Dresden Dream(17)

出発の朝です。13:30ドレスデン発ミュンヘン行きの便でしたが、なぜか9:30過ぎには空港に到着し、3時間ほど待ちます。この間にお土産が探せたので時間をつぶすのにはあまり苦労はしませんでした。出発時刻が近づくにつれ、各国のプレーヤーも次々自分たちの飛行機に乗り込みます。私たちはLeko、Polgar、Spasskyらと同じ便でした。
ミュンヘン到着後、いよいよ成田へ向けて出発、さまざまな思いを残したままドイツを去りました。

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オリンピアード総括

今回、日本は76位/146チームでした。この結果をどう捉えるかは人それぞれだと思います。私自身、日本チームでプレーしたのは初めてでしたので、過去のオリンピアードと比較するのは難しいです。ただ、私たちは常にこれまで最高成績だとされていた2000年のイスタンブール・オリンピアードを意識して戦っていたことは確かです。当たり、結果はチェックしていましたし、特にゲームはよく見ていました。あれから8年経ち日本メンバーは大きく変わりましたが、井上さんも話してくれたようにどちらのオリンピアードにも共通して言えるのは、メンバーが熟成期を迎えていたということです。

おそらく次もまた大きく入れ替わるでしょう。今より若い世代で構成される可能性が高いと思います。私は今回のオリンピアードは次につながるものと信じていますし、もちろんどこまでいけるかは楽しみです。しかし、次回のメンバーには今回を越えることを義務だとあまり深く考えすぎず、着実なプレーをしてもらいたいと考えています。結果はプレーについてくるものです。

最後に、今回、コーチを代えるなど重要な決定をし、常に日本チームの舵取りをしてくださいました渡井さん、いつもあたたかくチームを支えてくれたMisha、プレー以外のことはまかせっきりでいろいろとお世話になり、さらにはいつも私たちの精神的支柱であった上杉君の御両親、100%の信頼を持って戦い続けたチームメンバー、そして私たちのプレーの原動力となった、日本からの暖かな声援と興奮を伝えていただいた全ての皆様に感謝の意を表します。


Dresden Dream(16)

10R終了時点で日本はDグループで首位でした。最終ラウンド、ライバルのルクセンブルクはイランとでした。そんな中、日本はドイツとです。といっても1軍ではありません。3軍です!

開催国の特権として出場したチームですが、それでもGM3人を擁した強いチームです。FIDEのページを見ると分かると思いますが、世界で2番目にタイトルホルダーを多く抱える国はウクライナではなくドイツです。

 

私の相手のPrusikinは明らかにロシア系で、Mishaによると「creativeではないがtoughなプレーヤー」ということです。PrusikinというとKorchnoiとのゲーム(Schweiz 2005)が有名で、タクティクスも強いプレーヤーです。日本人では羽生さんが2005年にチューリッヒで対戦し、危ないところなくドローに終わっています。

最終ラウンドは朝1000スタートでした。




Prusikin Michael (GER3,2538,GM)

Baba Masahiro (JPN,2220)

Dresden 2008 (11)

 

1.Nf3 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5 4.cxd5 Nxd5 5.Qa4+

 

グリュンフェルドのメインを避ける最近の流行の変化です。

 

5...Bd7 6.Qh4 Nxc3 7.bxc3

 

これは始めて見ました。最近AronianKamskyに指して勝っています。7.dxc3 Nc6 8.e4 e5 9.Bg5 Be7の変化は対策してありましたが...

 

7...Bg7 8.Rb1 b6 9.d4 h6

 

9...0–0 10.Bh6は白の思うままです。Prusikinはちょっと考えては1手指すごとに席を立ちます。それを見てこの変化が完全に白のプリパレーション内であることが分かりました。

 

10.e4 c5 11.Be2 Nc6 12.Be3 cxd4 13.cxd4



13...e5!

センターを崩すにはこのタイミングしかありません。

 

14.Qxd8+ Rxd8 15.d5 Nd4 16.Nxd4 exd4 17.Bf4 0–0

 

うまく駒をさばいて白のアドヴァンテージを消します。ここは17...f5! 18.f3 (18.e5?には18...g5! 19.Bh5+ Kf8!e5が落ちます。19.Bh5+で思考を止めてしまった!) 18...0–0 19.0–0 Rc8で大体イコールです。

 

18.0–0 Rc8 19.Rbc1 Ba4?

 

私のアイディアは20...Bc2!から21...d3でした。20.Bd1には20...Bb520.Bd3には20...Rc3があり、これは十分いけるなと思っていたら...

 

20.Bc7!!



こちらのアイディアを先にやられました!! そう、白のほうがやはり1手早いのです!

今、黒は21.Ba6 Ra8 22.Bb7 Rae8 23.Bd6などのスレットに対応しなければいけませんが、良い手がありません。結局19...Rfe8が正しい手でした。

 
20...d3

 

何かアクションを起こさなければいけません。すでに厳しいことは分かっていましたが、隣の晋と小島君がポイントを取れそうだったのでここも何とか踏ん張るところです。

 

21.Bxd3 Bb2 22.Ba6! Bxc1 23.Bxc8 Ba3 24.Bh3 f5

 

ここからの黒のディフェンスのプランはベストだと思います。パスポーンをブロックしに行きます。

 

25.e5 Rc8 26.d6 Kf7 27.g3 Ke6 28.Bg2 Bc5 29.Kh1 g5

 

29...Bb5? 30.Rd1で次の31.Bd5+が決定的です。白マスビショップはd1をにらみ続けなくてはいけません。

 

30.f4 Rf8 31.h3 Rg8 32.g4 gxf4 33.Rxf4 Bc2 34.gxf5+ Bxf5 35.Bf1?!

 

35.Bc6(d7-d8)が早かったでしょう。

 

35...Be4+ 36.Rxe4

 

もちろん36.Kh2?? Bg1#です。

 

36...Rg1+ 37.Kh2 Rxf1 38.Rg4 Be3?

 

38...Rd1がオンリームーブです。

 

39.Rg6+ Kd7 40.e6+ Kc6 41.e7 Bf4+ 42.Kg2 Re1 43.Rg8 1–0


43...Kd7 44.Rd8+で終了です。私のオリンピアードのゲームは終わりました。

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Dresden Dream(15)

最終ラウンド前日は休息日。この日、ドレスデンオリンピアードで日本チームのスポンサーとなったドイツのIT会社のSoftEDからディナーに誘われていました。それまでは特に用事はなかったため、皆別々に行動しました。

晋はこの日卓球大会に出るといって出かけていきました。


オーストラリアのGM Zhao Zong-Yuan と勝負!


GM Rogersを交えて。チェスは引退したにもかかわらず卓球はいまだ現役?!


スパスキー、Zhaoと彼らの宿泊する会場隣のホテルで(豪華!!)

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さて、残りの男子チームは午後3時くらいまでトレーニングして、以降フリータイムとなりました。私は街でお土産を探さなければいけなかったので佐野君らと中心街まで出かけます。


雪の聖母教会。ドレスデンの人々にとってはかけがえのない街のシンボルです。第2次世界大戦の連合軍による空襲で完全に瓦礫のくずとなった教会が復興したストーリーは有名です。


このあと街を歩いていて写真を撮っていたらいつの間にか一緒にいた小島君、佐野君、内田さんの姿がありません!迷子になった彼らを探そうとするもなかなか難しかったのであきらめて一人デパートにお土産を探しに行くことに。(結局彼らは本屋にいたようです。そこでKramnikとGrschuk夫妻に遭遇したようです。こんなようにこの日は各国のプレーヤーやアービターは街で観光していました)

結局この日は日本で頼まれていたアスバッハというウイスキーを買っただけでした。このあと待ち合わせ場所に向かいます。そこで皆と合流、レストランへ向かいました。


なんとなくそれらしい雰囲気の装飾のある店内。

メインディッシュのアヒル料理はなかなか良かったです。こちらのクリスマスメニューだそうです。


最後は皆でパネルにサインしてお開き。
野口さん、酔ってるからといって、ひらがなで書かないでくださいw


Dresden Dream(14)

12Rのボツワナ戦では私は抜け番でした。

 

連戦で疲れていたのもありますが、何よりもボツワナは2Bだけかなり高いパフォーマンスを残していて、私が外れクジを引く可能性が高かったため、自主的に抜けたかったというのがありますw

特にインドネシアのIM,Irwantoに普通に勝っているゲームを見て、ボツワナ戦でどちらがこの相手と試合するかで私と晋はお互い譲り合いました。結局、先に私がMishaに明日休むと宣言したため、自動的に晋がゲームに出ることになったのでしたw

 

さて、次の日のペアリングが発表になると。。。。



ボツワナの
2Bが出ない!!

 


こうして不毛な譲り合いは無意味なものに終わり、同時に日本チームにはボツワナを
4タテするムードが出てきました。

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この日は皆と一緒に会場には向かわず、程よい時間を見計らって行こうとしました。試合開始40分くらいしてインターネットでライブゲームをつけると、どのボードも良さそうでした。特に晋と野口さんはほとんど終わっているように見えました。
今日は楽勝だー!と気分よく会場に向かい、到着すると観戦席に一番近いところで試合をしていました。カプチーノを買ってきて悠々飲みながら観戦です。
すると2Bではもう晋が完全に勝勢ですが、相手はまだリザインしていません。これは指し続ける気がないなと悟り、結局40手を超えて時間が足されてもこのボツワナの2Bは一向にリザインする気配がありません。結局時間が落ちるまで椅子に座り続けていました。ボツワナには相手に対する敬意がないのかなと思いきや、3,4Bはわりと早い段階でリザインしてきました。これで3P獲得、マッチには勝利です。



2Bではもう勝負はついている

さて、残る小島君のボードですが、はじめは悪くなかったのに段々雲行きが怪しくなっていきます。そしてポーンダウンして望みのない終盤へ突入し、結局そのまま押し切られました。小島君もリザインする瞬間、大きく息をついて手を差し出しました。

この試合の前日、ここで勝てばIMノームということで、(Mishaがアービターと共に計算して出した結果でした)多少なりとも気にして戦っていたと思います。

 

とにかく3-0で勝ちました!!



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このラウンド、いろいろボードを見て回りました。その中で最もギャラリーを集めていたのが次のゲームでした。



    Rowson(2596)Carsen(2786)

局面は39.Be5Rowsonが指したところで、あと少しで時間が足されるところです。ここでCarsenは狙いのコンビネーションで一気に片をつけます。

 

39...Rxe5! 40.fxe5 f4! 41.Qe2

 

41.Qxf4には41...Nxg3 42.hxg3 Qxc2 43.Be2! ではなく、41...Ng5! 42.Rc3 Rd4! 43.Qf8 Qe4 44.f3 Nxf3+ -+だと思いますが、これが最善の筋でしょうか? Fritzでチェックしていないので穴があるかもしれません。

 

41...Ng5 42.Rc3 Qc6 43.f3 Nxf3+ 44.Kf2 Ng5 45.e6 Ne4+ 46.Qxe4+ Qxe4 47.exd7 Qd4+ 48.Ke2 Ba6+ 0–1

 

結局Carlsenはオリンピアードをパフォーマンス2757という"控えめな"戦績で終えていました。


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晋部屋でゲームの観戦。

 

お父様は熱心にその日のことをwebで伝えるため、レポートを書かれています。

ボツワナ戦の朝、一足早く日本へ帰られました。1週間大変お世話になりました!!


Dresden Dream(13)

9Rはホンジュラス。中米の国が立て続けにきました。しかし前日のニカラグアに比べるとだいぶ劣り、ようやく我々より下と思えるチームと当たりました。ペアリングが出たあと相手のゲームをチェックし、そんなに問題ないと結論を出し、小島君を休ませ、野口さんに初勝利を飾ってもらおうと決めました。



ホンジュラス戦の開始時
手前左のチームは前日対戦したニカラグアこの日はベルギーと対戦


 

Baba Masahiro (JPN,2220)

Fajardo David Ponce (HON,UR)

Dresden 2008 (9)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4  Again!! e6 7.Bb3 Be7 8.Qf3 Nbd7 9.0–0 Ne5?!

 

9...0-0からQc7b5のほうが良いアイディアです。e5のナイトは白にf4を突かれて追い返されるだけです。

 

10.Qe2 0–0 11.Kh1 Qc7 12.f4 Nc6 13.Nxc6 bxc6 14.e5 Nd7?!

 

14...Nd5を予想していました。これに対しては15.Nxd5 cxd5 16.c3からBc2Rf3Rh3などのキングサイドアタックを考えていました。

 

15.exd6 Bxd6 16.Ne4!

 

タイミングよくセンターに跳び出せてやや白有利です。

 

16...Be7 17.Bc4

 

Bc4-Bd3とジグザグにビショップをアタッキングポジションであるd3に持っていこうとしました。17.c3としないのは17...a5からBa6を狙われるのを嫌ったのと、黒マスビショップをa1-h8ダイアゴナルにセットできないためです。

 

17...Nb6 18.Bd3 c5 19.b3 f5!?



これには驚きました。黒はe6をどう守るのかはなはだ疑問でした。

 

20.Ng5 Rf6?!

 

これにも少なからずショックを受けました。当然20...Bf6だと思っていましたから。

 

21.Bb2 Rh6

 

狙いは22...Bxg5 23.fxg5?? Qxh2#!

ここでようやく相手は後々のことを考えて弱点を作らないように指すより何らかの一発的な手を狙おうとしていることが分かりました。もちろんこれはあまり強くないプレーヤーのやることですが、実戦的には一発狙いはが成功するケースはわりと多くあります。白は注意深く指さなければいけません。

 

22.Be5 Qc6 23.Rae1

 

e6にプレッシャーをかけます。しかし後の変化を見るとe6を落としに行くプランは間違っていたことが分かります。23.Rad1のほうが正しいルークの手でした。

 

23...Bb7

 

このロングダイアゴナルは私を悩ませました。

 

24.Qf3?!

 

もしクイーン交換すれば黒の弱点(a6,c5,e6)が残る形となり、白が勝つと考えていました。しかし24...Qxf3 25.Nxf3 Nd5だと黒のピースはアクティブで、黒の弱点をどう狙っていけばよいか、そこまで簡単ではありません。24.Rf3! Rg6 25.Rg3とすべきです。

 

24...Qc8 25.Qf2 Rg6 26.Nf3 Qc6 27.c4 Nd7 28.Bb2 Bd6 29.Qe3 Qc7 30.Nh4 Rh6 31.Qg3 Nf8 32.Re2 Qf7 33.Nf3


 

 

ここでトラブルが発生します。相手がクイーンをh5に動かしました。もちろんこれにはQxg7#です。このメイトに気付いた相手はクイーンをg6に戻しました。ここでh5に置いたとき手を完全に手を離したかどうかははっきりしませんが、私はQh5が明らかに着手の意図があったものと判断しました。そこでタッチを指摘したわけです。もちろん向こうは認めないですが、一度指摘したものを簡単に引き下げるわけにもいかず、そのまま1分くらい時間が流れました。ここでアービターが近くにいればすぐに裁定を下すところですが、運悪く離れていました。代わりに場の雰囲気を読んだMishaがやってきて、「とりあえず時計を止めてください。アービターを呼んできます」と話し、アービターを探しに行きました。アービターとの簡単なやり取りがあった後、しばらくしてもう一度Mishaがやってきて、「我々はタッチを証明できないので指し続けてください」と説得され、プレーは続行しました。

 

33...Qg6 34.Ng5?

 

トラブルに完全に集中力はかき乱され、正しい選択をできなくなっていました。34.Qxg6! Rxg6 35.Ne5なら白にアドヴァンテージがあります。

 

34...Rh5!

 

次に35...h6という悩ましいスレットがあります。残り時間も少なく明らかに焦っていました。その様子を見て、ここでMishaが寄ってきて、「次の手を指したらドローオファーしてください」と指示されました。この時点ですでに残りの3B2.5P取っていたため、私のボードの結果にかかわらずチームの勝ちは決定的していましたし、相手はレイティングを持っていなかったので私はその通りにしました。

 

35.Kg1(=)

 

向こうはドローを受けるかどうか考えている様子はありませんでした。なぜなら次の明らかな手でポーンアップできるからです。

 

35...Bxf4 36.Qxf4 Rxg5 37.g3 Rg4?

 

白クイーンの侵入を防いでおくべきでした。37...Rc837...Rd8が好まれます。

 

38.Qc7!±

 

これは秘かに狙っていた手でした。黒が前々に作り出した弱点のポーンを落としに行きます。

 

38...Ra7 39.Be5 Qf7 40.Qxc5


40手目を指し、時間が追加されます。このタイミングによい形でポーンを取り返すことができ、再び落ち着きを取り戻しました。

 

40...Ba8 41.Qc8 Bb7 42.Qc7 Qxc7 43.Bxc7 Bc8 44.Bb8 Rd7 45.Re3 Ng6?

 

このゲームで初めて勝ちのチャンスが訪れました。




46.Bxf5! exf5 47.Re8+ Kf7 48.Rxc8 Ne7 49.Rc7 Rxc7 50.Bxc7

 

ポーンアップし、あとは丁寧に指すだけです。

 

50...Rd4 51.Rf2 g6 52.Bf4 Re4 53.Rd2 Nc6 54.Rd7+ Re7 55.Rxe7+ Kxe7 56.Kf2 Kf6 57.Ke3

 

これでも勝ちには変わりませんが、あとでMisha57.Bd2!を指摘されました。この局面でビショップのベストポジションはc3なので、まずそこにビショップを置くべきだということです。

 

57...g5 58.Bc7 h5 59.a3 1–0

 

白のクイーンサイドのパスポーンが勝負を決めます。ここで相手の時間が切れました。

 

非常に疲弊するゲームでしたが、1Bの重責を果たせてひとまず安堵しました。そして何より野口さん、初勝利おめでとうございます!!


Dresden Dream(12)

この日から雪が降りました。ドレスデンにも冬の到来です。


ホテル裏の風景


ホテル正面


会場


モスク(昔はタバコ工場だったようです)


8Rはニカラグアでようやく実力の近いチームと当たりました。しかしスタート順位は日本より上です。前日までの相手と比べてだいぶ落ちたので日本国内では楽勝モードな雰囲気だったかもしれませんが、オリンピアードでは簡単なマッチなどありません。

 

Baba Masahiro (JPN,2220)

Espinoza Felix (NCA,2243)

Dresden 2008 (8)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4

 

またもSozinです。

 

6...e6 7.Bb3 b5 8.Qf3

 

悪くはありませんがBg5Qf30-0-0のセットアップにしたいなら8.Bg5から入ったほうがより強制力があります。

 

8...Qb6!

 

間髪入れずに指されました。1B3Bではそれぞれ小島君と晋が黒でSveshinikovを指していましたが、晋のボードのほうが手は早く進んでいたため、それを見たニカラグアの1Bはメインを外してきました。4Bの佐野君はDragonになりましたが、相手は全く時間を使っていません。ここでようやくニカラグアのほうが我々よりよく準備してきたことに気付きました。早くもプリパレーション外となったので時間を使って考え始めます。

 

9.Be3

 

9.0-0も考えましたが9...b4! (9...Qxd4? 10.e5 Nd5 11.Nxd5 exd5 12.Bxd5 Ra7 13.Be3 +-)10.Na4 Qxd4 11.e5 Nd5ではダメだろうと読みました。

 

9...Qb7 10.a3

 

次に白が考えなければいけないのはe4のポーンをいかにして守るかです。次にb4と突かれればe4を守っているc3のナイトがどかされます。e4を捨てて戦うのもありかもしれませんが全く自信はありませんでした。そこで堅く行きます。

 

10...Be7

 

10...Nbd7(Nc5)のほうを怖れていました。これには11.Bg5といったん指して0-0Rfe1くらいでしょうか。

 

11.Qg3

 

ここでg7を狙いながらf3のマスを空けることで次に11.f3e4のポーンを守れます。オープニングでのトラブルはこれで解決です。

 

11...0–0 12.f3 Bd7 13.0–0 Nc6 14.Nxc6 Bxc6 15.Bh6 Ne8 16.Rad1 a5!

 

白はキングサイドからの攻めるには援軍が少なすぎます。黒のクイーンサイドからの反撃が速いです。

 

17.Bg5

 

d6を弱点にするため、このビショップは交換します。

 

17...a4 18.Bxe7 Qxe7 19.Ba2 Qb7

 

次にb4でクイーンサイドがこじ開けられるので、

 

20.Rd4

 

と指しました。こうして反撃を抑えてdファイルから圧力をかけようとしましたが...



20...e5!

 

これには驚きました。d5を穴にしてビショップの筋も通すので直感で排除しがちな手ですが、ルークを追い払えばb4が突け、黒は勝負できます。

 

21.Rd2

 

ルークをどこに引くかで迷いました。21.Rb4Nc7Na6でルークが罠にかかります。Rd3Rd2ですが、最終的にはRd2を選びました。MishaRd3を考えていて、 21.Rd3 b4 22.axb4 Qxb4 23.Rb1を示しましたが、最後のRb1はとてもパッシブに見え、これも直感で排除しがちです。しかしよく見るときちんと反撃を抑えている手ですね。

 

21...b4 22.Nd5 bxa3 23.bxa3 Bxd5

 

23...Qb2 24.Ne7+ Kh8 25.Nxc6 Qxa2 26.f4 Qc4 27.Ne7 Qxe4は非常に面白い勝負だと思いますが黒に若干、分があります。本譜では安全に来ました。

 

24.Bxd5 Qb6+ 25.Qf2 Rb8 26.Qxb6 Rxb6 27.Rfd1

 

弱点のd6に圧力をかけますが、白のacのポーンも弱いのでこの時点でイコールです。

 

27...Nc7 28.Bc4 Rd8


確かここだったと思いますが、向こうがドローオファーしてきました。一瞬耳を疑いました。というのは本オリンピアードでは30
手目まで合意によるドローは禁じられているからです。本来なら受けてもいい局面ですが、ここで受けると両者不戦敗?とか最悪のケースを考えてとりあえず30手目は超えるように指しました。

29.f4!?

 


このタイミングで勝負します。29...exf4には30.e5がありますが、黒は30...d5でポーンを返せば全く心配ありません。

 

29...Rc6 30.Bd5 Nxd5 31.Rxd5 f6!

 

白の最後の望みは31...exf4?! 32.e5で次にexd6でパスポーンを作ることです。バックランクのメイトを防ぎ、パスポーンも作らせない本譜の手は安全でベストな選択だと思います。ゲームは完全なドローのルークエンディングとなります。

 

32.fxe5 fxe5 33.Rxe5 Rxc2 34.Red5 Rb8 35.R1d2 Rxd2 36.Rxd2 Rb3 37.Rxd6 Rxa3 38.Ra6 Ra2 39.Ra7 Kf8 ½–½

 

このラウンド、私のボードが一番早く終わりました。小島君はまだ難解な中盤で、晋は今にもつぶれそうで、佐野君は危ないところを何とか耐え、ドロー以上は取れそうでした。私は観戦席に戻ってマッチの行方を見守りました。結果、最終的には4Bともドローでマッチもドローとなりました。


Dresden Dream(11)

オリンピアードも半ばを過ぎ、徐々に慣れてきました。7Rはアイルランド。GM1BBaburinだけですが、向こうはレイティングリストの上から4人を当ててきたので当然厳しいマッチとなりました。

Kelly Brian (IRL,2488,IM)

Baba Masahiro (JPN,2220)

Dresden 2008 (7)

 

1.c4 Nf6

 

もちろんGrunfeldの対策もしていましたからこちらから入ります。

 

2.Nc3 e5 3.g3 Nc6 4.Bg2 Bc5 5.a3 a6 6.e3 d6 7.Nge2 0–0 8.d4 exd4 9.exd4 Ba7 10.0–0 Re8 11.h3

 

さて、困りました。というのはメインのプリパレーションは11.b3で、11...Bf5 12.h3(12.Bb2 Qd7) Ne4!で黒はe4をコントロールし、満足なポジションであるというものだったのですが、本譜で11...Bf5?!には12.g4! Bg6 13.Bg5! が入ります。非常に細かいムーブ・オーダーですが、白はこのニュアンスを見逃しません。

 

11...h6

 

有効な待ち手です。12.g4(g5)に対しては12...h5! と崩しに行く予定でした。

 

12.b4 Rb8



これも待ち手です。いずれ黒は白マスビショップを展開し、
c6のナイトをe7-g6(or f5)とマヌーバリングしたいので、b7のポーンを守っておくことは非常に意味のあることです。黒の11-12手目は今回のオリンピアードでの私のプレーの注意深さを象徴する典型的な手だと思います。国内でも焦って無理をせずにこうやってゆっくり手を作っていくことが重要だと感じました。

 

13.Bf4 Ne7 14.Rc1 Ng6 15.Be3 Be6 16.Qd3 c6

 

黒は3段目以下で低く構え、次にセンターで対抗しようと準備します。

 

17.Rfe1 d5!

 

黒マスビショップ用のダイアゴナルh2-b8を開き、e4のマスもコントロールします。

 

18.c5 Qd7 19.g4 h5 20.f3

 

典型的なマスターの手です。テンションをキープします。

 

20...Rbc8

 

b8をビショップのために空けます。Rbd8なら21.Bg5!が入りますし、Ra8だとBb8のあと、ルークの連携が取れません。ここは注意深くc8を選びます。

 

21.Nf4 Nh4 22.Bf2 Nxg2 23.Kxg2 Bb8

 

ビショップがようやくアクティブになりました。黒のポジションに全く不満はありませんが、ひとつ注意しなければならないものがありました。時間です。

 

24.Nce2 Re7??

 

ここまで非常に良い流れで来ていて、自信を持って指せていました。しかしここで次の白の手を見落としてしまいました。

 

25.Bh4!

 

ショックなことにキングの前のポーンの形を崩さざるを得ません。

 

25...hxg4 26.hxg4 Bxg4

 

Bxf6-gxf6は明らかに悪いので、ここで勝負を仕掛けることにしました。

 


27.fxg4?

 

私のみならず相手も時間切迫なので安全な手を選択してきました。しかしここは27.Bxf6! Bf5(私はこの手で大丈夫だと思っていました。相手もおそらくここまでしか見てなかったでしょう) 28.Qd2!! gxf6 29.Nh530.Nxf630.Qh6が受かりません!検討で28.Qd2!!を見つけたのはMishaで、IMよりも一歩先を考えていると感じました。

 

27...Qxg4+ 28.Qg3

 

28.Bg3?には 28...Rce8で黒が一気に勝勢になるのでこの手は絶対手です。

 

28...Qf5

 

時間切迫の中、この手を見つけ、やや興奮してきました。白のピースはピンであったり、浮いているので、実際、この手は実戦的に白を悩ませます。しかし両者次の白の巧手を見ていませんでした。

 

29.Rf1?

 

29.Qh3!がその手です。c8のルークがクイーンの筋にいることがポイントです。黒の28手目の正着は28...Qxg3+ 29.Bxg3 Rce8でした。残り2分程度でしたが、盤面を良く見て起死回生のタクティクスを見つけ出します。

 

29...Rxe2+! 30.Nxe2 Qe4+ 31.Qf3 Qxh4

 

流れは一気に黒に傾きました。

 

32.Rh1 Qg5+ 33.Kf1 Re8!

 

白の狙いは34.Qh3からQh8#Qxc8のダブルアタックなので、これを防ぎます。

 

34.Qh3 Kf8 35.Rg1 Qh5

 

時間がないので安全に行きます。実際は35...Qd2! とクイーンを残したほうがよく、36.Qh8+ Ke7 37.Qxg7?には37...Rg8!でクイーンが罠にかかります。

38.Qxh5 Nxh5 37.a4 Re4(Nf4) 38.Rd1 g6 39.b5 axb5 40.axb5 Bc7

 

ここで持ち時間30分追加です。

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Dresden Dream(10) -Rowson vs Kojima-

スコットランドとの大将戦は歴史に残る大一番となりました。

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ANNOTATED BY

Kojima Shinya

Rowson,Jonathan (SCO,2596,GM)
Kojima,Shinya (JPN,2272)
Dresden 2008 (6)

1.d4 d5 2.Nf3 Nf6 3.c4 c6 4.e3 Bg4 5.h3 Bxf3 6.Qxf3 e6 7.Bd3 Nbd7 8.0–0 Bd6 9.Rd1 0–0 10.Nc3 Qe7 11.Qe2

 

近年非常に良く指されている4.e3 Slav の一変化で、この辺りまでは用意通りでした。

 

11...dxc4!

 

この定跡は黒が早々にダブルビショップを放棄する代わり、すばやい展開とe5からのセンターブレイクで勝負するものです。11...Rfe8 12.c5!? Bc7 13.f4 は黒としてはやや指しにくいと思います。

 

12.Bxc4 e5 13.d5 e4!

 

ここで黒はポーンストラクチャーを乱さぬことよりも、相手の駒を有効に使わせないこと、加えて
e5にマスを作り、自分の駒をより良い位置に持っていくことを優先します。13...cxd5?! 14.Nxd5 Nxd5 15.Bxd5 は白が何の支障もなくBd2-Bc3と組めるので、黒としては指したくありません。

14.dxc6 bxc6 15.Qc2!?

 

ここは試合中どう指してくるのか非常に興味深く待ち、そして感心した局面です。15.Bd2?! Qe5! 16.g3 (16.f4!? exf3 17.gxf3) 16...Qf5! 17.Be1 Bc7 (17...Qxh3!? 18.Qf1! Qxf1+ 19.Bxf1 Be5 20.Nxe4) こうなると明らかに黒が指しやすいです。

 

15...Rad8 16.Bf1 Rfe8 17.Bd2 h5!?

 

このような端のポーンを進める手は私の好みです。h4まで進めることにより、白にg3を突かせない狙いです。

 

18.Ne2 c5

 

18...h4!? 19.Qxc6 Ne5! は試合中は不十分だと読んでいましたが、どうも十分なポーンの代償がありそうです。

 

19.Bc3 Nb6 20.Nf4 Bxf4 21.exf4 Nfd5 22.Bd2 Nb4

 

22...e3 23.fxe3 Nxe3 24.Bxe3 Qxe3+ 25.Qf2 は若干ではありますが、白が良いと思い、指しませんでした。

 

23.Bxb4 cxb4 24.Rxd8 Rxd8 25.Re1 Rd4 = 26.h4 f5 27.g3 Qd6 28.Rc1 Rd2 29.Qb3+ Qd5?

 

これはひどいポカでした。今思えば、どうしてb4が落ちることに気づかなかったか不思議です。29...Kh7=

 

30.Qxb4 Kh7 31.Rc5 Qd6 32.Rb5 Qxb4 33.Rxb4 Nd5 34.Rb7 e3 35.fxe3 Nxe3 36.Re7?!

 

ここは36.Bh3とすれば、まだ白が大きな優勢を保ったまま試合を続けることが出来ました。

 

36...Nxf1 37.Kxf1 Rxb2 38.Rxa7

  

 

こうしてこの局面になりました。ここから白が勝てるのかどうか、それがポイントです。結論として自分はこのエンディングはドローではないかと思っています。これを考える前に、端のポーンを後ろからルークで止められているエンディングを確認しましょう。

 

                              REFERENCE  DIAGRAM

 

この形は明らかにドローです。白が勝つためには自身のルークとキングを入れ替え、プロモーションする以外ありません。そのためにKe1-Kd1-Kc1-Kb1とルークに寄っていった後、キングを前進させますが、Kb6のタイミングでRb1+とされるとチェックが切れずドローとなります。黒はキングをg7h7で往復させるか、ルークをaファイルで移動させて、白のキングがb6に到達するのを待っていれば問題ありません。黒がキングをポーンに寄せようとするのは間違いで、Kf7?? Rh8で白の勝ちとなります。これを理解していないと本譜でも分からない所があると思います。本譜との違いは、クイーンサイドにお互いポーンが3つずつ残っていること、そして白がaポーンを6段目で止めることができる点です。

 

38...Kh6 39.Ra6+ g6!?

 

 

この手はブランダーだと指摘されましたが、果たしてそれは本当でしょうか。本譜の通り黒のキングは身動きが取れなくなりますが、f5を守ったので、ルークでaポーンとgポーンを睨み、Ra8に対してKg7と下がれば良い、と黒にとってやるべきことがシンプルになります。実際白は黒のキングをh6に縛った上で勝つ手段があるのでしょうか。

 

40.Ra7 Rc2 41.a4 Rc1+!

 

ここで黒はチェックを続けることでg3を捨てるか、h3に逃げ込むか白に選択を迫ります。

 

42.Kf2 Rc2+ 43.Ke1!?

 

白はg3をあきらめました。試合中は、キングをh3に逃げられた上でa6までポーンを進められるとまずいのではないか、と考えていましたが、それは間違いでした。

43.Kg1 Rc1+ 44.Kg2 Rc2+ 45.Kh3? Rd2 46.a5 Rb2 47.a6 Ra2!


                                ANALYSIS  DIAGRAM


48.Ra8 Kg7 49.a7 Kh7 これでaポーンをとってドローです

 

43...Rg2(=) 44.a5 Rxg3 45.a6 Ra3?

 

この手でもまだドローのチャンスがありますが、黒にとって非常に難解になってしまいます。ここはもっと簡単にドローを確定させる方法がありました。

45...Rf3! 46.Ra8 Kg7! 47.a7 Ra3!  先述の通り、白のポーンが7段目まで進んでいるためドロー確定です。試合中46...Kg7! に気づきませんでした。

 

46.Kd2 Ra1 47.Kc3 Ra5 48.Kb4 Ra1 49.Kb5 Rb1+ 50.Kc5 Ra1 51.Kb6 Rb1+ 52.Kc7 Rc1+ 53.Kb8 Ra1 54.Ra8 Ra4??

 

 

これはひどいブランダーで、黒の負けになってしまいます。代わりに54...Kg7! でドローでした。

54...Kg7! 55.Kb7 Rb1+ 56.Ka7 Rb4 57.Rd8 Rxf4 58.Kb6 Rxh4 59.a7 Ra4 60.a8=Q Rxa8 61.Rxa8 Kf6!

 

 

                               ANALYSIS  DIAGRAM

62.Kc5 Ke5! 63.Kc4 Kf4! 64.Rg8 f4 65.Rxg6 h4 66.Rh6 Ke3 67.Rxh4 f3=

 

このように最善を尽くせばドローになるのですが、この3ポーンvsルークがどちらにとって間違いやすく難解なエンディングかと言えば、間違いなく黒でしょう。そのため45手目で単純なドローを逃したことは黒にとって痛手だったのです。白がこの後、ブランダーを指して逆転しなければ・・・

 

55.Ra7??

 

この手は私の54...Ra4?? 以上に多くの人を驚かせたと思います。私も目を疑いました。ちなみに白の単純な勝ち筋は試合中、私も気づいていました。

55.a7! Rb4+ 56.Kc7 Rc4+ 57.Kb6 Rb4+ 58.Ka5 で白勝ちです。

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Dresden Dream(9)

6Rはスコットランドでした。スコットランドが5Rに優勝候補の中国と対戦して1.5P取ったことは大きなニュースとなりました。メンバーはRowson(2596,GM)Aagaard (2528,GM)Shaw John(2469,GM)Arakhamia-Grant(2448,IM)McNab(2455,GM)Rowson以外は40歳を超えていて、ベテランプレーヤーばかりです。しかし逆に考えればスコットランドではまだ若い世代が育っていないのかもしれません。このうちArakhamia以外は著書があることで馴染みがある名前かもしれません。グルジア出身のArakhamiaは女性のプレーヤーで、今回初めてOpen Sectionでプレーすることになったようです。


スコットランドはAagaardが休みで、我々は上から4人で臨みました。http://www.chessedinburgh.co.uk/chandlerarticle.php?ChandID=297#round6にはマッチの様子がスコットランドサイドから書かれています。

 



Baba Masahiro (JPN,2220)

Shaw John (SCO,2469,GM)

Dresden 2008 (6)

 

私自身のShawとの対戦は初めてですが、日本のプレーヤーでは高橋礼二君が2005年のCappelle la Grandeで対戦しています。もっとも、そのゲームでは高橋君がナーバスになりすぎましたが。

 

1.e4 d6 2.d4 Nf6 3.Nc3 e5 4.Nf3 Nbd7 5.Bc4 Be7 6.0–0 0–0 7.Re1 c6 8.a4 b6

 

ここで2RAl-Sayed戦から外れます。もちろんこちらのほうがメインですので、完全にプリパレーション内でした。Mishaには「プリパレーションだと悟られないように次の手には2分くらいかけてね」と半分冗談交じりにアドバイスされましたw

 

9.d5 cxd5 10.Nxd5 Nxd5

 

しかしここで外されました。私たちの研究は10...Bb7 11.b3 Rc8 12.Re2 Nxd5 13.Bxd5 Bxd5 14.Qxd5 Nf6 15.Qd1などでした。

 

11.Bxd5 Rb8

 


さて、ここから完全に自力で考え始めます。まず、白は12...Nf6 13.Bb3(Bc4) Bb7e4にプレッシャーをかけられるのにどう対処するか考えなければいけません。20-30分考え、次のプランを思い付きました。

 

12.c3 Nf6 13.Bb3 Bb7 14.Bc2

 

黒ビショップは開いたダイアゴナルに、そして白ビショップは閉じたダイアゴナルへ位置し、白としてはやや損な感じですが、大切なのは弱点を作らないことと相手に反撃を与えないことです。今、黒はなかなかd5が突けません。

 

14...h6

 

白の黒マスビショップを制限する手ですが....

 

15.c4!

 

センターにバインドを組み、さらに次の16.b3でクイーンサイドのスペースを広げ、黒マスビショップをa3-f8のダイアゴナルにセットします。

 

15...Qc7 16.b3 Rbc8 17.Ba3 a6

 

ここで黒の狙いの18...b5を防ぐには19.Bd3,19.Ra2,19.Re2,19.Rc1などありますが、おそらくこの中で最善であろう19.Bd3dファイルをふさいでしまい、d6への圧力がなくなりパッとしませんでした。何かうまくd6を狙えないか考え、次の手を見つけました。

 

18.Nh4!

 

f5の弱点を目指します。18...b5?には19.Nf5!が先に入り、20.Nxe7-21.Bxd6のスレットが強力です。

 

18...g6 19.Bd3 Qd8 20.Bc1

 

d6がターゲットでなくなったので、今度は新たなターゲットを狙います。

 

21...Kg7 21.g3 Nd7 22.Ng2 Nc5 23.Bc2 h5 24.Bb2

 

ピンを利用してNf4-Nd5を狙います。

 

24...Bf6 25.Qe2 Qe7 26.Rad1 Rh8 27.Qd2 Rcd8 28.h4 Rhe8

 


どちらも駒の配置を改善するだけで、なかなかアクションを起こしません。私も大体有効な手は作り終えてしまい、さらに時間もなくなってきたのでやや局面をかき混ぜようとしました。

 

29.Qb4?! Qc7 30.Qd2 Bc6!

 

ビショップのポジションを良くする手です。ビショップをc6に置き、Qb7と重ねればb5からのブレークもe4のポーンも狙えます。少し黒が圧してきました。

 

31.Qe2 Qb7 32.Ra1 b5 33.axb5 axb5 34.b4 Na6

 

ここで34...bxc4が可能なようですが、コンピューターのような正確な読みがなければ指せません。もう少しで時間が足されますから、どちらもできるだけリスクの少ない手を選びます。

 

35.Bc3 bxc4 36.Qxc4 Nc7 37.Ba4

 

黒のビショップのほうが良いので、ここで交換します。

 

37...Bxa4 38.Rxa4 d5

 

黒が長らく待ち望んでいたブレークです。

 

39.exd5 Nxd5 40.Ra5

 

ビショップはキープしておいたほうが良いですが、40...Nb6が見えてやや焦りました。もっとも、40...Nb6に対しては41.Qb5で問題ありませんが。

 

40...Nxc3 41.Qxc3 e4 42.Qa3 Bd4

 


42...Rd2!なら黒に勝ちのチャンスがありますが、43.Ra7を防ぐこの手も非常に自然です。

43.Ne3 Rc8 44.Qa4 Bxe3?

 

突然全てのアドヴァンテージを破棄しました。

 

45.Rxe3 Rc1+ 46.Kg2 Rd8 47.Rc5! Rb1 48.b5 Re8 49.Qc4! Re7 50.Qc3+ f6 51.Qc4

 

このあたりで白は勝てるのではと考え始めましたが、それはだいぶ楽観的だったようです。ドローで満足するべき局面です。

 

51...Qd7 52.Rxe4 Qb7

 

52...Rxe4 53.Qxe4 Rxb5 54.Rxb5 Qxb5 55.Qe7+ Kh6 56.Qxf6を期待していましたが、さすがにそうはなりませんでした。

 

53.Rc6 Rxe4 54.Qxe4 Rxb5 55.Re6 ½–½


Dresden Dream(8)

5Rの相手のタジキスタンは日本よりも上なはずでしたが、当然勝ちに行く雰囲気がチーム内には出来上がっていました。それは3,4Rに比べるとだいぶ楽になったからでしょう。ペアリング発表になったらさっそく相手のゲームをチェックしました。そこでは衝撃の手のオンパレードでした。適当なオープニング、あやしい中盤のプラン、サクリファイス等まったくもって予想不可能でした。Mishaからのチームへのアドバイスは「向こうはサクリファイスしたりセオリーに反した手を指してきて局面の複雑化を狙ってくるから、サクリファイスされた駒を取って、あとは注意深く指せば大丈夫」とのことでした。



この日抜け番の晋は中2階の観戦席で本を読みながら待つ
この日は観戦席から遠いサイドでプレーしていた

Isaev Jamshed (TJK,2400,IM)

Baba Masahiro (JPN,2220)

Dresden 2008 (5)

 

1.e4 c5 2.Nf3 d6 3.d4 cxd4 4.Nxd4 Nf6 5.Nc3 a6 6.Bc4

 

Sozin!

実を言うとNajdorfを指すとき6.Bc4と指されるのが最も嫌いです。これは私が今回白でSozinを選択した大きな理由で、Sozinは非常に危険なタクティカルラインを含んでおり、定跡をよく知らないと一瞬でつぶれます。

 

6...e6 7.Bb3 b5 8.Bg5 Be7 9.Qf3 Qc7 10.0–0–0

 


非常に攻撃的なセットアップです。ここで10.e5!?も面白く、10...Bb7 11.exd6 Bxd6 12.Qe3 Bc5 13.0-0-0 Nc6 14.Qxe6+!?Ivanchuk’s birthday bomb(注:今年のNice RapidIvanchukが自身の誕生日に指した新手です)として多くの議論を呼びました。

 

10...Nbd7

 

ここで10...0-0?11.e5 Bb7 12.exf6! Bxf3 13.fxe7 Re8 (13...Bxd1? 14.Nxe6!) 14.gxf3で白攻勢です。このラインを学んだのは2001年のジャパンオープンでした。そのゲームを紹介しておきます。10...0–0? 11.e5 Bb7 12.exf6 Bxf3 13.fxe7 Re8 14.gxf3 d5?! 15.Rhg1 (15.Nxe6! fxe6 16.Nxd5) 15...Nd7 16.Kb1 Nb6 17.Bf6 g6 18.Rg4 Nc4 19.Nxd5? exd5 20.Nf5 h5 21.Rg5 Kh7 22.Rdg1 Nd2+ 23.Ka1 Nxb3+ 24.axb3



24...Rg8 (24...Qxh2!) 25.Ne3 d4? (25...Qxh2!) 26.Bxd4 Qxe7 27.Nd5 Qe6 28.Nf6+ Kh6 29.Be3 Qxf6? 30.Rf5+ Kg7 31.Bh6+ 1/2-1/2 K.S.-M.B Japan Open 2001

 

11.Bxe6?

 

10...Nbd7はこの手を間接的に防いだものですが、Isaevが次の黒の手を見ていたかどうかは分かりません。ただ、ここでかなりの時間を費やして考えていたため、3手くらい先の局面を考えていたのだろうと思います。ここで11.e5!? が面白く、11...Bb7 12.Qg3 Nxe5! (12...dxe5 13.Bxe6 fxe6 14.Nxe6 Qc6 15.Nxg7+ Kf7 16.Bxf6! (16.Nf5 Rag8!) 16...Nxf6 17.Nf5は黒が正確に受けるのが難しい) 13.Bxe6 fxe6 14.f4 Bc8! 15.fxe5 dxe5 16.Rhe1 0–0 17.Qxe5 Qxe5 18.Rxe5ならだいたいイコールです。

 

11...Ne5

 

当然この手です。

 

12.Qh3 fxe6 13.Nxe6 Bxe6 14.Qxe6 Qd7

 

ここから数手が最も重要です。駒を返さずに白のアタックを緩和し、キングを安全にする方法を考えます。14...Qc4? には15.Rxd6! があり、14...Ned7? には15.Nd5! で一瞬で白良しになります。

 

15.Qb3 Nf7

 

15...Nc4 と本譜で悩みましたが、よりコンパクトに駒をまとめました。16.e5!? がやや面倒ですが、16...Nxe5で特に問題ないというのが局後の検討での日本チームの結論です。

 

16.h4 Qb7 17.f4 0–0

 

アドヴァンテージを保つための絶対手です。コンピューターは簡単に黒勝勢と安全な手を示しますが、ディフェンスサイドはそれをしっかり見つけるのは難しいものです。

 

18.e5 dxe5 19.fxe5




19...Ng4!

 

この手がポイントです。20.Bxe7 Qxe7 21.e6 Nfe5 22.Nd5 Qxe6 23.Ne7+ Kf7! は黒勝勢です。

 

20.Rde1 Kh8

 

この手を指して黒勝ちを確信しました。キングの安全性が確保されたらもう恐れるものはありません。

 

21.Qe6 Nxg5 22.Qxg4 Nf7 23.Re2 Nh6 24.Qe6 Rae8 25.Qb3 Nf5 26.Nd5?

 

片方のナイトフォークしか見えていないようでした。

 

26...Nd4 0–1

 

IM17戦目にして初の勝利です!チームも2.5-1.5で勝ちました!!


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