。黒はここで2択です。

 

まず1つ目。

 

3...Nxe3!? 4.Bxg6+!



 

サクリファイス返しです。もちろん、4.fxe3? には4…Qxe3+からe4ビショップ取りです。

 

4…Kxg6

 

4...Kg7!? はリスキーです。5.fxe3 Qxe3+ 6.Kh1 Kxg6 7.Qg8+ Kf6 8.Rf1+ Ke5 9.Qxf7Dvoretskyは形勢不明としていますが、黒のキングは危なく見えます。

 

5.Qg8+ Kf6 6.Qh8+ Kg6




7.Qxc3 Nxd1 8.Qd3+ Kg7 9.Qxd1=

 

白はクイーンの力を生かして駒を取り返したものの、局面はドローっぽいクイーンエンディングに落ち着きました。

 

さて、2つ目のラインです。

 

4…Qc7!

 

シンプルで見つけやすいソリューションです。黒のクイーンがプレーに戻ってきましたし、cファイルからのカウンターもできました。白はこの交換は受けなければいけません。

 

4.Qxc7 Nxc7 5.Rd7 Kg7




黒には何も不満はありません。

 

結論 1.Be2は、1.Be4+と同様、正しく指せば黒はイコアライズすることができる。

 

次回はビショップ以外の初手を考えることにします。


Deep Analysis(6) -Miles Position Part2-


                           Black to move

 

前回の続きです。2...Ng3?! はダメだったので、あと考えられるのはルークによるチェックくらいしかありません。

 

2...Rc1+ 3.Kh2



 

ここで2ラインの分岐があります。1つ目は、相手を混乱させ、あわよくば勝ってしまうような実戦的なものですが、正しくないラインです。2つ目はきちんと黒がドローを取れる正しいラインです。

 

まずは1つ目のライン。

 

3...Rh1+!? 4.Kxh1 Nxf2+ 5.Kh2 Qxe3

 


 

黒はエクスチェンジを捨てて、クイーンを生かす道を選びました。しかし、ポーンのおまけがついてきている上に、なんとなく白キングへのアタックが見えます。例えば6.Rxf7? などすると、6...Qe5+ 7.g3 (7.Kg1 Qe1+ 8.Kh2 Qe5+はパペチュアルでドロー) 7...Qe2で白がまずくなります。白はh2-a7ダイアゴナルを先に取ってしまうのが正解です。

 

6.Qc7! Qe1 7.Rxf7 Qh1+ 8.Kg3 Ne4+ 9.Kf4 Qxg2 10.Qb7!

 


 

黒のアタックが数手続きましたが、ここにきて尽きます。最後はクイーンによるピンで、黒ナイトが落ちます。黒はナイトを捨てて、クイーンによるチェックを続けるしかありませんが、白キングはどんどん黒陣のほうに上がっていけるため、パペチュアルになりません。

 

そして次が2つ目のラインです。

 

3...Nd2!!




狙いは前回の
2...Ng3と同様で、Nf1+からのパペチュアルです。

 

4.h4

 

h3にキングの逃げるマスを作るのは前回見たアイディアです。パペチュアルを避け、次に黒クイーンを取って白勝ちでしょうか?

 

4...Rd1!!



 

いいえ、そんなことはありません! この手が最大のポイントです。

 

5.Rxa7

 

5.Rxd2 Rxd2 6.Qxd2 Qc7+ 7.g3 Qc4はドローに落ち着くでしょうが、どちらかというと黒を持ちたい気がします。また、5.Kh3? には5...Ne4! 6.Rxd1 Nxf2+があるので、白は本譜のようにクイーンを取る1手です。

 

5...Nf1+ 6.Kg1 Nd2+!

 

黒は変にゲームを続けようとしないで、本譜のように確実にドローにする方法を取るべきです。6...Rxd8? には7.Kxf1±で、黒はa6f7のポーンを同時に守ることはできず、圧倒的に不利なエンディングをプレーしなければいけませんので。

 

前回と今回見てきたラインをまとめると、1.Be4+!? では白は勝てないということになります。そこで、次回からは白の他の初手を見ていこうと思います。


Deep Analysis(6) -Miles Position Part1-


            White to move

 

まずは局面の評価から。白ビショップは黒ナイトよりも働きが良く、センターは白が取っているので、白のほうが良いことは皆さん納得して頂けるでしょう。しかし、a3のポーンがアタックされているので、あまりのんびりはやっていられません。いくつか手の候補はあると思いますが、今回の分析はかなり意外な1手から始まります!

 

1.Be4+!?

 

どうです? この手は考えてみましたか?(笑)

 

1...Nxe4

 

1...g6?? には2.Qxf6があるので取る1手です。

 

2.Rd7!


 

 

これが白のアイディアの1手です。黒クイーンは行くマスがありません!早とちりな人だと、クイーンが捕まったのを見て、ここで投了してしまいそうですが、ここから黒の見せ場です。

 

2...Ng3?!


 

 

黒の狙いは、3.Rxa7? に対して3...Rc1+ 4.Kh2 Nf1+ 5.Kg1 Ng3+とパペチュアルに逃げることです。ちなみに、3.fxg3?? とこのナイトを取ると、3...Qxe3+ 4.Kh2 Qxg3+ 5.Kh1 Rc2! 6.Rd2 (6.Qa8 Rc1+) 6...Qe1+で白は負けてしまいます!

 

クイーンを取ることはできないし、パぺは入りそう。ドローになるかと思いきや、ここで2つの悩みを解決する絶妙手があります。

 

3.h4!!



 

h3にキングの逃げ道を用意します! 黒クイーンへの当たりは消えていないため、黒は駒損を免れません。2...Ng3は面白い手ですが、3.h4!! があるためうまく働きません。

 

ちょっと短いですが、ここからが長いので、今日はここまでにします!


Deep Analysis(5)

5回目の今回は、先日の松戸サマートーナメントから取り上げます。このゲームをハッタリ勝ちと書きましたが、「ハッタリ」というのは良く言えば「実戦的チャンスのある」というように解釈することもできます。(本当にハッタリだったのはこれ以前の手でした。)

 


  Kanda Daigo(1737)-Baba Masahiro(2225)

                           Matsudo Summer 2010(2)

                            position after 41.Be6-a2

 

色々あってここにたどり着きました。黒は1ポーンアップでaのパスポーンはかなり進んでいます。また、白キングの守りは薄く、これは黒が勝ちにいくところだと思っていました。しかし、実際の手順を考える上で問題がありました。ビショップもルークもプレーに参加させるのが難しいのです。

 

これら2つの駒を参加させることを考えましたが、ビショップはディフェンスオンリーなので、ルークしかありません。dファイルに回して2ndランクへの侵入を狙いますが、そのためにはd8に回せるよう準備が必要です。そこで、まず41…Qa5を考えました。しかし、これには42.Rb8! で黒は困ります。

 


                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

幸い、42…Qe1+ 43.Kg2 Qe2+からパペチュアルはいれられますが、勝ちは望めません。黒のバックランクは弱く、ルークの侵入させないためには、b8のマスはクイーンで抑えておかなければいけません。そこで次に41…Qa8+からRd8を考えました。しかし、42.Bd5で一瞬のうちに作戦失敗です。

 

ここでもうしばらく可能性を探っていたら、次の奇妙な手が思いつきました。

 

41…h6!?

 


 

g6のポーンがタダ落ちです。しかし、決して黒の見落としによるブランダーではありません。黒としてはg6のポーンを取らせたいのです! そして、もし白が取ってこなければ、Kh7とキングを避難させ、今度こそQa5-Rd8のプランを実現させます。

 

42.Qxg6 Qa8+ 43.Kg1 Rd8




白クイーンが
d6からどいたのでBa2-d5はありません。黒は目標だったdファイルを取りました!

 

44.Rf1?

 

黒のスレットはRd2からQg2#であり、白はこれをいかにして防ぐか考えなければいけません。しかし、本譜では防いでいることになりません。白のベストとして私の考えていたのは44.Qb6! です。



                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

ここで44…Rd2?! と飛びこむと、45.Qb8+ Qxb8? 46.Rxb8+ Kh7 47.Bg8+ Kg6 (47...Kh8? 48.Be6+ Bf8 49.Rxf8+ Kg7 50.Rg8+ Kh7 51.Ra8+-) 48.Rb6+ Kh5で、49.Bf7+ Kg4 50.Rg6+ Kf3

 


                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

で黒キングがメイティング・アタックに参加して黒勝ちだと読みました。51.Bc4 (△51…Rd1+ 52.Bf1 には51..a2! があります。

 

しかし、これはあまりにも楽観的すぎました。それは、49.Bf7+? の代わりに49.h3! とされると、次の49…Bf7#に対してどうしようもありません。

 


                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

一瞬で天国から地獄へ落とされるような気分でした。これが見えたので、44.Qb6! と来たら、44...Rc8としてcポーンを進めるプランへ変更していたことでしょう。

 

44...Rd2 45.Rf2 Rd1+ 46.Rf1 Rxf1+ 47.Kxf1 Qh1+

 



48.Kf2 Qxh2+ 49.Kf3 Qxa2 -+

 

白にパペチュアルチェックはありません。そして黒クイーンはいつでもg8に戻ってディフェンスに加担することができます。もちろん黒勝勢ですが、まだいくつか気をつけるべきポイントがあります。

 

50.Qxf5 Qb3+ 51.Kg4?!




ここは
51.Kg2のほうがチャンスはありました。2,3手後に理由が明らかになります。

 

51...a2 52.Qc8+ Qg8

 

黒クイーンはa8-h1-h2-a2-g8と長距離を旅してきてキングのもとへ戻ってきました!

 

53.Qa6 Bxe5+



 

これが51.Kg4?! としてはいけなかった理由です。53...a1Q 54.Qxa1 Bxe5+の順でもOKです。

 

54.Kf5?!

 

さて、ここは白がラストトラップを仕掛ける最後のチャンスでした。54.Kf3がそのトラップで、うっかり54…a1Q?? aポーンに触ってしまうと、55.Qxh6+! Qh7 56.Qf8+ Qg8 57.Qh6+

 


                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

で、何と奇跡的なパペチュアルチェックが入ります。特にQa6-h6のような横の動きは気付きにくいので、時間切迫時ならなおさら狙いに行くべき手筋です。しかし、本譜のようにキングがf5にいると55.Qxh6+55...Qh7+がチェックとなり、パペチュアルはありません。

 

54...Bg7 0–1


Deep Analysis(4)


Manabe Hiroshi(2039)-Baba Masahiro(2213)

                          Matsudo Year End 2009 (3)

            position after 28...Qe7-c5+


白はc
3e5に弱点を抱えており、さらに黒にdファイルを取られています。白マスビショップも働かせようとするのは難しいですし、私はこの時点で黒が十分勝つのに必要な条件はそろっていると思っていました。さて、黒クイーンのチェックに対して3通りの防ぎ方がありますが、どれが正解でしょう?

 

29.Qf2?

 

正解は29.Kf1でした。これに対しては29...Rxe5 30.Qxe5+ Qxe5 31.Rxd8 Qxc3をずっと考えていました。2ルーク vs クイーンではありますが、白のルークは連携しづらく白マスビショップはアタックに参加してこないため、黒のパスポーンが勝負を決めると判断していました。しかし、実際には30.Be4!?という妙手があり、e5のルークがdファイルに戻れず、白にdファイルを取り返され、ワンポーンアップでも黒に特に大きなアドヴァンテージはありません。本譜では黒にチャンスがあります。

 

29...Rxd1+!

 

29...Qxf2+? 30.Kxf2 Rd2+も考えていましたが、31.Ke1!でルークの総替えが免れません。B vs Nのエンディングになると、黒のポーンはすべて白のビショップのターゲットになるのでもちろんこれは避けます。試合では少し考えて単純にポーンを取れる筋を見つけました。

 

30.Rxd1 Rxd1+ 31.Bxd1 Qxe5

 

この手がポイントです。メイトがあるので白クイーンはe1の守りから離れられません。

 

32.Qa7+ Kh6

 

もし数手後の展開を予想できていたなら間違いなく32...Kf6と指していたでしょうが、結果論にすぎません。この時はh6で黒キングは安全だと考えていました。

 

33.Kf2

 

33.Qxa5?? Qe1#には注意しなければいけません。
 

33...Qxc3

 


2
ポーンアップであり、ポーンを進めれば勝ちだと考えていました。しかし、その楽観的な読みは次の1手でやや揺らぎます。

 

34.g4!

 

突如メイティングネットを張られました。白には明確なメイトの筋(h4-g5-Qxh7#)があります。

 

34...Qd2+ 35.Be2 Nc6 36.Qf7!!

 


そしてこれが絶妙な
1手です。黒の狙いの36..Nd4? には、37.Qf8+ Kg5 38.h4+! Kxh4 39.Qe7+! Qg5 40.Qxh7+



                               ANALYSIS  DIAGRAM

で終了です。

 

36...Qd4+?

 

実戦的には黒が生き延びる筋を見つけるのはとても困難です。しかし2ポーンアップの黒が完全に負けかと言えばそうではなく、とても難しい勝ち筋がありました!ここがこのアナライズのクリティカル・ポジションです。

 

36...Kg5! オンリームーブです。時にはキングは上がった方が安全な場合もあります。) 37.Kg3!

 

                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

あくまで白の狙いは黒キングです。37.Qxe6 Qd4+ 38.Kg3 Qf4+ 39.Kg2 Qe5 40.Bxc4 Qxe6 41.Bxe6 Kf4–+ 37.h4+ Kxh4 38.Qxh7+ Kg5–+も黒勝ちです。)37...Qe1+ これもオンリームーブです!37...Qd6+? 38.f4+! 38...Kh6 39.g5#または38...Qxf4 39.Qxf4#です。) 38.Kh3 Qf2! 39.Qxe6 Qc5! はたしてQf2-Qc5などという手が人間に見えるのでしょうか。) 40.Kg3 Qe5+!



                                ANALYSIS  DIAGRAM

 

直後にポーンフォークを許すこのチェックが最も明快な黒の勝ち筋だと思います。40...Kh6 41.f4 Kg7はまだ黒が勝てるかは怪しいです。) 41.Qxe5+ Nxe5 42.f4+ Kf6 43.g5+ Ke6 44.fxe5 Kxe5

 

                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

これであとはKd4-Kc3-Kb2とキングがパスポーンの前に回り込んだあとcポーンを突いて黒勝ちです。)

 

37.Kg2+- Qe5 38.Qf8+ Kg5 [38...Qg7 39.g5+] 39.f4+ 1–0

 


Deep Analysis(3)

今回は2005年のEJCC例会のゲームのアナライズを紹介します。

 


                Baba Masahiro-Hoshino Eizo

                                         EJCC 2005

                             position after 12...bxc4

 

白が展開でリードしており、さらにdファイルのプレッシャーが強力です。今、b3のナイトが狙われていますが、このナイトはどこに向かえば良いでしょうか?

 

13.Nxc5!

 

白の展開の速さをいかした正しい選択だと思います。念のため他の選択肢を簡単に見ておきましょう。

 

A) 13.Na5 には13...c3! で試合中ダメだと考えていましたが、14.Nxc3 Qxa5 15.Qxd6²はまだ白が良さそうです。

B) 13.Na1!? も見た目ほど悪くなく、次にc3-Nc2-Na3とすれば白は十分アドヴァンテージを取れます。 


C)
13.Nd4!? cxd4 14.Bxd4も十分考えられます。

 

13...dxc5 14.Bf4

 

14.Bxc5と本譜で迷いましたが、ダイレクトにNc7+のスレットがある本譜のほうが分かりやすいと考えました。14.Bxc5には14...Rb8 15.c3で一度b2を守ってからアタックに移ります。

 

14...Kf8!

 

ベストなディフェンスの1手です。そしてこれ以外に白のスレットのNc7+を防ぐ方法はありません。例えば14...Ra7?? は守りになっておらず、15.Nc7+ で黒はこのナイトをクイーンで取らざるを得ません。

 

15.Nc7!

 

 


攻めている時にクイーン交換を許すのは非常に難しい判断です。なぜなら白はそもそもピースを切っているので駒を取り返すか、決定的な攻めを得なければクイーン交換はなるべく避けたいからです。試合中、これから後に示すような膨大な変化を読み切っていたわけではありませんが、何となく攻めが続くような感覚があったのだろうと思います。

 

実戦では15...Bd4?? 16.Nxa8 Bb7 17.c3 Qa5 cxd4 1-0 となり、15.Nc7が正しいかどうか分からないまま終わってしまいました。

 

さて、ここからアナライズです。15.Nc7の正当性を検証していきたいと思います。

 

15...Qxd2+

 

a8のルークを取られないようにするにはこの1手です。

 

16.Rxd2 Rb8

 


 

もう一方のルークの避け方の16...Ra7を考えます。

 

17.Rd8+ Ke7 18.Rxc8 Kd7で次に白ルークが動けば19...Rxc7 20.Bxc7 Kxc7で駒割はルーク vs 2ピースですから、黒が十分戦えそうですが、実際はそうはなりません。19.Rb8! がルークの絶妙なポジションで、

 


                                ANALYSIS  DIAGRAM

 

19...Rxc7 20.Rd1+ Bd4 20...Kc6には21.Rd6#! 21.c3 Rc6 22.cxd4+-です。

 

17.Rd8+!

 

ここは正確に指さないとすぐに逆転してしまします。

 

A) 17.Ne6+? とルークを取りにいくのはナンセンスで17...Bxe6 18.Bxb8 c3はやや黒が良いと思います。

B)
17.Bd6+? Ne7 18.Nd5 はすぐ見える手筋ですが、18...Bxb2+ 19.Kd1 Rb7 20.Nxe7 Rxe7 21.Bxc5 Ke8 22.Bxe7 Kxe7–+です。攻めがストップしては負けます。

 

17...Ke7 18.Re8+ Kd7

 

18...Kf6? 19.Nd5#!

 

19.Rd1+ Bd4

 

19...Kc6 とクイーンサイドへ逃げ込むのは危険で、20.Nxa6!

 


                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

20...Ra8 (20...Bxb2+ 21.Kb1+-) 21.Rd6+ Kb7 (21...Kb5 22.Nc7+) 22.Nxc5+ Ka7 23.Rxc8! Rxc8 24.Ra6#

 


                                ANALYSIS  DIAGRAM

 

となります。2ルーク+2ピースあれば十分メイティングスレットを作り出せるということです。

 

20.c3 Rb7 21.Rf8!!

 

 


このアナライズの中で最も見つけるのが難しかった手です。そしてこの手を見つけた時、私の興奮は最高潮に達しました。

 

上の局面をよく観察してみると、黒はほとんど何も動かせない状態にあるのが分かります。黒マスビショップはピンで動けず、白マスビショップは味方の駒に進路を塞がれていますし、キングが動けばRxc8、ナイトが動けばRxh8等々です。こんなに駒がたくさん残っていますが、黒は事実上、ツークツワンクにあると言えるでしょう!

 

21...Rxc7

 

これ以外に手はありません。

 

22.Rxf7+ Ne7 23.Bxc7 Ke6



 

23...Kxc7 24.Rxe7+ Kd6 25.Ra7dファイルのピンが残っています。次にビショップを捕獲して白勝ちです。

 

24.Rxe7+ Kxe7 25.cxd4 cxd4 26.Rxd4+-


 

 

黒はベストを尽くしてピースやルークが落ちるのは避けることができましたが、ここからのエンドゲームは絶望的です。


Deep Analysis(2)

中部快速オープンの最終戦は非常に興味深いエンディングとなりました。両者残り時間がほとんどない中でのポーンエンディングです。


       Tang Tang-Baba Masahiro

            position after 35.e3-e4

 

黒はb5からクイーンサイドに侵入することができ、白のポーンを取ることができます。白が何もしないでこれを許せば必敗です。そこで白は黒がクイーンサイドのポーンを取りにいっている間にキングサイドをブレークし、パスポーンを作ってポーンレースに持ち込みたいところです。

 

35...Kd6

 

35...Kb5からクイーンサイドに侵入していって勝てるかどうか確信が持てなかったため、白のキングサイドからのブレークにいったん対処しようとしました。しかし、実際ここは35...Kb5! とクイーンサイドにパスポーンを作りにいくのがストレートな勝ち方でした。例えば36.f5 gxf5+ 37.exf5 exf5+ 38.Kxf5 Ka4 39.Kxf6 Kb3 40.g4 Kxb2 41.g5 bxc3 42.g6 c2 43.g7 c1Q 44.g8Q–+ など。

 

36.Kh4 e5?

 

まだクイーンサイドに向かうのは遅くありませんでした。36...Kc6 37.g4 Kb5 38.e5 fxe5 39.fxe5 Ka4 40.Kg5 Kb3 41.Kxg6 Kxb2 42.Kf7 bxc3 43.g5 c2 44.g6 c1Q–+


本譜では白にドローのチャンスを与えます。

 

37.Kg4 Ke6

 



38.Kf3!

 

非常に冷静な1手です。ここで慌てて38.f5+? とすると、38...Kf7!

38...gxf5+? 39.exf5+ Kf7 40.Kh5 Kg7 41.Kh4 Kh6 42.Kg4 b3 43.Kh4 e4 44.Kg4 e3 45.Kf3 Kg5 46.Kxe3 Kxf5 47.Kf3=

39.fxg6+

 

39.Kh439...g5+! 40.Kg4 Kg7 41.Kh5 Kh7 42.Kg4 Kh6 43.Kh3 Kh5 44.g4+ Kh6

 


                                ANALYSIS  DIAGRAM

 

で黒はキングサイドを閉じることに成功します。こうなればあとはキングをb5に持っていくだけです。

 

39...Kxg6 40.Kf3

 

40.Kh4 40...f5! でポーンレースに持ち込んで黒勝ちです。41.exf5+ Kxf5 42.g4+ Kf4 43.g5 e4 44.g6 e3 45.g7 e2 46.g8Q e1Q+ 47.Kh5 Qh1+ 48.Kg6 Qg2+ 49.Kf7 Qxg8+ 50.Kxg8–+

 

40...Kg5 41.Ke3 Kg4 42.Kf2 Kh3! 43.Kf3 Kh2! 44.Kf2 b3! 45.Kf3 Kg1!



                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

黒キングは白キングの裏側に回り込み、背後からポーンを落として黒勝ちです。46.Kg4 (46.g4 Kf1! 47.g5!? fxg5 48.Kg4 Ke2 49.Kxg5 Kd3 50.Kf5 Kc2 51.Kxe5 Kxb2 52.Kd6 Kxc3 -+) Kf2 47.Kf5 Kxg3 48.Kxf6 Kf4–+

 

38...f5 39.exf5+ gxf5

 

39...Kxf5 40.g4+ Kf6 41.Ke4 exf4 42.Kxf4 g5+ 43.Ke4 Ke6 44.Kf3 Kd5 45.Ke3 Ke5は、お互い相手サイドに侵入できずドローです。黒が45...Kc6で白ポーンを落としにいったら、46.Ke4 Kb5 47.Kd5! で白は問題ありません。

 

40.fxe5 Kxe5 41.Ke3!

 


 

白はうまくポーンを交換してオポジションを取り、局面はドロー模様となりました。

 

41...Kd5 42.Kf4 Ke6 43.Kf3

 

ここは43.g4! fxg4 44.Kxg4 として残る最後のキングサイドのポーンを交換し、44...Ke5 45.Kf3=でドローです。

 

43...Kf6 44.Kf4

 

ここも44.g4! Kg5 45.gxf5 Kxf5 46.Ke3 Ke5 47.Kf3 Kd5 48.Kf4 Kc6 49.Ke5 Kb5 50.Kd5=でドローです。

 

44...Kg6 45.Ke5??



 

ここにきて非常にもったいない、決定的なブランダーです。45.g4!=はまだ可能でした。この後のエンディングは完全に黒勝ちです。

 

45...Kg5 46.Ke6 Kg4 47.Ke5 Kxg3 48.Kxf5 Kf3–+

 


 

49.Ke5 Ke3 50.Kd5 bxc3 51.bxc3 Kd3 52.Kxc5 Kxc3 53.Kb6




53...Kb4!

 

最後の重要な1手です。a5のポーンをにらんでおくことで、白キングをステールメイトゾーンのa8に近づかせません。ここで53...Kb3? などは間違いで、54.Kxa6 c3 55.Kb7! c2 56.a6 c1Q 57.a7=で、このパスポーンに対して黒はクイーンのみでは勝てません。(白:Ka8 Pa7 :Qb6(or Qc7)のステールメイトがある)

 

黒が勝ちにいくためには、黒キングが正しいタイミングでb6のマスに到達しなければいけません。53...Kd4! がもう一つの勝ち方で、54.Kxa6 c3 55.Kb7 c2 56.a6 c1Q 57.a7 Qh1+ 58.Kb8 Qh8+ 59.Kb7 Qg7+ 60.Kb8 Kc5! 61.a8Q Kb6!

 


                               ANALYSIS  DIAGRAM

 

白はクイーンを作ったのにもかかわらず、その最悪な位置関係のため、メイトをまぬがれることはできません。これは非常に重要な形で、トーナメントプレーヤーは必ず覚えておかなければいけないと思います。

 

54.Kxa6 c3 55.Kb6 c2 56.a6 c1Q 57.a7 Qc8 0–1


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